2018年09月30日

加藤弘之くん -優等学生勉強法-





実業之日本社・編/優等学生勉強法/実業之日本社/明44(1911)/インターネット公開(保護期間満了)

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/813523







加藤 弘之
(かとう ひろゆき、1836年8月5日(天保7年6月23日) - 1916年(大正5年)2月9日)
は、日本の政治学者、教育家、官僚。
位階は正二位。
勲等は勲一等。
爵位は男爵。
学位は文学博士(1888年)、法学博士(1905年)。
旧名弘蔵(こうぞう)。

外様大名の出石藩の藩士の子に生まれ、出石藩藩校弘道館で学んだ後、済美館や致遠館でフルベッキの門弟として学ぶ[3]。
学門一筋で精進し幕臣となり、維新後は新政府に仕える身となる。
明六社会員。
外務大丞、元老院議官、勅選貴族院議員などを歴任、獨逸学協会学校の第2代校長、旧東京大学法・理・文3学部の綜理を務め、のち帝国大学(現・東京大学)第二代総長を務めた。
大日本教育会名誉会員。
その後男爵、初代帝国学士院院長、枢密顧問官。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8A%A0%E8%97%A4%E5%BC%98%E4%B9%8B



加藤弘之先生八十歳祝賀会 編/加藤弘之自叙伝 : 附・金婚式記事概略・追遠碑建設始末/加藤弘之先生八十歳祝賀会/大正4/インターネット公開(保護期間満了) (国立国会図書館デジタルコレクション)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1183272


加藤照麿 等編/加藤弘之講論集. 第1冊,第2冊/金港堂/明24/インターネット公開(保護期間満了) (国立国会図書館デジタルコレクション)

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/752761


加藤照麿 等編/加藤弘之講論集. 第3冊,第4冊/金港堂/明32/インターネット公開(保護期間満了) (国立国会図書館デジタルコレクション)

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/752762


加藤弘之/二百年後の吾人/哲学書院/明27.3/インターネット公開(保護期間満了) (国立国会図書館デジタルコレクション)

http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/798640


そんな加藤には、『二百年後の吾人』(明治27年)という著作があり、未来の様々な困難を想定し、その苦難に対抗する社会制度や科学技術に思いを馳せている。例えば次の一文は、エネルギー危機に関する考察だ。

夢見られた現代〜 どんなインフラが求められたか 〜 Vol.265 (長山 靖生/Consultant)
https://www.jcca.or.jp/kaishi/265/265_toku1.pdf





加藤くんを「法学者」と呼ぶかは微妙だな。




というか、そもそも「学者」ですらないかもしれない。




Wikipediaの記事にしても、文学・法学博士にして東大総長でありながら、「学者」とは呼んでいない。




「官僚」ということらしい。




あるいは、「政治家」なのか「評論家」なのか。




「哲学者」という分類もありうるけれども、同時代の中江兆民くんは、それを認めない。





最近では、(初代東京帝大学長の)加藤弘之や(東京大学哲学科にケーベルを招へいした)井上哲次郎が、みずからを哲学家と標榜し、世間もまたそれを認めているが、その実、自分が学習した西洋の誰それの論説をそのままに輸入しただけの「論語読みの論語知らず」で、哲学者と称することはできない。

兆民の遺言 (青空学園日本語科)
http://aozoragakuen.sakura.ne.jp/aozoran/rigakuka/node7.html





どのみち、近代史においては学術部門の有名人なので、いまさらここで書くこともない。




ここでは、戦前に活躍したコメディアン・古川ロッパとのつながりを描いておく。




ロッパの祖父が加藤くんなのである。






古川 ロッパ
(ふるかわ ろっぱ、古川 緑波とも、1903年(明治36年)8月13日[1] - 1961年(昭和36年) 1月16日)
は、1930年代の日本の代表的コメディアン。
編集者、エッセイストとしても活動した。

本名は古川 郁郎(ふるかわ いくろう)[1]。


生涯

 生い立ち

古川ロッパは元東京帝国大学総長加藤弘之男爵の長男にあたる加藤照麿男爵の六男として東京市麹町区に生まれた[1]。
生後間もなく嫡男以外は養子に出すという家訓により、義理の叔父(父の妹の婿)で満鉄役員の古川武太郎(元陸軍中将の古川宣誉の長男)の養子となる[2]。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8F%A4%E5%B7%9D%E3%83%AD%E3%83%83%E3%83%91





1961年に57歳で亡くなっているので、著作権も切れている。




青空文庫にも大量に。





公開中の作品


  1. ああ東京は食い倒れ 
  2. 浅草を食べる 
  3. 色町洋食 
  4. うどんのお化け 
  5. 想い出 
  6. 甘話休題 
  7. 牛鍋からすき焼へ 
  8. 下司味礼賛 
  9. 神戸 
  10. 氷屋ぞめき 
  11. このたび大阪 
  12. 清涼飲料 
  13. 駄パンその他 
  14. 食べたり君よ 
  15. 八の字づくし 
  16. 富士屋ホテル 
  17. 古川ロッパ昭和日記 01 昭和九年
  18. 古川ロッパ昭和日記 02 昭和十一年
  19. 古川ロッパ昭和日記 03 昭和十二年
  20. 古川ロッパ昭和日記 04 昭和十三年
  21. 古川ロッパ昭和日記 05 昭和十四年
  22. 古川ロッパ昭和日記 06 昭和十五年



作業中の作品


作業中 作家別作品一覧:古川 緑波

  1. 古川ロッパ昭和日記 07 昭和十六年
  2. 古川ロッパ昭和日記 08 昭和十七年
  3. 古川ロッパ昭和日記 09 昭和十八年
  4. 古川ロッパ昭和日記 10 昭和十九年
  5. 古川ロッパ昭和日記 11 昭和二十年
  6. 古川ロッパ昭和日記 12 昭和二十一年
  7. 古川ロッパ昭和日記 13 昭和二十二年
  8. 古川ロッパ昭和日記 14 昭和二十三年
  9. 古川ロッパ昭和日記 15 昭和二十四年
  10. 古川ロッパ昭和日記 16 昭和二十五年
  11. 古川ロッパ昭和日記 17 昭和二十六年
  12. 古川ロッパ昭和日記 18 昭和二十七年
  13. 古川ロッパ昭和日記 19 昭和二十八年
  14. 古川ロッパ昭和日記 20 昭和二十九年
  15. 古川ロッパ昭和日記 21 昭和三十年
  16. 古川ロッパ昭和日記 22 昭和三十一年
  17. 古川ロッパ昭和日記 23 昭和三十二年
  18. 古川ロッパ昭和日記 24 昭和三十三年
  19. 古川ロッパ昭和日記 25 昭和三十四年
  20. 古川ロッパ昭和日記 26 昭和三十五年


古川 緑波 (青空文庫)
https://www.aozora.gr.jp/index_pages/person1558.html




ということは、音声についても切れてるはず。






東京オリムピック 古川ロッパ (YouTube)
https://www.youtube.com/watch?time_continue=42&v=lYK1dJdog8w





1961年没だから1964年の東京オリンピックではない。




まぁ、現在みたいに開催決定と同時にバカ騒ぎが始まるのなら、なくはないけれども、ロッパの晩年は、人気凋落と糖尿病・結核によって、歌どころではなかったはず。





喜劇役者として時代の寵児となる栄光の戦前期。若き日の菊田一夫を見出し数々のヒット作を連発しながら戦時下を生き抜き、戦後は「エノケン・ロッパ」と後塵を拝する凋落の日々。

出版社のページ
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000188728






そういうわけで、この東京オリンピックは、こっち。









1940年東京オリンピック
(とうきょうオリンピック)
は、1940年(昭和15年)に日本の東京府東京市(現・東京都区部(東京23区))で開催されることが予定されていた夏季オリンピックである。

史上初めて欧米以外の有色人種国家であり、アジアで行われる五輪大会、そして紀元二千六百年記念行事として準備が進められていたものの、支那事変の影響等から日本政府が開催権を返上、実現には至らなかった。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/1940%E5%B9%B4%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF






もっとも、このオリンピックの公式楽曲は、これらしい。






「東京オリンピック」

作詞:佐々木緑亭、作曲:阿部盛、歌:小野巡 & 浅草さくら子。ミリオンレコード、1937年6月発売

1940年東京オリンピック (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/1940%E5%B9%B4%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF






富井政章くんのときみたいに閨閥で埋めていくわけにも行かず、なかなか苦しいところ。




優等学生勉強法コンプリートのプロセスということで・・・。
















座右に備忘録を置いて読書す


文学博士・法学博士・男爵

加藤弘之




◎予は青年時代に、にわか勉強を避けた


 私は、生来、丈夫な身体ではなかった。
しかしながら、いつも病気をしているというような身体でもなかつた。
学問は、はじめ、漢書を読み、それから洋学をやったが、別に学修上については考えもなくやったが、たいへん身体の丈夫な人のごとく、自分の精力も図らず、徹夜して勉強するようなことをせず、はじめから用心する気はあったのである。

 よく、友達の中には、徹夜をして勉強するというような人があった。
そうかと思うと、また、昼は出て遊び歩くというように、不規則にやる人も、ずいぶん多かった。
しかし、私は、自分の精力を計ってやる考えがあって、徹夜をすることの悪いことには、早くから気がついていた。
夜は寝るのが当然であるから、徹夜して勉強するようなことは、かつて一度もなかった。
今と違って、その頃には試験などいうものはなかったが、会議とか輪講とかいうようなものがあって、互いにやることになっていた。
そこで、明日は会議がある、輪講だというようなことになると、そのとき、下読みが出来ていない者は徹夜せねばならぬが、私は、そういうことを避けて、その代わりに、迫らない前から支度をする。
壮健な人は多少無理をしても弱らぬから、迫った時に一度に徹夜をする。
それが終始習慣になり、いつでも昼は出歩いて、夜は人が寝て、たいへん静かで宜いから勉強ができると言っている人があった。
これも習慣になったらば宜いかも知らぬが、私は身体に悪いと思うから、断じてそんなことはやらなかった。



◎備忘録は如何に書くべきか


 読書をするに備忘録を備えて置かぬと、せっかく読書をしても、他日、必要に臨んで、そのことを知ろうとしても、どの本にあったか記憶に存せず、せっかくの労力をも挙げて、徒労に帰せしむる結果となる。
いわゆる精力の蓄積なるものは、何らかの方法をもって、その読んだ結果を永久に保存し置き、必要に応じて、これを活用するにおいて、毫も遺憾なきを期するにあり。
それに、備忘録を備えておくことが最も有効であるから、旧く(ふるく)からやってみた。
今もなお、やっているが、その欠点は、なかなか手間のかかるもので、何の本の何枚目に、こういう事が書いてあると意味の分かるように書こう思えば、すこぶる面倒で、したがって、読み方のほうが進まないことになるから充分詳しく書くということは難しい。
しかし、それかといって、ごくザッとしたことを書いておくと、他日、繰り広げて見ても、何のことだから分からない結果となる。



◎書中の要点に符号を付ける


 そこで、後には、人から借りた本であれば仕方がないが、自分のものであれば、その本に朱で大意を書き込んでおくとか、または、ただ要点に○とか△とかいうような符号を付けるようなことをもした。
それも、ただ符号ばかりでは、そこを読まねば、何のことだか分からないという欠点がある。
本を充分に読もうと思えば、備忘録とか符号を付けるとすれば、暇が潰れて仕方がないと言って、ただ漠然と読んでいくと、何の本にあったか、何枚目にあったか分からずで困るが、自分においては、他に名案もないが、以上のようなことを併せてやっている。



◎読書中の心機転換法


 精力を濫用しないということについては、以前から気がついていて、これを実行している。
身体の非常に達者な人であればともかく、私のように、あまり身体の丈夫でない者は、数時間詰めて読書すると気疲れしがして身体が弱ってしまう。
そこで私は、昔から、本を読むに、時を多く続けるということをせぬ。
1時間以上続けて本を読むことは、かつてしたことがない。
その間に新聞を読むとか、人と話をするとか、あるいは庭の掃除などをする。
そうすると、気分が新たになって精神が爽快になり、元気を回復し、いつも朝のような新しい精神をもって愉快に読書ができるから、その効果も引っ切りなしに読み続けるよりは、よほど宜いようである。
倦怠の念を生じながら、なお無理押しにやるなどは、得るところが極めて少なかろうと考える。



◎斯くして精力の消耗を防ぐ


 しかし、この4, 5年というものは、自分の心をこめて読書するのは午前中だけで、あとは新聞・雑誌を読むこともあり、読まないこともあり、午後の時は読書に用いないことにしている。
午前の中は、まことに気分が宜いから、読書するに宜いが、以前は勤めがあって、思うように勉強もできなかった。
今では、決まって出るところがないから、午前は、ことごとく読書に充て、午後は、新聞・雑誌すら読まずともよいことにしている。
一体、私が1時間以上続けて読書しないのは、元来、物に倦む性質で、それに任せてやっていたのが、勢力を保存し善用するに、もっとも適切であると考えるようになって、それを続けることになったのである。』 pp 149 - 155


posted by hatena at 05:00| カイロ ☀| Comment(0) | 法学者列伝 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月29日

坂井健吉『さつまいも』







坂井健吉/さつまいも/法政大学出版局 ものと人間の文化史/1999





目次

  1.  サツマイモの誕生
  2.  サツマイモの伝播
  3.  サツマイモはどのような作物か
  4.  サツマイモの品種改良
  5.  サツマイモの栽培法
  6.  民間篤農家の多収栽培法
  7.  サツマイモの利用
  8.  サツマイモにまつわる逸話

紀伊國屋書店
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784588209017

その栽培の起源と伝播経路を跡づけるとともに,わが国伝来後四百年の経緯を詳細にたどり,世界に冠たる育種と栽培・利用法を築いた人々の知られざる足跡をえがく。

出版社のページ
http://www.h-up.com/books/isbn978-4-588-20901-7.html






たまたま「読書日記」で採り上げた本に

さつまいもネタが重なったので、

まとめておきたいな、と。




そういうわけで、

タイトルはこの本なんだけど、

あまり本書とは関係がない。




著者の坂井くんについて。




プロフィールは、ここ。




 「新未知の群像~科学者が語る自伝 坂井健吉 科学新聞」によると坂井は大正13年(1925)三重県伊賀市の生まれ。昭和19年に京都帝国大学に入学。時節柄応召し、陸軍少尉として終戦を迎えた後に京大に復学。育種学を修めて昭和23年(1948)に卒業、同年に農林省に採用されています。

さつまいもでん粉人列伝 ~3.坂井健吉とコガネセンガン~ 2010年3月6日 (元大阪府立大学大学院教授 樽本勲/独立行政法人農畜産業振興機構)
https://www.alic.go.jp/starch/japan/arekore/201002-01.html

逸話

コガネセンガンを生み出した研究者:坂井健吉は、無類の焼酎好きとして知られ、九州試験場赴任の際は、
「坂井君が九州に行ってもいい品種はよう作らんが、焼酎の消費量だけは伸ばしてくれるだろう」
と先輩から送り出されたという。
その先輩の予想に反し著名なサツマイモの品種を生み出すと同時に、予想通りに焼酎の消費増大に貢献した。

コガネセンガン (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%AC%E3%83%8D%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%82%AC%E3%83%B3





農水省の技官だけあって、

 品種改良の歴史と栽培法

が結構なウェイトを占めている。




以下、

本書にかかわるところが全然出てこないので、

無理やり小ネタを調べておく。





『 これに対し不動堂村(引用註.九十九里町字不動堂)の方は、サツマイモには毒があるとか、こんなものを作ると不漁になるとか、その他いろいろと無知による不利な流言がとび、結局一回の試作で中止となった。そのような土地なのに、昨今では町おこしの一つとして大きく立派な「甘藷試作地」の石碑を海水浴客が多く通る場所に建立し、サツマイモ栽培はここから始まったといわんばかりのビラなどを配り、盛んに宣伝しているようである。』 pp52-53






坂井くんの怒りが伝わってくる書きっぷりである。




実際、

九十九里町のホームページも、

そうした説明があったらしい。





私たちが住む千葉県でも、たくさんのさつまいもが栽培されています。さつまいもは、 江戸時代に住民を飢饉から救うために 栽培が普及しました。さつまいもは、他の穀物と比べて、飢饉で荒れた土地でも育てやすかったからです。私たちが住む九十九里町は、 関東地方で初めてさつまいもが栽培された場所で、不動堂には、関東地方での「栽培発祥の地」の記念碑が建てられています。 九十九里町に大変ゆかりのある、さつまいも ですが、 さつまいもには、3つの働きがあります。

10月5日 2017年10月2日 (九十九里町ホームページ)
http://www.town.kujukuri.chiba.jp/0000003972.html





「らしい」というのは、

現在ではこのページは削除されていて、

Yahooの検索結果にキャッシュとして表示されるだけだから。




現在、

九十九里町のホームページで「さつまいも」を検索しても、

ヒットするのは、

ほとんどが学校給食の材料として。




「甘藷」なら上述の石碑が3件ヒットするものの、

どれも石碑がある事実を書いてあるだけで、

 「発祥の地」

としての宣伝はしていないようである。




九十九里町としては、

いつツッコミが入るかわからんネタで町おこしするのはリスキー

ってことでしょうか。




本書の出版は1999年。




2017年以降に、

担当者が本書を読んだのか、

読者から苦情が入ったのか・・・。




もっとも、

町本体は宣伝してなくても、

観光協会のほうは「発祥の地」アピールを続けている。





青木昆陽は、享保二十年(1735年)、九十九里町と花見川区幕張町で関東地方で初めてサツマイモの試作に成功し、当時貧困にあえいでいた農民を飢えから救いました。
九十九里町役場豊海出張所跡地に記念碑があります。

九十九里町観光協会 (町の見どころ観光スポット)
http://99kankou.com/sightseeing





 「初めてサツマイモの試作に成功し」

ってのは、いいのかなぁ?




この点、

千葉県は冷静である。




最初の試作地は3か所あり、

そのうち2か所が千葉県内なので、

九十九里町の試作地を宣伝しなくても、

もう1か所を宣伝すればいい。





甘藷の導入に当たり、青木昆陽(1698~1764)によって江戸小石川の養生所(小石川植物園)、下総国馬加村(千葉市花見川区幕張町)(本書116頁)、上総国不動堂村(山武郡九十九里町)の3か所で試作がおこなわれた。不動堂村で行われたのは、この地が天領で、町奉行配下の与力給地であったためであり、代官赤松源之助などによって昆陽の指導を受けた地域の農民が試作を行った。しかし、不動堂村での試作は、馬加村での試作ほどは成果が上がらなかったようである。現在その試作地には「関東地方甘藷栽培発祥の地」の石碑が建てられている。

青木昆陽不動堂甘薯試作地 平成29(2017)年10月23日 (千葉県教育委員会)
https://www.pref.chiba.lg.jp/kyouiku/bunkazai/bunkazai/p411-046.html






九十九里町が

 「私たちが住む九十九里町は、

   関東地方で初めてさつまいもが栽培された場所で」

と、坂井くんが

 「サツマイモ栽培はここから始まったといわんばかり」

と批判するような表現をしているのに対して、

千葉県は、

 「不動堂村での試作は、馬加村での試作ほどは成果が上がらなかったようである」

と、いかにも素っ気ない。




そもそも「試作」と「栽培」とは、

別の概念じゃないのか?





栽培

植物の繁殖と生育とを保護、管理すること。


日本大百科全書(ニッポニカ) (コトバンク)
https://kotobank.jp/word/%E6%A0%BD%E5%9F%B9-508306

試作

本式に作る前に、ためしに作ってみること。


デジタル大辞泉 (コトバンク)
https://kotobank.jp/word/%E8%A9%A6%E4%BD%9C-518879#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89





試しに植えただけでは、

「栽培」とは言わないと思う。





本書ネタ終わり。





まず、

「フードファディズム」。





高橋久仁子『フードファディズム』 2018年09月08日 (このブログの記事)

http://syotogen.seesaa.net/article/458789915.html





p46に、

「国民栄養の現状」を元にした「表2-1 食品群別摂取量の推移」があった。




そこでは、

1950年には1日あたり76グラム摂取していた「さつまいも」が、

2000年には9グラムまで減少する。




小麦を除いた穀類も半分以下になっているのに対し、

増加したのは、

もちろん動物性食品(魚介類単体を含む!)と果物。





せっかくなので、

「国民栄養の現状」にアクセスしてみよう。







国民栄養の現状 (独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
http://www.nibiohn.go.jp/eiken/chosa/kokumin_eiyou/





なぜか1947年から2002年までは独立行政法人がやっていて、

2003年からは厚生労働省が直接公開している。





健康・医療 > 健康 > 栄養・食育対策の推進 > 国民健康・栄養調査 (厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kenkou_eiyou_chousa.html





おもしろいのは、

古い年代のところ。




季節ごとの変動や「都市と農村」の違いがハッキリ出ている。




残念ながら

Excelファイルが1975年(昭和50年)からしかないので、

手作業で入力した。




2月5月8月11月
都市農村都市農村都市農村都市農村
穀類312.3370.7251.0247.7140.9265.7163.2286.8
大麦8.142.120.752.742.0103.634.297.6
小麦59.325.566.130.0134.673.3132.746.8
雑穀3.018.636.914.962.118.712.310.8
堅果類0.00.20.10.20.10.20.60.6
藷薯類甘藷216.0210.279.2146.56.311.1348.2340.2
馬鈴薯37.842.661.562.9161.7194.234.331.7
其他芋類12.726.915.730.40.11.033.343.5
砂糖類1.20.51.40.50.70.31.10.5
油脂類1.70.61.30.70.80.81.60.9
豆類大豆2.94.41.63.23.32.21.23.0
大豆製品22.543.020.336.718.535.624.042.7
其他豆類2.83.326.06.86.29.38.75.0
魚介類65.322.169.627.946.923.566.328.9
獣鳥肉類5.91.88.32.95.11.07.31.6
卵類1.81.12.51.71.81.31.00.3
牛乳及煉製品1.00.71.13.81.14.81.43.0
緑黄色野菜66.473.296.390.4132.2127.691.786.6
柑橘類6.16.74.71.648.236.72.91.5
其他果実類3.01.02.80.411.419.822.714.2
其他野菜191.5206.0141.082.6158.7140.7138.7133.6
海藻類6.81.75.72.52.40.93.41.9
乾燥野菜4.04.05.24.90.40.50.20.4
野菜漬物55.489.038.965.425.957.216.460.0
調味嗜好品28.518.321.418.220.423.522.421.2


国民栄養の現状 昭和22年(1947年) (独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
http://www.nibiohn.go.jp/eiken/chosa/kokumin_eiyou/doc_year/1947/1947_kek.pdf





いろいろと楽しめそうなデータなんだけど、

まずは今回のテーマのさつまいもについて。




都市・農村とも、

秋には米よりも摂取量が上回っているから、

「主食」になっていたんだろうね。




2月になると、

米のほうが多くなり、

夏にはほとんどゼロになる。





さつまいもは、9月~11月頃に収穫されますが、その後2ヶ月ほど貯蔵して、水分を飛ばすと、甘さが増して、よりおいしくなります。つまり、収穫直後と収穫2ヶ月後の2回、旬があるのです。

さつまいものおいしい時期・種類 2015年09月23日 (執筆者:江戸野 陽子/All About)
https://allabout.co.jp/gm/gc/15178/





これに対して、

さつまいもの落ち込みを補っているのが、

じゃがいも。




年中、安定的に摂取されているけれども、

さつまいもが落ち込む夏だけは急激に摂取量が増加している。





主産地・北海道では、7月末から10月にかけて収穫したものを貯蔵して、翌年4~5月ごろまで出荷します。

じゃがいもの旬と出回り時期 (レタスクラブニュース)
https://www.lettuceclub.net/recipe/dictionary-food/185/season/

収穫量(㌧)
全国2199000
北海道1715000


作物統計調査 / 作況調査(野菜) 確報 平成28年産野菜生産出荷統計 (e-Stat 政府統計の総合窓口)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000031645204&fileKind=0





収穫量だと、

北海道産が78%を占めてます。





といっても、

これは現在の統計。




かといって、

そうそう都合よく昭和22年当時のデータがあるわけが・・・。




って、ありました。




北海道庁が公開していたりする。




小学校で「地元の産業の歴史」みたいに教えてるのかな。




昭和20年と25年のデータ。





収穫量全国北海道シェア
192585760036918243%
1935125000051937042%
1945177200059575134%
19502442000114860047%
19552908000116500040%
19603594000179800050%


参考資料 (北海道)
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/file.jsp?id=106235





ものすごい大増産ですな。




歴史の授業では、

日本の土地は江戸時代に開墾され尽くしたって聞いたような・・・。





1.世代を超えた歴史的な財産である農地と農業用水

kcms.gif


我が国の農地と水 ~これまで、そしてこれから~ 「元気な日本復活特別枠」要望 戸別所得補償実施円滑化基盤整備(施策の背景・必要性) (農林水産省農村振興局)
http://www.maff.go.jp/j/budget/2010_3/pdf/enkatu-haikei1.pdf




資源を戦争につぎ込んでいた時代にこれだけ増産できるなら、

農水省が公共事業とかする必要ないでしょ。




ちなみに、

戦前は、

 「じゃがいも」と「さつまいも」と

は同じ枠組みで把握されていたらしい。





brikn(1).jpg


農林大臣官房統計課 [編]/農林省統計摘要. 昭和2年/大正15-昭和8/東京統計協会/インターネット公開(保護期間満了)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1145718




棒グラフの「じゃがいも」と「さつまいも」とが色分けは、

元のファイルでも全く判別できない。




北海道は、鹿児島、沖縄に続き、第3位。




って、

どんだけ作ってたんだ、沖縄県。





もっとも、

現在では沖縄からのサツマイモの持ち出しはできないらしい。





Q2:沖縄などからはサツマイモを持ち出すことができないと聞きましたが、それはなぜですか?

A:沖縄をはじめ、奄美大島などの南西諸島や小笠原諸島には、サツマイモに寄生するアリモドキゾウムシやイモゾウムシなどの害虫が発生しています。
これらはイモ類にたいへん大きな被害を及ぼし、さらにイモの内部を食い荒らすので、外見からはわかりにくく、発見するのが非常に困難な害虫で、本土には発生しておりません。

そのため、これら害虫が広がらないようにするため本土への持ち込みが禁止されています。

沖縄の特産である紅イモもサツマイモの一種なので持ち出すことができません。
ただし、消毒したサツマイモは持ち出すことができます。

Q3:沖縄や奄美の紅イモやサツマイモを本土に送ってもらいたいと思うのですが、どうしたらよいでしょうか?

A:消毒しなければ、持ち出すことはできません。

消毒には時間がかかりますし、消毒した後にイモを入れる容器についても条件がありますので、あらかじめ那覇植物防疫事務所又は、門司植物防疫所名瀬支所にお問い合わせください。

Q4:消毒には料金はかかるのですか?

A:土産物などの個人消費用であれば、那覇植物防疫事務所又は、門司植物防疫所名瀬支所に申請すると、無料で消毒して「消毒確認証印」を押印してお返しします。


ホーム > 旅行者(携行品)・郵便物 > よくあるご質問(国内旅行編) (植物防疫所)
http://www.maff.go.jp/pps/j/trip/domestic/faq/index.html#Q02














とりあえず、

さつまいもの全国生産量の推移。





さつまいもの統計データ(提供:農林水産省生産局生産流通振興課) (日本いも類研究会)

http://www.jrt.gr.jp/stat/sweetpotato_201106.pdf





さすがに、

明治11年から現在までのデータをテーブル化する気になれないので、

大台を突破(上にも下にも)して年だけ紹介しておく。




戦前に生産量が急増したのは、

デンプンを取るためだった。





第三節 甘藷澱粉製法

【用途】

 この甘藷デンプンも、その用途は、やはり馬鈴薯と同様に、工業用、菓子製造用、料理用、酒造用などに使用するが、馬鈴薯デンプンよりも糖分を多く含むがゆえに、焼酎製造用、飴製造用に供せらる。しかし、甘藷は、そのまま食用に供することの多いのと、または菓子餡の原料、または、乾燥して乾燥イモとし、菓子代用食などに用いらるるゆえ、デンプンに製する額は少ないのである。

 また、甘藷は、デンプン含有量多くして、かつ、細胞膜も破れやすいけれども、糖分に富むをもって、製造中、糖分をいたずらに流出せねばならぬ欠点がある。よって、ある人は、この糖分量の多い甘汁を煮詰めて、飴代用品を作ったことがあるが、充分の成功はできなかった。

 これらの関係から、従来は、あまりデンプン原料には用いられなかったが、近年、千葉県等にて、盛んに製造するようになった。また、これらに用ゆる原料の品種は、甘藷としては中位のものだが、収穫多き点と、デンプン量の多い点、または栽培容易なる点から、下総赤種または白種を多く栽培するようである。

 つぎに、その製法であるが、これはやはり、前記の馬鈴薯デンプン製造と同様にて、粉砕機にて砕き、フルイにて漉し、それから水笈法または前記馬鈴薯デンプンのときの如くにして製するのである(水笈法とは、幅細の箱に泥状体のデンプンを入れ、箱をわずかに傾斜して、一方の高い方から平均に水に流すのである。かくすると、デンプン粒の大小が分かれるから、大なる部分は再び粉砕するのである。)。

【デンプン製造の設備及び利益】

 デンプン製造には、割合に機械器具を用いぬものである。また、工場なども、特殊の設備は不要ゆえ、何にても差し支えないが、ただ要なる点は、清水の充分に得らるる所が必要である。次に、日光乾燥をも行わねばならぬから、乾かし場のある所でなければならぬ(乾燥装置があっても、日光乾燥も必要である。)。

 また、製造機械としては、粉砕機、フルイ、洗い桶各種、乾燥箱数個、漉し袋、その他の雑道具があれば足るのである。もっとも、小なりといえども、、これに適当したる工場を設けることができれば、この上なく便宜で、したがって作業能率も上がるのである。また、中規模以上に行う場合には、水車の便あらば、これを動力として粉砕洗浄の用を為さしめ、然らざれば、電力等の動力によるほうがよろしいのである。

 これらの設備をも為す場合には、相当の費用を要するが、自家の建物を利用し、単に製造用具のみを購入するものとすれば、わずかに100円にて一切の道具を求むることができようと思う。

 また、利益は、原料代はもちろん、一切の手間料荷造費、搬送料等を差し引き、売価の1割5分ないし2割は得らるるのである。すなわち、100円の製品に対し15円ないし20円を得らるるわけであるが、これには原料の仕入れにも充分注意して、なるべく安価に仕入れ、かつ、原料の保存にも多大の注意を必要とする。

 すなわち、貯蔵法悪いときには、著しくデンプン量を減ずるものである。今、参考として、貯蔵法の一種を示さん。』 pp72-76

産業奨励会 編/是れから小資本で出来る独立事業/産業奨励会/大正9/インターネット公開(保護期間満了)
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/962784





あとで引用するグラフでもある通り、現在でも、サツマイモの1割程度はデンプン用に消費される。





収穫量は、

明治14年
1881年
100万トン超
明治20年
1887年
200万トン超
明治40年
1907年
300万トン超
大正5年
1916年
400万トン超
昭和21年
1946年
500万トン超
昭和23年
1948年
600万トン超
昭和30年
1955年
700万トン超
昭和39年
1964年
600万トン割
昭和40年
1965年
500万トン割
昭和43年
1968年
400万トン割
昭和44年
1969年
300万トン割
昭和47年
1972年
200万トン割
平成15年
2003年
100万トン割
以降100万トン前後






高度成長期

(1951~1972(国立公文書館)、1952~1972(ブリタニカ)、1954~1973(Wikipedia))

に入ると、急速に落ち込んでいく。




この流れの発端は、

戦時中から砂糖の流通が統制され、

砂糖の代用としてサツマイモからつくる水飴が流通したこと。




これが戦中戦後の増産につながる。




ところが、

砂糖の流通が自由化されると、

水飴価格は暴落する。





 これらの動きは,1951(昭和26)年,砂糖の統制廃止とともにさま変りした.水飴の価格は暴落し,その結果澱粉価格,原料甘藷の価格が急落した.その後も澱粉の不況がつづき,甘藷・馬鈴薯の作付農家の不安が増大した.

総論一戦後35年の澱粉関連産業の動向 澱粉科学 27巻4号 p211-218 1980 (鈴木繁男)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jag1972/27/4/27_4_211/_pdf





そこで、

昭和28年に農産物価格安定法が成立し、

国が余ったイモを買い上げる

という保護政策が始まる。





農産物価格安定法
(のうさんぶつかかくあんていほう)
は、米麦に次いで重要な農産物の価格が適正な水準から低落することを防止し、もつてその農産物の生産の確保と農家所得の安定に資することを目的として制定された法律である。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%BE%B2%E7%94%A3%E7%89%A9%E4%BE%A1%E6%A0%BC%E5%AE%89%E5%AE%9A%E6%B3%95




ピークの昭和30年頃には、

政府が買い上げていたデンプンの在庫

が溜まりに溜まっていたらしい。




○秋山俊一郎君

 ただいまカンショの問題が出ましたので、一点お伺いしておきたいのですが、そのカンショ並びに澱粉等の価格がどうも本年は非常に下っているということの原因の一つとして、政府が買い上げているところの澱粉が3000万貫も今ストックになっているということが大きな因をなしているように伝えられております。
多分さようであろう、それは一つの大きな原因であろうと思いますが、今後また澱粉を買い入れるということになりまして、それがいつまでもそういうふうにストックになっているということになりますと、その値段の上昇は非常に困難じゃないかということを憂えますと同時に、今後においてもそういう問題は始終起ってきやしないか。
そこである業者のうちには、この澱粉をブドウ精化しよう。
ブドウ糖にしていって、そうして砂糖化、まあ砂糖の一部に変れば澱粉の値下りもある程度押えることができるだろ。
国産の糖分が出回るというようなことも考えて、さような方面に相当計画を立てているようでありますが、農林大臣はこの問題についてどういうふうにお考えになっておりますか、この点をお伺いしたい。


○国務大臣(河野一郎君)

 お説ごもっともでございますが、実は澱粉の過去の経緯に徴しますると、米などと違いまして、相当長期に保管いたしましても、それによってもちろん金利、倉敷はかかりますけれども、たとえばこの前の場合も3年間ぐらい持っておりまして、その結果食管会計にはあと価格の変動によってマイナスを来たしていないというようなことで、過去の経験からいたしますれば、必ずしもそう悲観してもいないわけであります。
で、ただ3000万貫持ったらそれがひどく荷もたれして云々ということを一部の人が言い、また食管の予算がないからもう政府も買えないだろうというようなことを言い、いろいろなことを言うておりますが、そこで私は先ほど申し上げましたように、持っておっても、政府はこの価格を農村経済のために支持する必要があると認めた以上は、幾らでも買いますということを勇敢に決定して、発表したわけでございます。

 そこで、しかし、さればと申してそれが幾らでもどんどんたまってよろしいか、新しく今お話しのようなふうにすることを考えているかどうか。
むろんその点については十分注意を払っておりますが、アメリカなどのある州では、必ず砂糖の中に何パーセントのブドウ糖を混入しろというようなことをやっており、またそういう消費の奨励をしている所もあるようでございます。
で、わが国内においても、ブドウ糖の製造の奨励、さらに製造方法の改良等にいろいろ研究をし、また一部には余剰農産物の見返り資金をこの面に回したらどうかとか、もしくは開銀の金を使わしたらというような御意見もあります。
しかし、まだはっきり割り切っておりませんのは、これは私もしろうとでよくわかりませんけれども、気候風土の関係で、どうも日本の場合は水分を吸収することが多くて、それを砂糖にまぜるということはほとんど不可能であろうということを言うている人もあるわけであります。
従って、それらについては十分……。
しかしそういう意見があるからやらぬということじゃないのでございまして、研究調査はいたさしているわけでございまして、一部には今お説のような点は、まだ開始はいたしておりませんけれども、せっかく今澱粉の新たなる用途について食管においても検討を加えておるということでございます。


○秋山俊一郎君

 よくわかりましたが、私はこの考え方は非常にいい考え方であって、日本でできるものが砂糖の代用になるならば、これは非常にけっこうなことだと思って、何とかしてこれを完成させたいと考えておるのでありますが、ただ一番われわれの心配になりますのは、ただいま大臣の言われましたような、何といいますか、水分を吸収してかたまりやすいという点が一点でありますが、これも製造方法によって非常に緩和されてきたということを承わったのであります。
この間うち、そういうことでいろいろ話をしておりましたが、現閣僚の中の有力な閣僚の方から、これを一つぜひやろう、そうしてその用途はカン詰の砂糖の代用に使おうじゃないか、そうすると非常にいいだろうということのお話がございました。
私も非常に意を強うしておるのであります。
ただその用途の面と、価格の面とのつり合いが非常にネックになるのじゃないかと思いますが、政府といたしましても、これだけのカンショがどんどんとれて、年々政府が買い上げねばならん。
買い上げてもいいんですが、それをただもう買い上げて積んでおくのでは芸がないと思う。
これを何とか消化していくという方法について、一つブドウ糖という方法があるならば、それに向ってうんと力を入れていただきたいと思いますが、今のお話ではまだどうもはっきり私ものみ込めませんが、大臣のこれに対する将来カを入れていこうというお考えであるか、まだまだ研究せねば何ともどうも言えないというような状態でありますか。
現にもうすでに工場設備をやっておる所もあるようであります。
また設備を希望しておる所もありますから、私はその点を伺って、今後のわれわれのまあこれを推進する上の参考にしたい。


○国務大臣(河野一郎君)

 非常にむずかしい問題でしてね。
実は砂糖の価格との関係を、いつも私が申すように、持ってくるものだと確信をしておるわけであります。
そこで砂糖の価格は下げなければいけない。
下げれば、今言う通り、何といっても澱粉、イモの価格が下ってくる。
問題は砂糖の価格が高くなれば、もう一ぺんに解決してしまう。
また砂糖の代用として、あめとして……。
ところが、今言う通り、砂糖の値段は相当に私は下げる方向に持っていった。
これを下げていったから、どうしても澱粉、イモの方に影響してきたということなんでして、それを何といっても、同じ糖分として、どこに決着点を求めるかということをきめませんと、どうもそういうふうにしたらといっても、やはり値段が、砂糖の値が安くなれば、やはり代用は代用ですから、解決点がなかなかむずかしいということになるのでございまして、結論は、砂糖の価格をどのくらいに安定させ、そうして澱粉の価格をそれによってどのくらいに安定させ、サツマイモの価格をどのくらいに安定させるかということに決着する。
その方向がきまった上で今のように施設をするということにいたしませんと、別の用途に向うならば、それはいろいろ奨励もよろしいのでございますけれども、実は私としては今申し上げました関係をはっきり割り切ることができませんものですから、情勢待ちということに、実は本心正直に申せば、いたしておるわけであります。


○秋山俊一郎君

 砂糖の輸入を少し押えてみたらどうですか。
(「もう一ぺん大臣になってもらわぬと」と呼ぶ者あり)


○国務大臣(河野一郎君)

 砂糖の輸入を押えるということは簡単でございますが、砂糖の輸入を抑えて、砂糖の価格を上げないということができるなら、一番けっこうです。
しかし砂糖の輸入を押えれば、砂糖の価格が何としても上ります。
ですから、イモの価格につり合うまで砂糖の価格が上ってよろしいということならよろしいんですが、これはやはり消費大衆から見ればなかなかそうはゆかんということになりますから、(「かね合いですな」と呼ぶ者あり)ちょっと農林大臣だけでは扱いかねるものですから……。

 どうも、この前の議会でも、この砂糖問題でいろいろやかましい問題になりまして、私もついに力及ばずして、どうも思う通りにならなかったのですが、将来政治問題として砂糖の価格をどうするか、砂糖政策をどうするかということがまずきまってゆきませんと、イモの問題についての結論が出なかろうというように思うのであります。
しかし、それはそんなことを言っておられませんから、今言う通り、既定方針通りに、澱粉の値が、サツマイモの切りぼしの値段を、これは農家経済維持の点からいっても維持していく。
そうしているうちに、基本的な問題もきまっていくだろうし、これが利用の面においてもきまっていくだろうということでございます。


○藤野繁雄君

 それで澱粉の利用、用途の開拓については、全くの今のお話の精製ブドウ糖ということに力を入れた方が一番いいと思っているのでありますが、政府においてもこれを検討中であるということであるから、ぜひ推進していただきたいと思うのであります。

 しかし、こういうふうなことをやるためには、政府だけじゃなくて、民間の、ものも一緒になって、こういうふうな精製ブドウ糖の利用増進に関する審議会というようなものを作って、さらにこの推進に努めたらどうだろうかと思うのでありますが、大臣のお考えはどうであるか、承わりたいと思う次第であります。


○国務大臣(河野一郎君)

 今、お話のありました通りに、ただ澱粉の買い上げをすればよろしいという問題じゃないのでございまして、これをただ買って、無制限に数がふえるということは非常によろしくないことでございますから、また、かたがた、今お話をいたしましたように、結論を、イモの問題はイモの問題だけ、澱粉の問題は澱粉の問題だけとして解決のしにくい問題でございますから、これに関係のある方々のお集まりを願って、なおよく御調査、御検討を願うことは、私はけっこうだと思っております。



昭和31年12月04日 参議院 農林水産委員会
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/025/0408/02512040408005a.html





昭和31年時点で3000万貫(11万2500トン)だったデンプンの在庫が、

昭和35年になると7400万貫(27万7500トン)まで跳ね上がる。





○芳賀委員

 実行はいいのですが、北海道で8年間に30万トンになるとすれば、これは国の計画というものもやはり改善できる一つの自信がつくのじゃないですか。
たとえば今あなたが言った結晶ブドウ糖の問題にしても、政府の今年度の買い上げ決定分を入れて一体幾らカンショ澱粉とバレイショ澱粉を手持ちしておるわけですか。
合計すると7400万貫というものが政府の手持ちになってストックされている。
しかも、昨年の当委員会においても政府手持ちのカンショ澱粉については、一般の用途には放出しない。
この用途というものは結晶ブドウ糖の原料にこれを限定して処理する方針であるということが昨年の委員会においても言明されておるわけです。
ところが、この十カ年計画というものはわずかに10カ年後に結晶ブドウ糖は15万トン製造ということになっておるわけです。
そういうことになると、これはテンサイ糖よりも大事である。
しかし34年度が豊作であった関係で、結局カンショ澱粉については1800万貫、バレイショ澱粉については600万貫の買い上げが決定しておるわけです。
それを従前の分に入れると七千四百万貫ということになるのですよ。
方向はこれは結晶ブドウ糖にするということになれば、北海道を中心としたカンショ等の生産が十カ年計画を待たないで八カ年計画でできるとするならば、この結晶ブドウ糖の問題についても、毎年政府が十数億の保管料とかそういう経費をまかなうという現状に立った場合には、もう少し澱粉の砂糖化問題についても真剣に取り組む必要があると思われるわけです。
だから、この十カ年計画というものをこの時限で再検討する必要があるのではないかというのが私の質問であったわけです。
特に、今度の総理大臣は砂糖については相当の権威者でしょう。
糖業政策には権威者ではないかもしらぬけれども、砂糖会社には一番大きなつながりを持って、政治献金はおもにそこから吸い上げておるということが言われておるわけだ。
だから、この際やはり輸入糖依存ではなくて、国内糖の生産増強ということに対しては、担当の農林大臣としてももう少し真剣に考えていく必要があると思うのです。
どうですか。


○南條国務大臣

 お説の通りでございまして、できるだけこの外糖の輸入を制限する方向に、国産の甘味資源を増産する方向に進みたいと思うわけであります。
従いまして、ただいま御質疑の澱粉糖化問題、結晶ブドウ糖ということについての今後の生産量ににらみ合わせまして、この処理をどうするかということは非常に大きな問題でございまして、実はかような点について、先ほども申したように酵素法澱粉のブドウ糖化ということが最近技術的に非常に進歩しておるということを承っているので、この実施を実際にしておる工場等も見学してみたい。
そうして今後の実績等も考えまして、今年中にはこの予算措置あるいは金融措置等についても政府、農林省としては十分考えて、この態勢の上に生産向上に尽くしたい、こういうふうに考えておるのでございます。


○芳賀委員

 きょうは時間の関係があるので、結晶ブドウ糖を十分論ずるいとまがありませんが、あなたの女房役の田口次官は当委員会においても結晶ブドウ糖問題に対しては非常に熱意と見識を持っておるわけです。
ですから、女房役の意見も十分聞いて、早急にこの結晶ブドウ糖の問題についても、宣伝だけではなくて――選挙宣伝だけに使われては大へんですから、具体的にどうやるということを明らかにして、政府手持ち澱粉の処理対策というものを十分進めてもらいたいと思うわけであります。



昭和35年08月12日 衆議院 農林水産委員会
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/035/0408/03508120408003a.html





そのあとの激減の経緯については、

こちらを参照。





 このようなでん粉市況を抑制するため、昭和38年外国産でん粉が輸入された。その影響で、糖化製品は暴落、でん粉価格も急落し、でん粉業界にも大きな打撃となった。また同年粗糖の輸入自由化が閣議決定された。このことが、でん粉産業業界にさらなる影響を与えることになったのは言うまでもない。

さつまいもでん粉産業の変遷(2) 2011年8月8日 (農業情報アドバイザー 下野公正/独立行政法人農畜産業振興機構)
https://www.alic.go.jp/joho-d/joho08_000095.html





本書にもいろいろとデータが載っているんだけど、

それらがことごとく「日本いも類研究会」のPDFで確認できるので、

本書から引用するところがない。





さつまいもの統計データ(提供:農林水産省生産局生産流通振興課) (日本いも類研究会)

http://www.jrt.gr.jp/stat/sweetpotato_201106.pdf





昭和30年から40年まではデンプン用に200万トンのサツマイモが利用されていたのに、

昭和45年には100万トンを割り、

昭和50年には50万トンを割り、

平成16年には20万トン割れで現在に至っている。




よくわからんのは、

昭和30年から40年にかけて、

デンプン用の消費は200万トン以上で安定しているのに対し、

農家の自家消費用が激減していること。




自家消費用は、

昭和30年時点ではデンプン用と同じ200万トン程度。




ところが、

5年後には半減して100万トン、

さらに5年経つと再び半減して50万トンまで減っている。




10年で4分の1になった。




ちなみに、

さらに10年経つと、

やはり4分の1になっている。




つまり、

20年で、農家の自家消費が16分の1になった。




サツマイモ農家についてはわからんけど、

1次産業従事者数の推移は、こんな感じ。




表3-1 産業(3部門)別15歳以上就業者数の推移-全国(大正9年~平成17年)




III 変化する産業・職業構造 (総務省統計局)
http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2005/sokuhou/03.htm





10年でも3割減。




20年で5割減。




たとえサツマイモ農家に限って集約化が進んだとしても、

ここまで自家消費が減るってことはないだろう。




謎だ。





生産量について。




現在の都道府県別シェアは、

上位4県で80%を占めていて、

この中に沖縄県は入っていない。




全国農業地域
都道府県
作付面積10a当たり
収量
収穫量
hakg
全国35,6002,270807,100
(全国農業地域)
北海道231,790412
都府県35,6002,270806,700
東北1951,2902,510
北陸6721,65011,100
関東・東山12,1002,440295,400
東海1,3701,36018,600
近畿7071,47010,400
中国7881,33010,500
四国1,9102,31044,200
九州17,5002,340410,100
沖縄2811,3603,820
(都道府県)
北海道231,790412
青森21,02020
岩手401,110444
宮城371,350500
秋田331,060350
山形291,250363
福島541,550837
茨城6,7002,610174,900
栃木1431,3701,960
群馬2171,4203,080
埼玉3681,5405,670
千葉4,1302,450101,200
東京1021,4901,520
神奈川3491,5005,240
新潟2421,4803,580
富山1001,3401,340
石川2132,0504,370
福井1171,5101,770
山梨361,240446
長野791,7701,400
岐阜1411,0401,470
静岡5821,81010,500
愛知3471,2304,270
三重2997812,340
滋賀861,5301,320
京都1391,5602,170
大阪1111,4801,640
兵庫2281,3303,030
奈良801,6301,300
和歌山631,540972
鳥取1671,4602,440
島根1021,4001,430
岡山1441,5702,260
広島1801,0701,930
山口1951,2702,480
徳島1,1002,75030,300
香川2191,5103,310
愛媛2191,4903,260
高知3741,9707,370
福岡1401,4502,030
佐賀851,9001,620
長崎3251,4304,650
熊本1,0002,23022,300
大分3692,0207,450
宮崎3,6902,44090,000
鹿児島11,9002,370282,000
沖縄2811,3603,820
関東農政局12,7002,410305,900
東海農政局7871,0308,080
中国四国農政局2,7002,03054,800


平成29年産かんしょの収穫量(全国農業地域別・都道府県別) 2018-06-27 (農林水産省)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000031730162&fileKind=0





もっとも、

価格調整という補助金は、

まだ続いているらしい。





制度の目的

でん粉は、各種食品の原材料として国民生活上必要不可欠な物資ですが、日本はこれらの原料作物であるでん粉原料用いもの生産条件が諸外国に比べ不利となっており、大幅な内外価格差があります。また、でん粉の原料となるばれいしょ及びかんしょは、それぞれの地域の農業における基幹的な作物であるとともに、収穫された原料をでん粉に加工する地元のでん粉工場は地域経済を支える重要な役割を担っています。

このような状況をふまえ、輸入でん粉等と国内産いもでん粉との価格調整(機構売買と生産者支援)を行うことで、生産者の農業所得の確保並びに国内産いもでん粉製造事業の経営安定の実現し、国内産いもでん粉の安定的な供給の確保を図ることが必要となってります。

指定でん粉等の売買手続き 2018年2月19日 (独立行政法人農畜産業振興機構)
https://www.alic.go.jp/operation/starch/operation-trade.html




農水省の出先機関なんて大量にあるんだから、

そっちにやらせればいいのに。





これに対して、農水省の職員数や予算は、こんなかんじ。


歳出額シェアの推移をグラフ化してみた。



nssyys.gif


一般会計-所管別歳出決算額(エクセル:43KB) (総務省統計局/平成15年まで)
http://www.stat.go.jp/data/chouki/zuhyou/05-02-d.xls


この歳出シェアの低下傾向はさらに続いていて、平成29年度は2.2%まで低下している。



明治26年度以降一般会計歳出所管別予算Excel (財務省/統計表一覧)

http://www.mof.go.jp/budget/reference/statistics/05.xls


職員のシェア。



平成12年度17年度21年度22年度23年度24年度
農林水産省214832332518832181701785617500
総数496083301719279197273395271157268718
割合4.33%7.73%6.75%6.65%6.59%6.51%


府省別国家公務員数(平成12~24年度) (総務省統計局)
http://www.stat.go.jp/data/nenkan/back64/zuhyou/y2402000.xls



小泉改革で分母が変わりすぎて比較にならん・・・。



h29_syokuin_doukou.png


省庁再編以降の国の行政組織等の職員数の動向 (内閣官房)
https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/satei_02.html


梅谷献二『ヒトが変えた虫たち』 2018年06月16日 (このブログの記事)
http://syotogen.seesaa.net/article/456962410.html

















「さつまいもの統計データ」には、

平成に入ってからの都道府県別収穫量の表がある。





平成20年時点で、だいたい鹿児島県の1%くらい。




おもしろいことに、

全国の生産量は平成2年から20年にかけて30%減少(140万→100万)しているのに、

徳島県だけが増加している(2.5万→3.4万)。




「鳴門金時」人気だろうとは思うけど、

それを裏付ける資料は見つからず。




ちなみに、

東京都中央市場でのさつまいもの価格推移(平均キロ200~300円前後)を調べると、

徳島県産は比較的高価格(キロ400円前後)で取引されていることが判明。




ベジ探 (独立行政法人農畜産業振興機構)

https://vegetan.alic.go.jp/sch7.do#




まぁ、

市場によって産地が大きく変わってくるんだが。






市場シェアと出回り時期 (大阪市中央卸売市場)
http://www.shijou.city.osaka.jp/sikyoportal/?page_id=961




ところが、

徳島県産の価格を上回る産地がありました。




キロ500円前後で推移する石川県産。




どうやら「五郎島金時」というブランドが人気らしい。




ブランド産地

  • 鹿児島県 - 知覧紅(ちらんべに)・安納芋(あんのういも)
  • 徳島県 - 鳴門金時(なるときんとき)
    石川県 - 五郎島金時(ごろうじまきんとき・加賀野菜)

サツマイモ (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%84%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%A2

 五郎島金時は、高系14号の派生品種で、強粉質系のさつまいもである。
 当地区のさつまいもは、食味が良いとして地元はもとより首都圏でも評価が高いが、美味しいと言われるのには、2つの要因が上げられる。

「五郎島金時」の生産と流通について (農業振興部担い手支援課長・萬谷一彦/石川県県央農林総合事務所)
http://www.tokusanshubyo.or.jp/jouhoushi06/j06-17.pdf





生産性は低いらしいけど、

ブランド化が進めば、

農家の生産意欲も高まり作付面積も増えていくだろう。




で、

平成2年から20年までの30%の減少といっても、

もちろん一律に減ったわけではない。




生産量の7割を占める鹿児島、茨城、千葉がそれぞれ20%減、

第4位の宮崎が10%減と、

上位生産県の減少率が小さかったことから、

産地の集中化が進んだことがわかる。




静岡県、愛知県、岐阜県、沖縄県などは半減した。




石川県は、大健闘の横ばい(0.5%減)。




ブランドの威力なんだろうね。




さらにおもしろいのは、

産地ごとでも、さつまいもの用途が大きく異なること。




kansyogazo.png


ホーム > 生産 > 特産 > 特産農作物の動向 >【かんしょの動向】 (関東農政局)
http://www.maff.go.jp/kanto/seisan/engei/tokusan/sanchi/attach/pdf/index-4.pdf





鹿児島の焼酎はわかるんだけど、

同じ九州でも熊本はそうじゃないらしい。





原料



日本の主食、お米を使ったぜいたくな焼酎。うまい料理の引き立て役。



球磨焼酎・文化 (球磨焼酎酒造組合)
http://jp.kumashochu.or.jp/page0100.html








「日本人を考える」でも、

歴史人口学の速水融くんとの対談で、

さつまいもネタがあった(pp116-118)。





宮本常一『日本人を考える』 2018年09月15日 (このブログの記事)

http://syotogen.seesaa.net/article/458873961.html





関東では間食になったけれども、

関西では主食だったとか。




もっとも、

海に近いところでは食べられるけれども、

内陸部へ行くと栽培できるのに作っていない。




その理由として考えられるのは、

さつまいもを食べると胸焼けがするから、

塩分を摂りやすい地域でだけ食べていたのではないか、と。




これを調べてみようと思ったんだけど、

海に近いとか遠いとかなんてデータは見つからない。




Wikipediaでは、

西日本で主食化が起こったとは書いてある。





近世後期において、九州、四国を中心とした日本の西南地域ではサツマイモの日常食材化が進み、人口増加率も全国平均を大きく上回っている。
風害や干害に強く人口支持力の高いサツマイモは、コメの売却で利益を得る藩にとっても都合の良い作物だった。

サツマイモ (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%83%84%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%A2





というか、

そもそも、さつまいもが胸焼けを起こすのか?




宮本くんといえども、

素人医学を講じている可能性があるので、

そっちから調べてみる。





宮本くんを引用する人文系研究者も、

言及していた。





無数の人々にあの「胸焼け」をもたらしたことは宮本の本のなかではあまり触れられていないし、そもそも広く知られていないだろう。

これまで日本人を最も飢えから救った食べ物!? そのスゴさを見直す さつまいもの胸焼けとぬくもり 2017.1.29 (藤原辰史・京都大学人文科学研究所准教授/現代ビジネス)
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50736?page=3





再び、日本いも類研究会から引用する。





そして、腸内で消化しきれなかったでん粉の断片は吸収されずに腸内細菌の栄養源となり、そこで分解され腸内ガスが発生します。たくさん食べるとゲップや胸やけ、そしてガスが出たりするのはこのせいです。

ⅩⅠ さつまいもの栄養と食文化 (日本いも類研究会)
http://www.jrt.gr.jp/smini/smini011.html




医師でも。




また、野菜でもかぼちゃやさつまいも、柑橘類などは胸焼けを起こしやすいと言われています。一般的にカロリーの高いものは胸焼けを起こしやすそうですね。

逆流性食道炎(胃食道逆流症における生活習慣の改善) (内科、内視鏡のTKクリニック)
http://www.kurokawa-iin.com/eso3.htm




似たようなフレーズが・・・。




野菜でも、かぼちゃやさつまいも、柑橘類なども胸焼けを起こしやすいと言われています。

胸を痛めている場合ではありません!! 2012年08月12日 (野村循環器内科クリニック)
http://nomura-junkanki.com/201208127402.php




パターン2。




強い香辛料、たまねぎ、かぼちゃ、さつまいも、トマト、柑橘類、チョコレート、ケーキ、甘味和菓子、炭酸飲料、コーヒーなどは胸焼けを起こしやすい。

逆流性食道炎 (みどりの森クリニック)
http://www.midorinomori-c.com/naika/gerd.html

強い香辛料、たまねぎ、かぼちゃ、さつまいも、トマト、柑橘類、チョコレート、ケーキ、甘味和菓子、炭酸飲料、コーヒーなどは胸焼けを起こしやすいです。

逆流性食道炎 (東大沢整形外科内科リハビリテーションクリニック )
https://www.higashiohsawa.jp/medicine/09-2





金満業界なだけに、

やっぱりライターさんが重なったんでしょうな。




あるいは、

参考文献が重なったとか・・・。




検索するとあっちこっちに出てくるということは、

やっぱり症状としてあるんだろうね。




で、胸焼けと塩分との関係。




投稿者の出身地か全く不明だけれども、

質問サイトにこんな書き込みを発見した。





子供の頃、さつまいもを食べた後に胸焼けをしないようにと、必ず煮干しやコンブを食べさせられた記憶があります。

さつまいもと胸焼け 2001/08/19 (質問者:table_1969/教えて!goo)
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/121039.html





しかし、

逆流性食道炎の解説をするクリニックのホームページでは、

原因となる食べ物に「さつまいも」が挙げられていて、

同時に、対策として「塩分を減らせ」と言っているのである。




食塩の取りすぎは逆流を起こし易いので、食卓塩をかけすぎに注意し、塩気の多い魚などは控えることが必要です。

逆流性食道炎について (消化器内科・内科・呼吸器内科・循環器内科 おがた胃腸科内科)
http://www.ogata-ichouka.com/original16.html




ということは、

  • 「さつまいも」と「胸焼け」とは関係ありそうだ。

    • 「さつまいも」と、「胸焼け」が起こる「逆流性食道炎」とも関係ありそうだ。

      • 「逆流性食道炎」の対策として「塩分摂取」はなさそうだ。

         → 宮本くんが間違っていなければ、宮本くんが言ったのは、「逆流性食道炎」についてではなさそうだ。





まぁ、

ほとんど何もわかっていないんですが、

話を整理しないと、筋道がわからなくなる。




で、結局、ここであきらめた。






つかれた。




最後に、

「さつまいも」と「塩分」とが「あの話」で繋がった、

そこのあなた。




その話は、

デマですから。




宮崎県串間市の幸島に棲息する猿の一頭がイモを洗って食べるようになり、同行動を取る猿の数が閾値(ワトソンは仮に100匹としている)を超えたときその行動が群れ全体に広がり、さらに場所を隔てた大分県高崎山の猿の群れでも突然この行動が見られるようになったというストーリーであった。

経緯

だが実際には、初めに報告されていたニホンザルの逸話は創作されたもので、高崎山の猿への伝播の事実が観測されていないことはもちろん、幸島の群全体に伝播したという事実も観測されていない。
ワトソンは河合雅雄の論文によるものとしていたが、この論文にはワトソンが述べたようなことは記述されていない。全くの創作であることをワトソン自身も認めている。
元になった河合の論文の該当部分は、
「幸島でニホンザルの行動観察を行なっていたら、芋を海水で洗って食べる事を覚えた個体が出現し、長期間おこなっていたために、群れの中でそれを真似するものが数頭現れた。」
という程度のものである。

百匹目の猿現象 (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BE%E5%8C%B9%E7%9B%AE%E3%81%AE%E7%8C%BF%E7%8F%BE%E8%B1%A1





もっとも、

この記事は「さつまいもを洗って食べる」ことまでは否定していない。




そりゃ、

サルの味覚もそれぞれで、

うまいと思えばやるだろう。




そうじゃなくて、

テレパシーのようにその方法が広がっていくことがフィクションだと言っている。




もともと、

サルの餌にさつまいも

っていう飼育方法がなかったらしい。




そころが、

この話が広まったことで、

さつまいもを餌として与える施設が増えたらしい。




結果として、

「サル」と「さつまいも」との接点が増えて、

「いもを洗う個体」があちこちで確認されたんじゃないか、と。




恐らく他の地域でもサツマイモを餌として与えていたところはそんなに多くはなかっただろう。ところが幸島でサツマイモを餌として与え好物になることがわかると、他の地域でも餌づけのためにサツマイモを与えるようになる。

■◇■僕のおしゃべり Vol.19 百匹目のサル
http://www.t3.rim.or.jp/~yoji-t/oshaberi/oshaberi019.html





以上、

わからんなりに調べてみた。







posted by hatena at 05:00| Comment(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月28日

第8回 行政改革推進会議




行政改革推進会議(第8回)

議 事 次 第

日 時 平成25年12月20日(金)16:30~16:56

場 所 官邸4階大会議室

1.開 会

2.議 事
独立行政法人改革等

3.議長挨拶

4.閉 会


稲田行政改革担当大臣

  それでは、始めさせていただきます。
 ただいまより、「第8回行政改革推進会議」を開会いたします。
本日は、お忙しい中、お集まりをいただきまして、ありがとうございます。
 
安倍総理は、所用のため、途中から出席させていただきます。
 
なお、本日、秋池議員、渡議員は所用により欠席と伺っておりますが、渡議員からは資料3のとおり意見が提出されております。
 
それでは、議事を始めます。
 
本日の議題は、独立行政法人改革です。
独立行政法人改革につきましては、本会議の重要課題の1つとして検討を開始し、本年6月の会議において中間的整理を行ったところでございます。
 
その後、本年9月、本会議のもとに設けられた独立行政法人改革等に関する分科会において、各省庁・法人からヒアリングを行いながら、中間的整理を踏まえて検討を進め、今般、改革方針を取りまとめていただきましたので、その内容について樫谷分科会長から御説明いただきたいと思います。
 
どうぞよろしくお願いいたします。
 

樫谷分科会長

  独立行政法人改革等に関する分科会の分科会長を務めさせていただいております樫谷でございます。
 私のほうから、お手元にあります資料1、資料2が基本的な方針についての本体でございますが、それに基づきまして、報告書の概要について報告させていただきたいと思います。
 
今回の改革は、独立行政法人を国の政策実施機関として明確に位置づけ、法人の自主的、戦略的な運営や、適切なガバナンスのもとで国民に対する説明責任を果たしつつ、法人の政策実施機能の最大化、政策効果のさらなる発揮を図るとともに、官民の役割分担の明確化、民間能力の活用などによりまして、官の肥大化防止、スリム化を図るという観点、すなわち単なる数の論理ではなくて、効率化を前提とはいたしますけれども、政策効果の発揮の観点から、制度や組織、その制度や組織と車の両輪であります運用のあり方について議論して取りまとめたものであります。
まず、制度でございますが、独立行政法人通則法と運用の見直しにつきまして5点ございます。
 
資料1の1ページの下のほうでございますが、第1に、法人を業務の特性に応じまして、中期目標型、単年度管理型、研究開発型の3分類にそれぞれ分類いたしまして、それぞれ適切なガバナンスを構築すること。
 
第2は、主務大臣による効率的かつ実効性の高い目標・評価の仕組みを導入するということ。
 第3は、監事の機能強化。
主務大臣から法人への是正命令の導入など、ガバナンスの強化を図るということです。
 第4は、経営努力による利益を目的積立金に積み立てやすくするために、予算執行の弾

力化と説明責任、透明性向上のための運用改善を行うということ。
 
第5は、研究開発型の法人につきましては、独立行政法人制度の中に研究開発型の法人の分類を設けて特則を規定するとともに、研究開発型の法人のうち世界トップレベルの成果が期待されております特定の法人につきましては別途の法律により特例を講じることなどの見直しを行うものであります。
 
次に、2ページ目の個々の法人の組織の見直しについてでございます。
 
個々の法人の組織の見直しにつきましては、真に政策実施機能の強化に資する統廃合のみを実施することとしております。
あわせて法人の特性を踏まえたガバナンスの高度化など、制度、運用の見直し、事務・事業の見直しを行うものであります。
さらにあわせて、本分科会では、国自らが事業を行う3つの特別会計及び勘定についても、あり方を検討いたしまして、事業を独立行政法人に移管した上で、特別会計を廃止するなどにより、国の業務をスリム化、効率化することとしております。
 
改革の趣旨の実現についてでございますが、これらの改革の趣旨が真に実現されるかどうかについては、総務省の行政評価、行政監視、主務大臣による評価、第三者機関による点検等を活用して、継続的に検証を行いまして、必要に応じ更なる改革を行うべきとしております。
 
以上が報告書の概要についての説明でございます。
どうかよろしくお願いいたします。


稲田行政改革担当大臣

  樫谷分科会長、ありがとうございます。
 ただいま御説明いただきました本報告書について、御意見をいただきたいと思います。
御発言される方は、お手数ですけれども、ネームプレートを立てていただきますよう、お願いいたします。
 大塚議員、お願いします。
 

大塚議員

  独法が発足して以来、しばらく時間が経っておりますけれどもいわば業務の棚卸しといいますか、独法が本当に目的どおりに運営出来ているかどうか仕事をもう一度全部見直してみることは非常に大事なことだと思いますので、そういう点では、今回の見直しは非常に意義があったのではないかということをまず申し上げたいと思います。
 その上で、今回、特に研究開発法人につきましてどうあるべきかが大変熱心に議論されましたが、これはとりもなおさず、研究開発というものが日本の将来にとっていかに大事かという証左だったと思います。
これまで形はいろいろ議論されましたけれども、成果を最大化することが非常に大事ですので、これからはその中身をさらに詰めていただければと思っております。
 
もう一点だけ申し上げたいと思いますが、資料2でもPDCAサイクルが非常に大事であるということが言われております。
全くそのとおりで、本当の改善が実現されないといけないという意味で、必ずしもこれが最後だということではなく、絶えざる改革を心がけていただきたいと思います。
PDCAサイクルを回すということは、絶えざる改革ということとイコールでもあります。
ぜひそういうことを心がけて、更に効果があるものにしていくこと

が非常に大切なことではないかなと思います。
 
全体としては、大変いい議論ができたのではないかと思っております。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  大塚議員、ありがとうございます。
 それでは、小林議員、お願いいたします。
 

小林議員

  まず、内容につきましては、もちろん異論ございません。
これでいいのではないかと思いますけれども、その中で3点お話を申し上げたいと思います。
 まず、1点目は、今回の改革そのものが攻めの改革であるという思いを明確に対外発信していただきたい。
すなわち、日本を強くし、これからの成長戦略を導くのだという思いをぜひ発していただきたいと思います。
そういう観点では、いろいろな費用を削減するだけではなくて、1ページ目の⑤の研究開発法人の見直しのところに書いておりますけれども、特例もあっていいのではないのかと思います。
これは非常に大事だという事業には、削減一方ではなくて、加増すべき案件もぜひ探して推進してもらったらいいなというのが1点です。
 
2点目は、私も今回いろいろな研究機構などを拝見したのですが、こんなことをやっているのだということに気づいたことが幾つかございました。
ぜひ国民に対する情宣をどんどんやってもらったらいいのではないか。
こういうことを実際やっているのだということをおのおのの法人がきちんと発信する必要があるのではないのかなという感じがいたしました。
 
3点目は、今、大塚議員がおっしゃったことなのですが、やはりPDCAは何としても大事ですから、これで終わりということでは決してなく、将来に向かってPDCAは絶えずやっていく、そういう思いをぜひ共有したい。
そんな思いであります。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 いかがでしょうか。
 田中議員、お願いいたします。
 

田中議員

  田中でございます。
 実は、私が所属しているところが独立行政法人なので、どうかかわろうかといつも悩みながら勉強させていただきました。
 でも、今回、本当に長きにわたりの独法改革でありまして、一職員の立場からいいますと、ヘビの生殺し状態がずっと続いていたというところがあるのですが、やはりこれは長く続くとモチベーションがとにかく全体に下がってくるのは否めなかったところがありますので、集大成をしていただいて、本当によかったというのが第一声であります。
 
その上でですが、2つ申し上げたいと思います。
 1つは、研究開発型法人でありますが、これは調整の段階でも苦労されたと私は認識しているのです。
他方で、例えば私の同僚にとか、大学関係者にこれを説明しようとした時

に、結構複雑で理解してもらうのに手間取りました。
複雑になるということは、おそらく、その運営面において行政コストが増すかもしれない。
あるいはわかりにくいかもしれないというところがありまして、先ほどPDCAということがありましたけれども、不断に見直していく、体制を見直していく必要があるのではないかというのが、第1点目であります。

2点目は、生産性の視点であります。
この会議は2月27日に第1回の会議があり、複数の委員の先生方から無駄の撲滅に加えて、生産性の視点を加えたらどうかという提案がありました。
その視点でこの独法制度の歴史を振り返りますと、国が直接担わなくても、民間が担わず、でも、ないと社会的に支障を来たすパブリックの領域をどうやって経営したらいいのかという問いに対する1つの答えが独法という制度だったと思います。
そのように考えますと、今、この領域というのはどう考えても、もっと増えていくと思うのです。
そうであれば、99年から施行されたこの制度でなぜ自立的に経営をする、イノベイティブな成功モデルが生まれてこないのかという視点でも考えていく必要があるのではないかと思います。
ただ、これは今までのいろいろなプロセスを落ち着かせないと考えることができなかったですから、ようやくそのスタートラインに立ったのではないかなと思いますし、この点を積極的に検討してゆくことが本会議の先生方の御指摘にも対応していくことではないかと思います。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 今、田中議員から御指摘がありました研究開発法人に関しては、非常に大きな議論がありまして、最終的に、後ほど総務大臣からもお話があるかと思いますが、独法の中で、そしてこれからの別法というか、独法の中で非常に世界的にエリートというか、そういうものについて適用する特例というものもつくっていくということで、その中身についてはこれからになろうかと思いますが、やはり横串を刺すという意味での通則法の適用ということが原則になっておりますので、そういうことを前提に、これからも不断の改革ということがありましたけれども、見ていかなければならないし、そういう意味での生産性という問題も課題になるかなと思います。
 
土居先生、お願いいたします。
 

土居議員

  これまで私も分科会の委員として議論にかかわらせていただきまして、独立行政法人改革の集大成として、この行政法人改革推進会議でいよいよ取りまとめられる方向になったことは大変喜ばしいことだと思います。
 特に、国民の中で独立行政法人に対するイメージはあまりよくない。
何か無駄遣いをしているのではないかとか、自分たちに我田引水的な取組をしているのではないかとか、そういうように見られがちなのですが、ぜひこの機会に独立行政法人は生まれ変わる、イメージを刷新するという、そういう取組としてこの独法改革をぜひ内閣としても国民に積極的にPRしていただきたいと思います。
 
分科会長から御説明がありましたように、独法改革の内容が取りまとめられて、これに

よってイメージが一新することに、非常に寄与するものだと思いますので、ガバナンスを強化して、今までのようなルーズなことはやりませんと。
業務の特性に合わせた形で法人を見直すことになるので、その法人のミッションをよりよく発揮できるようになりますということで、国民もせっかく払った税金がより生かされる形で独法にも使われることになることを感じとっていただければ、今までは独法に批判的だった人も、もっと仕事を頑張ってほしいと言ってもらえるような、そういう存在に変わってくるのではないかと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 では、森田議員、お願いします。
 

森田議員

  4点ほど簡単にお話をさせていただきたいと思います。
 私自身、この独立行政法人制度もそうですけれども、何回かこの改革のお手伝いもさせていただきましたけれども、非常に多様な組織が対象になっている割には一律の制度であったというのがこれまでの姿だと思います。
そこで、ミスマッチといいましょうか、幾つかの問題点が出てきたのは、今回は非常にきめ細かく議論されて、類型に分けるという形で、大変よくなったと思っております。
これが1点目でございます。
 
2点目は、独立行政法人について、大臣のガバナンスをきかせるということが随分強調されていると思います。
これは最初の目標の指示と、そして評価について、この部分は非常に重要だと思っておりますけれども、そもそもこの独立行政法人制度のもとにありましたイギリスのエージェンシー制度の場合には、1つにはそうした政治的な指示の明確化、評価というものと、もう一つは、効率性の原理を適用するために政治との関係をきちっとするというところもあったと思います。
その辺につきましては、これからの運用の問題だと思いますけれども、大臣のしっかりとしたガバナンスというものを聞かせていただきたいと思っております。
 
3点目は、研究開発法人でございまして、これは私自身も別のところでお手伝いをさせていただきましたけれども、基本的にこのスキームを考えるときにはどのような組織のあり方、組織のマネジメントのあり方がイノベーションを生み出すかという観点から、組織の設計、運用をしていく必要があるのではないかと思っておりまして、今回の場合には、その意味でいいますと、そうした要素が盛り込まれたと思っておりますけれども、これまではどうも少し枠組みにこだわり過ぎたかなという形で、そこで能力を持った研究者の人たちがどのような形でインセンティブを与えられるか。
そこのところをしっかりとぜひこれから詰めていく段階では御検討いただきたいと思います。
 
4点目は、これまでも申し上げましたけれども、先ほどから出ておりますPDCAサイクルですが、やはりこれはポイントになりますのは、Pをしっかりつくることだと思いますので、そこを改めて申し上げたいと思います。
 
以上でございます。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 
畠中議員、お願いいたします。
 

畠中議員

  私は、第1ワーキング・グループに属しておりまして、研究開発法人についてはいろいろ御議論があったところであります。
結論としてこうなったというのは、稲田大臣、新藤総務大臣の大変な御努力ではなかったかと思います。
ぜひこの制度を世界トップレベルの成果を発揮していただくように努力してもらって、またまた別の法律でということを言わないようにしていただければと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 新藤総務大臣、いかがでしょうか。
 

新藤総務大臣

  先生方、大変ありがとうございました。
 独立行政法人制度を所管しておりますのが総務省でございますから、その大臣として、まずは先生方のすばらしい取りまとめに御礼を申し上げたいと存じます。
 我々とすれば、独法制度を本来の趣旨に沿った改革を今回しなくてはいけないのだと。
やはりばらばらに存在していたものと独法としてまとめた、これは1つの意味があったと思います。
それを経て、今度は業務の特性に応じて類型化をする。
その中で最大効率、最大成果を求めることにしていただいたわけでございますし、これを具体的な形につくれたことがとてもよかったと思います。
 
我々はかつてここで御提案をさせていただきましたが、何と言いましても、今、横串過ぎてしまっていて、一律の管理の中で主務大臣との関係がやや弱くなっている。
また、目標設定が弱まっているということでございましたから、ミッションの明確化とガバナンスの強化をするということです。
 
それと、先生方から何度も御指摘をいただきましたPDCAをしっかり回す。
特にPの時点でチェックが弱いと、だめなものを幾ら頑張ったところでだめなわけでございますから、PDCAサイクルが機能する目標管理、評価をしていきたいと思います。
そして、インセンティブが機能する仕組みということでございます。
この改革の方向性をしっかり表現する制度設計にさせていただきたいと思います。
 
特に、研究開発法人につきましては大議論がございました。
事務方の議論を経て、おさまらずに、これは稲田大臣と、あと関係の2人の大臣がいて、私を含め4人で最後はやったわけであります。
しかし、それぞれの、要は目的達成を重視しようと。
手段を重視するのではなくて目的達成が重要なわけでありますから、研究開発の最大化、かつその中でも特別の更にトップを目指す、そういう類型も1つつくって、これを通則法の中でありますが、別法をつくる。
この中で目的を達成するようにしようではないかと、こういうところに落ちついたわけであります。
結果、これはつくるのは極力少数だということになりますし、決して、1軍、2軍にならないように、すばらしいそれぞれの目的がある中で、特別に別途の目的を持たせるという仕分けにしていかなくてはいけないのだと思っております。

いずれにしても、硬直的な運用というのが最大の問題でありましたから、そこを柔軟にして、かつ初期の目標設定、目的の成果を得られるようにしっかりと我々は取り組んでま

いりますので、引き続きの御指導をお願いしたいと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ほかに御意見ございますでしょうか。
 加藤議員、お願いします。
 

加藤議員

  私は今回の件では余りお役には立てなかったのですが、一言、せっかく改革をやりましたので、改革のPDCAのほうも行った方がよいと思います。
今後、いろいろな結果が出てくると思いますので、どういう目的で改革を行ったのかを振り返って、それと違う結果や事実が出てきた時にはなぜかを考えた上で進められるとよろしいかと思います。
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 先ほど分科会長がおっしゃったように、通則法の問題と組織の問題、第1次安倍内閣からの改革の集大成ということで、民主党政権では独法そのものをやめるという話だったものを本来の姿に戻す。
そして組織の見直しに関しては数合わせで、半分にしたからとか、数を幾つにしたからという議論ではなくて、本来の機能を強化していただくということで、今日、御議論になった研究開発法人についても両方の意見を取り入れたいい形になったと思いますし、今日の御議論にはありませんでしたけれども、URについても非常に現実的な線でまとめることができまして、田中議員にも加わっていただいたのですけれども、最後のときには国交省も、またURの理事長もこれでいきましょうという一体感が出ましたので、改革を進める、理論よりも実行、行動だと思っておりますので、一歩一歩進めながら、そしてそれを不断の見直しの改革として進めてまいりたいと思います。
 
それでは、独立行政法人改革等に関する分科会の報告書について、本会議として御了承いただいたものといたしましてよろしいでしょうか。
 (「異議なし」と声あり)

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 それでは、最後に安倍総理から御発言をいただきたいと思います。
プレスが入室いたしますので、少々お待ちいただけますでしょうか。
 (プレス入室)

稲田行政改革担当大臣

  安倍総理、それでは、よろしくお願いいたします。
 

安倍内閣総理大臣

  皆様、本日も大変有意義な御議論をいただいたことを御礼申し上げます。
 独立行政法人においては、スリム化を図りつつ、国民の皆様に質の高い行政サービスをお届けすることが重要であります。
 このため、本日取りまとめていただいた方針に沿って、まず、業務に応じて法人を3分類し、それぞれに適したガバナンスの仕組みを用意する。
そして、自己収入の拡大や経費節減へのインセンティブを高める一方で、予算執行の透明性を向上する。
さらには、国際競争力を高めるため、研究開発法人が優秀な人材を確保しやすくするようにするなど、制度・運用の弾力化を図るといった観点から、抜本的に見直しを行います。
 

また、「攻めの農業の推進」のために4法人を統合するなど、真に政策を実施する機能を高めることができるよう、単なる数合わせではない統廃合を実施します。
 
これは第1次安倍内閣以来の独立行政法人改革の集大成と言えるものであります。
委員各位の御尽力に感謝申し上げます。
政府としても、次期通常国会に改正法案を提出するなど、スピード感を持って実行に移してまいります。
 
来年も行政改革をしっかりと前に進めてまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
 プレスの方はここで御退出をお願いいたします。
 (プレス退室)

稲田行政改革担当大臣

  以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。
 皆様、どうもありがとうございました。
 




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2018年09月27日

第7回 行政改革推進会議




行政改革推進会議(第7回)

議 事 次 第

日 時 平成25年11月20日(水)17:00~17:30

場 所 官邸2階小ホール

1.開 会

2.議 事
行政事業レビュー

3.議長挨拶

4.閉 会


稲田行政改革担当大臣

  ただいまより、「第7回行政改革推進会議」を開会いたします。

本日は、お忙しい中、お集まりを頂き、ありがとうございます。
 安倍総理は、所用のため、途中から出席させていただきます。
 それでは、議事を始めます。
本日の議題は「行政事業レビュー」です。
先週11月13日
から15日にかけて秋のレビューを開催し、公開の場で、外部の有識者と各府省の担当者が
議論することにより、55の事業について検証を行いました。
 その検証の結果を取りまとめたものがお手元の資料になります。
 それでは、歳出改革ワーキンググループ座長である土居議員より、資料を御説明いただ
きます。
 

土居議員

  それでは、秋のレビューの御説明をさせていただきます。
 秋のレビューでは、行政事業レビューの本旨でありますPDCAサイクルの徹底のため、特に「①事業目的の明確性」「②事業の有効性・実効性」「③より低コストな手法への改善可能性」の3つの視点から議論が行われました。
 
当日の議論は全てインターネットで中継されまして、全日程で約23万人の視聴があり、コメントは約2万3,000件にも及びました。
 また、番組終了後のアンケートでは、良かったという方が約85%、うち、とても良いとおっしゃった方が65%に達するという、相当程度好意的な御評価をいただきました。
 
結果につきましては、お手元の資料を御参照いただきたいと思いますけれども、外部有識者より全てのテーマについて、相当厳しいものを含め、事業に関する今後の改善の方向性などが指摘されました。
 
時間の都合もございますので、全てのテーマについての説明は割愛させていただきますけれども、私自身も参加させていただきましたセッションにおける議論を、幾つか御紹介させていただきたいと思います。
 
お手元の資料の6ページを御覧いただきたいと思います。
「『秋のレビュー』のとりまとめ(案)」という資料でございます。
 
6ページには、「地球温暖化防止等に関する事業」のうち「チャレンジ25地域づくりモデル事業」についての結果を記しております。
この事業は温室効果ガス削減に効果的な先進的対策の検証を行うというものでありますけれども、いわゆる雪冷房という事業などが含まれており、支援対象の選択が厳密に行われているとは言いがたく、効果の検証方法を確立し、支援対象を限定すべきではないかと指摘がなされたところであります。
 
7ページの「ICTを活用した教育学習の振興に関する事業」ですけれども、これはタブレット型パソコンや電子黒板を活用し、小中学校などで実証を行うという事業なのですが、少ない予算でより効率を上げるという発想に欠けており、ICTの普及や費用対効果、教育内容の改革に向けた具体的なビジョン、工程表を示すべきではないか、実証数も絞り込むべきではないかという指摘がなされました。
 

9ページは「医療サービスの機能の充実と重点化・効率化」と題したものでありますけれども、これは医療費の仕組み、すなわち診療報酬改定のプロセスが国民に十分に伝えられているかどうかということを問うという形で議論をいたしました。
 
有識者からは、国民に十分伝えられているとは言いがたく「医療費負担者である国民の声をこれまで以上に反映できる枠組みを構築すべきではないか」という指摘がなされました。
 
また、診療報酬改定で本体と薬価がそれぞれ独立して決定できるよう、意思決定過程を改めるとともに、薬価の下落分を診療報酬本体の引上げの原資に使うということは、合理性に欠くのでやめるべきではないかという指摘がなされたところであります。
 
その下の「後発医薬品の使用促進等」という項目でありますけれども、後発医薬品の使用促進のロードマップにおける目標値の引き上げや達成時期の前倒しを行い、先発薬と後発薬の双方の薬価を下げることを通じて、国民の医療費の負担を下げるということを最重要課題として取り組む必要があるという指摘をいただきました。
 
歳出改革ワーキンググループといたしましては、資料にある秋のレビューの指摘事項について、行政改革推進会議として取りまとめていただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
 私もこの教育のICT化に関する事業の現地視察を行い、秋のレビューの当日の議論も傍聴させていただきました。
現場の実態を踏まえた有益な指摘がなされ、非常に有意義な議論になっていたと思います。
 
それでは、ただいま土居議員に御説明いただいた、秋のレビューの検証結果について、今後のフォローアップの方法などに御意見があれば、頂きたいと思います。
 御発言される方は、お手数ですがネームプレートを立てていただくよう、お願いいたします。
 小林議員、お願いします。
 

小林議員

  私自身、このレビュー自身には立ち会わなかったのですけれども、立ち会った方からいろいろ承って感じましたのは、まず、非常に緊張感が出て良かったなと感じました。
 我々一般の民間企業では、例えば社外役員というものがいるわけです。
社外役員は、企業あるいは組織の常識と全然違ったアプローチをしてくるのです。
だから、その意味で今回の非常に機能的にワークできたのではないかなという感じが致します。
 
ただ、大事なのは、これをきちんとPDCAで本当に次をフォローしていくということでありまして、これは1回やってとりあえずはできましたというので、これで終わってもらっては困るということです。
 

それと、幾つか拝見していますと、Pそのものが非常にクエスチョンなものがあるわけです。
Pがクエスチョンですと、PDCAをやってもまた同じようなどろどろしたことになってしまいますので、入り口をきちんと押さえていくということをしておかないと、今後もいろいろな問題がつきまとうのではないかと思いますので、ぜひ入口、プランそのものに関する検証をきちんとする、走ったときにはPDCAを必ず回していくということでやっていただければ、非常にいいのではないかと思います。
 
少なくとも今回はパフォーマンス的なことは全くなくて、実質的にやっていただいたのが非常によかったと感じました。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  今、御指摘いただいたように、今回は政務が全く入らずに、各府省の人と行革チームの有識者とが、本当に真剣な緊張感のある議論をなさったと思います。
 御指摘のように、最初からそもそもこれは一体どういうつもりでこの事業があるのかなと疑問を感じるものもあったところでございます。
 他に御意見はいかがでしょうか。
麻生副総理、お願いします。
 

麻生副総理

  先ほど土居座長からの話で相当な厳しい指摘もあったように、いわゆる歳出の側から見ますと、これは重点化、効率化を進めていかねばならぬというのが私どもの立場なのですが、有益な御指摘をいただいたと思って大変感謝を申し上げるところです。
財務省としても、この行革の事務局と連携しながら、今回の取りまとめで指摘をされましたいろいろな部分に対しまして、各省とともに検討を行ってその結果を26年度のいわゆる予算に反映をさせてまいりたいと考えております。
 

稲田行政改革担当大臣

  麻生副総理、ありがとうございます。
 本当に、派手さはないけれども、実務的な議論ができたと思います。
しかし、それを予算に反映できるか、また次のPDCAサイクルに回していけるかというところを見ていると思いますので、しっかり取り組まなくてはいけないと思います。
 
秋池議員、よろしくお願いします。
 

秋池議員

  私もこのレビューはとても良かったと思っております。
 思いますのは、今回このように指摘されたことについて、指摘されっ放しで終わるのではなくて、きちんとアクション・プランを作って、それを誰かがモニタリングしていくということが、PDCAサイクルと口では言うのですけれども、言ったまま何年も経ってしまうということも起こりかねませんので、そこが非常に重要かと思っております。
 
ですので、来年もこのようなレビューというのはあるのだと思うのですけれども、ものによっては、もう一度来年見てみて改善されているかを確認するでありますとか、レビューの場でないにしても、そのようなことが行われるといいのかと思います。
 
小林議員もおっしゃいましたが、プランそのものというところが問われているものも幾つかあるわけで、曖昧に始めることによって情勢に応じて取り組みやすくなるということ

はもちろんあろうかと思うのですけれども、そこはプラン自体もどう確立されていっているのかという過程が確認されることも重要と思いますし、事業によってはどこまでいったら終わらせるのだということを決めておくことも、重要なのかなと考えております。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 畠中先生、よろしくお願いします。
 

畠中議員

  先ほど小林議員と秋池議員からも御指摘があった、P、プランの段階が問題だという。
これは前の会議でも森田先生などからも御指摘があったので、私もそのとおりだと思うのですけれども、これは構造的な問題がありまして、というのは、役所というのはパーキンソンの法則ではないけれども、権限拡大の傾向にあるのです。
 これは必ずしも悪いことではないと思うのです。
それが国民のためになるならば、必ずしも悪いことではないのですけれども、これが行き過ぎますと、国民のためというのが二の次になって、省のため、予算獲得が第一目的になる可能性があるのです。
そうすると、とにかく予算を獲得する、その予算を獲得した人が評価されるという傾向になりがちなのです。
全ての省庁がそうだと言っているわけではないですよ。
 
だから、こういう事業レビューで指摘し、これを必ずPの段階に反映するという仕組みが大事で、それによってお役人の意識の改革もされるのではないかと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 まさしく行政の縦割りの弊害ということも、このPの段階で甘い事業をプランしてしまうということもあるのかなと思います。
 森田議員、お願いします。
 

森田議員

  既にほかの先生方がおっしゃいましたけれども、やはり私自身もPが非常に重要だということは前回も申し上げましたし、そのとおりだと思います。
 その場合に、ある問題を解決する、ある目的のためにその手段が何故に一番合理的なのかということですね。
その辺は今、政策分析とかいろいろとそういう学術的な方法でも研究が進んでいるところだと思います。
もちろん、まだ不十分なものではありますけれども、そうしたものを活用して、できれば、公共事業の一部で始まっていますけれども、事前に果たしてこれは本当に効果があるのか、教育にICTを使う場合に、こういう方法でやったら本当に教育効果があるのかとか、そうした農業を育成するためにはいろいろそういう方法があるのか、そうした意味での検証というのを事前にやっていくことも重要ではないかなと思っています。
 
やった後うまくいかなかったというレビューもきちんとやっていく必要があると思いますが、もう一つは、これはずっと拝見しておりまして、私も実は参加できなかったのですけれども、いろいろと活発に行われたと聞いておりますが、かなり厳しい意見が並んでいるわけですけれども、中にはこれはすごくよくやっているというものはなかったのでしょうか。
いわゆるグッドプラクティスのようなものを1つ示して、それで皆さんをエンカレッジするというのも、レビューの一つのあり方かなという気が致します。
 

以上でございます。
 

稲田行政改革担当大臣

  本当におっしゃるとおりだと思いますし、前回小林議員からもそういういい取り組みを褒めるとか、インセンティブを働かせるというのがありましたが、私が見た限りではそういうものはなかったのです。
 土居先生、お願いします。
 

土居議員

  少しだけ付け加えさせていただきますと、有識者の側で参加させていただいた立場としては、よいことは既に各省が御説明になるのです。
なので、極端に言えば、あえてよく頑張った、もちろんよく頑張っているけれどもという言い方をされる参加者もいらっしゃって、そこは褒めてはいるつもりではあるのですが、ただ、それ以上にもう少し工夫すればもっとうまくできるのにという、能力があるからこそ頑張ってほしいという思いもあっておっしゃった方も、有識者の中には多分いらっしゃったのではないか。
 なので、例えば、ICTの先ほど御紹介した話でも、実際コンピューターなどの環境を教室に整えるということで学習の理解度が高まったとか、そういうところは、これはまさに実際に成果が出ているところについては、それはそれとして評価をする。
 
ただ、実際に取りまとめの中には評価するとまでは書いていませんけれども、評価した上で、これを違う形で引き続きお続けになるという御提案を各省からなさったものですから、お続けになるということであれば、もっとジャンプアップ、レベルアップしてやっていただきたい。
では、そのときに何が必要なのだという議論の展開だったかな。
 
これで一旦終了いたします、これで事業は終わりますけれども、いかがだったでしょうかということだとすると、悪いところは悪いかもしれないけれども、いいところはいいで頑張りましたという評価はできたかもしれないという気はいたします。
 

稲田行政改革担当大臣

  ほかに御意見はございますでしょうか。
 どうもありがとうございます。
それでは、秋の行政事業レビューの検証結果については、お手元の資料を本会議として御了承いただいたものとさせていただきます。
本日頂いた御意見を含め、秋のレビューの検証結果が年末の予算編成に活用されるよう、各府省の取組状況をフォローアップしてまいります。
 
まずは、明後日22日、杉田副長官のもと、全府省の官房長など行政事業レビューの事務方の責任者を招集し、秋のレビューの検証結果を踏まえた具体的な改善を求める予定でおります。
 
その上で、秋のレビューから約1カ月後の12月10日までに、各府省の事業の改善の方向性について、事務局に報告していただき、報告内容が取りまとめ結果に沿っていない場合には、説明をしっかりと求めていきたいと思います。
 
また、今回、議論を傍聴して改めて感じたことですが、PDCAサイクルを徹底させるためには、公務員一人一人が自分が関わる事業はどのような問題を解決しようとしているのか、どこまで目標を達成したと評価しているのか、より良くするには何を改善したらよいのか

といった、当たり前のことを当たり前に考えられるように、予算に対する公務員の意識改革や政策立案能力の底上げを図ることが重要だと思います。
 
このため、若手職員の研修や、効果を出している優れた取組を積極的に評価する方法について検討していきたいと思います。
また、公務員制度改革担当大臣としても、内閣人事局を設置し、幹部候補育成課程を設けて職員の研修を強化し、能力実績主義の人事を徹底するべく法案を国会に提出しているところです。
レビューに当たる職員の能力を高めるためにも、法案の早期成立を目指してまいりたいと思っております。
 
先ほど麻生副総理からも御発言がございましたように、行政事業レビューの取組を通してPDCAサイクルの徹底、無駄の削減にしっかりと取り組んでいきたいと思っています。
 また、秋のレビューの取りまとめ結果がしっかりと反映されるようフォローしてまいります。
 最後に、安倍総理から御発言を頂きたいと思いますが、プレスが入室いたしますので、少々お待ちいただきたいと思います。
 (プレス入室)

稲田行政改革担当大臣

  安倍総理、よろしくお願いします。
 

安倍内閣総理大臣

  安倍内閣は、経済再生と財政健全化を同時に達成するとともに、社会保障を安定させ、次世代にしっかりと引き渡すため、来年4月に消費税を引き上げるという厳しい決断をいたしました。
 国民の皆様に御負担をいただく税金が無駄な歳出や、優先順位が低い施策に使われるといった批判は、絶対に招かないようにしていかなければなりません。
 
今回、各府省の事業を外部の有識者の目線で厳しくチェックをする「秋のレビュー」を、公開の場で行いました。
その中では改善の方向に向けた厳しい御指摘も頂き、極めて有意義な議論が行われました。
取りまとめに御協力をいただいた民間有識者の皆様に、改めて御礼を申し上げます。
取りまとめられた検証結果をもとに、内閣として確実に改善に努めてまいります。
 
まずは、各府省と財務省で一つ一つ具体的な改善に向けた検討を進め、行政改革担当大臣にもフォローをしてもらい、しっかりと来年度予算に反映をしてまいります。
 
こうした取組を通じて、政府全体として引き続き無駄の撲滅を徹底してまいります。
委員の皆様におかれましては、今後とも御協力を頂きますようによろしくお願いを申し上げます。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
 プレスの方は、ここで退室してください。
 (プレス退室)

稲田行政改革担当大臣

  以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。
どうもありがとうございます。
 



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2018年09月26日

第6回 行政改革推進会議




注.第4回、第5回は(※持ち回り開催)のため、議事録なし。



行政改革推進会議(第6回)
議 事 次 第

日 時 平成25年11月6日(水)16:50~17:32
場 所 官邸4階大会議室

1.開 会

2.議 事
(1)行政事業レビュー
(2)国・行政のあり方に関する懇談会の開催

3.議長挨拶

4.閉 会


稲田行政改革担当大臣

  ただいまより、「第6回行政改革推進会議」を開会いたします。

本日は、お忙しい中、お集まりをいただきまして誠にありがとうございます。
 
安倍総理は、所用のため、途中から出席させていただきます。
 
それでは、議事を始めます。
本日の議題は「行政事業レビュー」と「国・行政のあり方に関する懇談会の開催」についての2つです。
 
初めに、行政事業レビューの進め方について取り上げ、秋の進め方について取りまとめていただきたいと思います。
 
それでは、行政改革推進会議歳出改革ワーキンググループ座長である土居議員より、先般10月15日の行政改革推進会議有識者議員懇談会において、民間議員の皆様に取りまとめていただいた資料1について、御説明いただきます。
 

土居議員

  土居でございます。
 資料1に沿いまして「秋の行政事業レビューの進め方について」を御説明させていただきたいと思います。
 行政事業レビューは、今年4月の閣議決定及び行政改革推進会議において取りまとめられた実施要領に基づき各府省において実施されまして、先般、平成24年度実施事業及び新規事業も含め約6,000事業のレビューシートが公表されました。
 
今年の行政事業レビューは、外部チェック体制の明確化や外部チェック対象の重点化が行われました。
 
多くは具体的な改善を求めるものになっている一方で、執行状況の点検結果や外部有識者の指摘が的確に概算要求などに反映されていない事業もありまして、事業のPDCAサイクルが徹底されていないと思われるものが見受けられました。
 
加えまして、10月1日に打ち出されました消費税率の引き上げに向け、行政改革は今後も優先課題の一つとして挙げられておりまして、引き続き、行政の無駄の削減に向けた取組を着実に進めていく必要があると考えます。
 
そこで、行政改革推進会議における各府省の取組をチェックするに当たりましては、行政事業レビューの本旨である「PDCAサイクルの徹底」がなされているかどうかをチェックするということを考えるべきではないかと思います。
 
特に、行政改革推進会議で8月に取りまとめられました「行政事業レビューにおける事業の点検・見直しの視点」や今回の行政事業レビューにおける外部有識者の指摘事項を踏まえまして「事業目的の明確性」「事業の有効性・実効性」「より低コストな手法への改善可能性」の3つの視点から、各府省が所管する事業の点検・検証、事業内容の改善がされているか検証を行う必要があるのではないかと考えます。
 
この3つの視点の詳しい内容につきましては、資料1の2枚目に記しておりますので、御覧いただければと思います。
 さらに、事業単位にとどまらず、施策単位や政策・制度との関係も踏まえて、広い視野で検証を行うとともに、好ましい事例は好ましい事例として評価をして各省に普及させて

いくべきではないかと考えます。
 
行政改革推進会議におけるチェックに当たりましては、この会議の下に置かれている歳出改革ワーキンググループの有識者メンバーに御参加いただき、公開の場で外部検証を行ってはどうかと思います。
 
その場で出されました指摘事項を歳出改革ワーキンググループにおいて取りまとめて、行政改革推進会議のほうに御報告するという形で進めることを御検討いただければと存じます。
 
行政改革推進会議のチェックは、今後とも各府省において自律的・継続的に行われるべきPDCAサイクルに取り組む能力を高め、無駄な事業を作り出さない体質を作り上げ、それが定着していくことを目指すべきではないかと存じます。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
 ただいま土居議員に御説明いただいた民間議員の皆様の御意見を踏まえ、秋の行政事業レビューの進め方について、資料2のとおり、私の下で具体的な方法をまとめましたので、事務局より説明させます。
 

藤城次長

  資料2をお開きいただきたいと思います。
 
パラグラフ3の後段の部分でございますが、今月13日から15日の間「秋のレビュー」として、公開の場で外部の有識者と各府省の担当者の参加を得て検証を行うということにいたします。
対象事業及び評価者につきましては、別紙1及び別紙2のとおりでございます。

4番でございますが、秋のレビューにつきましては、次の点に主眼を置いて実施をいたします。
 
「(1)PDCAサイクルの徹底」でございます。
 
裏をおめくりいただきまして「(2)外部性・公開性を活かした『改善策』の議論」ということで、具体的な改善を要する点、今後の改善の方向性を参加者共に考える形で議論を行います。
 
「(3)『秋のレビュー』の指摘事項の予算等への対応」につきましては、公開検証の後、本会議に報告をした上で取りまとめとし、行政改革推進本部事務局でフォローアップを行います。
 
「(4)プレセッションの実施」に関しましては、11月7日の夜に、稲田大臣、世耕副長官、小林議員他の皆様でプレセッションを行います。
 
5番でございます。
 
秋のレビューの対象事業以外の事業で、外部有識者の指摘等が十分に反映されていない
ものがございます。
別紙3を御覧いただきたいと思います。
これらの事業につきましても、書面で通知をし、適切な対応を行うことを求めたいと思っております。
 外部有識者の指摘事項の中には、必ずしも厳格な検証になってもいないものがこれ以外にもございます。
PDCAサイクルが徹底されるように取り組み姿勢の一層の改善を図る必要

があるということでございます。
 以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ただいま事務局が説明した秋の行政事業レビューの進め方は、民間議員の皆様の御意見を踏まえてまとめたものですが、改めて御意見があれば頂きたいと思います。
御発言される方は、お手数ですがネームプレートを立てていただくようお願いをいたします。
 田中議員、お願いします。
 

田中議員

  ありがとうございます。
田中でございます。
 実際に6月の行政事業レビューに参加をさせていただいて、その所感を述べたいと思います。
 実際に参加をして現場を見ていますと、実はお金の使い方だけではなく、根深い問題があるように思います。
 それはどういうことかといえば、やはり事業計画の作り方のまずさであったり、政策立案のまずさというものが連鎖反応を起こして、結果としてお金の使い方に出ている。
 例えば非常に抽象的な目的の政策だと、それがネーミングだけでさまざまな事業がてんこ盛りにされているというケースもありまして、恐らくこれは行政事業レビューのような形で問題を指摘することも大事ですけれども、あわせて政策立案とか事業計画を作るレベルアップが求められているのではないかと思います。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 他に議員の皆様方、いかがでしょうか。
小林議員、いかがですか。
 

小林議員

  ありがとうございます。
 ここに記載のとおりでありまして、やはりPDCAサイクルの徹底というのが肝要であると思います。
 ただ、以前から申し上げていますように、やはり民間というのは結構PDCAサイクルというのは回しやすいのですね。
 少なくとも我々のケースで言いますと、4月に予算をつくりまして、3月が終わったときに予算のレビューをするわけですね。
結果がピシっと分かるわけです。
あるいは定量で分からないところも、例えば人事の部分、法務、総務はどうかということは、非常に定性的に、個々にPDCAサイクルの定義をしているわけです。
 
したがって、前から申し上げていますように、やはり一律という感覚は捨てて、個々の事業に対するPDCAサイクルはこういうやり方でやるのだということを緻密に作らないと、非常に総花的に、例えば計画どおり、予算どおりにお金を使ったらそれでいいのだという発想になるとよくありませんので、事業の性格などをそこまできちんと言及して、1年ごとに、あるいはもっと短期に、あるいは案件によっては長期に、サイクルを個々の事業に併せてやっていくというきめ細かさというのは是非必要だと思います。
 

それと、できればインセンティブを付けていくというやり方ですね。
公務員の場合、なかなか勝手に給料をポンと上げるというのは簡単ではないのでしょうけれども、少なくとも、それこそ大臣賞を出すなど、そういうことも含めてベストプラクティスには何らかの方法で顕彰していくというものがあればいいなという感じはしております。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
渡議員、どうぞ。
 

渡議員

  PDCAサイクルが上手く回らない原因には、それを回す担い手自身の意識にも問題があると思います。
 以前からも申し上げている通り、私はその一番の問題は、やはり各省庁がどこかで省益を優先してしまい、全体最適、すなわち国益本位で物事を考えていないことにあると思います。
また、PDCAサイクルをきちんと回しても回さなくても、結果は同じだという意識にも問題があると思います。
 
私はこうした問題を打破するには2つの方法しかないと考えます。
 
1つは強制力です。
今回の事業レビューについていろいろ見聞きしてみると、いい加減に出したと考えざるを得ないレビューもあります。
例えば、そういったレビューに対しては、その事業に精通した10人程度の有識者が徹底的に再チェックを行い、レビューの不適切な実態が認められた際には、場合によっては、その事業の責任者の評価や給与を下げたり、あるいは左遷させたりといった措置が必要だと思います。
民間ではそういった措置をとっているわけです。
こうした信賞必罰的な措置をとることで他省庁にも強制力を働かせ、意識改革を全体に広めていかなければ、PDCAサイクルをきちんと回せと言っても、各省庁が自発的に無駄の削減に取り組むには限界があるのではないかと思うのです。
 
2つ目は、小林議員がご指摘した通り、やはりインセンティブが足りないのではないかと思います。
 
きちんとやってもやらなくても差がないのでは、なかなか一生懸命にはならないと思いますので、もし省益を越えて全体最適の観点から事業の廃止や見直しなどの改善を図った場合には、その事業を担当する長、あるいは、その部署の方々に、昇格や昇給といった何らかの形で報いることが必要ではないかと思うのです。
 
こうした観点から、昨日、国会に提出された国家公務員制度改革法案は、まさに時宜を得たものであり、強く支持いたします。
公務員制度改革は、これまで何度も国会に提出されながら、全て廃案になってしまったわけですが、今度は4度目でございますので、今度こそ是非、法案を成立させていただきたいと思います。
 
法案の内容についていろいろ批判もあるようですが、一切批判を受け付けない完璧な内容にするのはなかなか難しく時間もかかります。
私の評価としては、7割から9割ぐらいは、必要な改革が今回の法案に反映されているのではないかと思いますし、一歩ずつでも改革を着実に進めることが重要だと思います。
是非、この法案を国会に通していただいて、改革を実現させていただきたいと思います。
 

省庁の垣根を越えて幹部人事を取り仕切る内閣人事局の設置など、この改革を進めることが、縦割りの省益を超えた行政を実現するということに繋がっていくのだと思います。
是非頑張っていただきたいと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  公務員制度改革に対してそういうエールを頂いて、うれしいですね。
 やはりきちんとPDCAサイクルを回した人を登用する。
また、幹部公務員育成過程で、先ほど田中先生がおっしゃったような計画や立案をきちんとできる官僚を、政府一体として育てていくということも重要なのではないでしょうか。
頑張ります。
ありがとうございます。
 
では、大塚議員、お願いします。
 

大塚議員

  まず、PDCAサイクルが回っていないというか、徹底されていないということなのですけれども、恐らくPDCぐらいまではいくのかもしれませんけれども、最後のAが欠けてしまうのですね。
ですから、チェックする場合にも、そのあたりを重点的に見ていくということが必要なのではないかなと思いますし、ややもするとPDCAサイクルを回したことで、これで終わりということになってしまいます。
PDCAサイクルを回すということは目的ではないのですから、結果が出ないと回したことにならないわけです。
ですから、そこのところをやはりきちんと認識をしていく必要があるのではないかなということが一点であります。
 もう一つは、民でできることは民に任せる。
これまでずっと言われてきて、我々もこれは民でできるのではないかと提案するけれども、実際にはなかなか進まないですね。
私はいっそのこと、役所のほうからこれは民でやってほしいというものを5つか6つぐらい出してもらって、それを民でできるかどうかを我々が検討するといった取組をしないと、なかなか進まないのではないかと思いますので、そうしたことも少しお考えになられたらどうかと思います。
 
そして、これは少し失礼なことを申し上げるようでありますけれども、それぞれの官庁の状況をいちばんよく知っている出身の方が、それぞれの省庁に切り込むということをやってもらう必要があるのではないかと思います。
 
もう一つ、今、渡議員が大変お褒めになられた後に、決してけちをつけるわけでもないのですけれども、せっかく作った人事局の中で縦割りにならないようにしていただきたい。
各省の方が来られますから、この中で縦割りになってしまうおそれがある。
これが非常に難しいところです。
内閣の人事局を作るということ自体が大変画期的なことだと私も思います。
問題は、魂を入れないといけないというところであり、ぜひ御留意をいただければと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 今、おっしゃったように、内閣人事局を作っても、その中で縦割りであってはいけないと、今、公務員改革を進めている部局は各省から来ていますが、みんなゼッケンを外して

います。
自分の出身省庁に対して盾突いてでも改革を進めていく、そういう形のイメージで作っていきたいなと思っています。
 
土居議員、お願いします。
 

土居議員

  今、大塚議員がおっしゃったことは私も非常に賛成で、まさに自分の出身の役所の中のことはよく知っているという話で、本来は各大臣の下に会計課長とか予算課長とかという、各省庁の予算を取りまとめて要求するところでうまくゲートキーピングをして、要らない予算があれば省内でそもそも要求する前に無駄をなくすということを取り組んでいただくことが効果的で、まさに春の行政事業レビューというのは、そこを一つの狙いとして、まさに会計課ないし予算課と呼ばれている各省庁の大臣官房にある予算のところで、きちんとレビューをしていただいて、それが予算要求に反映できるようにと考えていたところで、今年の結果を踏まえると、まだまだ力が弱いというか、もっと内部チェックをきちんとやっていただくというところを、次回以降、もっと発揮できる仕組みを作っていくといいのではないかなと思います。
 最後に一つだけ簡単に申し上げると、資料2の別紙1のところで挙げられている事業の中で、例えばいわゆるODAの経済協力に関する事業の外務省のケースですけれども、これは別に外務省がいいとか悪いとかという意味ではなくて、今回レビューに上げるということになっているわけですけれども、例えばイギリスでは、イギリスは評価をするのが好きな国なので、行政府内でいろいろ、できる、できないを問わず一生懸命評価をして、これはよかった、悪かったと内部的にチェックしているということがあったりいたします。
 
ただ、日本の外務省はそこまで厳しくはやっていなくて、総花的なというか、評価については、イギリスほど厳しく是々非々でやるというところまではやってはいらっしゃらないというところなので、諸外国でもし参考になる評価の仕方なり成果目標の掲げ方というものがあれば、そういうものを積極的に活用して各府省で努力していただくということも必要なのかなと思います。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 森田議員、お願いします。
 

森田議員

  既に多くの議員の方がおっしゃっていますけれども、PDCAサイクルというときに問題になりますのは、田中議員が触れられたところとも重なりますけれども、Pがそもそもしっかりしたものでないと、あとがなかなか回らないと思うのですね。
 Pはどういうことかと言いますと、ある問題に対してある政策を実施した時に、なぜそれが課題を解決するかという論理的なプロセスと言いましょうか、そのメカニズムがはっきりしていないで政策をやりますと、一生懸命何かをしたとしてもなかなか成果が出てこない。
これをチェックしてだめだといっても、次のアクションになかなか結び付かないと思います。
 
その意味で言いますと、これはプログラムと言いますけれども、なぜこれをしたら結果

がよくなるのか。
例えばたまたまですけれども、この別紙1の上に「


  

大学の教育研究の

  質の向上に関する事業(グローバル人材育成及び大学改革)」とありますが、私も大学に勤めておりますけれども、大学の教育の質を高めるために一体何が重要な要素なのか。
カリキュラムなのか、施設なのか、あるいは情報の設備なのか、先生の質なのか。
 
それを改善するためにはどうしたらいいのか。
きちんとしたカリキュラムをつくるべきなのか、あるいは施設を強化すべきなのか、あるいは先生のお給料をもっと上げるべきなのか。
個人的には最後のほうがいい気がしますけれども、そこのところはきちんと検証されて選択をするということをしませんと、なかなか後の評価にも結び付いてこないのではないかと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。
 畠中議員、お願いします。
 

畠中議員

  田中議員、今の森田議員、土居議員のお話はすごくもっともなことで、政策段階でしっかりするべきだ、内部チェックもしっかりやるべきだというのはもっともなことだと思いますが、私は行政府内におって余り後ろ向きなことを言うつもりはないのですけれども、しっかりしないのはある程度やむを得ない面もあるのですね。
 というのは、予算要求の仕組みそのものに問題がありまして、要するに、特に補正予算などで新規要求する場合、とにかく最初に枠があって、とにかくそこまで積まなくてはいけない、時間もないということだと、一生懸命しっかり内容面、効果があるかどうか、代替策も含めて検討しろといっても、それはなかなか無理なところがあるのですね。
 
だから、そこを補うためには、土居先生がおっしゃる内部チェックをしっかりやることも大事ですが、こういう行政事業レビューということで、外部チェックをしっかりすることによって、各省が反省する機会というか、これは政策立案の段階からしっかりしないといかぬぞということの動機付けにもなると思うのですね。
 
だから、この行政事業レビューというのは大変重要なことだと私は思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 新藤大臣、お願いします。
 

新藤総務大臣

  私の方は御指摘を頂く方なのでございますが、同じ問題意識を持っております。
 総務省は、この行政事業レビューと、その前提となる行政評価をやらせていただいているわけであります。
 一番問題は、森田先生からも田中先生からも、また、それぞれの先生から頂きましたけれども、何のためにやるのかという政策の目標です。
これが設定されていないままに、個別の事業のどんな効果が得られたのかのところだけで評価しようとすれば、進捗率の高いものはよい評価で、進捗率の悪いものはだめか。
でも進捗率が低くても必要なものはあるはずなのですね。
 

それから、自分の省の中で横串を刺して、他局の施策と絡めることで効果が上がる、もしくは、ほかの省の施策と併せてみて効果が上がるのだという評価の体系を作っていかないと、これは本当の政策の向上になっていかない。
 
ですから、最悪は手段の目的化でございまして、IT社会を実現すると、IT化というのは手段でございます。
IT社会によって何をもたらすかのところをきちんと明確にしようではないかと、手前味噌になりますが、私どもの総務省は、自分たちのミッションというものを5つ掲げて、その中で12項目の柱立てをつくりました。
それに沿って、自分の各局、各課の政策はどこに当たるのかという体系を作ってみようではないかと試行錯誤の最中でございます。
 
ですから、ぜひ御指摘賜って、そのままなのでございますけれども、目標と戦略と手段とをきっちり自覚してもらうことが重要で、そういった中で今度のレビューもぜひやっていただければありがたいなと思っております。
 

稲田行政改革担当大臣

  森田議員、お願いします。
 

森田議員

  今、新藤大臣がおっしゃったとおりなのですけれども、目的と戦略と手段のときに、その戦略、手段においては必ずしも官の中だけでなくて、民間も含めて手段というものを考えていただきたいと思います。
 それだけでございます。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 私もこの行政事業レビュー、非常に重要な取り組みだと思いつつ、春の公開レビューなどを見ておりますと、まだまだ不十分だなと思いますし、この秋の事業レビューでは、今、先生方、また、新藤大臣がおっしゃったように、一体何のためにこれをやっているのかという説明が本当についていない事業もあるのではないか、そういった点もきちんと見てまいりたいと思います。
 
それでは、秋の行政事業レビューの進め方については、本日の御議論を踏まえ、資料2を本会議として御了承いただいたものとさせていただきます。
 
この取りまとめに従い、秋のレビューにおいては、パフォーマンスではなく、事業内容について具体的な改善を要する点や今後の改善の方向性を参加者が共に考える形で議論を行いたいと思っております。
 
来週13日から15日にかけて行うことといたしておりますので、議員の皆様方もお時間があれば、ぜひ会場に足をお運びいただくか、またはインターネット中継を御覧いただければと思います。
 
この件につきまして、麻生副総理から御発言をお願いいたします。
 

麻生副総理

  10月1日の閣議決定でお示ししましたとおり、消費税率の引上げによって国民に負担増を求める際に、各分野の歳出に対する国民の関心は極めて高いという認識を持って、優先順位の低いものに予算が充てられているといった批判を招くことがないよう、政府全体として取り組んでいく必要があります。
予算編成に当たっては、聖域なく、義務

的経費、裁量的経費を通じてきちんと見直しを行っていきたいと思っております。
 
したがいまして、今回の秋のレビューでは、こうした取組の一環として、極めて重要なことなのだと思っておりますので、春に比べて秋の方がやはりよかったな、春の反省を踏まえて秋はさらによくするため、歳出の重点化や効率化につながるようなとりまとめを行っていただきたいと思っておりますので、ぜひよろしくお願い申し上げます。
 
私の方からは以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 それでは、後半の議事に入りたいと思います。
「国・行政のあり方に関する懇談会の開催」について、資料3に沿って御報告いたします。
 行政改革については、現在、当面の3つの課題、無駄の撲滅、独立行政法人改革、特別会計改革を中心に取り組んでいますが、今後は、これらにとどまらず、将来の社会を見据え、その中で国や行政のあり方を検討し、従来の発想の延長にとどまらない、新しい行政の革新の方向性を探りたいと考えております。
 
このため、私の下で、国・行政のあり方に関する懇談会を立ち上げ、先週29日に議論を開始したところでございます。
 
メンバーについては、お手元の資料のとおりですけれども、30代、40代の方々を中心にお集まりをいただき、17名中10名が女性となっております。
 
このような若手や女性を中心としたメンバーで、個人の自立、成長のダイナミズム、最低限度の生活を保障するセーフティーネットなど、将来の我が国の社会のあり方や、その中での行政の役割について、より柔軟かつ自由な発想で御議論いただき、今までの役所的な発想を超えた提案があることを期待しております。
 
初回の懇談会から、早速、率直な意見が活発に交わされ、若い人の感性や社会の見方に接することができ、大変有意義でした。
こうした将来を担う世代の議論が、これからの国や行政のあり方に関する国民的な議論のきっかけ作りになれるよう、進めてまいります。

第1回の懇談会に先立ち、先般10月15日に本会議の民間議員の皆様方からいただいた御意見については、お手元の資料3の別紙3の形で整理し、懇談会で御紹介しましたが、この際、改めて特に御意見などございましたら、お願いをいたします。
 
では、森田議員から感想なども含めてお願いします。
 

森田議員

  この会議にこのメンバーの中で言いますと、田中先生、土居先生と私が入っておりまして、30代、40代ということですけれども、私が入ったことで平均年齢を大分引き上げているところかと思います。
 ただ、お話を聞いておりますと、先ほどの行政事業レビューでもそうですけれども、どちらかといいますと、現実の足元を見て議論をしているところがあるのですが、そうではなくて、少し鳥の目で遠くを見たときに、どういうこれからの社会のあり方があるかということで、いろいろな分野の特に若い方が参加されておりますので、日ごろの足元を見ているときでは出てこない発想の発言がたくさんあったと思います。
 

これから、またどんどん元気のいい発言が出てくると思いますので、それがどういう形でまとめられるのか、これは大臣も大変でございますけれども、それをまとめていくことによって、やはりこれからの新しい日本の方向というのは見出せるのではないかなと思って、私自身は少し上の世代から叱咤激励しろというので参加をさせていただいておりますけれども、そういう役割を果たさせていただきたいと思っております。
楽しみにしております。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 田中議員、お願いします。
 

田中議員

  私も前回参加させていただいたのですが、実は30代、40代でというものに外れてしまうので、発言は控えようと思っていたのですけれども、とにかくそこに参加されている若い人たちの熱気を感じたのですけれども、同時に後ろに座っている若い役人の皆さんもうずうずしているのが、空気を感じたのですね。
 
ですから、どこかで若い役人の方もディスカッションに加わる機会を作っていただけたらなと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  私もそれは本当に感じました。
もっといろいろな人が参加できる、みんな参加されている方が自分たちで意見を集約していこうという熱気に包まれていたと思います。
 土居議員、いかがでしょうか。
 

土居議員

  私も参加させていただいて、私はどちらかというと、30、40代のほうに近いのですけれども、30、40代の特に女性もたくさん加わっておられて、特に印象的だったのは、いい意味でも悪い意味でも、政府に何かをしてもらいたいと思っているわけではないということをかなり強調しておられました。
 
いい意味というのは、自立しているということだと思います。
つまり、このメンバーの方の中でも自分で事業をやったり、いろいろなプロジェクトをやっていらっしゃる方がいらっしゃるので、別に政府に助けてもらいながらやろうということではなくて、自分たちだけでできるという自信も含めてあると思うのですが、悪い意味でいうと、選挙で投票率が低いなどというものにも現れているように、政府は我々に何もしてくれないのだろうという向きもなくはないので、そこをどういう形で関わらせるかですね。
 
30、40代の人たちに政治なり行政の一部のところでうまくコラボレーションできるものがこういう会議でアイデアとして出てくると、それが政治の場でも反映していただければ、いろいろ若い人たちも疎外されているということにはならないので、もっと積極的に関わってくれるのかな。
 
特に思いましたのは、まだ1回しか議論をしていないので、これから深まると期待しているのですけれども、日本には伝統的に自治会とか町会とかそういう組織があるのですが、若い人たちは余り今は関わっていない人が多いという中で、でも、何か一人でいたいというわけではなくて、いろいろな意味で関わりたいとは思っているのだけれども、オフィシ

ャルな組織があってないような感じだし、かといって、自分たちで作るにしては、まだそこまでの広がりがないというもどかしさというのも、この会議の場で出てきた意見としてあったと思います。
 
そういうところをうまく政治が橋渡しできるとなると、おもしろい展開かなと思います。


稲田行政改革担当大臣

  全く同じで、何かをやってもらうのではなくて、自分たちが何かやりたい、そして、今までの概念にとらわれない共同体的なもので公を担っていこうという熱気を非常に感じることができました。
 ほかに御意見はありませんでしょうか。
 渡議員、お願いします。
 

渡議員

  今のお話で、若い方たちにも自助の精神が広がっていると聞いて少し安心したのですが、一方で生活保護受給者数がどんどん増えており、今では200万人を超すといった問題も起こっています。
 これは、働くよりも生活保護を受けたほうが楽だという国民の自助の意識の低下が影響していると思います。
この点、わが国の厳しい財政状況も踏まえ、こうした社会意識を変えていく起爆剤となるような提言を、この若手懇談会から発信していただければと思います。
是非、そういった取り組みをお願いしたいと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ぜひ一度、渡議員も見に来ていただけたらと思います。
 

渡議員

  私はもう80歳に近いから、参加する資格がないのではないですか。
 

稲田行政改革担当大臣

  いえ、お気持ちは30代、40代です。
 ほかには、大塚議員、お願いします。
 

大塚議員

  御提案みたいなものですけれども、非常に限られた方々しか参加できないので、こういった方々がこういう意見を持ってこういうことを言っていますということを、もう少し広く情報発信して、場合によっては他の同じ年代層の方々の考え方を集める工夫をされると、更に何か充実してくるのではないかなという感じもいたします。
 

稲田行政改革担当大臣

  実はこの会議はインターネットフルオープンにしておりまして、見ている方がすぐに意見を寄せて、それをまた紹介できる、新しい試みもやっているところでございます。
どうもありがとうございます。
 大変示唆に富んだ御意見をありがとうございます。
今後、こうした御指摘を念頭に置きながら、議論を進めていきたいと思っています。
今後も行政改革推進会議の皆様に、折に触れて、検討状況をお伝えしたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 
最後に、安倍総理から御発言をいただきたいと思います。
プレスが入室いたしますので、少々お待ちください。
 (プレス入室)

稲田行政改革担当大臣

  安倍総理、よろしくお願いいたします。
 

安倍内閣総理大臣

  行政改革を進めていく上において、無駄の撲滅は極めて重要であり
ます。
 
国民の皆様に御負担をいただく税金が、無駄な歳出や優先順位が低い施策に使われるといった批判を招かないよう、政府全体として改めてしっかりと取り組んでいきたいと思います。
 
本日頂いた御意見を踏まえまして、この行政改革推進会議のもとで各府省の取組を厳しくチェックをし、事業内容の改善を図るため、来週、外部有識者の皆様にも御参加を頂いて、秋のレビューを開催したいと思います。
 
その結果を年末の予算編成にもしっかりと活用し、選択と集中、歳出の効率化を徹底してまいります。
 
また、国・行政のあり方に関する懇談会は、将来の社会のあり方や行政のあり方について御議論をいただくこととしております。
このため、今までにない新たな取り組みといたしましては、先ほど御紹介があったように、30代、40代、さらには女性を中心に人選を行ったということでございますが、今まで政府が作る、こうした懇談会とは少し雰囲気も違うものができているのではないかと思います。
 
さらには、その内容をインターネットで紹介しながら意見も頂く、ここが大変私は重要なのではないかと、このように考えております。
 
稲田大臣の下に、我が国の将来を見据えて、従来の枠組みにとらわれない闊達な議論をしていただきたいと思いますので、よろしくお願いをいたします。
 

稲田行政改革担当大臣

  総理、ありがとうございました。
 プレスの方はここで御退出ください。
 (プレス退室)

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。
どうもありがとうございました。
 



posted by hatena at 05:00| Comment(0) | 官邸・内閣府系の審議会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月25日

第3回 行政改革推進会議




行政改革推進会議(第3回)

議 事 次 第

日 時 平成25年6月5日(水)16:00~16:45

場 所 官邸4階大会議室

1.開 会

2.議 事
(1)特別会計改革
(2)独立行政法人改革
(3)無駄の撲滅

3.議長挨拶

4.閉 会


稲田行政改革担当大臣

  それでは、ただいまより「第3回行政改革推進会議」を開会い
たします。
 
本日は、お忙しい中お集まりをいただきありがとうございます。
 
それでは、議事を始めます。
本日の会議では、まず特別会計改革及び独立行政法人改革について説明いたします。
これらについては、先般5月7日の行政改革推進会議有識者議員懇談会など、これまで民間議員の皆様方から様々な御意見をいただいており、本日これらの御意見を踏まえて説明いたします。
 
次に、先般、今後の進め方等について方針を決定した無駄の撲滅に関して、ワーキンググループ等について説明いたします。
 
なお、本日、森田議員、渡議員は、所用により欠席と伺っておりますが、渡議員から資料4のとおり意見が提出されております。
 
それでは、まず、特別会計改革について説明をいたします。
資料1-1をご覧ください。
特別会計改革については、平成19年に制定された特別会計法に基づき、会計の統廃合などの取組が着実に進展しているところです。
この会議では、これまでの改革の内容を、第1回の会議にお示しした3つの視点から改めて検証しました。
 
その結果、個々の特別会計のあり方に至るまで、既に相当程度の議論が積み重ねられており、次の4つの方針、「①国が自ら事業を行う必要性の検証」「②区分経理の必要性の検証」「③経理区分の適正化」「④剰余金等の活用」に沿って、制度本来の趣旨を踏まえ、国の財政の一層の効率化・透明化に向けて、会計・勘定数のスリム化などを図り、特別会計改革の集大成としてはどうかと考えております。
そして、制度の見直しは可能なものから速やかに法改正を行い、平成26年度から順次の実施を目指してはどうかと考えております。
 
本日は、資料1-1をもとに御議論いただき、とりまとめを行いたいと思います。
 
なお、資料1-2は、今、申し上げたような内容のほか、従来の議論や、改革の取組についてまとめたものです。
適宜、御参照ください。
 
次に、寺田副大臣から独立行政法人改革についての説明をお願いいたします。
 

寺田副大臣

  独立行政法人改革は、専門的・実務的な検討を要するために、本年の2月、私の下に有識者懇談会を立ち上げました。
精力的に検討を重ね、改革のための中間的整理を行いました。
 
皆様のお手元の資料2-2が現物でございますが、今日は1枚紙、資料2-1に基づきまして御説明をさせていただきます。
資料2-1をご覧いただきたいと思います。
A4横の紙であります。
 
3つの基本的な考え方、第1に、6年前の第1次安倍内閣時の改革を推進・加速をし、集大成となる改革を目指します。
第2に、独立行政法人が実施部門を担うという、独立行政法人本来の趣旨に立ち返り、スリム化・効率化を行い、「民でできることは民で」の視点を貫きます。
そして第3に、各法人の長の差配のもと、自主性を発揮しながらその特性

に応じた機動的・弾力的な業務運営を行う。
そのために、企業的な経営手法を最大限導入いたします。
 
この3つの方針のもと検討を進めました結果、国民に対する説明責任を果たすとともに、政策実施機能がより発揮されるようにするため、独立行政法人制度を維持した上で制度面、運用面において必要な見直しを行うことが必要であるとの判断に立ち至りました。
 
その認識のもと、以下の4つの具体的な見直しを打ち出しております。
 
第1に、各法人内での自律的なPDCAサイクルに加えまして、政策に責任を有し、独立行政法人の指揮監督権を有します主務大臣のもとでのPDCAサイクルを強化するため、主務大臣が法人に明確な目標、しかもなるべく定量的な目標を付与して業績評価を行うとともに、第三者が外部から点検をする仕組みを導入いたします。
 
第2に、監事の機能強化、調査権の強化など、内部規律の充実を図るとともに、主務大臣から法人への事後的な是正措置命令を可能とすることによりまして、効率的かつ適正な業務運営を図ります。
 
第3に、予算の透明性・説明責任を向上させますとともに、本当に頑張ったところ、自己収入を増やした、あるいは経費節減、こうしたところへはインセンティブをきちんと付与して、それが機能するよう見直します。
また、給与の適正化や業績評価の給与への反映の促進、情報公開を図ります。
 
最後に4点目ですが、「民でできることは民で」との考え方に立ち、組織のあり方を見直すこととし、廃止、民営化、あるいは他の主体への業務移管などを行います。
具体的には、年末に向けての作業を行ってまいります。
 
また、法人の特性を踏まえ、一定の自主性・自律的裁量を有しつつ、計画的な枠組みのもとで中期目標管理を行う法人と、例えば印刷局、造幣局のように国と密接な連携を図りながら単年度管理を行う法人とに分類をし、各分類に則したガバナンスを構築いたします。

さらに、中期目標管理法人につきましては事務・事業の特性を踏まえて、例えば研究開発法人とか、あるいは金融法人といった類型化をいたし、各法人共通のガバナンスを前提とした上で、運用面まで含めた類型ごとの規律を構築することにより、政策実施機能を最大限向上させるとともに組織ガバナンスの強化を図ります。
 
また、国からの支出なども徹底的に洗い出します。
 
概要は、以上でございます。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 それでは、特別会計改革及び独立行政法人改革についての御意見をいただきたいと思います。
御発言される方は、お手数ですが、ネームプレートを立てていただきますようお願いいたします。
 
小林議員、お願いします。
 

小林議員

  今、御説明いただきました2件につきまして、特に大きな違和感はございませんが、前から申し上げて参りましたように、やはり見える化、それとさっきお話があり

ましたが、国民への説明責任、さらに改革のスピードということに軸足を置いてやっていただく必要があると思います。
 
そういう観点で、特に独立行政法人などを見ておりますと、可能な限り民営化するというのは先ほどお話があったとおりだと思いますが、すべてを完全民営化できるかというと、そうでないものも実は多数あるのではないかと思います。
そういう観点でPFIとかPPP、いわゆるコンセッション方式など、我々は海外ではそういう案件を結構拾っているのですけれども、是非そういう手法の積極活用についてお考えいただく必要があるだろうと思います。
 
そのためには、すでに法制化されているものをもう一回洗い直してコンセッション方式への障害を取り除くなど、その辺りの作業があると思いますが、是非スピードをもって対応いただきたいと思います。
 
それと、会計制度ですけれども、やはり会計の見える化が必要ではないでしょうか。
現状では、いわゆる企業会計とは結構違うところがありますし、これを統一的にどうするかというのはなかなか難しいことかもしれませんが、ぜひチャレンジいただきたいと思います。
民間でやれ、と言われても会計が違うと評価にも大変時間がかかってしまうなど、いろいろな支障がありますので、どこかのタイミングで統一の会計の仕組みをつくっていくことが望まれます。
できるだけ民間の会計に近いものをやっていただければスピードも上がりますし、ひいてはITの非常に有効な活用の形がつくられると思いますので、その辺に関してこれから具体的に動けるようにぜひお願いしたいと思います。
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 大塚議員、お願いします。
 

大塚議員

  いずれも進めていただけるということでよろしいかと思うのですが、まずは特別会計につきまして申し上げたいと思います。
 方向として、一般会計化できるものはできるだけそちらに向かうということで、これはぜひお願いしたいと思うのですが、資料1-1の2枚目に、「まだまだ活用可能な財源が無尽蔵にあるのではないかという誤解を招く」と書かれています。
これは誤解であればよろしいですけれども、必ずしもそうではないのではないかというのもあると思います。
 
そこで、特別会計そのものについていろいろやっていただくのは当然といたしまして、特別会計からその先、拠出先で過剰あるいは重複といったものが発生していないかどうかということについても、やはり点検をしていただくのがよろしいのではないかと思います。

それから、今回の内容をもって特別会計改革の集大成としたいというお話で、それはそれで結構なのですが、その後具体的な検証をきっちりやっていただいたらどうだろうかと思います。
それを、有識者の方々にお集まりいただいて、有識者懇談会のような、これは形にはこだわりませんが、何かそういう懇談会のようなものをつくっていただいて、そういった具体的な検証をさらに続けることが必要なのではないかと思います。
 
それから、最近政府のIT戦略本部の考えを拝見したのですけれども、重複する情報シス

テムとかネットワークとかいったものをもう少し見直して、政府共通のプラットフォームをつくり、そちらに移行するということが出ております。
私も、これは非常に大事なことだと思います。
 
そこで、このIT戦略本部でのそういう考え方を見たときに、こういうことを具体的に他のところでもやる必要があるのではないかなという印象を持ちましたので、今回の独立行政法人改革においても、これは前からずっと申し上げ続けているのですけれども、少しでも縦割りの弊害をなくすという観点から、横串を具体的に通すようなことをさらに御検討いただいたらいかがかと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 土居議員、お願いします。
 

土居議員

  今、御説明いただきました特別会計改革と独立行政法人改革については、更に行政の信頼性を高めるという意味では非常に重要な取組だと思います。
しかも、これを国民に広く認識していただくことで、きちんと行政は襟を正しているということを示すことができるのではないかと思います。
 特に、特別会計改革はこれまでにも取り組まれてきたわけですけれども、やはり一旦、ここで一つの安定した会計区分を定着させるという段階に導いていく必要があるのではないかと思っています。
先ほど来、御説明がありましたように、方針に従ってまとめられるものはまとめ、一般会計にすべきものは一般会計にし、かつ特別会計として存置するものはきちんと規律ある形で運営するというところを確立していくということが非常に重要で、願わくば資料1-1に示されていますように、平成26年度から順次実施していただきたいと思います。
 
それから、独立行政法人改革については、まさに中間とりまとめとしてお示しいただいた方針で私自身もよいのではないかと思っております。
さらに、踏み込んだところで言いますと、恐らくはそれぞれの個別の独立行政法人をどういうふうにいい形で位置づけていくかという取組がこれから求められると思います。
 
先ほど御説明がありましたように、類型化ということは一つの重要なポイントで、つまり今までは1つのパターンでしか全ての独立行政法人を通則法で規定していなかったということなので、何か丈の短い洋服を着せられているような独立行政法人もあれば、随分ぶかぶかな服を着せられている独立行政法人もあったというようなところなので、それぞれの業務に応じて身の丈に合った洋服を用意するというような意味で、独立行政法人改革をきちんと徹底するということは大事なことだと思います。
 
その上で、さらに成長戦略で活躍が期待されている研究開発系の独立行政法人についても、イノベーションや研究開発が伸び伸びとできるようにするということは私自身も非常に重要なことだと思っていますけれども、やはり独立王国というか、内閣から離れてどんどん研究者が自分の船を独自に動かしてしまうということになると、さすがに行き過ぎている感がありますので、やはり国家戦略に則って、その範囲内でグリップを内閣がきちん

と握れる、大臣がきちんと握れる、そういうような仕組みにしていただきたいと思います。


稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 田中議員、お願いいたします。
 

田中議員

  ありがとうございます。
私は、独立行政法人改革について申し上げたいと思います。
 まず、この中間とりまとめは精緻によくまとめていただいたと思います。
これは、これで賛同いたします。
 その上でですが、ただ、独立行政法人改革を今回集大成と位置づけている割には部分最適の議論にとどまっていて、全体最適の議論は足りないような気がいたします。
 その理由を申し上げれば、独立行政法人制度のゴールというのは行政機能の減量ではなく、また、公務員の削減でもなくて、この国の公共領域をどう経営するのかというところだと思います。
だからこそ、「この国のかたち」の再構築という言葉が出ていたと私は理解しています。
 
そして、独立行政法人制度というのは先ほども説明がありましたが、国が担わなくてもいいけれども、民間が担わないかもしれない、それがなければ社会的に支障を来すという公領域の経営の在り方を模索するために制度を構築したわけで、その制度というのは行政から切り離して自主自律でやってくださいというのが基本理念だったと思います。
 
ですが、今回の改革も、それから過去2回の改革も自律とは反対の方向で、行政機関による管理強化という他律の方向に向いていると拝察しています。
そういう意味では、そもそもこの制度自体がこの領域をうまく経営するということがうまくいっていないということの証左なのではないかと私は考えます。
 
ですから、ここからは提案ですけれども、行政の減量を終着点にしないで、「この国のかたち」をどう再構築して公共領域をどうやって経営するのか。
そこのミッションに立ち返って、なぜこの独立行政法人のモデルがうまく機能しないのか、あるいは、想定されたようにうまく機能しないのかという視点で、この制度の大前提から検証した上で議論をする必要が私はあるのではないかと思いました。
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
大変重要な視点だと思います。
 加藤議員、お願いします。
 

加藤議員

  具体的な見直しの4点目に関わる論点ですが、「研究開発を行う法人への対応について」ということでいろいろな御意見が出ていましたが、簡単にすぐできることで、そして海外の研究組織で行われていて日本で行われていないことがあります。
それは、研究組織や研究プロジェクトの運営とか管理に携わる専門職の育成、その研究分野の博士号を持っている専門家の育成です。
そのような方がいれば組織の運営とか、また組織を改革していくのに良い案が出てくるのではないかと思います。
 
特に、アメリカ合衆国などはそういった専門職の存在によって、研究者の研究環境が良くなっておりますので、日本もそういうようなことを考える段階にきているのではないか

と思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 秋池議員、お願いします。
 

秋池議員

  ありがとうございます。
独立行政法人改革についてですけれども、この先もこの組織のあり方などの御議論はあるのかもしれないですが、管理コストを減らすために組織をまとめるというだけでは管理コストは減らないわけで、やはり組織の形を変えるか、変えないかという議論とは別に、業務の効率化といいますか、民間では当然のように行われているシェアードサービスとか、アウトソーシングとか、そういうことも使った効率化というものも実務のレベルの話になりますが、検討していくというようなことも含めて、独立行政法人自体の生産性が上がるということも考えていくのがよろしいかと感じました。

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 畠中議員、お願いします。
 

畠中議員

  独立行政法人改革について、2点だけ言わせていただきます。
 まず、渡議員から御意見が出ている特に、総合科学技術会議の部分ですね。
私も、これは大変重要なことだと思っておりますが、一方、最近の新聞によりますと、日本版NIHを政府が検討するという記事もありまして、これは新聞によれば、医療研究の司令塔を担うものだ、というふうに書いてございます。
 
最近の傾向として、新しい組織とか本部がつくられて、それはそれで大変結構なことだと思いますが、既存の組織とか体制では不十分だという御判断だろうと思いますが、その場合は、やはり、既存の組織とのデマケをはっきりしておかないと現場が混乱するのではないか、という心配があります。
 
もう一点は、この中間とりまとめの③のところです。
「業績評価の給与への反映の促進」というところがありまして、これは大変結構なことで、実際、このとおりになるようにする必要があるということです。
 
私が総務省にいたころの経験で申し上げますと、今はどうか知りませんけれども、当時も退職金はゼロから2まで出せることになっていたんですね。
 
ただ、実際はほとんど1なんです。
日本人の横並び意識というか、目立つのが嫌だということなのか知りませんけれども、やはり、だめな人はゼロ、よくやった人は2出せるようにしないと、せっかくそういう制度になっているのだからそのとおりやってもらいたいと思います。
業績評価の給与への反映も実際そうなるようにぜひやっていただきたいと思います。
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 それでは、新藤大臣からも何か御意見ございますか。
 

新藤総務大臣

  それでは、私の方で資料を持ってまいりましたので、資料2-3、表紙に色がついているものをご覧いただきたいと思います。
 
1枚めくっていただきまして、この独立行政法人の改革、その本来の趣旨は何か。
それ

は、効率的で質の高い行政の実現だ。
ミッションを与えた上で、このような質の高い行政を実現するためのものであるということをまずしっかりと押さえるべきであると私たちは考えています。
 
そして、その上で2ページになります。
まず、今、横の統制が強い。
横串による一律の形になっているわけであります。
一方、現在、大臣からの指令というのは中期目標の指示というもののみにとどまっております。
 
ですから、今回私たちは政策体系で位置づけられた主務大臣と独立行政法人の縦の関係を明確化して、明確なミッションを付与しよう、こういうことを、この独立行政法人の中に活かしていきたいと思っています。
 
それから、もう一つめくっていただきまして3ページ目でございます。
この目標設定が総花的であった。
通則法によって、中期目標が各独立行政法人で定められておりますから、それぞれの独立行政法人ごとにPDCAを回していこう。
特に私は至るところで申し上げているんですが、PDCAのチェックは3段階目のCだけでやるのではないんだ、Pの時点でまず評価しなければいけなくて、4段階のそれぞれにおいてきちんとしたチェックをした上で次に進んでいく。
こういう工夫をしようではないかということで、それに対する目標管理と評価体系を構築することをやりたいと思っています。
 
それから、4ページをご覧いただきますと、今、畠中議員や、それから田中議員、その他の方々からもお話いただきましたが、インセンティブをどう機能させるかでございます。
これは、成果を上げてもある量を超えると全部、国に召し上げになっているわけでございまして、ここをやはり独立行政法人が成果を出した場合にはその経営努力がインセンティブに結びつく、働くというものをつくろうではないか。
 
それは、給料にはおのずと限界があると思います。
でも、例えば独立行政法人が進める事業に対して自分たちの上げた成果が事業費として戻せるような形、こういったものも含めて、独立行政法人自身のインセンティブの働くような仕組みというものを今回さらに付与したい。
このようなことを考えております。
 
寺田副大臣のほうから極めて実務的に、しかも専門的に、しっかりとした懇談会の中間とりまとめをいただいているわけでありますけれども、私どもも、独立行政法人制度を所管するのが総務省でありますから、所管省庁として実務的なものも含めてこの改革に取り組んでまいりたいと考えております。
 
それから、大塚議員の方から言っていただきました電子政府、IT本部のことですが、これも私どもがかなりの部分を所管しております。
政府のシステムは1,500ありますが、コンピューターのシステムを半分にします。
それから、政府の共通プラットフォームをつくるという意味においては、例えば給与ですとか旅費、人事管理、これは別々のシステムで役所が動いているのですね。
これを一つのシステムにして、コンピューターのメンテナンスに携わる職員の業務を削減するということで、時間数とそれに給料を掛けますと、今までコストの半分近くコストカットできることになります。
 

ですので、ここは電子政府というものを徹底的に追求していこうということを今、安倍内閣の使命として総理からも御指示いただいておりますから、ここはしっかりやっていきたい。
その一環として、この独立行政法人についてのIT化というものは進めなければいけないと考えています。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
他にございませんでしょうか。
 それでは、特別会計改革については本日の御議論を踏まえて、資料1-1について本会議として御了承いただいたものとさせていただきます。
 この件につきまして、麻生財務大臣から御発言をお願いいたします。
 

麻生財務大臣

  財務省といたしましては、特別会計法というものを所管する立場でありますので、改革の実現に向けて取り組んでまいりたいと考えております。
 本日のとりまとめの内容に沿って、関係省庁はいろいろありまして、必要な法改正等々が出てまいりますので、検討してまいります。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
 麻生財務大臣から御発言がありましたように、このとりまとめに従って検討を進めて、可能なものから速やかに法改正を行い、平成26年度から順次実施することができるように政府全体で取り組んでまいりたいと思います。
 
また、独立行政法人改革については、これまでの検討内容を有識者懇談会や本会議において総括・点検し、諸論点を整理してまいりました。
独立行政法人制度の趣旨と基本理念を踏まえつつ、独立行政法人制度を維持した上で、制度面、運用面で必要な見直しを行うべきという認識は、本日の御議論でも概ね共有することができました。
 
本日の御議論を中間的整理として、これを踏まえて年末に向けて、組織の見直しなど引き続き検討を進め、平成27年4月からの実施を目指して、その実現に必要な措置を講じていくこととしたいと思います。
 
さらに、先ほど田中議員がおっしゃったように、私も今まで特別会計改革、それから独立行政法人改革が、数を減らすとか、統合するとか、人を減らすとか、そういうことばかり特化していたようにも思います。
そうではなくて、やはりこの国のあり方、官と民のあり方や国と地方のあり方、この国のサイズや形というものを大きく議論をして、それに合わせた改革の集大成というものが必要だと思っておりますので、やはり、「この国のかたち」というものも議論を進めていきたいと思っております。
 
ありがとうございます。
それでは、最後に無駄の撲滅について取り上げたいと思います。
初めに、資料3-1の5月7日の行政改革推進会議有識者議員懇談会での無駄撲滅に関する自由討議の内容について、大塚議員より御説明をいただきます。
 大塚議員、よろしくお願いします。
 

大塚議員

  それでは、私の方から民間の議員の皆様方のお考えをまとめてお話を申し上げたいと思います。
もし、また補足していただくようなことがありましたら、各委員からお願いいたしたいと思いますが、3点申し上げたいと思います。
 
まず、今やっている、あるいはこれからやる行政事業のレビューでございますけれども、これを着実に進めていくということが一番大事ではないかと思います。
その際に、もう既に環境の変化等々があるわけでありますから、本当に必要な事業なのか、民間でもできる事業ではないのか、費用が収益、便益を上回っていないか、あるいは、類似の事業があるのではないか等々、こういった観点から見直していくことが大事だということであります。

それから、新規事業につきましては、これは始めてしまうとなかなか止まらないというところがありますから、やはり入り口でしっかりチェックをするということが非常に大事ではないか。
同じように、事業を進めていく際、バリューフォーマネーという観点はやはりしっかり持って進めていただくことが必要ではないかということが一つであります。
 
二つ目は、具体的な取組の問題といたしまして、こういった行政改革だけではありませんけれども、やったらそれで終わりということではなくて、不断の取組が常に必要でありますので、これをぜひお願いしたいということです。
 
それから、無駄といいましてもいろいろあるわけですので、できればこの無駄の類型化のようなことをしていくことが必要なのではないか。
無駄を類型化したり、あるいは体系化するということによって、結果的に再発の防止につながるだろうし、あるいはこの横串での点検をより組織的・体系的に行うことができるのではないかと考えております。
 
それから、点検する際に個別事業の費用対効果、これはもちろん必要でありますけれども、それだけではなくて、財政全体で見て収支のバランスがとれているかどうかという全体的な大局的な見地というのも必要なのではないか。
 
そういう観点から、その優先順位を明確にすることによって、限られた資源を優先度の高い事業に集中していくということが可能になるのではないかと考えております。
 
その場合に大事なのは判断をする基準、この基準の考え方というのを理論的に整理していくことが不可欠ではないかと思います。
 
それからもう一つは、目指すべき国家像の明確化といいますか、例えば小さい政府なのか、大きい政府なのかというのはよく言われますけれども、こういった目指すべき国家像というものをしっかり念頭に置く必要があるのではないかと思います。
 
それから、先ほど少し出ておりましたけれども、個別最適が必ずしも全体最適につながらない、具体的に言うと、例えば省益が必ずしも国益になるかどうかということだと思いますが、そういったことを常に考えていかなければいけないと思います。
 
それから、無駄が出てくるのは、もちろん人にも原因があるかもしれませんけれども、私は人であるというよりもむしろその仕組みにそういった問題が内在しているのではないかと思いますので、やはり縦割り行政にいかに穴を空けていくかということが非常に大切だろうと思います。
過去に行政改革というのはたくさんやられたわけでありますけれども、過去の行政改革をしっかりとレビューするということも非常に大事なことだと思っております。
 
それから、ITの活用でありますけれども、行政のIT化というのはかなり遅れていると思

います。
このIT化によって効率化、質の向上ということも図られるのではないか。
マイナンバー制度などもできてくるわけでありますから、ぜひ行政のIT化に努めていただきたいということであります。
 
最後に情報発信でありますけれども、国の財政状況は非常に厳しいわけでありますから、そういう中で限られたお金を使うということについて、ばらまきのようなことがなかなかできないという状況を国民に理解していただく必要がある。
国民に耳障りな話はできるだけ言わないようにするというのが、いろいろ積み重なってきた一つの原因ではないかと思いますので、ぜひこういった情報発信をきちんとやっていただければ、国民は必ず理解するのではないか。
全部の国民が理解していないということではありませんけれども、ぜひそういうことをやっていただきたいと思いますし、そのときにぜひお願いしたいのは若年層です。
いろいろな意味で財政がどんどん悪化してきたということの影響は、若年層にやはりいずれ出てくるわけでありますから、若年層についてもこの国のことに関していろいろ関心を持ってもらうような御努力というのをぜひやっていただく必要があるのではないかと思っております。
 
以上、民間議員の間でいろいろ議論したことをとりまとめて私から御報告させていただきましたけれども、あとは何か、もしつけ加えることがありましたら、各議員からお願いしたいと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
5月7日の有識者懇談会は、予定していた時間をオーバーして非常に活発な議論ができました。
そして、その議論の結果を今、大塚議員から非常にポイントをつかんでまとめていただきました。
 
何か、付け加えられることはございますか。
 
では、土居議員お願いします。
 

土居議員

  大塚議員に御説明いただいたとおりで、私自身も全くこの問題意識を共有しているわけですけれども、あえて1つ付け加えさせていただくと、こういう無駄の撲滅に向けての取組というのは、各府省の職員の方々にも意識を共有していただき、日々の作業で実践していただかないことには、この成果が実を結ばないというところはありますので、ぜひとも内閣として各府省の職員の方々にも御協力いただけるように取り組んでいただければと思います。
 それからもう一つは、大塚議員の御説明の最後に若年層の話がありました。
私自身も大学の学生と直接日々、研究教育でかかわっている立場で、問題意識としてはここで書かれているような若年層の関心の低さというところは懸念をしているものでありますけれども、特に政府から若い人たちに対する情報発信としては、何かと負担が重くのしかかるという話ばかりが先行してしまっているところがあるので、そうではなくて子ども・子育てだとか、そういういろいろな行政サービスの恩恵も若い人たちは受けているということを、より丁寧に説明していただくと、若い人たちにも実は一見すると空気のように思っているのだけれども、ありがたみも実感していただけるのではないかと思います。
 


稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
大変、示唆に富んだ御意見をいただきました。
こうした御指摘を念頭に置きながら、引き続き無駄の撲滅に取り組んでまいります。
 次に、資料3-2をごらんください。
行政事業レビューや、調達改善等の歳出改革について、より具体的かつ個別的な調査審議等を行うため、本会議の下にワーキンググループを立ち上げたいと考えておりますけれども、よろしいでしょうか。
 
(「異議なし」と声あり)

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
それでは、歳出改革ワーキンググループを立ち上げることといたします。
 歳出改革ワーキンググループでは、先ほど御説明があった民間議員からの御意見も踏まえながら、当面、行政事業レビュー公開プロセスへの参加や、調達改善の各府省の取組の点検に取り組んでいただきたいと思います。
 
公開プロセスについては、来週月曜日、6月10日より各府省において行うことといたしております。
対象事業については資料3-3に、日程については資料3-4に掲げております。
議員の皆様も、お時間があればぜひ会場に足をお運びいただくか、インターネット中継をご覧いただければと思っております。
私も今まで出たことがないので、ぜひ参加をして公開プロセスを見たいと思っております。
 
また、調達改善の取組については、7月中に各府省の平成24年度調達改善計画の実施状況の点検を行うことといたしております。
 
それでは、最後に安倍総理から御発言をいただきたいと思います。
 
プレスが入室いたしますので、少々お待ちください。
 
(プレス入室)

稲田行政改革担当大臣

  それでは、安倍総理、よろしくお願いいたします。
 

安倍内閣総理大臣

  皆様、御苦労様でございました。
 本日、この「第3回行政改革推進会議」において特別会計改革、独立行政法人改革を中心に御審議をいただきました。
 特別会計改革については、区分経理の必要性の検証など、4つの具体的な改革の方針がとりまとめられました。
このとりまとめに従い、稲田大臣、麻生大臣のもとで検討を進め、平成26年度から順次実施できるように、スピード感をもって取り組んでいただきたいと思います。
 
次に、独立行政法人改革については、第一次安倍内閣以来の改革の取組の集大成に向けて、目標・評価の仕組みの見直しやガバナンスの整備など、制度見直しを中心に中間的整理を行うことができました。
引き続き、これを踏まえ、年末に向けて稲田大臣の下、関係府省が連携・協力をして組織見直しなど、さらに検討を進めていただきたいと思います。

さらに、無駄の撲滅については行政事業レビューの取組が開始され、各府省において事業の執行実態の点検、レビューシートの作成などが進められています。
一部の事業につい

ては、来週から公開の場で検証が行われますが、今回、本会議の下に立ち上げるワーキンググループの有識者の方々には、国民の視点で厳しく点検をしていただきたいと思いますのでよろしくお願いを申し上げます。
 
また、縦割りからくる無駄の撲滅やITの活用、将来を担う若年層を中心とした国民への一層の情報発信など、民間議員の皆様から重要な御提言をいただきました。
この趣旨も踏まえて、行政の無駄の削減に不断に取り組んでいくということが重要であろうと思いますので、しっかりと行っていきたいと思います。
 
本年2月に行政改革推進会議を立ち上げ、3つの検討課題について着実に成果を上げてまいりました。
新たな時代の要請をしっかりと受け止め、国民の信頼を勝ち得る行政を目指し、行政改革に全力で取り組んでまいりますので、どうぞまた今後ともよろしくお願い
を申し上げます。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
プレスの方は、ここで御退室ください。
 (プレス退室)

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
 
以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。
どうもありがとうございます。




posted by hatena at 05:00| Comment(0) | 官邸・内閣府系の審議会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月24日

第2回 行政改革推進会議




行政改革推進会議
第2回議事録

内閣官房行政改革推進本部事務局



行政改革推進会議(第2回)
議事次第

日 時:平成25年4月2日(火)16:50~17:50

場所:官邸4階大会議室

1 開会

2 議事
無駄の撲滅の取組について
(1)行政事業レビュー
(2)調達改善

3 無駄の撲滅に関する自由討議

4議長挨拶

5 閉会


稲田行政改革担当大臣

  ただいまより第2回「行政改革推進会議」を開会いたします。
本日は雨の中、またお忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 安倍総理は、所用のため途中から出席させていただきます。
 それでは、議事を始めます。
 本日の会議は、意見交換を大きく2部構成で進めさせていただきます。
 まず前半では、行政事業レビュー及び調達改善について、事務局や議員の方からの資料
の説明の後に、皆様から御意見をいただきたいと思います。
 後半では、無駄撲滅について、より広い視点から自由討議をいただきたいと考えております。
 
まず、事務局より説明をさせます。
 

藤城次長

  お手元の資料1をご覧ください。
「今後の行政事業レビューの実施等について(案)」でございますが、行政改革推進会議のクレジットで提言案となっております。
 
「1行政事業レビューの実施について」では、行政事業レビューの趣旨を記載した上で、レビューシートの公表によりまして、予算の要求段階における検討過程が国民に明らかになったこと。
また、事業のより効果的、効率的な実施、国民への説明責任の確保、透明性の確保を図りまして、もって国民に信頼される質の高い行政の実現を図るべきであるという御意見が書いてあります。
 
「2実施方法等の改善の方向性について」では、4点ございます。
 1つ目は、外部チェック体制の明確化。
 2つ目は、外部チェック対象の重点化。
 3つ目は、熟議型による公開議論の実施。
 4つ目は、政策評価等の連携強化。
 以上のことが記載されております。
 民間議員の皆様からは、事前に御意見をいただいておりますが、これなどをもとにまと
めました具体的な改善の方向性については、別紙1をご覧ください。
 「行政事業レビューの改善策について」です。
 1.に、各府省における自律的な取組(事業の点検・見直し)のあり方。
 2.に、レビューシートの作成・公表のあり方。
 3.に、公開の場における事業の点検のあり方。
 4.に、行政改革推進会議等における関与のあり方。
 5.に、その他の効果的・効率的なレビューの実施のあり方。
 6.に、今後の検討課題を載せてございます。
今後の検討課題では、各府省の事務負担
に配慮しながら、引き続き積極的な改善に努めていくなどの意見を書いてございます。
 改善策を踏まえました全体の実施方法、いわゆるマニュアル的なものにつきましては、別紙2「行政事業レビュー実施要領」に記載されております。
 さらに、基金を活用した事業というものにつきましては、これまでの行政事業レビュー


では、執行状況の把握、点検というものを十分に行えない状況にございました。
透明性の向上のために、新たに基金シートというものを作成することにいたしまして、別途の取り組により、これを点検、公表すべきであるという御意見につきまして、別紙3「基金シート実施要領」というところにまとめてございます。
ここには、基金シートの作成の対象、7月末をめどに公表を行うこと、行政改革推進会議における点検などにつきまして記載がされております。
 
以上が行政事業レビューに関する提言になっております。
 続きまして、資料2で調達改善計画の関係でございます。
 こちらにつきましては、まだ2年目の取組でございまして、調達改善計画の定着を図る
べく、政府のほうから内容を御説明し、お諮りする形にしております。
 1ページは「今後の調達改善の取組について(案)」です。
 1番のところで、調達改善計画の策定につきましては、毎年度開始までに調達改善計画
を策定・公表すること、上半期と年度終了後には、自己評価を実施・公表することなどが
書いてあります。
 2番は、推進体制の整備。
 3番は、推進会議の関与のあり方。
 4番には、調達改善計画に盛り込む内容が記載されていまして、いわゆる重点分野です
とか、取組内容の観点のあり方、目標というものにつきましては、極力定量的に設定する
こと。
 (4)で自己評価、(5)で推進体制、それぞれを盛り込むこととしております。
 以上、簡単ではございますが、行政事業レビュー、調達改善計画、それぞれにつきまし
て御審議をお願いしたいと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  次に、田中議員より、資料3について御説明をいただきます。
田中議員、よろしくお願いいたします。
 

田中議員

  今、御紹介にあずかりました田中弥生です。
 行政事業レビューを中心に説明させていただきます。
 私は、行政事業レビューというのは「3本の矢」ならぬ「三種の神器」という3つの特徴があると思っております。
それは公的資金の流れを透明化すること。
行政府のパフォーマンスの判断に国民が参加をすること。
さらにレビュー結果を概算要求に反映するということで、広義の意味での政策評価の実質化をここで図っているということが言えると思います。
 
しかしながら、劇場型であるとか、あるいは成果の定量化については、まだ課題がある
など、幾つもの問題が指摘されておりました。
 そこで、次のような図を用いて、この問題を捉え直してみることにしました。
 お手元の資料にパワーポイントの資料がありますが、10ページを開いていただけますで
しょうか。
 


10ページは、行政事業から施策、政策を1つの体系に描いているもので、これは全ての構成要素が目的と手段の関係の中で連なり、1つの体系をなしているということです。
ですから、仮にこの中で行政事業がうまくこの関係の中にフィットしないとすれば、その妥当性が問われるということになります。
 
では、11ページをご覧ください。
 
この体系図をもとに、行政事業レビューの技術的な側面を中心に、その課題や特徴を整理したのがこの図であります。
 
赤字で記されているものは、行政事業レビューの中で完結するものでありますが、青字であるものは、その上位の施策や政策の評価と深く関連があるものです。
さらに雲のような形で囲っているものは、いまだに解決されていないと思われるものをここで記しました。

詳細については残りの資料を見ていただきたいのですが、この整理、分析の結果をもとにして、主要な課題を3つ、その改善策としての提案をさせていただきたいと思います。

資料3の縦のA4にお戻りください。
 
まず、主要な課題でありますが、第1に、行政事業レビューシートですが、資金の透明化についてはかなり綿密に記すようになっているのですが、実は、最終判断は比較的記述の薄い効果や効率性をもって判断していたということであります。
 
2番目は、視点・基準なのですが、ここがやや次元の違うものがランダムに並んでいたところが散見されました。
それから、いわゆる政策とアウトカムの成果でありますが、ここは先ほど申し上げたように、政策評価と深く関連するものです。
 
この主要な3つの課題をもとに、その改善策としての提案を当面の提案と中長期の改善案という視点で説明したいと思います。
 
まず、当面の改善案でありますが、「視点・基準の改善」につきましては、現行を生かしながらも、より論理的に整理をする。
 
「資金の流れ」に関してですが、これが一番の強みでありますので、これを中心にレビューし、判断をしていったらどうかということであります。
 
民間識者の参加なのですが、特に効果の説明などは、より専門的な、あるいは経験に基づいた整理が必要でありますので、それに基づいて民間識者が参加されるのはどうか。
 
中長期の改善案でありますが、定量化の問題であります。
これは安易な定量化というのは、業務上の負荷や無駄をさらに招くことになりますので、ここはより積極的に専門化を活用してはどうか。
 
さらに、政策評価との関係の明確化は必要でありますが、例えば先ほどお示ししたような政策体系ツリーを導入して、施策・政策事業の関係、あるいは事業の重複や欠落などをチェックしてはどうかということであります。
 
最後に、電子化の問題なのですが、実際に私も幾つかの府省の政策評価にかかわっているのですが、行政事業レビューと項目が重なるのです。
それをマニュアルで転記している状態ですので、一度記入したら、自動的にそれが転記されるように、電子化を急いだほう


がいいだろうと思われます。
 
以上、私の提案でありますが、今回これを作成するに当たっては、事務局の方々とかなり熱心に議論を展開させていただきました。
なおかつ、それをよく反映していただいたということで、改めて御礼を申し上げたいと思います。
 
ありがとうございました。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
 続きまして、新藤議員より、資料4について御説明をいただきます。
 新藤議員、お願いいたします。
 

新藤総務大臣

  総務大臣でございます。
 今日は、私どもが行っております政策評価と、今回御審議いただいております行政事業レビューをどのように連携させていくかということについて、私どもで整理したものをお出しいたしました。
資料4をご覧いただきたいと思います。
 
1ページ、まず、この政策評価の目的は何かということであります。
 
効果的、効率的な行政、そして国民への説明責任と整理いたしました。
それによって達成すべき効果は、この政策の見直しと重点化、さらにはそれによって予算の縮減と効率化が図られなければならないと思います。
そして行政への信頼と更なる政策の見直しというサイクルが回るようにしたいということであります。
 
現状では、政策評価というのは、法律に基づきましてもう10年ほど経っておりますが、各府省の主要な政策全般を約500施策に区分しております。
この500施策のもとになるのが行政事業レビューの5,000事業と、このようにお考えいただきたいと思います。
 
その中から、評価施策を予算と決算書の、いわゆる予算書の款項目節と対応させたということであります。
そして、昨年度より、行政事業レビューとの連携を開始いたしました。
そもそも最初からやっていたことと、途中から加わったものがありまして、この連携がうまくいっていなかったことは事実でありまして、ここをいろいろと取り組もうということにさせていただいているわけであります。
 
2ページ、連携のイメージでありますが、今、申し上げましたように、一番右下に青で塗っておりますが、行政事業レビュー5,000事業がございます。
この事業が政策評価500の中に統合されているとお考えいただきたいのです。
 
左端にありますように、例えば政策目的として「命をまもる」という目的を設定したとします。
その中に、政策評価の中には「地域の消防体制の強化」とか「住宅防火対策」とか、さらには「救急救命体制の強化」という省を超えたものも含めて、その政策目的の中に各事業が入ってくるわけであります。
その施策の中の各個別事業が行政事業レビューとして5,000あって、それも一つ一つチェックしている、こういうふうになっていて、これらを連携させなければいけないということであります。
 
3ページであります。
 今年度からやらせていただこうと思っておりますのは、政策評価と行政事業レビューの


事業名が不統一でございました。
シートは別々にございますが、事業番号を統一化することによって連携ができるようになるということであります。
 
それから、作業を別々にやりますと、これが無駄というか、手間がかかることになって、担当が嫌がるわけであります。
ですから、できるだけこれを共通作業にしなさいということで意識をしていただくという中から、政策目的を達成するための施策は何が必要か、そして、その施策を構成している各個別事業に無駄がないか、見直しできるところがあるかというところを連携させながらやっていこうと、今年度から取り組んでいこうと考えています。
 
4ページにございますように、まずはどういう時間軸で動いていくかといいますと、上段が政策評価、下段が行政事業レビューでございますが、それぞれが政策評価をやり、行政事業レビューシートをつくります。
これとともに事業名と番号を共通化する中で、作業もできるだけ共通化しようと。
そして、それをどこかで1つあわせて省内の作業プロセスの中でお互いにチェックをする。
さらに、そこからそれぞれ有識者への意見聴取や点検していただいて、それを持ち寄っての共通作業を行う。
その結果をまとめまして、公表するなど国民への説明をしなくてはなりません。
あわせて、それに基づいて予算の要求をしていく。
この時点で大体6月ぐらいが概算要求でありますし、締めが8月末でありますから、そういう作業の中でこの2つの仕事を組み合わせて、より効果が出るようにしようということにしたいと考えています。
 
ポイントは今、田中議員からも言っていただきましたが、政策ツリーをいかにつくるかだと私たちは思っています。
予算書の款項目節のみで評価していたのでは効果が出ないわけで、省庁を超えて、必要な政策目的を政府としてきちんとつくって、それに基づいてどういう仕事がぶら下がっているのかというもの。
そこから一つ一つの仕事を連携させて、より効果が出るならば、その予算と政策の優先度が上がっていく。
こういう中で、合理的な、効果的なものを探しつつ、予算の削減と効果の向上を狙う。
これをうまくサイクルできれば、よりよい結果になるのではないかと思います。
 
先ほど事務局からも、田中議員からも御提案いただきました。
こういうものを加味して、より実効性の上がるものにできればと期待しているところでございます。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  新藤大臣、ありがとうございます。
 先ほど事務局から説明いたしました資料は、これまで議員の皆様方からいただいた御意見を踏まえて作成したものです。
また、田中議員、新藤大臣からの御説明も含め、改めて御意見があればお伺いしたいと思います。
 
御発言をされる方は、お手数ですけれども、ネームプレートを立てていただけたらと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 畠中議員、どうぞ。
 

畠中議員

  私は総務省におったものですから、今日、行政事業レビューとか政策評価の

連携の強化について発言しようと思って準備してきたのですけれども、先に新藤大臣と田中議員が発言されましたので、若干重複になりますがお許しください。
 
無駄の撲滅のためには、実効性のあるPDCAサイクルを確立することが重要でありまして、行政事業レビューの改善の方向性としましては、先ほど事務局から御説明のあったとおりでおおむね妥当と考えております。
 
若干付言すれば、行政事業レビューをより効果的に行っていくためには、先ほど新藤大臣からも御発言がありましたように、政策評価との一体的な実施とか、情報の相互利用、活用など、政策評価と連携していくことが大変有意義なことだと思います。
 
また、外部性の確保については、各省任せではなくて、行革部局が適切に関与することが重要ではないかと思います。
 
公開性につきましては、国民の関心を高めたという意義は大いにあると思いますが、単なるパフォーマンスに陥らないようにしていただきたいと思います。
 
そして、この行政事業レビューなどを真面目に行った職員を人事や給与等で評価することが大事ではないかと思います。
 
なお、政策評価の事前分析表につきましては、先ほど大臣からも御説明があったような改善が行われれば、言わば「国の政策体系図」となるものですので、政策評価、行政事業レビューのみならず、さまざまな場面で活用できる政策インフラになり得るのではないかと考えております。
 
最後に、政策評価について申し上げれば、施策単位の事後評価を年間350件実施されていると聞いておりますが、今回の行政事業レビューの改善とか、政策評価との連携強化を踏まえ、評価対象の重点化を図りつつ、政策そのもののあり方にまで踏み込んだ深い分析を行うなど、政策評価そのものについても見直しをやっていただければと考えております。

以上です。
ありがとうございました。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
 土居議員、お願いします。
 

土居議員

  御説明ありがとうございました。
 まず、政策評価と行政事業レビューの相互活用ということで、新藤大臣から御説明がありまして、私は非常に重要な取組だということで、ぜひ早速取りかかっていただきたいと思う次第であります。
 
やはり作業の重複を省いて、より効果的にその政策評価及び事業レビューのそれぞれの効果を発揮していくということは、行政に対する国民の信頼性を回復する意味でも重要だと思います。
その上で、恐らくはそういう意識はおありであるとは思うのですが、あえてこの取組にまつわる部分で私の意見を述べさせていただきたいと思います。
 
まず1つ目は、時期的に年度が終わって、評価にかかるという部分の政策評価のものと、来年度予算の要求に向けて準備を始めるという時期が、ちょうどこれからの季節、4、5、6月以降ということで、その時期にちょうど重なっているということでありますので、恐


らく作業的には新藤大臣がおっしゃったような意味で効果的にできると思うのですが、事後評価の部分と、これから予算要求に向けて取り組んでいくという部分との両者の違いというのは、実務的に取り組んでおられる各省職員の方々にも徹底して浸透していただく。
つまり、政策評価なら政策評価の意義があり、行政事業レビューは行政事業レビューの意義があるということをそれぞれ踏まえていただいた上で、それぞれの役割を認識した形で、できるだけ省力化しながら作業を進めていただくということは重要なポイントになってくるかと思います。
 
資料1の中で、特に行政事業レビューの実施要領ということで、別紙2の1枚目にありますけれども、行政事業レビューは、なかなか自己否定しにくいとは言え、ある程度、省内でそれぞれ来年度予算の要求に向けて、自己点検を厳しくしていかなければいけないという辛い役目もあるという部分がありますので、この体制整備の中で行政事業レビュー推進チーム、特に統括責任者の官房長、副統括責任者の会計課長及び政策評価担当課長の行政事業レビューの意義についての理解というのは非常に重要になってきます。
極端に言えば、ほどほどに行政事業レビューをやっておけばいいだろうということになりますと、やはり行政事業レビュー自体が形ばかりになってしまう。
 
ですから、むしろこれから予算要求に向けて、どういうふうにメリハリをつけて絞り込んでいくのかということを各省で身内ではあるのだけれども、厳しく見ていかなければいけないという立場であるということを深く官房長、会計課長、政策評価担当課長を筆頭に御認識いただいた上で、行政事業レビューに取り組んでいただくというところが重要なことなので、ぜひとも各省にそういう浸透を図っていただきたいと思います。
 
最後に、少し政策評価と行政事業レビューと別の調達に関連するところでひとつ申し上げたいと思います。
 
調達改善の取組は資料2のとおりで、私自身もこの取組は重要だと思っております。
その中で、何かといつも調達絡みでは一者応札になっているものについて、どう説明するのか。
つまり、競争参加を制限的にしているような暗黙の仕組みなりがあるのではないかとか、いろいろ国民から揶揄されることがあるのですが、私が思うには、最近の調達の取組についての改善は大分進んできている。
むしろ、なかなか競争参加者を増やすということ自体も限界に達しているようなものも中にはあると思います。
 
ですから、何が何でもとにかく一者応札になってはいけないので、どこかからでっち上げてでもいいから競争相手を持ってくるという話ではなくて、むしろ一者応札になったならば、なったときに、その結果として決まった価格とかがいかに公正、フェアであるかということをきちんと担当部局に説明していただくということもあわせて必要なことかと思います。
もちろん、漫然と一者応札になっているということがもしあるとすれば、それは改善する必要があるのですが、やむを得ず一者応札になったとしても、一者応札になったからだめだということではなくて、いかにこの価格が公正な価格であるか。
別に割高な値段で発注したわけではないということをきちんと担当部局に御説明いただければ、国民も


それなりに納得していただけるということはあるのかと思います。
 以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
 渡議員、お願いします。
 

渡議員

  ありがとうございます。
 今回の改善案は、私は非常にいいと思います。
 従来は、政務、事務あるいは有識者が一体になって全事業を点検するということで、責任の所在も曖昧でしたし、チェックするときも膨大な範囲でしたので、なかなかできなかったと思うのです。
 
そういった意味で、今回、事務方が一番の専門家ですから、十分チェックされて、それとは別に外部有識者のチェック機構を置くということは、仕組みとしては賛成でありますし、非常にいいと思います。
 
ただ一つ、そうは言っても、事務方が中心にやるわけですから、外部から見ていて隠ぺいというか、隠れたところでやっているのではないかという疑念を抱かれないためにも、やはり私は政務あるいは担当副大臣等の政務官とか、そういった方々と、事務方のトップの事務次官が一緒になって、時々、節々でチェックをするという仕組みがこれに加わったら、そこは非常によくなるのではないかと思います。
これがレビューの体制についてです。

新藤大臣から御説明いただいたことは、まさにそのとおりでありますけれども、私は本来、これは一本化すべきであって、総務省が全部やったっていいわけです。
いろいろ御説明があって流れを言われましたが、我々民間から見ると、何で分けるのか。
総務省にも行政評価局というのがあって、そこに有識者が入っていって、いろいろな専門家がチェックされているわけです。
政策と個々の施策というのは表裏一体であって、ばらばらに違う機関というか、担当がやるというのは、ちょっと無駄だなと思います。
 
ということで、今すぐ4月からというわけにはいかないので、将来的に、ここが行革の一丁目だと思うのですけれども、やはり一体になるような方向に持って行って、それまでの暫定期間は、今日御説明になったようなこと。
これは次善策として非常にいいと思います。
 
ということで、なぜ一本にならないのかというあたりを、もし後でお時間があれば、その理由をお聞かせいただければ、逆に我々民間企業として参考になるのではないかと思っておりますので、よろしくお願いします。
 
調達については、我々のエネルギー業界というのは、応札でいろいろさせていただきますのですけれども、先ほど土居さんがおっしゃったとおり、複数の公開入札でなければ何が何でもいかぬという発想というのは間違っていると思うのです。
やはり機密物資だとか、防衛省などの燃料とか、これはいつの間にか公開入札されて、海外からも入札がオーケーだと。
北朝鮮が入札したらどうするのですかね。
このような問題がありますので、それは逆に、一般入札はできないと。
これは随契だと。
逆に随契品目を決めて、それを公開した


ほうが、より透明度が高くなってくると私は思いますね。
 以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 小林議員、お願いします。
 

小林議員

  先ほどプレゼンいただきました内容につきましては、大きな違和感はありません。
この内容をもっと具現化するためには何をすべきかという観点で申し上げますと、特にPDCAで回すわけですが、Pのプランは、大体皆さんいい計画をつくるのです。
それを民間でやるのか、地方でやるのか、中央でやるのかといういろいろな議論はあるかもしれませんが、プランそのものは結構いいのです。
しかし、それが実際に実行に移されたときに全然違った方向に行ってしまうことがあります。
そのレビューをいかにうまく効率的にやるかというのが、我々民間で事業をやっておりましても大きなポイントであるのです。
そういう観点で考えますと、どうしてもICTの導入、コンピュータの導入というのは必須でありまして、しかもできるだけ個々の案件をスタートするときに、この案件のポイントは、この事業のポイントはここだというクリティカルなポイントを前もって抽出しておいて、そこに実績データを入れたときに、自動的に例えばイエローフラッグとかレッドフラッグが立つような、そういう仕組みは絶対できると思うのです。
 
だから、そういうわかりやすい、しかも迅速に対応できるようなことをぜひ実践していただきたいということが1点です。
 
調達につきましては、何度も申し上げておりますけれども、やはりインセンティブを効かすというのは非常に大事だと思います。
きのうの国民栄誉賞ではありませんが、やはりこういう形で栄誉を与える、あるいはボーナスでお金、金というと下世話な言い方かもしれませんけれども、わかりやすく、やはりいいことをした人に対してはきちんと報いていくという仕組みができると、みんなが切磋琢磨して必ずいい方向にモチベーションが上がると思うのです。
 
なかなか難しい意見かもしれませんけれども、是非それを考えていただくと大変いいのではないかと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 秋池議員、お願いします。
 

秋池議員

  行政事業レビューにつきましては、ほかの議員がおっしゃいましたことは繰り返さずに、それ以外の部分で申し上げますと、今後、ベンチマーキングをしたり、予算の効率を上げるということで、ほかの省庁でやっていることのベストプラクティスを展開していきたいということを考えるのであれば、やはり各省庁の評価する方の目をそろえていくということが非常に重要なことだと思っておりまして、例えば評価の視点をそろえるとか、あるいは用語をそろえて、余り専門用語で語られず、横に展開できるようなことにしていくということが非常に重要だと思います。
 民間の企業でも、一度始まってしまうと、後からどうやったら横比較できるのだという


ことはとても難しいので、今回新たに始める取組でありますから、どういうふうに始めていくかによって、今後の使いやすさというものが決まっていくと思いますので、そのあたりを御検討いただければと思います。
これは将来、あちらの省ではできるけれども、こちらではできないという言いわけを避けるためでもあるかと思います。
 
このあたりは、いきなり完成形にはならないので、時間をかけてやっていくということかとも思いますが、初めに枠組みをつくるのは非常に重要だと思っております。
 
あと、レビューをするものの対象なのですけれども、前年度の新規の開始とか、事業の最終年度というのもございますが、金額の大きいものを見るということも重要だと思っておりまして、そのためには、先ほど総務大臣がおっしゃいました政策のツリーを見て、個々の予算の項目で見ると小さいけれども、実は塊として大きいものでありますとか、あるいは各省庁の中でも大きくなっているものというのは見るべきだと思っています。
 
もう一つ、調達についてなのですけれども、調達をオープンにして、競争入札の比率を高めていくということは、調達のフェーズがあると思うのです。
何を目的に調達改革をするのかというものによっても違うと思うのですが、まず、競争入札を促進するというのは、クローズドで一定の事業者にしか機会を与えていないということを、そうではないのだと見せていくことが非常に重要だという目的もあると思いますし、高過ぎる買い物をしているのではないかということに対して、ちゃんと市場の価格なのですということを見せるために競争入札をするということも必要なことがあると思います。
 
ただ、それで市場の価格であるということがわかれば、そこから先は、調達価格を下げていくことが目的になっていきますので、もしかしたら、ただ競争するだけではなくて、物によっては特定の事業者と共同で研究をしていくことのほうがいいという場合も、ともに効率を上げていく、生産性を上げていくような議論をしていくことのほうがよいという場合もあるかもしれません。
 
ただ、これはフェーズの違いがさまざまな予算の調達の項目によっても違うと思いますので、一概には言えないことで、何を目的にやるのかというのを分けて考えるということが非常に重要だと思っています。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 大塚議員、お願いします。
 

大塚議員

  今回のペーパーは、前回の意見をいろいろ取り入れていただいているので、それは非常に結構なことだと思いますが、私からは、まずレビューを実施する際に、レビューの仕方とか何とかという前に、2つほど常に念頭に置きながらレビューしていただいたらいかがかと思うのです。
 その1つは、事業の主体というのはどこが一番いいのか。
国なのか、地方なのか、民間なのか。
これは常にそういう意識を持ちながらレビューしていただくということが必要なのではないかと思います。
 
2つ目は、先ほども少し出ていましたが、類似事業が複数の府庁にまたがっているとい


うことがございます。
これについては、やはりもうちょっと効率的にやるためにどうしたらいいのかということを考えていくことが非常に大事ではないかと思いますので、そういったまたがっている事業についての意識というものをきちんと持ちながらレビューしていくことが必要なのではないかと思います。
 
それから、この会議とレビューとの関係でありますけれども、当会議は、言うまでもなく、大きな方針や方向性を示す場だと思います。
したがいまして、こういった点検結果に対する実効性のチェックのようなことは事務局でやっていただいて、その結果を当会議に報告していただくということで十分ではないかと私は思います。
 
今回のペーパーにも出ていますけれども、無駄の削減という観点だけではなくて、効果の高い事業に適切な予算をつけるという考え方が非常に大事なことだと思いますので、そこをぜひ進めていただきたいと思いますし、もう何人かの方から出ていますが、事業見直しで予算を削ってというのは、なかなか現実問題としてしにくいということがあるのが事実なのです。
ですから、これは先ほどから出ているように、何らかのインセンティブというものを与えてあげないと、現実問題としてなかなかやらないのではないかと思います。

人事評価の話がちょっと出ておりましたけれども、例えば削減した額の一定の割合については、次年度の予算である程度自由度を与えて使ってもいいということをするとか、何かそういうインセンティブは絶対つけるべきではないかと思います。
そのインセンティブをつける際に、縦割りの弊害ということはよく言われていますけれども、府省にまたがってやる事業というのが結構あろうかと思いますので、そういったまたがってやるような、連携してやるような事業については、特に連携の度合いによって非常にうまくいった、あるいは想定よりも、より少ない予算で済んだとかということが出てきた場合には、そういったところを特に大事にしてあげる。
これは府省の連携という効果が出てくるのではないかと思いますので、そういうものについては、特に重点的にいろいろ考えていくことが必要なのではないかと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 森田議員、お願いします。
 

森田議員

  もう既に私が申し上げたいことは、かなりの議員の方がおっしゃっていますので、簡潔に述べさせていただきたいと思います。
 1つは、政策評価と行政事業レビューというのはやや屋上屋を重ねるような感があったのですけれども、今日のお話で、それがきれいに連携されるようになったということは大変喜ばしいことだと思います。
ぜひ進めていただきたいと思います。
 
ただ、政策評価のあり方につきましては、先ほど新藤大臣からもございましたが、私自身は、この制度ができたときからいろいろな形でかかわっておりますが、やはり大幅な見直しの必要があるのではないかと思っております。
その中で行政事業レビューも位置づけられるべきではないかと思っております。
 
この制度自体が、いろいろな目的が入っていて、同床異夢状態のところがあるというの


と、特に申し上げたいのは、まさに新藤大臣の資料でいいますと2ページに当たりますが、この政策評価の対象となる政策、施策というものと、事業というものの関連が必ずしも明確でない。
このことはどういうことかといいますと、ツリーとおっしゃいましたが、1つの大きな政策目的を達成するために、どのような施策が必要であり、その施策がどういう関連性を持っているかということについてのいわゆるプログラムというものが必ずしもきちんとレビューされていないのではないか。
ここのところをしっかりするということがまず必要ではないかと思います。
 
一例を申し上げますと、たまたまそこの左のほうに「命をまもる」という目的から、施策として「地域の消防体制の強化」「住宅防火対策」とありますけれども、総務省の中でいいますとこういうことになるのかと思いますが、要するに、「命をまもる」から、そのための施策というのは、ほかの省も含めますと、当然のことですが、健康の管理であるとか、さまざまな事故の防止であるとか、ハード面のことも含めていろいろあるわけです。
それらが一体として命を守るということに結びついているのかどうか。
そこのところをきちんと評価しませんと、例えば施策間で矛盾があったり、重複があったりするようなことがまま見られるわけでして、それぞれの施策自体を一生懸命、効率的に実施されることはいいのですけれども、そもそも施策間に矛盾がある場合には、頑張り過ぎると打ち消してしまうということにもなりかねませんし、そうした意味でのプログラムといいましょうか、大きな政策体系をきちんとレビューする仕組みというのがこれから必要ではないか。
その下で事務事業というものがいかに効率的に行われるかということを見ていく。
その必要があるのではないかと思います。
 
現在は、そのプログラムの評価については、もちろん不十分でありますけれども、いろいろな科学的な研究も進んでおりますので、そうしたものを生かしていくことが必要ではないかと思っております。
 
調達については、ほかの方もおっしゃいましたので結構でございます。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 田中議員、お願いします。
 

田中議員

  調達を中心に申し上げたいと思います。
 先ほどの一者応札の件なのですけれども、私も幾つかの省の評価にかかわり、民間に業務を発注しようと入札をかけましたが、何回やっても応札者がいないという事態が何度か生じていました。
要は国の仕事はどんどん予算を切られていますから、うま味がなくなっているのです。
そのような中で無理に競争入札をすると、そのための作業コストがかかっていますから、ここはもう少し現実的に見なおしたほうがいいのではないかと思います。

それから、先ほど同じ目線で視点をそろえたほうがいいということなのですが、これは府省によって扱う政策のレベルが異なり、非常に上位の抽象度の高い政策を扱う省庁と、現場の事業に近いものを扱っている省庁がありますので、これを横並びに目線をそろえるというのはなかなか難しいと思います。
 


そんな中で、調達に関しては、実際フォーマットを拝見しましたけれども、各府省ともほぼ同じようなレベルや内容になるでしょうから、標準化できると思います。
ですから、ぜひ横並びの視点を取り入れ、削減をするだけではなくて、ベストプラクティスをちゃんと見つけて、そこを評価してあげるような視点を入れてはどうかと思います。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 加藤議員、お願いします。
 

加藤議員

  時間も限られていますので、手短にします。
行政改革の会議に出て、大変戸惑いましたのは、本当に様々なことをやっていることでした。
この全貌をつかんでいらっしゃる方はいるのかということが最初からの疑問でした。
 今日の、政策評価と行政事業レビューの相互連携を強めていくというお話を伺いまして、1つのアイデアと思いましたのは、縦割り行政で、他の課や局、省が何をやっているかというのはなかなかわからない時に、事業名な事業番号を共通化するというようにデータ表示を工夫すると、大変役に立ちます。
連絡を取り調整しましょうというと大変なのですが、こういったデータベース上で、他の課や局、省が何をやっているか確認するのは簡単です。
今回の件でも、政策評価や行政レビューのダブりをなくし連携するのが第一歩だと思います。
そういうことは事務方の方がいろいろとお知恵があると思いますので、積極的に提案して下さるとよいのではないかと思いました。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
 寺田副大臣、どうぞ。
 

寺田副大臣

  新藤大臣の御提案、また田中議員の御提案は、まことにそのとおりであります。
 問題は、この5,000の事務事業と500の施策をいかに連接するか。
まさにICT活用ということなのですが、このチャートで見ると、どうもインターフェースのMAによる連接だと、どうしてもレガシー化して、システムの陳腐化が起き、膨大なコストがかかる。
やはり連接する際のシステムのコンバージェンス、データ化。
これは次の議題の共通のデータベースに絡みますが、ここが死活的に重要ではないかと思います。
 
また、500のクラスター、政策群について、やはり府省連携を図って、例えば消防災の強化にしても消防庁の施策、国交省の施策、総務省の施策、内閣府の施策、厚生労働省の施策、全て絡んでおりますので、この府省横断のコラムを必ずつくって、共通評価化していくということをぜひ取り組んでいただきたいと思います。
 
あと、事務局説明は割愛されましたが、資料1のサマーレビューですね。
いわゆるチームレビューとして、概算要求前にきちんとこれをやって、サマーレビューのコラム、欄を資料1の7ページにありますが、しっかりと事務レビューシートにサマーレビューコラムをつくるべきであると思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 

新藤大臣、どうぞ。
 

新藤大臣

  何点か御質問やら、御意見をいただきましたので、私のわかるというか、考えている範囲でお答えしたいと思います。
 まず、渡議員から、どうして一本化できないのかということでありますが、これは着手時点が違っていたということに主な起因がございます。
ですから、政策評価自体は平成13年、14年ごろから始めまして、森田先生には大変お世話になったわけでありまして、実は私はそのときの導入当時の総務省の政務官でございまして、これにかかわっておりましたから、よく覚えております。
 
これをやりながら、前政権において、いわゆる仕分けというものがあって、その中から出てきたものが行政事業レビューでありまして、当初は全く別物というか、別々に動いていたのです。
ですから、それを我々は発展、改善させて、1つの作業の中にしていかなくてはいけない。
そもそも500と5,000は違うのではなくて、5,000が分類されて500になっているわけでありますので、あとはきちんとそういう作業を一致していけば、将来的には、これは一体化できるものだと思います。
 
ただ、公開性だとか、チェックの仕組みが違いますから、その意味においては、ここのところは過渡的な意味で、それなりの意味もあるなという気持ちはあります。
 
2つ目に、秋池議員から、評価視点や用語をそろえるべきだということは、私も全く同じ感覚を持っておりまして、実は政策評価というのは、各省によって政策評価の様式も違うし、政策評価の指標そのものが違っていたのです。
ですから、どこかの省は「A1」とか書いてあるのです。
何なんだこの「A1」という評価はというと、わからないわけでございます。
片や「改善すべき」とか、いろいろあるので、それは統一しようと。
 
ただ、5類型に当てはまるのではなくて、たくさんの政策指標、評価指標があっていいと思いますが、そういう共通化をすることは、今年度やらせていただきたいと思います。

それから、大塚議員から、複数の類似省庁にまたがるものがあるではないかと。
まさにそれが、議員にもおっしゃっていただきましたが、政策ツリーとして予算の款項目節とは別のものをつくらないと、本当の政策評価になかなかならないのですよ。
これは「命をまもる」といえば、消防だけではありません。
そこに病院の配置はどうなのだ、医師の数は足りているのか、看護婦はどうなのか、そこの病院に行くまでの道路の改良はきちんとできているのか。
そういう厚労省や国交省やいろんなところと絡みながら1つの政策を達成させる。
だから、各省においては小さな仕事かもしれないけれども、成果を挙げるためには極めて重要な施策だというものが必ずあるので、それをツリー化する中であぶり出していくということが非常に重要なのであります。
また、それを我々はやりたいと思っています。
 
最後に、先ほど政務が評価すべきと言いましたが、政務官や副大臣、大臣というのは役所の人間ですから、本来、その役所のつくっている側にいるわけであります。
本当にチェックすべき主体は議会なのです。
それは衆議院には決算行政監視委員会というものがあり


まして、私はこの大臣になる4カ月前まで決算行政監視委員長をやらせていただいておりました。
そこでこの行政事業レビューや政策評価で出してきたものを、今度は議会の委員会のサイクルに載せる。
それもマニュアルは作ってあります。
議会は議会で厳しくチェックしながら、政策評価、政府が行っている事務事業をチェックする。
そして、それを予算に反映させる。
決算行政監視委員会は、唯一勧告できる権限を持っておりまして、決議と勧告ができるのですけれども、明治以来、初めて私が決議というものを出したのでありますが、そういう議会の権能も入れながら、これをうまく、いわゆるPDCAなのですが、駄目なところを探して削るというよりは、寄せ集めて良いものにし、その分ここを削れるねという政策の前向きな評価ができるようにしていくべきだと考えております。
 

稲田行政改革担当大臣

  新藤大臣、ありがとうございます。
 行政事業レビューと調達改善計画については、おおむね皆様方の賛同を得られているものと思います。
 実はここから、自由討論を後半やろうと思ったのですけれども、時間がなくなってまいりましたが、非常に幅広い観点から、既に自由討論に入ったように議論を皆様方からいただいたものと思っております。
 
少し自由討論の視点だけを挙げておきます。
 
1番目、「無駄撲滅とともに生産性を上げる方向に持っていくべき」「インセンティブもあったほうがよい」という御意見がありましたけれども、どのような取り組み方があるのか、
2番目、レビューシートの作成などの取組を地方も含め、行政全般に広げて「共通のインフラ(データベース)」として活用することが考えられるのではないか、
3番目、行政や予算について、国民によりわかりやすく情報提供をし、関心を高めていただくことについてどう考えるべきなのか、
4番目、前回御意見があったように、国の事業について「あったほうがいいけれども、なくてもよいもの」というのをどのように捉えて、どのように改革を進めていくべきか、などの視点もあるのではないかと思います。
 
もう既に今、私が申し上げた視点を踏まえて、自由討論をしていただいたものでございますので、その自由討論は、今の皆様方の御意見で十分いただいたものとしたいと思っております。
 
財務大臣から、何か御意見はございませんでしょうか。
 

麻生副総理

  先ほど、渡議員のところで調達の話がありましたけれども、政府が調達するときに一番問題なのは、原則は1年限りなのです。
でき上がるのに3年かかるものもある。
例えば軍艦1つ発注しますよ。
そうすると、仮に年度分割で契約してしまうとすると、バウの部分はA社として、スターンの部分はB社が落として、真ん中の部分は何と、毎年入札などされたら、製造する側は、来年なくなると思ったら、その分高く乗せてかけるのです。
3年連続1社が取ったら、3割余るのですよ。
それは儲けですか。
発注の方法を1

年限りではなくて、もうちょっとやることを考えれば安くなる方法はあるのだと、大きなものを発注するたびにそう思っていました。
 
私の意見です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 今日は、自由討論の時間をとることができなかったのですけれども、本日の議論はここまでとさせていただいて、取りまとめをさせていただきます。
 まず、本日の前半と後半の御議論を踏まえて、資料1、資料2については、本会議として了承をいただいたということとさせていただきます。
 また、本日、本当に皆様方全員から幅広い御意見をいただきました。
今後、いただいた御意見を念頭に置きながら、無駄撲滅について取り組んでいくとともに、さらに行政改革の検討を進める上で参考にしてまいりたいと思っております。
 
それでは、最後に安倍総理から御発言をいただきたいと思います。
 カメラが入室いたしますので、少々お待ちください。
 (報道関係者入室)

稲田行政改革担当大臣

  それでは、総理よろしくお願いいたします。
 

安倍内閣総理大臣

  本日、この第2回行政改革推進会議において、当面の検討課題である3つの分野、無駄の撲滅、特別会計改革、独立行政法人改革のうち、無駄の撲滅につきまして御議論をいただきました。
 その結果、無駄の撲滅に取り組む際のインフラともなる行政事業レビューや調達改善計画について、さまざまな改善策や新たな取組等の具体策を取りまとめていただきました。

無駄の撲滅への取組を不断に行っていくことは極めて重要であります。
行政事業レビューの実施や調達改善計画について、本日の取りまとめを踏まえ、政府全体としての意思決定を行い、しっかり取り組んでまいります。
 
また、本日は、無駄の撲滅に関連して、皆様から幅広く御意見をいただきました。
安倍内閣として、本日の議論を踏まえながら、引き続き行政改革に取り組んでまいります。
 次回より、特別会計改革及び独立行政法人改革について御議論をいただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 

稲田行政改革担当大臣

  総理、ありがとうございます。
 カメラの方は、ここで御退室ください。
 (報道関係者退室)

稲田行政改革担当大臣

  それでは、次回につきましては、今、総理から御発言がありましたように、独立行政法人改革及び特別会計改革について御議論をいただきたいと思います。
 以上をもちまして、本日の会議を終了させていただきます。
どうもありがとうございました。
 



posted by hatena at 05:00| Comment(0) | 官邸・内閣府系の審議会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月23日

医療法人の役員変更





最近、行政手続の効率化が云々、やたらと喧しい。




「行政改革」なんてのは「何をいまさらな」くらい使い古された言葉ですけど、いままでのは

 「ムダを削る」

ということが中心になっていて、そのためには

 「何がムダか」

が判らなければならず、しかし「ムダの在りか」を知っているのは、そのムダの恩恵を受けている役所自身というコメディが繰り返されてきたのであります。



歴史

近代日本の行政改革の歴史は、それこそ明治維新とともに始まったと言える。
明治天皇は1879年に節倹の聖旨を出して過度な財政支出を戒め、内閣制度発足時にも伊藤博文が作成した「官紀五章」にも「繁文を省くこと、冗費を節すること」が掲げられている。
更に1893年には帝国議会に艦船の新造を認めてもらうために官吏の給与一部返上と行政整理を約束した和衷協同の詔が出されている。
日露戦争後の社会構造の変化や財政難が問題視されるようになると、歴代内閣は次から次に行政の効率化と経費削減のための方針を掲げ、前者の一部は実現される(農商務省の分割や厚生省の新設など)が、後者に関しては官僚たちの強い抵抗があってほとんど実現できなかった。
太平洋戦争の戦時体制においても、戦局にすばやく対応するために内閣総理大臣への権限強化や国家戦略を担う総合国策機関の設立などが構想され、そのための法制も一部で整備されたが、機能させることは出来なかった。
戦後も経済復興と財政難への対応から行政組織の再編や行政手続の見直しなどが行われたが、大きくなった行政組織の整理の検討が本格化するのは高度経済成長期に入ってからである。

行政改革 (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A1%8C%E6%94%BF%E6%94%B9%E9%9D%A9




ところが、最近の「行政改革」といえば、

 「ITを駆使した効率化」

ってのが問答無用の前提になっているのであります。




これまでは、「縦割り」と「紙ベース」という制度的な障害のおかげで

 「改革するほうが非効率」

という言い分も通用してきた。




ところが、あらゆる情報がデジタル化されたため、制度と制度との間に一本の補助線を書き込むだけで、手続そのものが消滅してしまうような時代になっちゃった。




こうなると、これまで役所が並べ立てていた理由も、「省益」でしかないことが一目瞭然になる。




むしろ、

 従来の公式見解を繰り返すしか芸のない「お役人さま」

よりも、

 手続のムダさを実感している「利用者」

や、

 そうしたムダを削るプロの方々「(情報技術者とか経営者・コンサルタントとか)」

のほうが

 「かいしんのいちげき」

を繰り出しやすかったりするのであります。




つまり、これまでのような組織を組み替えただけの「行政改革」では済まない、「行政再定義」の時代になってきたのかな、と。




今回は、そんなお話。




小ネタであります。





⑤バックヤードでの情報連携の推進


  • ワンスオンリー原則のためのバックヤード連携において、個人情報関連に関しては、マイナンバー法に基づく情報連携、また、法人・登記情報に関しては、法人番号を鍵とした情報連携が予定されているところ。

  • 今後、更に事業者等の情報に係るバックヤード連携を進めるためには、どのような情報をどのようなアーキテクチャーのもとで進めて行けばよいか検討してはどうか。


マイナンバーに係る個人情報の情報連携登記・法人設立等関係手続における情報連携
  • マイナンバー法別表第二に規定する手続については、2017年7月から、情報提供ネットワークシステムが稼働し、添付書類の削減などが行われる予定。
  • 2018年から法務省において予定されている登記情報システムの更改にあたり、登記事項証明書等に係る情報連携の仕組みを導入予定。
kntmn2.gif
knttk2.gif
(出典) 総務省個人番号企画室『マイナンバー制度における情報連携について』(2016年5月)(出典) 各府省情報化統括責任者(CIO)連絡会議決定(2016年10月31日)
上記図は、電子行政分科会資料


行政手続・民間取引IT化の検討方針と課題(案)<議論用メモ> (首相官邸)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/senmon_bunka/detakatsuyokiban/kiseiseidokaikaku_dai2/siryou1_3.pdf





ITを活用するのは大いに結構なんですけど、同時に、役所の文書の中でカタカナ語の使用も一気に増えた気がする。




もちろん、早い段階で情報で公開されるようになったというのは、大きいにしても。



バックヤード
(backyard)

店舗のうち、売場に供さないスペースをいう。小売業においては商品倉庫やパッケージングをするスペースなどをいい、飲食店では厨房や材料置場などが該当する。

流通用語辞典 ((株)ジェリコ・コンサルティング/コトバンク)
https://kotobank.jp/word/%E3%83%90%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%A4%E3%83%BC%E3%83%89-602457
ワンスオンリー

行政に一度提出した資料は、もう一度提出する必要がないとの考え方。

週刊「T&A master」 (ロータス21)
http://www.lotus21.co.jp/data/news/1709/news170929_01.html


「The Once - Only Principle Project」(TOOP)は、経済活動や行政活動における手続上の障害を減らしていくことを目指して、EUと準加盟国からなる50の組織が役所の縄張りを越えた幅広い領域で「ワンスオンリー」原則を実現するための戦略である。

Brief information (TOOP)
http://www.toop.eu/

Once-Only

「ワンスオンリー原則」(OOP)は、「行政分野におけるデジタル化」の文脈において用いられる言葉である。
それは、
 「市民や企業は、行政機関全体に対し、どのような情報であれ、1回だけ提出すれば済む」
ことを意味する。
すなわち、提出された情報を受け取った行政機関は、それを他の行政機関に提供する。
もちろん、情報の安全性の確保は徹底しなければならない。

Home > About > Once-Only
http://www.toop.eu/once-only
アーキテクチャー
(architecture)

アーキテクチャとは、情報システムの設計方法、設計思想、およびその設計思想に基づいて構築されたシステムの構造などのことである。

IT用語辞典バイナリ (Weblio)
https://www.weblio.jp/content/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%AD%E3%83%86%E3%82%AF%E3%83%81%E3%83%A3





英語やITの素養がないと付いていけない。




「学校で習うことは無駄だから、OJTで教育する」

っていうのが日本の文化だったはずなんだが。




10年後、役所が出す文書を、国民の何%が「読める」のか、予想できないな。






 「社内公用語を英語にするくらいならC言語にしてやる!!」――と、スクウェア・エニックス(スク・エニ)の和田洋一社長が7月7日Twitterでシャウトしている。

・・・中略・・・

 フォロワーからの「いっその事0か1のみで話せばいいのに」という返信には「無理。。」と答えている。

「社内公用語を英語にするくらいならC言語にしてやる!!」――スク・エニ和田社長 2010年07月07日 (ねとらぼ)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1007/07/news065.html





もちろん、行政機関におけるカタカナ語が問題になるのは、今に始まったことではない。




以下、しばらく外来語の現代史。





○千賀委員

 それからこの前も申しましたが用語であります。
強いてむづかしい字をかなで書くということをしなくても、わかりやすい字があるんじやないかと思うのです。
たとえばドツクという字が使つてあります。
これは日本語は船渠という字で今まで表現されておると思うのですが、これはなぜドツクと言うのですか。
これは造船所に類したものの施設のことだろうと思うのですが、ドツクとなぜ言わなければならないか、船渠と言つたら表現ができないか、それから「じんかい」なども、日本語で言えば、ちりとあくたということになるだろうと思う。
どうせ不満足であるならば、ちりとあくたとかえたら一体どうでしよう。
そうしたらだれも指をさすことのできない日本語が並んでおるので、かなで書いてもこれならばわからないと言う人もないのですが、「じんかい」とかなで書いたならば、どんなようにでもこれは解釈ができます。
処理場があるから「じんかい」と言つても今はわかるかもしれませんが、「じんかい」とかなで書いた字を学校の入学試験にでも出したら、どんな解釈をつけるかわからないくらい日本語の種類は多いだろうと思う。
これはどうもむしろとらないと思います。
それからどこかに「じゆん化」ということがあつたのですが、これなども強いてここでつけなくても、多少は意味は違つても美化とかいうことを言つてもわかるのですが、二千何百字の制限された漢字の中でも、探せば美化よりももう少し近い字があるかも知れませんが、漢字で書きたければ、そういうふうにしてもよいのじやないか。
近ごろはまた何々の香りとか、うるおいとかいう字がよくはやるのですが、そんな字ならば、かな字を入れておいても、うるおいを増すとかうるおいをつけるというような字でいつても、もう少し明瞭にわかると思うのです。
法律と言えばこれは時代の教範、昔の兵隊で言つたら典範令でしようが、そういうような、時代のすべて民衆の頼るべきものを規制するこの書類に、こういうあいまいなことをなぜ書かなければならないか、私の言うようにしたのではどういう不便があるか、これの御見解を伺います。


○鈴木(俊)政府委員

 第2條の用語につきまして御見解を拜聽いたしたのでありますが、最初に御指摘になりましたドックという言葉でありますが、これはお話のように船渠という言葉も日本語として言い換えればむろんむずかしく言い換え得るわけでありますが、今日の状態では、殊に港の関係等のものはドックの方がむしろあたりまえの言葉で、それに習熟しているのではないだろうか。
ちようどマッチというのと同じような意味で、ドックというのは同じような一つの新しい日本語として一般化しておる、こういうふうに考えられましたので、かえつてそういう言葉を使つた方がよかろう、殊に船渠の渠の字は、たしか政府がきめました當用漢字の中にはいつておらないように記憶いたしておるのであります。
そういうこともありまして、ドックという字を用いたのであります。
かたかなで書きましたのは、外來語はかたかなで書くというやはりこれも新しい決定に基きまして規定をいたしておる次第であります。

 それから「じんかい」という言葉でありますが、これは先ほどもちよつと申し上げましたように、汚物掃除法という法律におきまして、塵芥処理場というのは一つの法律語として規定をいたしておりまするし、また塵芥処理場というのは一般市民としては、あれが塵芥処理場の煙突だということで、これもまた一般、用語になつておると思うのであります。
かえつて別な新しい言葉を用いますよりも、そういう習慣による、かつまた法律が容認をいたしております言葉を使つた方がよいと考えまして、いかにも半分漢字で半分ひらかなでおかしい感じでありますが、これも新しい用字例に從いまして、「じんかい処理、」こういたした次第であります。
それから「じゆん化」という言葉でありますが、これも申し上げましたように、この醇という字がやはり常用漢字の中にはいつておりませんので、「じゆん化」といたしたのでありますが、醇風美俗と申しますか、これは風俗について美化というだけでは、今ちよつとお話にも出ましたうるおいが出ませんので、やはり「じゆん化」という言葉の方がそこに風俗について適切なる内容を現わす、こう考えましたので、あえて「じゆん化」という言葉を用いた次第であります。


○千賀委員

 ドックの方は、こういうときで、われわれ英語民族に征服されておりますから、そういう字を多く使うということなら、それもいいかも知れませんが、片一方の漢字をかなにかえたことは、そういう説明だといくらでもかなで書かなければならない。
どうしても昔の漢字によらなければならないことになると、その漢字は使えないことになれば、今はあなた方の氣持ではそれでわかるだろうと思いますが、後人にはわからない。
これは混乱を起してしまう。
「じんかい」とは一体何かというので、辞典を引いたら初めてこれになる、こういう國民に煩雜なことを與えていく罪を、われわれがここでつくることはよくないと思います。
何としてもこれは與えられた漢字だけで表現をするか、またどうしたつて表現をする義務があるのでしよう、でなければはつきりとこれだけの漢字では必要な表現ができないのだから、これこれの字を殖やさなければならないということを議会に要求するか、どちらかしなければ、私はこんなことばかり重なつていつたならは漢字が二千いくらになつた國民の幸福よりも、難解なかなばかり並べられてそのために神経を使う不幸の方が、はるかに分量が多くなつて、われわれの手で國民を言葉の混乱に追い込み、言葉の不幸を招來させることになると思います。
わずかな数であつても、それぞれ当面した人は考えていかなければならぬ。
私はこれは非常に重大なことだと考えております。
今当局の考えと私の考えと違うことはやむを得ません。
私は以上の意思表示をいたしておきます。



昭和23年05月25日 衆議院 治安及び地方制度委員会
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/002/1336/00205251336031a.html





内閣が「日常よく用いられる外来語」の一覧を出していた。




バブルがちょうど終わった平成3年に出されたものなので、その頃の雰囲気がよく出てる選択だと思う。





(引用註.人名と地名は除外した。)



外来語の表記

内閣告示第二号

一般の社会生活において現代の国語を書き表すための「外来語の表記」のよりどころを、次のように定める。



平成3年6月28日


付録

用例集

凡例

  1.  ここには,日常よく用いられる外来語を主に,本文の留意事項その2(細則的な事項)の各項に例示した語や,その他の地名・人名の例などを五十音順に掲げた。地名・人名には,それぞれ(地),(人)の文字を添えた。

  2.  外来語や外国の地名・人名は,語形やその書き表し方の慣用が一つに定まらず、ゆれのあるものが多い。この用例集においても,ここに示した語形やその書き表し方は,一例であって,これ以外の書き方を否定するものではない。なお,本文の留意事項その2に両様の書き方が例示してある語のうち主なものについては,バイオリン/ヴァイオリンのような形で併せ掲げた。



【ア】 
 アーケード
 アイスクリーム
 アイロン
 アカデミー
 アクセサリー
 アスファルト
 アナウンサー
 アパート
 アルバム
 アルファベット
 アルミニウム
 アンケート
 
【イ】
 イコール
 イニング
 インタビュー/インタヴュー
 インフレーション
 
【ウ】
 ウイークデー
 ウイスキー/ウィスキー
 ウイット
 ウエスト waist
 ウエディングケーキ/ウェディングケーキ
 ウエハース
 ウラニウム
 
【エ】
 エイト
 エキス
 エキストラ
 エチケット
 エネルギー
 エプロン
 エレベータ/エレベーター
 
【オ】
 オートバイ
 オーバーコート
 オフィス
 オリンピック
 オルガン
 オレンジ
 
【カ】
 ガーゼ
 カーテン
 カード
 カーブ
 カクテル
 ガス
 ガソリン
 カタログ
 カット
 カップ
 カバー
 カメラ
 ガラス
 カルシウム
 カルテット
 カレンダー
 カロリー
 カンツォーネ
 
【キ】
 ギター
 キムチ
 キャベツ
 キャンデー
 キャンプ
 キルティング
 
【ク】
 クイーン
 クイズ
 クインテット
 クーデター
 クーポン
 クエスチョンマーク
 クオータリー/クォータリー
 グラビア
 クラブ
 クリスマスツリー
 グループ
 クレジット
 クレヨン
 
【ケ】
 ケーブルカー
 ゲーム
 
【コ】
 コーヒー
 コールタール
 コスチューム
 コップ
 コピー
 コミュニケーション
 コンクール
 コンクリート
 コンツェルン
 コンピューター/コンピュータ
 コンマ
 
【サ】
 サーカス
 サービス
 サナトリウム
 サファイア
 サマータイム
 サラダボウル
 サラブレッド
 サンドイッチ
 
【シ】
 シェーカー
 シェード
 ジェットエンジン
 シャツ
 シャッター
 シャベル
 シャンソン
 シャンツェ
 シュークリーム
 ジュース juice,deuce
 ジュラルミン
 ショー
 シンフォニー
 シンポジウム
 
【ス】
 スイートピー
 スイッチ
 スイング
 スーツケース
 スープ
 スカート
 スキー
 スケート
 スケール
 スコール
 スコップ
 スター
 スタジアム
 スタジオ
 スチーム
 スチュワーデス
 ステージ
 ステッキ
 ステレオ
 ステンドグラス
 ステンレス
 ストーブ
 ストップウオッチ/ストップウォッチ
 スプーン
 スペース
 スポーツ
 ズボン
 スリッパ
 
【セ】
 セーター
 セーラー〔~服〕
 セメント
 ゼラチン
 ゼリー
 セロハン
 センター
 
【ソ】
 ソーセージ
 ソファー
 
【タ】
 ダイジェスト
 タイヤ
 ダイヤモンド
 ダイヤル
 タオル
 タキシード
 タクシー
 ダンス
 
【チ】
 チーズ
 チーム
 チェーン
 チェス
 チェック
 チケット
 チップ
 チフス
 チューバ/テューバ
 チューブ
 チューリップ
 チョコレート
 
【ツ】
 ツアー tour
 ツーピース
 ツンドラ
 
【テ】
 ティー
 ディーゼルエンジン
 テープ
 テーブル
 テキスト
 デザイン
 テスト
 テニス
 デパート
 デュエット
 テレビジョン
 テント
 テンポ
 
【ト】
 ドア
 ドーナツ
 トマト
 ドライブ
 ドライヤー
 トラック
 ドラマ
 トランク
 ドレス
 トロフィー
 トンネル
 
【ナ】
 ナイフ
 ナトリウム
 
【ニ】
 ニュース
 
【ネ】
 ネーブル
 ネオンサイン
 ネクタイ
 
【ハ】
 パーティー
 バイオリン/ヴァイオリン
 ハイキング
 ハイヤー
 バケツ
 バス
 バター
 バドミントン
 バトン
 バニラ
 パラフィン
 バルブ
 バレエ〔舞踊〕
 バレーボール
 ハンドル
 
【ヒ】
 ピアノ
 ビーナス/ヴィーナス
 ビール
 ビスケット
 ビタミン
 ビニール
 ヒューズ
 ビルディング
 ヒンズー教/ヒンドゥー教
 ピンセット
 
【フ】
 ファイル
 ファッション
 ファン
 フィート
 フィクション
 フィルム
 プール
 フェアプレー
 フェルト
 フェンシング
 フォーク
 フォークダンス
 フォーム
 プディング
 フュージョン
 ブラシ
 プラスチック
 プラットホーム
 プラネタリウム
 ブレーキ
 プログラム
 プロデューサー
 
【ヘ】
 ヘアピン
 ペイント
 ベーカリー
 ベーコン
 ページ
 ベール/ヴェール
 ベストセラー
 ペダル
 ベニヤ〔~板〕
 ベランダ
 ヘリウム
 ヘリコプター
 ヘルメット
 ペンギン
 
【ホ】
 ボウリング〔球技〕
 ホース
 ボートレース
 ボーリング boring
 ボクシング
 ポケット
 ポスター
 ボタン
 ボディー
 ホテル
 ボランティア
 ホルマリン
 
【マ】
 マージャン
 マイクロホン
 マフラー
 マラソン
 マンション
 マンモス
 
【ミ】
 ミイラ
 ミキサー
 ミシン
 ミルクセーキ
 
【メ】
 メーカー
 メーキャップ
 メーデー
 メガホン
 メッセージ
 メロディー
 メロン
 メンバー
 
【モ】
 モーター
 モデル
 モルヒネ
 
【ユ】
 ユニホーム
 
【ヨ】
 ヨット
 
【ラ】
 ライバル
 ラジウム
 ラジオ
 ランニング
 ランプ
 
【リ】
 リズム
 リノリウム
 リボン
 リュックサック
 リレー
 
【ル】
 ルクス lux
 
【レ】
 レイアウト
 レール
 レギュラー
 レコード
 レスリング
 レビュー/レヴュー
 レフェリー
 レベル
 レモンスカッシュ
 レンズ
 
【ロ】
 ロケット
 ロマンス
 ロマンチック
 
【ワ】
 ワイヤ
 ワックス


トップ > 政策・審議会 > 告示・通達 > 告示・通達(か行) > 外来語の表記 (文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k19910628002/k19910628002.html





上のリストのうち、知らなかった言葉について、意味を調べておく。



カンツォーネ

カンツォーネ
(Canzone)
は、イタリア語では単に歌を指す単語である。
しかし、日本国内においては主に19世紀末から20世紀初頭に書かれたイタリアの大衆歌曲、特にナポリのもの(カンツォーネ・ナポレターナ、Canzone napoletana)を指すことが多い。
これらはイタリア民謡とよばれることもあるが、古くより伝承された作者不詳の歌ではなく、近代において専門的な作曲家によって作曲された流行歌であるため、「民謡」と呼ぶのは適切ではないとする意見もある。
この他、1960年代~1970年代に日本で流行したイタリアのポップスのこともカンツォーネと呼ばれる。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%84%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%8D
キルティング

表布と裏布の間に綿などの芯(しん)を入れて,刺し縫いにし,模様を浮き出させる手芸の技法。また,そのようにして縫ったもの。

キルティング【quilting】 (三省堂 大辞林/Weblio)
https://www.weblio.jp/content/%E3%82%AD%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0
クインテット

五重奏。五重唱。また、五重奏曲・五重奏団。

クインテット(〈イタリア〉quintetto) (デジタル大辞泉/コトバンク)
https://kotobank.jp/word/%E3%82%AF%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%88-482259#E3.83.87.E3.82.B8.E3.82.BF.E3.83.AB.E5.A4.A7.E8.BE.9E.E6.B3.89
シャンツェ

ドイツ語でスキーのジャンプが行なわれる競技台。英語ではジャンピングヒル jumping hillという。

シャンツェ (ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典/コトバンク)
https://kotobank.jp/word/%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%84%E3%82%A7-76581
リノリウム

リノリウム (linoleum) は、建材の一種。床材などに使われる。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%AA%E3%83%8E%E3%83%AA%E3%82%A6%E3%83%A0





「外来語」が「外来語」として定着してきたのは、一般人が日常生活(それぞれの趣味の領域を含む)において、モノやコトを表す道具として利用されてきたからだと思う。




たとえ一部の人間にとって無関係であったとしても、「日常生活」という共通項を設定することにより、「社会」という仮想基盤を作り出し、行政がお墨付きを与える。




そういう「正統性」を背景にしているのが「外来語」じゃないかな。




ところが、最近の外来語は、「社会」の土台になっている「日常生活」において定着する前に、「職業生活」からどんどん侵入してくる。





○厚生省作成文書におけるカタカナ語使用の適正化について

(平成9年9月10日)
(総第89号)


(各内部部局の長・社会保険庁総務部総務課長あて厚生省大臣官房総務課長通知)

カタカナ語使用の適正化については、「公用文におけるカタカナ用語使用の適正化について(平成1年8月7日総第112号)」により、その留意事項を示してきたところであるが、その後の厚生行政の進展及び各種用語の定着状況等を踏まえ、厚生省作成文書についてできる限り国民に分かりやすく、誤解を避けるようにするとの観点から、カタカナ語の使用については、今後別添の事項に留意することとしたので通知する。

なお、今後とも、新たなカタカナ語の適正な使用についての検討及びカタカナ語使用の状況の点検等を行うこととしており、各部局におかれても、カタカナ語使用の適正化のための体制を整備すること等により、その適正な使用に留意されたい。

(別添)

カタカナ語使用についての留意事項

  •  行政について国民一般に幅広く理解を得るため、厚生省の文書においてはできる限り国民にわかりやすく、誤解を避けるような用語を使用するよう留意するものとする。

  •  適用範囲は公文書、パンフレット、報告書等厚生省が作成する文書であること。審議会、検討会の報告書等においても、本留意事項の趣旨を踏まえ、できる限り日本語表記が行われるよう努めること。


    1.  前記の趣旨から、文書におけるカタカナ語使用は極力避ける。

      (例)
      ニーズ
      →要望、要請、需要、国民の求め
      コンセプト
      →概念、基本的考え方
      リスク
      →危険、危険因子、危険性、不確実性
      プロジェクトチーム、ワーキンググループ
      →委員会、研究会、検討会、作業班
      フォローアップ
      →再点検、再検討、追求、徹底、新版
      スキーム
      →計画、機構、体制、要綱、仕組み
      アカウンタビリティー
      →説得力、責任、説明責任
      ビジョン
      →展望、構想
      コーディネート
      →仲介、調整
      カンファレンス
      →会議、協議、打合せ
      フリーアクセス
      →患者による医療機関の自由選択、自由に選択できること、患者による自由な受診
      メディカルチェック
      →医学的検査
      ライフサポートアドバイザー
      →生活援助員
      リターナブル
      →返却可能な、繰り返し使用可能な
      ホスピタルフィー
      →病院に対する報酬
      ドクターズフィー
      →医師に対する報酬
      モデル事業
      →試行的事業
      ドナー
      →臓器(腎臓、骨髄)提供者
      レシピエント
      →移植希望者
      ケアプラン
      →介護サービス計画
      ケアマネジメント
      →介護支援サービス
      ケアマネージャー
      →介護支援専門員


      (注) 円滑な日本語表記への移行のために必要がある場合には、日本語表記が定着するまでの間は、介護サービス計画(ケアプラン)、介護支援サービス(ケアマネジメント)のように、括弧書きによるカタカナ語の併記を行っても差し支えないこと。

    2.  ただし、日本にはなかった新しい考え方や物事を表現する場合、新施策を端的に表現できる場合及び専門用語を使用せざるを得ない場合等にはカタカナ語の使用を認める。

      この場合においても、

      ① 日本語による説明の後に括弧書きでカタカナ語を表記する

      ② ①に拠りがたい場合は、カタカナ語の後に日本語訳を括弧書きにする

      ③ カタカナ語がアルファベット略字となる場合は、綴りを略字の前に表記する

      (例) ①及び③の場合
      世界保健機関(World Health Organization、WHO)

      ④ 前後の文章から意味がわかるようにする

      等わかりやすくするために工夫する。

      (例)
      スクラップアンドビルド
      →廃止と新設(スクラップアンドビルド)
      バイオセーフティー
      →病原微生物の安全な取扱(バイオセーフティー)
      プライマリ・ケア
      →初期診療における総合的な診断と治療(プライマリ・ケア)
      バリアフリー
      →無障壁、障壁除去、障壁解消、共生(バリアフリー)
      例えば
      バリアフリー化
      →無障壁化(バリアフリー化)
      バリアフリー住宅
      →無障壁住宅(バリアフリー住宅)
      ノーマライゼーション
      →障害のある人も家庭や地域で通常の生活ができるようにする社会づくり(ノーマライゼーション)
      ホームヘルパー
      →訪問介護員(ホームヘルパー)
      デイサービス
      →日帰り介護(デイサービス)
      ショートステイ
      →短期入所生活介護(ショートステイ)
      ケアハウス
      →介護利用型軽費老人ホーム(ケアハウス)
      新ゴールドプラン
      →新・高齢者保健福祉推進一〇か年戦略(新ゴールドプラン)
      サテライト型デイサービス
      →既存施設活用型日帰り介護(サテライト型デイサービス)
      マニフェスト
      →産業廃棄物管理票(マニフェスト)
      プルーデントマン・ルール
      →英米において企業年金の資産運用関係者に課されている注意義務(プルーデントマン・ルール)
      ADL
      →日常生活動作能力(Abilities of Daily Life、ADL)
      医薬品GLP
      →医薬品の安全性に関する非臨床試験の実施基準(Good Laboratory Practice、GLP)
      食品GLP
      →食品検査の業務管理基準(Good Laboratory Practice、GLP)

      なお、2に該当する用語であって日本語による説明が長いもの(例えば「新・高齢者保健福祉推進一〇か年戦略」)を繰り返して使用する場合においては、当該用語の二回目以降の表記については、カタカナ語のみの使用が可能であること。

    3.  既に日常化していて、外来語として十分定着していると思われるものについては、カタカナ語をそのまま使用する。
      (例) サービス、リハビリ、〇〇センター、パンフレット、エイズ、ペットボトル、スロープ

    4.  翻訳語についても、適宜わかりやすくするための工夫を行うものとする。

    厚生省作成文書におけるカタカナ語使用の適正化について (厚生労働省)
    http://wwwhourei.mhlw.go.jp/cgi-bin/t_docframe2.cgi?MODE=tsuchi&DMODE=SEARCH&SMODE=NORMAL&KEYWORD=%83j&EFSNO=53&FILE=FIRST&POS=0&HITSU=3





こっちは農水業界。





○日笠勝之君

 まず、法案に直接関係はないかと思いますが、去る4月25日に国立国語研究所外来語委員会がいわゆる国の発行する白書などを対象としていろいろ調査をしたところ、分かりにくいということで、分かりやすくするための言葉遣いの工夫ということを発表されました。
正にその中に、本日、私も議論させていただきますトレーサビリティーというのがあるわけでございます。
国立国語研究所によりますと、言い換え語としては履歴管理というのがいいんではないかと。
また、その他の言い換え例語とすれば、履歴管理制度であるとか追跡可能性とか、そういう言葉でもいいんですよと、こういうことを提案をしておるわけでございます。

 このトレーサビリティーという言葉は、国語研究所によりますと、知っているという方はわずか8%だそうでございます。
まだまだ市民の皆様方には認知されていない用語であり、内容だろうというふうに思うわけでございます。

 そのほかにも、国語研究所によりますと、私たちが平素何でもなく使っている言葉が63ほどあるわけでございますが、その中の大変、言い換えたらどうかということも提案をしておりまして、恐らくそちらにいらっしゃる農水省の幹部の方も平素から使っている言葉として、例えばアウトソーシングだとかアクションプログラム、林野庁長官も何か木材需要のアクションプログラムを作るという答弁をされましたね。
このアクションプログラムであるとかガイドラインだとかシーズ、これは種ですね、シーズシェアとかシンクタンクスキームスクリーニングとか、そのほかにもマスタープランであるとかライフサイクルであるとかリーフレットとかワーキンググループとか、こういう言葉を日常的に皆さん使っておられますが、国立国語研究所は分かりにくいんだと、これは。
だから、分かりやすく言葉遣いを工夫をしたので考えてもらいたいと、こういうことでございますが、白書などもたくさん農水省は出されますね。
水産白書もあれば林業白書もありますし、もちろん本体の白書もあります。
そういう意味では、今後これらの外来語の言い換えをこの提案を受けてどのようにされますか。
これは大臣にお聞きしたいと思います。


○国務大臣(亀井善之君)

 今、委員御指摘のとおり、大変そのような横文字、片仮名の言葉が多いわけでありまして、正にこのトレーサビリティーシステムにつきましても、食品産業センターの調査でも75%くらいの方がお分かりにならないとか、あるいは農林漁業金融公庫の調査でも65%の方が知らないというような回答があるというようなことも承知をいたしております。

 そこで、白書等々、我が省、それらの問題にできるだけ分かりやすく、またいろいろな制度を作りましても、国民の理解が得られなければ何のことにもならないわけであります。
いろいろ広報誌であるとか説明会であるとか、あるいは手引書等々につきまして、十分そのことに留意をして今後ともやってまいりたいと、このように考えております。



平成15年05月27日 参議院 農林水産委員会
http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/sangiin/156/0010/15605270010012a.html





それは、「経済のグローバル化」だとか「規制緩和」だとかの大義名分じゃなくて、もっと単純に、政治や行政が国民の「中流」を想定しなくなったからだと思う。




「誰もが分かる言葉」っていうのは、結局、定着するまでに何十年もかかる「時代遅れの言葉」(それが悪いと言っているわけではない)なわけで、そんな言葉を使っていては、政治や行政の最前線では対応できない。




これまでは「主権者である国民」というフィクションの下、「言い換えの努力」が積み重ねられてきたんだけど、そうした「翻訳」の努力さえしなくなったみたいな。




まぁ、言い換えたところで意味不明なんですが。




そういうわけで、ここまでが話のマクラです。




で、役所の説明が意味不明でも、ITの活用によってコストが下がって利便性が向上するなら、国民が理解できないにしても、それは結構なことであります。




ところが、役所手続の中には、この記事の一番最初に引用した

 「バックヤードでの情報連携」

なんかしなくても、言い換えれば

 「ワンスオンリー」

なんかしなくてもいい手続さえ生き残っていたりします。




それが、こちら。




医療法人(役員変更登記〔理事長の重任〕)

医療法人変更登記申請書

名称医療法人○○会
主たる事務所○県○市○町○丁目○番○号
登記の事由理事長の変更
登記すべき事項別紙のとおりの内容をオンラインにより提出済み
添付書類
社員総会議事録(評議員会議事録)1通
理事会議事録1通
(注) 理事長に選出されたことを証する書面として添付します。
就任承諾書○通
(注) 理事長が理事及び理事長に就任を承諾したことを証する書面が必要となります。
ただし,理事会等の席上で理事長が就任を承諾し,その旨の記載がされている場合には,申請書に,別途,就任承諾書を添付する必要はありません。この場合,申請書には,「就任承諾書は,理事会議事録の記載を援用する。」等と記載してください。
印鑑証明書○通
(注) 理事長を選出した議事録等の理事長の印鑑については,理事長が登記所に提出している印鑑を押す必要があります。登記所に提出している印鑑が押されていない場合には,理事会議事録については,出席した理事及び監事全員の実印を押し,全ての印鑑について市町村長が作成した印鑑証明書を添付することが必要になります。また,都道府県知事の認可を受けて1人の理事を置く医療法人,又は,社員総会若しくは評議員会の決議により理事長を選出した場合にあっては,議長及び出席した理事の全員の印鑑を押し,当該印鑑について市町村長の作成した印鑑証明書を添付します。
医師(歯科医師)免許証の写し又は認可書1通
(注) 医療法人の理事長は,医師又は歯科医師である理事のうちから選出するとされていることから,その就任(重任を含む。)による変更登記の申請書には,医師(歯科医師)免許証の写し(欄外に「これは医師(歯科医師)免許証の写しである。」旨記載し,記名・押印(登記所届出印)してください。)を添付します。
都道府県知事の認可を受けて医師若しくは歯科医師でない理事が理事長として選出され,又は,1人の理事を置く医療法人は,当該認可書を添付します。また,この場合においては,申請書に認可書の到達年月日を記載する必要があります。
委任状1通
(注) 代理人に申請を委任した場合にのみ,必要となります。
上記のとおり, 登記の申請をします。
平成○○年○○月○○日
○県○市○町○丁目○番○号
申請人 医療法人○○会

○県○市○町○丁目○番○号
理事長 ○○ ○○ ㊞

○県○市○町○丁目○番○号
上記代理人 ○○ ○○ ㊞

連絡先の電話番号○○○-○○○-○○○○
○○法務局○○支局御中


医療法人役員変更登記申請書(理事長の重任,資産の総額の変更)を一部修正 (商業・法人登記の申請書様式/法務省)
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html




「重任登記」が必要かどうかはさて措き、なぜ「医師免許証」がいるんでしょうか?




この「免許証」は死亡したり資格を失ったりすれば返納しなければならない。




(登録の抹消)
第6条


2 医師が死亡し、又は失踪の宣告を受けたときは、戸籍法による死亡又は失踪 の届出義務者は、30日以内に、医籍の登録の抹消を申請しなければならない。

(免許証の返納)
第10条


1 医師は、医籍の登録の抹消を申請するときは、住所地の都道府県知事を経由して、免許証を厚生労働大臣に返納しなければならない。
第6条第2項の規定により医籍の登録の抹消を申請する者についても、同様とする。

医師法施行令
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=328CO0000000382&openerCode=1




しかし、死亡したからといって、役所が免許証の回収に来るわけでもない。




つまり、遺族が返さなければ、たとえ死亡していても書類上は生きているように「重任登記」ができてしまうのである。




ちょっと前の「年金不正受給」問題のように。





 住基ネットで死亡を把握できない残り約14万人(全体の0・4%)に関する状況の確認と、防止策の早期確立が求められる。機構広報室は「性善説に立った制度で、不正が横行している。抜本的な対策を検討中」としている。

<年金不正受給>「性善説」確認に限界 2015年12月12日 (ヨミウリ・オンライン)
http://www.yomiuri.co.jp/local/hiroshima/feature/CO003941/20151211-OYTAT50049.html





年金なら明らかに犯罪だから、まだわかりやすい。




しかし、そもそも「死亡したから返納する」なんて手続は、一般人は知らないでしょ。




しかも、法律によって返す義務があったりなかったりする。





亡くなられた方の運転免許証について

亡くなられた方の運転免許証についてはご家族の方に返納をしていただく義務はありません。

運転免許証の返納(亡くなられた場合) 2017年4月18日 (愛知県警察本部)
https://www.pref.aichi.jp/police/menkyo/shibouhennou.html


医師免許は終身有効なので、手塚はプロの漫画家になった後も医師免許(昭和28年9月18日医籍登録第150476号)を保持し続けていた。
没後の2003年11月20日に宝塚手塚治虫記念館の企画展「『ブラック・ジャック』のDNA」にその現物が公開陳列されたときにある識者から、免許証は当人死亡後は政府に返納せねばならないと定めた法令に違反している、という指摘があった。
厚生労働省と協議した結果、いったん規定どおりに返納手続きを行った後に同省が改めて遺族に譲渡するという特例の措置がとられた。
厚生労働省医政局医事課試験免許室では「こういった例は過去にあまりない」としている。
それにより現在遺されている免許証には「抹消」の赤印が押されている。


脚注

  1. 医師法第8条の規定に基づき内閣が制定した医師法施行令の第4条第2項には

    「医師が死亡し、又は失そうの宣告を受けたときは、戸籍法による死亡又は失そうの届出義務者は、30日以内に、医籍の登録のまつ消を申請しなければならない。」

    とあり、また同7条第1項には

    「医師は、医籍の登録のまつ消を申請するときは、住所地の都道府県知事を経由して、免許証を厚生労働大臣に返納しなければならない。第4条第2項の規定により医籍の登録のまつ消を申請する者についても、同様とする。」

    となっている。
    このため本来は死亡後30日以内に遺族が医師の免許証の返納手続きをとるべきなのであったが、記念館内に展示保管されているため悪用される恐れがないこと、医師免許証に文化財としての価値があるという理由で、法令の本来の規定を超えた特例の措置がなされた。


手塚治虫 (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%89%8B%E5%A1%9A%E6%B2%BB%E8%99%AB





それこそ、読売新聞の見出しである「「性善説」確認に限界」の世界であります。




そもそも、これまで「ニセ医者」がたびたび社会問題になっていて、お約束ともいうべき手口が「医師免許証のコピー」じゃなかったのか?





実在の医師に成りすまし。免許など書類コピー

岸本「この男性と病院の間には人材派遣会社が入っていました。通常、医師を派遣する場合は医師免許や保険証、専門医認定書など6種類の書類で確認することになっていますが、派遣会社には実在する医師の免許のコピーが提出されていました」

優しい先生はニセ医者だった!東京・高島平の病院で2300人診察…うち100人誤診 2012/9/10 (J-CASTニュース)
https://www.j-cast.com/tv/2012/09/10145749.html?p=all

医療機関は黒木被告から医師の証明として、医師免許証のコピーを受け取っていました。
インターネットを使って画像を手に入れ、偽造されたものでしたが、気付きませんでした。

医療機関は、国から医師免許証の確認を原本で行うよう指導を受けています。

追跡" なりすまし"社会 2012年11月1日 (クローズアップ現代/NHK)
http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3268/1.html





そして、法務省は、裁判手続において、

 「書類の審査は、明白に疑わしいものを通さないことだ」

と繰り返し明言している。






 現実の登記申請の大多数は実体関係に符合したものであり、実体関係に符合しない登記申請は、登記申請の全体からみればごく少数である。
このような状況の下において、登記と実体関係との間の一致を確保することを要請すれば、登記手続が渋滞し、取引の円滑を阻害し、登記制度自体の利用度を低めることになりかねない。
登記官は、登記申請に当たって添付された印鑑登録証明書の真正について審査するに際しても、その作成名義人たる者が作成したものであることが明白に疑わしいようなもの、すなわち、登記官として通常の注意をもってすれば偽造であることが容易に分かるものを看過しないだけの注意義務を負うにすぎず、当該印鑑登録証明書の形式的真正について積極的な心証を得るまでの必要はないというべきである。
したがって、登記申請に当たって添付された印鑑登録証明書の外形上、形式的真正が明白に疑われる事情が存在し、登記官として通常の注意義務をもってすれば偽造であることが容易に分かったにもかかわらず、これを看過しない限り、登記官の行為が国家賠償法上違法とされることはない。


不・平16.3.26・東京地判 2018年07月22日 (このブログの記事)
http://syotogen.seesaa.net/article/456352252.html


  書面審理においては、第一に、提出を必要とする書面が外形上提出されているか否かを審査し(不登法49条8号)、第二に、提出された各書面の形式的真正(作成名義人たる者が真正に作成したこと)について審査することとなるが、これらの実質的真正(記載内容の実体関係との符合、実体法上の有効性等)については、原則として登記官の審査権限は及ばない。そして、各書面の形式的真正の審査においては、登記官は、形式的観察を通じて明白に疑わしいようなものを看過しないだけの注意義務を負うだけであって、仮に何らかの理由によってその形式的真正に疑念をもったとしても、その形式的真正について、それ以上の積極的心証を得るまでの審査をなす必要も権限もない。


不・平16.12.15・水戸地判 2018年07月29日 (このブログの記事)
http://syotogen.seesaa.net/article/456352276.html


 登記官には,登記申請書類の形式的真正について,積極的確信を得るまでの審査を行う必要も権限もないから,登記官としての通常の注意をもってすれば偽造であることが容易に分かるような,真正であることが明白に疑わしい書面に基づく登記申請を看過したのでなければ,登記官に過失があるとはいえない。


不・平14.4.23・東京地判 2018年08月05日 (このブログの記事)
http://syotogen.seesaa.net/article/456488483.html





これは医師免許だって同じでしょ。




ところが、現在では、医師の免許なんてのは、だれでもネットで検索できてしまう。




これであります。






医師のデータベース4種 意外なことまでわかるその使い方
から画像のみリンク。
http://nnbomb.net/parent/doctor/database/

医師等資格確認検索 (厚生労働省)
https://licenseif.mhlw.go.jp/search_isei/




試しに、有名人を検索してみる。




dct.png


医師等資格確認検索 (厚生労働省)
https://licenseif.mhlw.go.jp/search_isei/




Wikipediaの裏取りでも利用されてました。






高須 克弥
(たかす かつや、1945年〈昭和20年〉1月22日 - )
は、日本の医師(美容外科・整形外科)。
医学博士、昭和大学医学部客員教授、医療法人社団福祉会理事長、高須クリニック院長、浄土真宗僧侶。

芸能人を中心とした有名人の手術を数多く手がけた。
また、格闘技K-1のリングドクターとしても活動した。
国際美容外科学会会長および日本美容外科学会会長も務めた。


経歴

1969年に昭和大学医学部を卒業した[12]。


脚注

  1. ^ 同年医師免許を取得(厚生労働省・医師等資格確認検索より)


Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%AB%98%E9%A0%88%E5%85%8B%E5%BC%A5





つまり、医療法人の重任登記においては、別の役所が公開している情報でさえ、法務局は本人に「証明」を求めている。




レベル0

(現状)




登記官




⇦⇦⇦⇦⇦

申請人
公開


医師免許
情報




法務局厚労省





厚生労働省と「連携」するまでもなく、登記官がネットで調べれば済む話なんだが。




レベル0

(現状)




登記官




⇦⇦⇦⇦⇦

申請人
公開


医師免許
情報




法務局厚労省
レベル1

(当然)




登記官




⇨⇨⇨⇨⇨

アクセス
公開


医師免許
情報




法務局厚労省






業界人なら、「登記官の判断の資料は、申請人が提出した云々」とかいう呪文を唱えるんだろうね。きっと。




しかし、医師免許は、インターネットという文明の利器によって、本人の「個人情報」ではなく、「公知の事実」になったのだよ。




これまでは、それを知るのが困難であるために、申請人にその証明を付けさせているに過ぎない。




じゃあ、登記法上、「公知の事実」がどう扱われているか?




たとえば、これ。






syusei.png

〔注〕
  1. これは,地番の変更を伴わない場合の例である。

  2. 行政区画,郡,区,市町村内の町若しくは字又はそれらの名称の変更があったときは,その変更による登記があったものとみなされ(商登法第26条),登記官が職権で記載の変更をすることができる(規則第42条)。その場合には,(2)のように,登記の年月日の記録に代えて,「平成何年何月何日修正」と記録する。
     もっとも,会社は,登記官に対して登記簿におけるこれらの記載の変更を促す申出をすることができる(昭和39年9月26日付け法務省民四第308号法務省民事局第四課長回答)。この場合の登記の記録も,同様である。


会社法の施行に伴う商業登記記録例について(平成18年4月26日民商第1110号依命通知)p42 (PDF : p46)
http://www.moj.go.jp/content/001203889.pdf

(HTML化)
http://krk.ojaru.jp/kirokurei.html

休眠会社のみなし解散 (後篇) 2017年10月29日 (このブログの記事)
http://syotogen.seesaa.net/article/453344070.html




上の規定は、「地番の変更を伴わない」から、言い換えれば、「市区町村名や字名という冠が変わっただけ」だから、登記官が「公知の事実」として職権で手続することができるというフィクションである。




その根拠になっている法律の規定が、こちら。




(行政区画等の変更)
第26条


 行政区画、郡、区、市町村内の町若しくは字又はそれらの名称の変更があつたときは、その変更による登記があつたものとみなす。

商業登記法
http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=338AC0000000125&openerCode=1




原則は、「公知の事実」として登記官が職権で(= 登記名義人等に無断で)変更できてしまう。




しかし、登記所の管轄区域外だったりして登記官が知らない場合も起こり得る。




そのときは、申請人が情報提供することによって、いかにも登記官が

 「そんなことはじめから知っていたよ

というフィクションを作り出しておいて、管轄区域内の変更と同じように登記官に手続させるという茶番である。




まぁ、その手続にすら矛盾が生じている、というのが上の記事の趣旨なんだが。




登記法というのは、ここまで涙ぐましい努力をして「公知の事実」というフィクションを維持している。




ならば、医師免許だって、すでに「公知の事実」なのだから、同じように「登記官は知っているべき」なんじゃないのか?




ネットに名前を入れるだけなんだよ。





まずは、この滑稽さを噛み締めよう。




そして、次の段階として、冒頭の「バックヤードの連携」があれば、もっと効率化できる。




厚生労働省が抹消した医師の氏名(と登録番号)を法務局に通知し、それに該当する理事長がいる医療法人に注意書きをしていく。




もう死んでますよって。




つまり、「資格があること」の証明を求めるんじゃなくて、「資格がなくなったこと」を原因として手続を開始する制度に改めればいいのである。




レベル0

(現状)




登記官




⇦⇦⇦⇦⇦

申請人
公開


医師免許
情報




法務局厚労省
レベル1

(当然)




登記官




⇨⇨⇨⇨⇨

アクセス
公開


医師免許
情報




法務局厚労省
レベル2

(可能)




登記官




⇦⇦⇦⇦⇦

通知
公開


医師免許
情報




法務局厚労省







そういうわけで、「ワンスオンリー」であるまでもなく、そもそも「医師免許証の写し」を提出させる手続そのものがムダである。




で、障害となるのは、法務局側のシステムで「医師の名前」を検索できるかどうか。




まぁ、これについては期待できないでしょうな。




「支店」がシステム上で検索できないため、申請人に本店所在地と支店所在地で二重に手続させているような役所ですから。





支店と営業所 その2 2017年12月31日 (このブログの記事)

http://syotogen.seesaa.net/article/454373421.html




「データの持ち方」の問題であります。





その上の第3段階として、手塚治虫くんのように死亡後も免許証が返納されない場合は、「免許証の写し」を提出させても、厚生労働省の「医師等資格確認検索」をしても見破れない。




これは、市町村と厚生労働省との間の、「バックヤードの連携」の問題。




レベル0

(現状)




登記官




⇦⇦⇦⇦⇦

申請人
公開


医師免許
情報




法務局厚労省
レベル1

(当然)




登記官




⇨⇨⇨⇨⇨

アクセス
公開


医師免許
情報




法務局厚労省
レベル2

(可能)




登記官




⇦⇦⇦⇦⇦

通知
公開


医師免許
情報




法務局厚労省
レベル3

(展開)




登記官




⇦⇦⇦

通知
公開


医師
免許
情報




⇦⇦⇦

通知




戸籍




法務局厚労省市町村






そして、最終段階として、「年金不正受給」問題のように、死亡届が出されないため、実際は死んでいるのに戸籍上は生きている場合については、自治体レベルで「事実の問題」として対処するほかない。




こうして段階ごとに場合分けしてみると、現在の制度がどれほど滑稽か、お分かりいただけるかな?




ホントに、意味のないところに、手続コストを差し込んでいるのである。




長くなったので、つづく。





posted by hatena at 05:00| Comment(0) | 医療法人 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月22日

渡邊大門『戦国の貧乏天皇』





渡邊大門/戦国の貧乏天皇/柏書房/2012










「吉川英治『私本太平記』」の読書日記を書いている時に、あてもなく検索して見つけた中世本。




たまたま図書館においてあったので借りてみた。




本書の中身についてあれこれ書く前に、著者の渡邊くんについて書いておく。




渡邊 大門
(わたなべ だいもん、1967年10月3日 - )
は、日本史学者、株式会社歴史と文化の研究所代表取締役、大阪観光大学観光学研究所客員研究員。
神奈川県出身、のちに兵庫県、京都府、岡山県、埼玉県で過ごし、現在は、千葉県市川市に在住。
専門は日本中世史。
特に、赤松氏、宇喜多氏、浦上氏、山名氏、朝倉氏、波多野氏など西国大名の研究を専門とし、近畿、中国地方を研究のフィールドとしている。

著書

単著

  • 『戦国武将はイケメンがお好き?』(KKベストセラーズ〈ベスト新書〉、2009年)

  • 『「アラサー」が変えた幕末――時代を動かした若き志士たち』(毎日コミュニケーションズ〈マイコミ新書〉、2009年)

  • 『奪われた「三種の神器」――皇位継承の中世史』講談社現代新書、2009年)

  • 『中世後期山名氏の研究』(日本史史料研究会、2009年)

  • 『戦国大名の婚姻戦略』角川SSC新書、2010年)

  • 『戦国期赤松氏の研究』(岩田書院、2010年)

  • 『宇喜多直家・秀家――西国進発の魁とならん』(ミネルヴァ書房〈ミネルヴァ日本評伝選〉、2011年)

  • 『戦国誕生――中世日本が終焉するとき』講談社現代新書、2011年)

  • 『中世後期の赤松氏――政治・史料・文化の視点から』(日本史史料研究会、2011年)

  • 『戦国の交渉人――外交僧安国寺恵瓊の知られざる生涯』(洋泉社〈歴史新書y〉、2011年)

  • 『戦国期浦上氏・宇喜多氏と地域権力』(岩田書院、2011年)

  • 『逃げる公家、媚びる公家――戦国時代の貧しい貴族たち』(柏書房、2011年)

  • 『大坂落城――戦国終焉の舞台』角川選書、2012年)

  • 『備前浦上氏』<中世武士選書>(戎光祥出版、2012年)

  • 『赤松氏五代――弓矢取って無双の勇士あり』(ミネルヴァ書房〈ミネルヴァ日本評伝選〉、2012年)

  • 『戦国の貧乏天皇』(柏書房、2012年)

  • 『信長政権――本能寺の変にその正体を見る』河出ブックス、2013年)

  • 『秀吉の出自と出世伝説』(洋泉社〈歴史新書y〉、2013年)

  • 『誰も書かなかった黒田官兵衛の謎』(中経出版、2013年)

  • 『黒田官兵衛・長政の野望――もう一つの関ケ原』角川選書、2013年)

  • 『黒田官兵衛――作られた軍師像』講談社現代新書、2013年)

  • 『牢人たちの戦国時代』平凡社新書、2014年)

  • 『人身売買・奴隷・拉致の日本史』(柏書房、2014年)

  • 『謎とき 東北の関ヶ原 上杉景勝と伊達政宗』光文社新書 2014

  • 『こんなに面白いとは思わなかった! 関ヶ原の戦い』光文社・知恵の森文庫 2015

  • 『戦国史が面白くなる「戦国武将」の秘密』洋泉社、歴史新書 2015

  • 『真田幸村と真田丸 大坂の陣の虚像と実像』河出ブックス 2015

  • 『宮本武蔵 謎多き生涯を解く』平凡社新書 2015

  • 『【猛】列伝 真田幸村と大坂の陣』KKロングセラーズ・ロング新書 2015

  • 『真田幸村と真田丸の真実 家康が恐れた名将』光文社新書 2015

  • 『真田幸村のすべて 大坂城決戦! 真田丸への道』毎日新聞出版 2015

  • 『幕末・維新に学ぶ 英傑はいかに困難を乗り越えたか』歴史と文化の研究所 2016

  • 『おんな領主井伊直虎』KADOKAWA 中経の文庫 2016

  • 『進化する戦国史』洋泉社 2016

  • 『井伊直虎と戦国の女傑たち 70人の数奇な人生』光文社知恵の森文庫 2016

  • 『戦国武将の「闇」100のミステリー 常識がくつがえる!』PHP研究所 2017

  • 『流罪の日本史』ちくま新書 2017

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%A1%E9%82%8A%E5%A4%A7%E9%96%80





単著だけでも、すごい執筆ペースである。




しかも、研究者として専門の中世史について書きながら、一般向けの戦国史や幕末本を書いている。




「研究者」と「ライター」との「二足のわらじ」ってことらしい。




その拠点が、こちら。




☆会社概要

社名株式会社歴史と文化の研究所
法人番号0400-01-092277
所 在 地市川市南大野2-4 A棟604号室
設立年月日2015年10月1日
業務内容
  1. 歴史と文化に関する調査・研究。
  2. 歴史と文化に関する書籍・雑誌の企画、編集、執筆。
  3. 歴史と文化に関する講演。
  4. その他付帯する一切の事業。
発行株数300株
資本金300万円
代表取締役渡邊 大門
社員数1人
客員研究員13人

ようこそ! 株式会社 歴史と文化の研究所(代表・渡邊大門)のHPへ!‎ > ‎会社概要・客員研究員
https://sites.google.com/site/daimonwatanabe/home/zi-ji-shao-jie




常勤ポストを得られなかった博士が会社形態で活動しているらしい。




無計画に量産されて研究職になれなかった博士号取得者の問題は、水月昭道くんなどが書いているので、別に珍しい話ではない。






出版社からのコメント

◎若手博士たちとの対話でよく出る話題に、次のようなものがある。
「どうして博士号まで持っているのにこんな仕事をしているの?」と、世間から質問されることが「最もイヤなんだよね」。
彼らは、食べるためにさまざまなバイトをやっている。塾や家庭教師にとどまらず、飲食店の店員や洋服の販売員、コンパニオンや建設作業員といった肉体労働、なかには人に言えないものもある。
パチプロ生活では、そこのところが一番快適だった。なにせ、知らない人たちの集いの場である。「博士号を持っているのにパチンコ生活ですか?」などと、余計なことは間違っても聞かれない。   (本文を再構成)

水月昭道/ホームレス博士 派遣村・ブラック企業化する大学院/光文社新書/2010 (Amazon)
https://www.amazon.co.jp/dp/4334035825/




注目すべきはそこではなくて、渡邉くんの経歴。




社会人を経て放送大学で修士号、ネームバリューもなさそうな私立大学で博士号を取得したあと、研究者として専門書を出し、なおかつ一般向けの本も量産する、そのバイタリティがすごいな、と。




文系博士を目指すなら、このくらいの覚悟が必要ってことでしょうか。




有名大学の博士号や非常勤講師の経歴があっても、渡邊くんのように業界で生き残れる人は少ないんじゃないか、と。




そもそも、肩書きのない研究者は本も出せず、なかば自費出版のようなカタチで買い取る慣行があるとかないとか。




そんなことを書いていたのは、哲学の鷲田小彌太くんだったと思う。




その意味では、「作家」になってしまった渡邊くんは、生半可な研究者以上のものを手に入れたのかも知れない。




本書も、「戦国時代の天皇」という裏街道なテーマを、専門書的水準を保ちつつ、一般人でも読める「ですます調」で書いているあたりは、「二足のわらじ」効果なんだろうね。




歴史学者の中には、高校教師とか予備校講師とかをしていた人もいるし。




人生、何が活きてくるかわからない。




もっとも、それほど商売繁盛というわけではなさそうだ。




Twitterの書き込みでは、生活苦を訴えるものがある。





渡邊大門 @info_history1

私と同じく貧困の方へ。豆苗は最高です(100円くらいです)。買ってきて上の部分を食べたら、そのまま根っこを水につけておくと、ボーボーに生えてきます。何回食えるのだろうか?豆苗はニンニクと炒めてもよいですが、サラダに入れてもおいしくいただけます。味噌汁に入れてもよいでしょう。

渡邊大門@info_history1 (Twitter)
https://twitter.com/info_history1





自身の貧困ゆえに、天皇の貧民問題について実感をもって解釈できるなら、エリート街道を歩んできた一流研究者にはできない、独自の視点になるんじゃないかな。





で、本書の内容について。





【目次】

はじめに
第一章窮乏する室町期の天皇
第二章葬儀すらできなかった後土御門天皇
第三章即位式もやってもらえない後柏原天皇
第四章官位を売って生活費を稼ぐ後奈良天皇
第五章天皇はなぜ生き残ったか
おわりに

柏書房TOP > 実用書・教養書 > 単行本 > 日本歴史 > 戦国の貧乏天皇
(出版社のページ)
http://www.kashiwashobo.co.jp/book/b228710.html





本書に登場する「貧乏天皇」が、こちら。








在位





在位




在位




在位





マイナーすぎて全然知らん。




表の左端が1400年、右端が1600年を示している。




朝廷と武士との力関係はとっくに逆転している上に、下剋上の時代で戦乱が続いて旧来の秩序はボロボロになった、そんな時代。




武士たちが華々しい合戦をしていた裏側で、天皇たちはどう暮らしていたのかを描いた本。




しかし、朝廷のどん底時代にスポットライトを当てるってのは、なんか覗き見趣味みたいイヤだな。




中世史が頭に入った上でやるなら結構なことだが。




シロートには、むしろ、もうちょっと前の「武家との力関係が決定された時代」からがいいと思う。




「武士と朝廷」って枠組みを先に頭の中に作っておいたほうがいいんじゃないか、と。




そして、その一大トピックである「南北朝時代」は、1392年の合一によって終わっている。




後醍醐 vs 足利の南北朝の経緯については、こちらを参照。




吉川英治『私本太平記』 2018年05月26日 (このブログの記事)

http://syotogen.seesaa.net/article/458266287.html




要は、権力を掌握した足利尊氏くんが天皇を利用しようと思ったけれども、後醍醐くんはそれを嫌って逃げちゃった。




しょうがないから、尊氏くんは、別の天皇を仕立てて利用する。




こうなると、京都にいる尊氏くんの天皇(北朝)と、奈良にいる後醍醐くん(南朝)の二系統の天皇が併存してしまう。




これを「南北朝時代」という。




南北朝時代
(なんぼくちょう じだい)は、日本の歴史区分の一つ。
建武の新政の崩壊を受けて足利尊氏が新たに光明天皇(北朝側)を擁立したのに対抗して京都を脱出した後醍醐天皇(南朝側)が吉野行宮に遷った1336年(延元元年/建武3年)から、南朝第4代の後亀山天皇が北朝第6代の後小松天皇に譲位するかたちで両朝が合一を見た1392年(元中9年/明徳3年)までの、56年間をいう。
また両朝の並立はひとえに後醍醐天皇の皇位に対する執念が生み出したものであることから、彼を中心に歴史が動いた南北朝時代の序章とでもいうべき1331年(元弘元年)の元弘の乱から建武新政の終焉に至る5年間もまたこの時代に含めるのが一般的である。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E5%8C%97%E6%9C%9D%E6%99%82%E4%BB%A3_(%E6%97%A5%E6%9C%AC)




で、二系統に分岐していた天皇家が一系統に統一されたのが、1392年の「南北朝の合一」。




この「合一」に際しての条件が、「南朝」「北朝」で天皇を交代で出すという「両統迭立」というもの。




明徳3年(1392年)に足利義満がまとめた南北朝合一に際しても、両統迭立の理念が再度持ち出された。
合一後は、北朝の後小松天皇の子孫と南朝の後亀山天皇の子孫とのあいだで両統迭立を行うことが、合一の条件に盛り込まれたのである。
もっとも、当時の南北両朝の力関係から言って、北朝側はもちろん、南朝側も、この条件が遵守されるとは考えていなかったはずであり、実際にも遵守されなかった。
しかし、この条件を口実として、旧南朝の皇族の子孫や旧南朝にゆかりのある人々による室町幕府に対する抵抗や叛乱がその後も100年にわたって相次いだ。
これらの運動を後南朝という。

両統迭立 (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%A1%E7%B5%B1%E8%BF%AD%E7%AB%8B





この「合一」当時の足利将軍が義満くんであり、北朝の天皇が後小松くんでありました。




結局、この「両統迭立」という「合一」の条件は反故にされる。





明徳4年(1393年)に後円融上皇が崩御すると、義満はさらに朝廷への影響を強め、事実上の上皇として、後世「義満の院政」などと呼ばれる権力を振るい、後小松はその下でまったくの傀儡に甘んじた。

応永19年(1412年)8月29日、後小松は皇子の実仁親王(称光天皇)に譲位し、院政を開始。
これは明徳3年(1392年)の南北朝合一の際の条件である両統迭立に反しており、その後南朝勢力はしばしば反発して武装蜂起する。

・・・中略・・・

称光天皇は病弱でたびたび重態に陥り、皇子の誕生もなく、また後小松の第二皇子小川宮も早世したため後継者問題が生じ、後小松上皇は4代将軍足利義持と協議、後継者として崇光流の伏見宮貞成親王が有力視され、一時は後小松の猶子として親王宣下された。
しかし、これには称光が激しく反発したため、貞成は出家して皇位継承を断念した。

正長元年(1428年)、称光が危篤となると、6代将軍足利義教の仲介もあって、その死後に貞成の子息彦仁を猶子とし、後花園天皇として即位させた。

後小松天皇 (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%8C%E5%B0%8F%E6%9D%BE%E5%A4%A9%E7%9A%87




ここでようやく本書に登場する「後花園」くんの時代である。




騙された後醍醐系統の「南朝」は、反乱を起こす。





1392年(明徳3年)の南北朝合一時の約束(明徳の和約)では、天皇は北朝系(持明院統)と南朝系(大覚寺統)から交代で出す(両統迭立)ことになっていたが、1412年(応永19年)に北朝系の後小松上皇の次代として後小松上皇の皇子である称光天皇が即位したことをきっかけに、北朝系によって天皇位が独占されるようになったのに反抗して起こった。

1414年(応永21年)、4年前に京都を出奔して吉野に潜行していた南朝最後の天皇である後亀山上皇とその皇子小倉宮を支持して伊勢国司の北畠満雅が挙兵したが、室町幕府の討伐を受け和解、上皇は2年後に京に帰った。

後亀山上皇の崩御から4年後の1428年(正長元年)、嗣子のなかった称光天皇が崩御したために北朝の嫡流は断絶した。
後小松上皇が北朝の傍流(ただし持明院統としては本来の嫡流)である伏見宮家から彦仁王(後花園天皇)を後継者に選ぼうとしたことをきっかけに、北朝は皇統断絶して皇位継承権を失ったと考える南朝側は激しく反発する。
北畠満雅は再び小倉宮聖承(後亀山の皇子小倉宮恒敦の王子)を担いで伊勢で挙兵、幕府軍と戦って敗死した。

後南朝 (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%8C%E5%8D%97%E6%9C%9D




このあたりの歴史は、受験勉強でいろいろ覚えたはずなんだけど、キレイサッパリ忘れてました。




しかし、よくよく考えてみれば、そんなに縁のない時代でもなかったりする。




アニメの「一休さん」の時代背景がドンピシャなのであります。




そもそも、主人公の一休くんは、南北朝合一当時の天皇である後小松くんの息子と言われている。






出生地は京都で、出自は後小松天皇の落胤とする説が有力視されている 。
『一休和尚年譜』によると母は藤原氏、南朝の高官の血筋であり、後小松天皇の寵愛を受けたが、帝の命を狙っていると讒言されて宮中を追われ、民間に入って一休を生んだという。

一休宗純 (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E4%BC%91%E5%AE%97%E7%B4%94



一休

声 - 藤田淑子

本作品の主人公で実在の人物一休宗純をモデルとする。幼名は千菊丸(せんぎくまる)。安国寺では一番の後輩。正義感が強く心優しい、聡明な小坊主。
苦手なものは蜘蛛、雷、露姫(やんちゃ姫)、どちて坊やなど。
後小松天皇の庶子であることがアニメでは少しだけ触れられている。
作中では一休と呼ばれているものの、史実の一休は何度も名を変えており、実際には「周建」と名乗っていた時代と推測される(スペシャル版で史実の一休の一生を紹介した際に、この点も述べられている)。

一休さん (テレビアニメ) (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E4%BC%91%E3%81%95%E3%82%93_(%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1)





アニメの中では一休くんの一番弟子である蜷川新右衛門くんは、当初は、「将軍」義満くんに命じられ、一休くんの監視役だった。




蜷川 新右衛(ヱ)門(にながわ しんえもん)

声 - 野田圭一

寺社奉行という幕府の高官で、武芸の達人でもある青年武士。
当初は将軍の命により、天皇の落胤という出自を持つ一休の監視を命じられていたが、一休に接しているうちに、一休のとんちの鮮やかさと性格にほれ込み、一休への弟子入りを希望するようになる。
ことあるごとに難題の解決を一休に頼みに来る。
境内へ
 「一休さ~ん、一大事で御座る~!」
と駆け込み
 「どうしました、新右ヱ門さん」
 「どうしたもこうしたもないで御座るよ」
の会話から始まるのが毎度のパターン。

初期は一休の出自もあり「一休殿」と呼んでいたが、一休に嫌がられたため「一休さん」と呼ぶようになった。
末姫に惚れているが、自らが末姫に惚れられていることには気付いていない。

モデルは実在の人物である蜷川親当(通称 新右衛門)(にながわ ちかまさ(しんえもん))。
史実では一休宗純の連歌の弟子であり、頓智の弟子ではない。また一休が壮年になってからの関係であり一休より歳若である。
蜷川氏は山城守護および政所執事を世襲した伊勢氏の親族であったため、伊勢氏の下で山城守護代および政所代として軍事・警察および財務・訴訟を司る一族として活躍した。
また幕府の奉公衆でもあり、隣国丹波に所領を与えられ有事の際には軍事力を提供した。
「寺社奉行」という役職も、史実では室町幕府には存在せず、江戸幕府の高官である。

一休さん (テレビアニメ) (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E4%BC%91%E3%81%95%E3%82%93_(%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1)




ここで、「はてな?」なのは、一休くんの父親であり天皇の位にある後小松くんは、もともと北朝(幕府側)の天皇なわけだから、義満くんが一休くんを警戒する必要もないんじゃないかってこと。




で、その答えは、一休くんの母親にありました。




「母上さま」であります。





伊予の局(いよのつぼね)

声 - 坪井章子→増山江威子

一休の母。
俗名照子。
日野中納言・持明院基親の娘で天皇の女官。
後小松天皇との間に生まれたのが一休。
将軍に敵対していた南朝側・藤原氏系日野家の出身であったため、将軍によって一休と引き離され小さな家に暮らしている。
将軍は後にこれを恥じ、一休と住めるように大きな家を建てるが、一休はこれを断る。
息子の身を日々案じ、修行を重ねて立派な僧になって欲しいと願っている。

ナレーターは伊予の局と二役で坪井が行っており、伊予役と共に増山に引き継がれた。

一休さん (テレビアニメ) (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E4%BC%91%E3%81%95%E3%82%93_(%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1)

足利義満(あしかがよしみつ)

声 - 山田俊司(現・キートン山田)

室町幕府の第三代将軍。劇中では「将軍さま」と呼ばれる。
南朝側の母を持つ一休の行動を警戒している。
と同時にいつかは賢い一休をへこましたいと思っており、しばしば呼び寄せては無理難題をふっかけるのだが、大抵一休のとんちに一杯食わされて地団駄を踏むはめになる。
非常に子供っぽい反面、素直に一休さんに対して負けを認めるあたりは、器量が大きく潔いとも言える。
実際に作中でも、甥の小太郎が一休さんの頓智を認めず、負けを認めないのをたしなめるエピソードがある。
わがままで戦も頻繁に行い、民の生活を顧みないことが多いが、時には正義感から仁政を行うこともある。
ただしこれも、一休さんの頓智に負けた結果によることも多い。
露姫が苦手で、遊びに来たときには新右衛門や一休に面倒を見させている。

実在の人物だが、史実の足利義満は、一休が生まれた時には既に将軍職を息子の足利義持(作中では義持はハイハイが終わったばかりの幼児)に譲り、出家しており、金閣寺も義満の隠居所である。
一休の時代においては「将軍さま」ではなく、「前将軍さま」が正しいのだが、番組スタッフがあえて将軍として登場させ、出家もしていない。
史実でもアニメの描写に輪をかけてわがままな性格と言われるが、室町時代の全盛期を築いた有能な人物だった。

一休さん (テレビアニメ) (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E4%BC%91%E3%81%95%E3%82%93_(%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1)





母親が南朝方であったために、義満くんから警戒されたらしい。




まぁ、どうでもいいことだが、

「伊代はまだ16だから」

と松本伊代が歌った「センチメンタル・ジャーニー」がリリースされたのは、「一休さん」のアニメが終了する前年の1981年である。




とにもかくにも。




そして、もう一本の補助線となるのが、一休くんの兄弟子の哲斉くん。




哲斉(てっさい)

声 - 清水マリ(第5話まで) → 神谷明(第6話・第7話)→ 井上和彦(第22話以降)

安国寺の小坊主。
出家しているものの、将軍に敵対する南朝方の新田家ゆかりの人物。
第7話で一時還俗し戦いの世界へ戻るが、第22話で再び寺へ戻ってくる。
初めは生真面目で頑なな性格だったが、やがて皆と打ち解けていく。
絵を描くことが趣味。

一休さん (テレビアニメ) (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E4%BC%91%E3%81%95%E3%82%93_(%E3%83%86%E3%83%AC%E3%83%93%E3%82%A2%E3%83%8B%E3%83%A1)




南朝(後醍醐系)方の主力武士、新田義貞くんの関係者であります。





鎌倉幕府を攻撃して事実上滅亡に追い込み、後醍醐天皇による建武新政樹立の立役者の一人となった。
しかし、建武新政樹立後、同じく倒幕の貢献者の一人である足利尊氏と対立し、尊氏が建武政権に反旗を翻すと、後醍醐天皇により事実上の官軍総大将に任命されてこれに対抗した。
これにより各地で転戦したものの、箱根や湊川での合戦で敗北し、のちに後醍醐天皇の息子の恒良親王、尊良親王を奉じて北陸に赴き、越前国を拠点として活動するが、最期は越前藤島で戦死した。
東国の一御家人から始まり、鎌倉幕府を滅ぼして中央へと進出し、その功績から来る重圧に耐えながらも南朝の総大将として忠節を尽くし続けた生涯だった。

新田義貞 (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%96%B0%E7%94%B0%E7%BE%A9%E8%B2%9E





南朝(後醍醐系)再興を目指す哲斉くんは、父親が北朝系の一休くんを旗頭に引き込もうとする。





 さて、第6話「さむらいと千菊丸」で、一休さんの父親が帝であることを知ったテッサイは、以後しばらく「一休様」とよび、千早六蔵(南朝方の侍。楠家に仕え、蜷川新右エ門と一騎打ちしかけたこともある。なかなかの腕前だが、挙兵の後、戦死)にそそのかされ、一休さんを南朝方の大将に戦をおこそうとする。

その他の小坊主 (一休さん研究室)
http://ifs.nog.cc/ikkuusan.hp.infoseek.co.jp/kennkyuusitu/kobouzu.html




もともと、時代考証がかなりテキトーなので細かいことを言っても詮無きことなんだけど、いくらなんでも強引すぎないか?




この展開は。




哲斉くんのモデルについて、「一休さん研究室」では不詳としているけれども、ひょっとしたら、この人のモジリかな?





明叟斉哲 みょうそう-さいてつ

?-1347 鎌倉-南北朝時代の僧。
臨済(りんざい)宗。

デジタル版 日本人名大辞典+Plus (コトバンク)
https://kotobank.jp/word/%E6%98%8E%E5%8F%9F%E6%96%89%E5%93%B2-1114072






なお、いまさらですけど、一休くんも「臨済宗」の僧侶であります。





当然、一休くんが修行した「安国寺」も「臨済宗」。




ここでおもしろいのは、この「安国寺」って、戦国大名・毛利家の外交僧・安国寺恵瓊の「安国寺」でもあったりする。




本書の著者・渡邊くんも、安国寺恵瓊について書いていたりする。







渡邊大門/戦国の交渉人――外交僧安国寺恵瓊の知られざる生涯』/洋泉社 歴史新書y/2011年
https://www.amazon.co.jp/dp/486248784X

内容説明

関ヶ原合戦後、石田三成、小西行長とともに京都で公開処刑された恵瓊は、世の中の趨勢も読めず、西軍の敗北を招いた無能な「愚僧」=外交僧として刑場の露と消えたとされる。が、西国の大大名毛利氏や豊臣政権の外交交渉の屋台骨を支えた恵瓊は、政策立案能力と交渉力を兼ね備えた外交のプロフェッショナルかつ最高の知識人だった。

紀伊國屋書店
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784862487841





で、この2つの「安国寺」というのは、足利尊氏くん・直義くん兄弟が全国に建てた「安国寺」シリーズの一つなのである。





安国寺
(あんこくじ)
と利生塔(りしょうとう)は、南北朝時代に足利尊氏、直義兄弟が、北海道、沖縄を除く日本各地に設けた寺院と仏塔。


概要

臨済宗の夢窓疎石の勧めにより、後醍醐天皇以下の戦没者の菩提を弔うため、聖武天皇が国ごとに国分寺を建立したように、国ごとに1寺1塔を建てる計画を立てた。

1345年(興国6年、貞和元年)に、北朝光厳院の院旨を得て、寺を安国、塔の名を利生と称した。

1338年(延元3年、暦応元年)に、和泉・久米田寺を始めとし、以後、南北朝時代中期にはほとんど完成した。

安国寺と利生塔は新しく造営されたものもあるが、既存の寺院を修理してこれにあてた国もある。
安国寺による禅宗(特に臨済宗)の地方への波及、また、利生塔による禅宗以外の宗派の統制など、文化的、政治的意義が大きかった。
しかし、室町幕府の没落と共に、安国寺と利生塔も衰退した。

「一休さん (テレビアニメ) 」では、安国寺諸寺のうち1寺が、一休さんの修行していた寺ということにされている(第20話で琵琶湖が出て来るため、近江の安國寺と見られる)。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E5%9B%BD%E5%AF%BA%E5%88%A9%E7%94%9F%E5%A1%94





主人公のモデルとなった一休宗純くんが修行したのは、京都の安国寺らしいけど。





6歳で京都の安国寺[3]の像外集鑑(ぞうがいしゅうかん)に入門・受戒し、周建と名付けられる。

一休宗純 (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%80%E4%BC%91%E5%AE%97%E7%B4%94





Wikipediaの「安国寺」(シリーズ)のほうに一覧が載っている。




武士の間で禅宗が流行っていた頃に造られたものなので、当然、「臨済宗」や「曹洞宗」のように禅宗の寺が多いんだけど、中には「真言宗」とか「浄土真宗」とか、他宗派の寺も混じっている。




そして、安国寺恵瓊くん自身は禅宗(臨済宗)の僧侶だったんだけど、その後の「安国寺」は非禅宗系に変わっている。




「真言宗」であります。







安国寺 恵瓊
(あんこくじ えけい)
は、戦国時代から安土桃山時代にかけての臨済宗の僧で、武将および外交僧[注釈 2]。
道号(字)は瑶甫、法諱(諱)は恵瓊、号は一任斎または正慶。
一般に広く知られる安国寺恵瓊の名は、住持した寺[注釈 3]の名に由来する別名であり、禅僧としての名乗りは瑶甫 恵瓊(ようほ えけい)という。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E5%9B%BD%E5%AF%BA%E6%81%B5%E7%93%8A

不動院
(ふどういん)
は、広島県広島市東区にある真言宗別格本山の寺院。


概要

本尊は薬師如来。
山号は新日山。
足利尊氏・直義兄弟が諸国に設けた安国寺利生塔の一つという(安芸国安国寺)。
全国安国寺会会員寺院。



歴史

中世

開基は行基とも伝えられるが、創建年代や由緒については諸説ある。本尊薬師如来像の様式から平安時代には創建されていたと推察されている。
足利尊氏、直義兄弟が日本六十余州に設立した安国寺の一寺で、安芸安国寺として、又、安芸国守護武田氏の菩提寺として繁栄した。

しかし、戦国時代には戦火により伽藍が焼失し武田氏も滅亡したが、毛利氏の外交僧安国寺恵瓊により復興された。
関ヶ原の戦いで西軍に組した恵瓊は処刑され、毛利氏も転封後、福島正則が芸備両国の大名として入国し、正則の祈祷僧である宥珍が安国寺に入り住持となった。
この時、宗派を禅宗から真言宗に改め、不動明王を本尊とし不動院と称した。
後に浅野氏が国主として広島に入ると、浅野家歴代藩主の保護を受け明治に至った。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8B%95%E9%99%A2_(%E5%BA%83%E5%B3%B6%E5%B8%82)





そして、いつものように、本文に入れませんでした。




おしまい。




posted by hatena at 05:00| Comment(0) | 読書日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月21日

第1回 行政改革推進会議




行政改革推進会議のサイトは、こちら。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/gskaigi/



ページの変わるときの空行が削れなかったので、諦めた。



読むのに支障はないと思う。







行政改革推進会議第1回議事録


内閣官房行政改革推進本部事務局


行政改革推進会議(第1回)議事次第


日時:平成25年2月27日(水)17:15~17:55

場所:官邸2階小ホール


1開会

2構成員紹介及び会議の運営について

3各課題の説明
(1)無駄の撲滅・行政事業レビュー・調達改善
(2)特別会計改革
(3)独立行政法人改革

4各課題の今後の検討について

5意見交換

6閉会




稲田行政改革担当大臣

  本日は、お忙しいところ、お集まりをいただきまして、ありがとうございます。
 ただいまから、第1回「行政改革推進会議」を開催いたします。
 本会議は、資料1のとおり、行政改革推進本部のもと、民間の有識者の方々にも御参加
いただき、行政改革に関する重要事項の調査審議等を進めることを目的といたしております。
 安倍総理、麻生副総理ほか関係閣僚は、月例経済報告等に関する関係閣僚会議に出席中のため、途中から出席させていただきます。
 まず、本会議の構成員の御紹介については、お手元の資料2の議員名簿をもってかえさせていただきます。
 
本会議の運営につきましては、本会議自体は、議長挨拶等を除き、原則として非公開、本会議において使用した資料は、原則として公表、本会議の議事要旨及び議事録を作成し、原則として公表とさせていただきたいと思います。
 
よろしいでしょうか。
 また、本会議の概要につきましては、本会議の後に私から記者会見を行わせていただき
たいと思います。
 続きまして、本日御議論いただきたい各課題の説明に移りたいと思います。
 まず、資料3から5に沿って、無駄の撲滅、特別会計改革及び独立行政法人改革につい
て、まとめて事務局から説明させます。
 
それでは、事務局、お願いいたします。
 

藤城次長

  お手元の資料3-1、無駄の撲滅の取組についてのうち、行政事業レビューの関係でございます。
 
1ページおめくりをいただきまして、行政事業レビューとは、各府省が自ら全ての事業の点検・見直しを行うものであります。
執行状況の事後点検を実施しながら、全事業につきましてレビューシートを作成、公表いたします。
外部の視点を確保いたしまして、レビュー結果を事業執行や翌年度の予算の概算要求に反映するものでございます。
 
3ページ、行政事業レビューの実施自体は方向性として決まっておるのですが、さらなる改善のために幾つか検討の視点をここで示させていただいております。
 
1番目の自律的な取組をどうするか。
2番目のレビューシートの作成・公表の在り方をどうするか。
3番目に外部有識者が参加した公開の場における事業の点検の在り方をどうするか。
4番目に行政改革推進会議等による関与の在り方をどうするかといった点でございます。
 
4ページ以降に各論が載っておりますけれども、本日、または会議後、議員の皆様の御
意見を伺いまして、3月中に方向性を固めていきたいと考えているところでございます。
3-1の参考資料を飛ばしていただきます。
 資料3-2、調達改善に向けた取組の関係でございます。
 

1ページおめくりいただきまして、「これまでの主な取組」というところに2つポイントがございます。
 
1つ目は、随契、一者応札、共同調達あるいは調達・契約手法の多様化といった様々な課題がございますが、これをどう改善していくか。
2つ目に、そのプラットホームとして調達改善計画というものを昨年から策定いたしております。
まだ実施が始まったものでございまして、PDCAサイクルをどのように定着させ、確立させるかが課題となります。
 
資料4、特別会計改革についてという点でございます。
 
特会につきましては、非常に不透明ではないかとか、あるいは埋蔵金があるのではないかとか、様々な議論がございました。
 
1ページ目の一番上にありますように、行革推進法というところで、大体の検討の方向性が示され、平成19年には特別会計法が施行されて、かなりのものが実現しております。
ただ、残された課題につきまして、前政権で一旦の整理はなされましたが、それらにつきまして改めて議論をいただきたいと思います。
 
3ページが残された課題に基づく統廃合等の事例が載っております。
 
こうした内容を検証いたしまして、特会につきまして御検討いただきたいと思います。

松村次長

  続きまして、資料5、独法改革についてでございます。
 
1ページ、改革の経緯でございます。
 
独法制度は、平成13年の中央省庁改革に伴い、行政の執行部門を分離して、法人格を与えることにより業務の効率性と質の向上を図るという目的で創設されましたが、その後、5、6年経つうちに無駄や非効率が指摘されるようになり、また、平成18年には緑資源機構の談合事件が発覚したこともあり、もう一度、原点に立ち返って厳しく見直せという指摘を19年6月、第1次安倍内閣の骨太方針でいただいております。
これが独法改革のスタートでございます。
これを受けた見直し作業の結果、独法整理合理化計画が19年12月に閣議決定されておりますが、その内容を法制化した法案は審議に至らず、21年、廃案となっております。
 
ここまでが前回の自公政権での独法改革の議論でございます。
 
その後、政権交代により、独法整理合理化計画も凍結になって、民主党政権での独法改革議論がなされております。
そこでは、平成22年、そして昨年1月の閣議決定がそれぞれなされてございますが、この内容を法制化した独法通則法改正案も昨年11月の解散により廃案となってございます。
 
これを受けて、本年1月の自公政権の予算編成方針におきまして、昨年1月の民主党政権の閣議決定は当面凍結とされ、独法の見直しにつきましては、引き続き検討し、改革に取り組むとされたところでございます。
言ってみれば、3ラウンド目に入ったわけでございます。
 
2ページ、独法改革に関する検討の現状でございます。
 
「見直しの必要性」のところにありますように、近年の法人のガバナンスが不十分、不

要資産がたまっている等々の問題点が指摘されてきたところでございます。
 
これを受けて、事務・事業の見直しでは、事業の廃止や不要資産の国庫納付をさせ、左下の箱にありますように、金融資産2兆円の国庫納付に至っております。
 
また、制度・組織の見直しでは、独法制度を新たな法人制度に再構築させることとした上で、右側の大きな箱にありますように、各法人を類型ごとに分けてガバナンスルールを設けることとしたほか、共通ルールとして監事機能の強化や財務規律における透明性の強化、目標管理の仕組みの見直しなどを法案としてお出ししていたところでございます。
組織については、102法人を廃止、民営化や統合などにより、64法人に再編整理するという案を閣議決定しておりましたが、現在、凍結されている現状でございます。
 
以上を踏まえ、これまでの議論、取り組みについて改めて総括点検を行った上で、独法制度本来の趣旨と基本理念に則って見直しを行ってまいりたいと考えているところでございます。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  それでは、意見交換に入る前に、御議論の参考のため、私から検討の視点を申し上げたいと思います。
 無駄撲滅のうち、行政事業レビューについては、資料3-1、3ページにありますように、各府省は、点検に当たり外部性をどのように確保すべきかなどの5つの検討の視点を提示したいと思います。
 
また、調達改善の取組については、資料3-2、1ページにございますように、各府省が改善計画を策定し、PDCAサイクルを回す取組を定着させるためにはどうすべきかなどの2つの検討の視点を提示したいと思います。
 
特別会計改革については、制度本来の趣旨に即し、現下の経済社会情勢に対応した特別会計とするため、資料4、4ページにありますように、特別会計で行われる事務・事業について、引き続き国が実施するのではなく、民間や独立行政法人が実施したほうがよいものがあるのではないかなどの3つの検討の視点を提示したいと思います。
 
次に、独立行政法人改革については、今回の見直しを第1次安倍内閣以来の改革の検討の集大成と位置づけ、資料5、5ページにありますように、行政の執行部門に法人格を与えて、業務の効率性と質の向上を図るという目的で創設された独立行政法人制度の本来の趣旨と基本理念にのっとって見直しを行うなど、5つの視点で検討していただきたいと思います。
 
独立行政法人改革については、専門的かつ実務的な検討を要するため、有識者会合を立ち上げて検討を進め、その検討状況を踏まえつつ、本会議に報告し、御議論いただきたいと思います。
 
それでは、今回は会議の初回でもありますので、御出席の方々から3つの課題のほか、行政改革全般に対する皆様方の思いも含め、御意見をいただきたいと思います。
 御発言のある方は、お手数ですが、ネームプレートをお立ていただいてお願いいたした

いと思います。
 
どうぞよろしくお願いいたします。
 
土居議員、よろしくお願いします。
 

土居議員

  慶應義塾大学の土居でございます。
 このような会議の場に加わらせていただきまして、ありがとうございます。
 私として、これまで財政学を専門にしてきた立場から、今の大臣御提示の論点について意見を述べさせていただきたいと思います。
 
やはり国民の認識としては、まだまだ行政改革をやる余地があるのではないかという認識を恐らく持っていると思います。
ただ、不必要な官僚バッシングもまざっていたりいたしまして、本来、核心の問題を解決するということと、国民にどう見せていくかという見せ方との間で必ずしも今まではうまくいっていなかった部分があったのではないか。
大臣が集大成とおっしゃったのは、私自身も同感でありまして、ある種の改革の集大成をした上での打ち止め感というのでしょうか、これでしばらくは改革した後の仕組みでもって行政制度を定着させて、しばらくはいいのではないかと国民から信頼を受けるような、そういう改革にぜひ取り組んでいただきたい。
ないしは、私もそのための何らかのお手伝いをさせていただきたいと思っております。
 
個別論点について少し申し上げさせていただきますと、まず、行政事業レビューと調達改革については、これをさらに洗練化していくべきだと思っておりまして、特に行政事業レビューの位置づけについては、何らかの法的根拠といいましょうか、政省令でもいいと思うのですが、もう少ししっかりとした位置づけを仕組みとして定着させて、その上で根拠をもって検討を各省でしていただくと持っていってはいかがであろうかと思っております。
 
特に、行政事業レビューというのは、予算要求をする前の時期に行うことになっている点は極めて重要だと思っておりまして、予算要求を各省からいたしますと、やはりメンツといいましょうか、一旦出した要求を引き下げられないということが起こってしまいますものですから、虚心坦懐に要る要らない、減らす増やすということが言えないということになってしまう。
それを予算要求の前に虚心坦懐に議論をする機会が設けられれば、それは確かに要求前だから、そこまでメンツにこだわらなくてもよい部分があると思います。
そうなると、ある程度、自由な議論が各省内でもできるのではないか。
そういう意味では、非常に重要な仕組みであると思っておりますので、それを洗練化させることが重要だと思います。
 
独立行政法人に関して最後に1つだけ申し上げたいと思いますが、確かにこれまでにも取り組まれて、事務局からの説明にもありましたように、必ずしも全部はうまく達成できなかったと。
確かにどちらの組織をつぶすとか、くっつけるとか、そういう話がどうしても国民的な関心になりがちですが、私は、改革の検討の視点にも、大臣からお示しいただいたように、独立行政法人そのものの役割をきちんと全うできるような体制に改めていく

べきだと。
特に独立行政法人のガバナンスをきちんと強化できるような仕組み。
私が思うには、ある種の緩やかな信賞必罰といいましょうか、単に大臣から理事長が任命されて、その理事長が計画期間の間は自由にできるということだけだとどうしても自由に運営ができてしまった後の評価が甘くなると、何のために自由に運営させたのだとなって、国民からも、自分たちの我田引水でやっているのではないかと思われる傾向があると思いますので、必ずしもそうならないように、評価にメリハリをつけて、よかったら高く評価するけれども、悪かったらきちんとそれなりの責任を追っていただくというメリハリがつくと、多少、頑張ったときに高く評価して、報酬もある程度出すとかということになったとしても、そこについては国民の理解が得られるなどということもあるのではないかと思っております。
 
最後に、独法制度自体の改革も必要ですが、これは特会とも関係しますけれども、省庁設置法にも立ち入った改革、そもそも省庁設置法で職掌が定められているがゆえに、独法とか特会が設けられているという根源がありますので、その根っこの部分までもを含めて検討する必要があるのではないかと思います。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  では、田中議員、小林議員とお願いします。
 

田中議員

  大学評価・学位授与機構で准教授をしておりまして、また、日本NPO学会会長の田中弥生と申します。
 
ピーター・ドラッカーが恩師ですが、非営利組織と評価について学びました。
 
私は、無駄の撲滅について申し上げたいと思います。
 
ちょっと激しい言い方かもしれませんけれども、結論から申し上げますと、行政事業レビューの今までの長所は生かしながらも、新しいものにつくり変える、刷新するぐらいの意気込みで取り組んだほうがいいのではないかと思います。
 
確かに行政事業レビューはこれまでのしがらみに絡んだお金をあぶり出して、それを削減するという点で非常に効果的だったと思いますが、他方で、前政権のときの事業仕分けで批判されたように、劇場的というものがあったと思います。
非常にわかりやすい指標だとか、基準にどうしても走りがちで、その結果、部分最適は実現しても、全体最適になかなか結びつかなかったように私は拝見しております。
 
しかしながら、私が最も問題だと思っていたのは、これらの点ではありません。
むしろ、無駄の削減ということに走り過ぎて、生産性を上げるという視点が非常に希薄になっていった。
そのために、全般に内向き傾向が強くなったように感じています。
 
ですから、無駄の撲滅ということは絶対不可欠ですが、それに加えて、生産性を上げるという視点を加えていく必要があると思います。
それは、おのずと仕組みに関して難易度が高くなっていきますから、より科学的で、論理体系的な視点と方法論が求められます。
ですから、現状維持ではなくて、それをつくり変えるぐらいの気概が必要になるのではないかと思います。
 

少し大所高所の話だったのですが、ここでどういう心構えでいくのかが第1回目は問われると思いましたので、このような意見を申し上げたいと思いました。
 
以上です。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 では、小林議員、お願いします。
 

小林議員

  伊藤忠商事の会長をしております、小林でございます。
どうぞよろしくお願いいたします。
ご案内のとおり、私自身は一民間会社で経営に携わっている立場でありますので、民間での経験がどの程度、行政組織の中での改革推進にお役に立てるか、多少不安な点はありますけれども、皆様にいろいろご指示を仰ぎながら参加して参りたいと思います。

全般的な印象としましては、まずスピード感とスケジュール感をしっかり持って、必ずやり遂げるという決意で進めて頂きたいということです。

民間で仕事をしておりましていつも思いますのは、「一律」という発想はなるべく避けた方がいいのではないか、ということです。
例えば行政レビューにおきましても、PDCAを一律に1年サイクルで行なうとか、5,000の事業を一律な手法でレビューしていくのではなく、やはり軽重をつけてやるべきではないかという感じがいたします。
多分、5,000件ものレビューを毎年繰り返していますと、何となくマンネリ化してしまい、やがて大きな成果が得られなくなるのではないかと危惧いたします。
膨大な数の事業のレビューを毎年実施されること、それ自体は非常にいいことだと思いますが、やはり事業ごとの性格に合わせて軽重をつけてやっていただくことが持続的な効果につながるのではないかと思います。

また、民間におきましては、いろいろな活動を推進する目的でインセンティブをよく使います。
行政の中でボーナスのような金銭的な手法を採用するのはなかなか難しいかもしれませんが、例えば表彰制度を取り入れるなどして、改善改良を実現し、昨日から今日、今日から明日へとポジティブな変革を達成した人や組織には、きちんとその成果を評価し顕彰するような制度が効果的なのではないかと思います。
そのような表彰パッケージも含めて、一律という発想からは是非抜け出して頂きたいという思いがいたします。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 畠中議員、お願いします。
 

畠中議員

  畠中でございます。
 今、中央大学総合政策学部と大学院で行政学と行政管理論を教えておりますが、その前は総務省におりまして、行政改革とか行政管理、行政監視の仕事もしておりました。
 今日は、第1回目ということで、大臣からお示しがございました検討課題については、別途、追々、意見を申し上げたいと思いますが、行政改革の総論として1点だけ申し上げたいと思います。
 
行政改革は、社会経済情勢の変化に伴って不断に見直しというか、努力が必要でございまして、安倍政権が行政改革推進会議を開催されるというのは大変結構なことであって、

できる限りの御協力をしていきたいと思っております。
 
ただ、最近の行政改革を外から見ておりますと、どうもそれが自己目的になっているような気がいたします。
例えば公務員の定員を減らすとか、独法の数を減らすとか。
それ自体は意味があると思いますけれども、行政改革はあくまでも手段でございまして、何のために改革をするのかという目的が必要だと思います。
例えば公務員制度改革ですが、稲田大臣の御担当だと思いますが、公務員バッシングに陥るのではなくて、公務員が国民のために使命感を持って働けるようにするためにはどうすればいいかといった観点が必要かと思っております。
 
以上です。
どうもありがとうございました。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
 それでは、議長である安倍総理から御発言をいただきたいと思いますが、カメラが入室いたしますので、少々お待ちください。
 (報道関係者入室)

稲田行政改革担当大臣

  安倍総理、それではよろしくお願いいたします。
 

安倍内閣総理大臣

  きょうは、議員の皆様、大変お忙しい中、お集まりをいただきましたこと、厚く御礼を申し上げます。
 今日は、予算委員会のために遅参いたしましたことをお詫び申し上げる次第でございます。
 行政改革に取り組み、政府に対する国民の信頼を得ていくことは、極めて重要な取り組みであると考えております。
 安倍内閣では、「政」と「官」相互の信頼関係に基づく「真の政治主導」により、「新しい日本」の国づくりを進めていくこととしております。
そのためにも、行政改革に積極的に取り組み、行政の機能を高め、政策の効果をできる限り向上させていきたいと考えております。
 
本日、第1回目の開催となる、この行政改革推進会議において、その中心となる役割を担っていただきたいと考えております。
 
今後、国、地方、民間の役割分担の再検討や業務見直しの徹底など、幅広いテーマに取り組んでいくこととし、当面は、まず無駄の撲滅、そして特別会計改革、次に独立行政法人改革という3つの分野を中心に、具体的な検討を行ってまいりたいと考えております。

有識者の皆様におかれましては、既に活発な意見交換を進めていただいたと思いますが、行政のあり方や組織の運営等にすぐれた識見と幅広い御経験をお持ちの皆様でございます。
今後の行政改革について、ぜひとも忌憚のない御意見を賜りたいと思います。
 
本会議の御議論を踏まえながら、内閣全体として改革を進めていく考えでございますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
 では、カメラはここで退室をお願いいたします。
 
(報道関係者退室)

稲田行政改革担当大臣

  それでは、意見交換を続けたいと思います。
 では、森田議員、渡議員、加藤議員、大塚議員、秋池議員と続けてお願いいたします。

森田議員

  学習院大学の森田でございます。
 私自身は行政学を専攻しておりまして、95年に始まりました地方分権改革、97年、98年の橋本行革のときは独立行政法人制度の設計でお手伝いさせていただきまして、その後は、国立大学の法人化の改革、公務員制度改革も少しですが、お手伝いさせていただきました。
現在は、中医協の会長を仰せつかっておりまして、医療制度の改革の真っただ中にいるところでございます。
長い間いろいろな改革のお手伝いをさせていただきまして、今回の行政事業レビュー、特別会計、独立行政法人改革も課題が残されていると思っていますし、これについての改革をどのように進めていくかというのは今、お話があったところだと思います。
 
ただ、これまでの経験から申しますと、今の改革のやり方は、畠中議員もちょっと触れられましたけれども、そろそろ限界に来ているのではないかという気もいたしております。
どういうことかと申しますと、人を減らすというのもそろそろ限界に来ておりますし、組織を変えるといいましても、かなり難しくなってきている。
その1つの理由は何かといいますと、基本的な行政が担っておりますサービスそのものがきちっと見直されなければ、本当の改革がなかなかできないのではないかと思っております。
それをどうするかということは難しいことですけれども、実質的にサービスの質を下げるとか、量を減らすというのはなかなか難しいところだと思います。
ただ、無駄といいましても、本当に要らないものと、あったほうがいいけれども、なくても済むものがあって、あったほうがいいけれども、なくても済むものに切り込むことも必要になってくるのではないかと思っております。
社会保障関係などではそういう議論がされていると思います。
 
それに加えまして、昨今、行政学を専攻しておりますことから、海外の行政改革の状況などを少し勉強しておりまして感じますのは、海外でも同じような問題がありますけれども、海外がどのように取り組んでいるかといいますと、多くの国が一番力を入れているのは、やはり行政のIT化だと思います。
我が国の場合には、国民番号制度がようやくできるという雰囲気になってまいりました。
これを活用することによって行政の無駄をなくし、さらにいいますと、サービスの質を高める。
これに本格的に取り組む時期ではないかと思っております。
これまでもIT戦略本部等でそうした動きがございましたけれども、本格的な意味での行政のIT化といいますか、新しい技術を使った形での行政改革はまだ着手されていないと思います。
 
若干の例を申し上げますと、今すぐにでも可能なこととしまして、例えば私たちがお医者さんに行ったときに保険証を提出します。
あれは我々がどこかの保険に入っているかどうかの資格確認をする。
他方、資格確認ではありませんけれども、支払い能力の確認といいますのは、我々がレストランとかお店に行ってクレジットカードで払うときに、その場

で支払いができるかどうか確認されます。
ところが健康保険証の場合にはその仕組みがありません。
したがって、後で医療機関が社会保険診療報酬支払基金であるとか、国保連合会に請求をして、それで確認することになりますけれども、そのときに資格がないという形で戻されるのが支払基金だけでも500億円を超えております。
これは全て無駄だというわけではありませんが、そもそもきちっと最初に確認しておけばその費用は発生することはなかった。
そのための事務手続で数十億円、支払基金は健康保険のうちの半分ですので、それを考えただけでも大きな改革が今すぐにでもできるのではないかと思っております。

また、医療を含めたイノベーションも大きな課題であると思いますけれども、我が国の場合、これは少し先の課題になりますが、イノベーションを進めるための死の谷と言われる応用化の前の段階での薬等で言いますと、治験のレベルになりますけれども、そのレベルで、早く正確に大量な医療に関するデータをどうやって集めるかが鍵になると思いますが、これも諸外国の先端的な国とか企業から比べますと、日本の場合には、基本的なインフラの情報収集のシステムがまだ整備されていない。
これを整備することに早急に取り組むことも改革のある意味で、本当の意味での質を高め、効率化を進める改革ではないかと思っております。
すぐに着手できる話ではないと思いますけれども、そうした方向性はぜひ目指していただきたいと思っております。
 
長くなりましたが、以上でございます。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございました。
 渡議員、お願いします。
 

渡議員

  経団連の審議会の議長を務めております、渡でございます。
 まず、こういった席で発言させていただく機会を与えていただきましたことを大変光栄に思っていると同時に、非常に責任の重大性を感じております。
 アベノミクスが順調にスタートいたしまして、一本目、二本目の矢によって株価が上がりましたし、また円安ということで、経済の先行きがようやく明るさが出てきたということで、経済界としては大変喜んでいるところであります。
ただ、これは総理自身もおっしゃっているとおり、三本目の矢である経済成長をしっかりやらないと本物になっていかないわけでありまして、そういった意味で、いよいよ三本目の矢は、民間の企業の役割は相当、ウエートが大きくなってくると我々は自覚しておりますし、民間の資源の総力を挙げて貢献していきたいと考えているわけであります。
 
ただ、今までずっと我々企業が活動してきた中で感じますことは、民間がそういった事業を展開しようとするときに、時代にそぐわない規制あるいは官庁、役所の縦割りの行政といったものが大きな壁になって、にっちもさっちもいかないというものが多々ございます。
いずれまたこの会議でそういう事例を御紹介してもいいと思うのですけれども、そういったことが続くと、せっかくの三本目の矢がなかなか本格的に実現していかないということにつながっていくわけです。
 
まさに私は、さっきの行革だとか独法の問題あるいは無駄の節約は絶対に大事ですけれ

ども、それだけではなくて、それは入り口であって、本当の一丁目一番地というのは、規制改革は委員会がありますけれども、ここではやはり行政のシステムを大きく変えていかなければいけないのではないかと思うわけでありまして、そういった意味で、ぜひこの会議がそういうところにメスが入って、新しい行政システムができ、いろいろな場面ができていくことを我々は願っておりますし、そういった意味で貢献をしていきたいと考えておりますので、よろしく御指導いただきたいと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 では、加藤議員、お願いします。
 

加藤議員

  東京大学の加藤淳子です。
 政治学を専門としていますが、こういう場はまだ不慣れなので、よろしくお願いいたします。
 皆さんからいろいろなお話がありましたが、行政改革を考えたときに、いつも私はその根源に問題があるのではないかと思っていました。
それは評価体系の問題で、日本においては、重要な決定であると、行政部内の政策決定もその1つですが、1回で正しく決めなければいけないという減点主義の考え方が強く、何か変えるということ自体、最初に間違いがあったのではないかということで、決めた人や決定した過程に何か問題があるという批判がされる傾向が非常に強いと思います。
そういったところで何かを変えていくというのは、決定した人間にとっては自分が批判されることになります。
こういった評価体系から変えていかないとなかなか改革は難しいのではないかと思います。
 
しかしながら、では、それを変えるのに何ができるのかというと、なかなか具体的なところは難しい。
ですから、現実的ではないという考え方もできるのです。
ただ、今の日本の状況を見ていますと、様々な問題が山積みにされて、先送りになり、だんだん解決が難しくなっています。
このような対応のほうが非常に非現実的である。
外から見れば、改革が行われない今の日本の状況は不可思議であるのに、中にいると慣れてきてしまって気づかなくなっているということがやはり大きな問題ではないかと思います。
 
行政改革というと必ず利害の対立であるとか、何か削られてしまうとか、そういう話になりがちですが、現在の状況を変えるのが日本社会全体にとっても、国際社会とっても共通利益であるという立場に立って、危機感を持って取り組み、問題の解決に少しでも貢献できたらと思っております。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 では、大塚議員、お願いします。
 

大塚議員

  経団連の副会長をしております、JR東日本の大塚でございます。
 行政改革というのは極めて重要な問題だと思うのですけれども、それだけに課題が非常にたくさんある。
この課題を着実に進めていかなければいけないということだろうと思います。
 
行政と言いますと、一般の国民から言えば、どうしても縦割りの行政あるいは省益優先

というようなことを言われておりますが、国民に信頼される行政をどうやってやっていくかが非常に大事なことだと思います。
民間にも部門間の縦割りは幾らでもあるわけで、それがぶつかった場合には、先ほどどなたかが言われましたが、全体最適という観点からどうするか。
そして、最後はトップが決めるということでありますから、今回の行政改革につきましても、まずお願いしたいのは、1つはスピード感をもってやっていただきたいということ。
私は、いろいろ出てくると思うのですけれども、最後は政治決着しかないと思います。
決断してもらって決めていくということでないとなかなか進まないのではないか。
その点につきましてぜひお願いいたしたいと思います。
 
ちなみに、私の経験している改革というと、まさに国鉄改革でありますけれども、いろいろな点で手当をされておったのでありますが、その中でも、内閣総理大臣が国鉄再建監理委員会の意見を尊重するというのが国鉄再建臨時措置法に明記されている。
もちろんこれは性格が違いますから、同じようなことはないですけれども、やはりそういう強い意思というものが非常に大事だと思います。
その点につきましてぜひよろしくお願いいたしたいと思います。
 
きょう、御説明を受けた3点がございますが、そのうちの行政事業のレビューについてだけ一言申し上げたいと思います。
 
5,000の事業を全部レビューするのは大変なことでありますし、しかも、これをどのぐらいやるかはこれからだと思いますけれども、外部の力を借りなければできないものと、事務的にどんどん処理していけばいいものと、多分、あるだろうと思いますから、そのあたりをきちっと仕分けした上で整理をしていくことが必要ではないかと思います。
結局、レビューをやることは結構ですけれども、コストを下げるために別の新しいコストをたくさんかけるということになったら何の意味もないことではないかと思いますので、そのあたりを効率的に進めるということをぜひ念頭に置いてこういった事業の見直しをぜひやっていただきたいと思います。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 では、秋池議員、お願いします

秋池議員

  秋池でございます。
 民間の企業の経営改革などをやっております。
 この取組についてですけれども、短期に成果が出ることも非常に重要でありまして、そういうことがないとなかなか取り組む方もやる気が出てこないところもございますし、一方で、今、始めておかないと長期に成果が、始めない限りは決して成果が出ないというタイプの、長期に成果が出てくるタイプのものもあろうと思っております。
 
今回の取組の中では、国が今あるものを丁寧に見ていって、無駄を削っていくことももちろん非常に重要ですけれども、もう一方で、この時代にふさわしい国がやるべきことは何なのかというところから発想していくことも重要だと思っております。
 
例えばそれは何だろうかというと、やらなければいけないのに、人材がほんの少ししか

日本全国にもいないというタイプのものは集中的にやって、そのやり方を民間に見せていくことがよいというタイプのものもあろうかと思います。
 
こういったことに取り組んでいくということと、何かを始めるときに、これは長期の成果につながるわけですが、やめるルールを決めておくことも今後のためには重要なのではないかと思っております。
 
波及効果のあるものには今よりもお金をかけるということは当然あるわけで、そのためにも削っていくことが重要だと思いますが、そういうちょっと逆からの発想も取り入れて、取り組んでいったらどうかと思います。
 
個別のテーマについて簡単にですが、調達についてはまだまだやれることはあると思っておりまして、範囲を広げていくということ。
他の省庁でやったベストプラクティスが展開できるような業務のやり方に、これは時間がかかることですけれども、変えていくことも必要ではないかと思っております。
 
独法は、もちろん数を減らすという御議論もあるのかもしれないのですけれども、運営可能なサイズであるということ。
そのトップになる方あるいは監視する省庁がマネージできるサイズであることも生産性を上げるためには重要ではないかと思っておりまして、こういったところが偏った議論にならないように取り組んでいけたらと思っている次第でございます。
 

稲田行政改革担当大臣

  ありがとうございます。
 本当に熱心に、そして有益な議論をありがとうございます。
 本会議では、当面、無駄の撲滅、特別会計改革、独立行政法人改革という3つの課題を中心にさらに議論を深めてまいりたいと思っております。
 
次回は3月中に予定をいたしておりますが、無駄の撲滅については集中的な御議論をいただいて、それを取りまとめて新年度から実施をしていきたいと思っております。
 
なお、行政事業レビューについては、本日いただいた御意見のほかに、提示した論点に対する御意見がございましたら、ぜひ事務局に御提出いただけたらと思います。
 
本日は、大変短い時間でしたが、大変有益なお話を伺うことができまして、本当にあり
がとうございます。
 以上をもちまして、第1回行政改革推進会議を終了いたします。
 ありがとうございます。




posted by hatena at 05:00| Comment(0) | 官邸・内閣府系の審議会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月20日

第9回 コーポレート・ガバナンス・システム研究会



CGS研究会 第9回 議事要旨

  1. 日時:平成29年2月16日(木曜)9時00分~10時40分

  2. 場所:経済産業省本館17階国際会議室

  3. 出席者:神田座長、青委員、伊藤委員、岩井委員、大杉委員、大場委員、大宮委員、翁委員、川村委員(10時20分途中退席)、神作委員、後藤委員、小林委員、佐久間委員、澤口委員、武井委員、寺下委員、冨山委員、松元委員、御代川委員、柳川委員(10時00分途中退席)、竹林参事官、田原課長(代理:染谷補佐)

    (欠席:石田委員、江良委員、藤田委員)

  4. 議題:研究会報告書の取りまとめ②

  5. 議事概要:
    はじめに、本日の資料・議事等の公開について、資料2記載のとおりと
    することについて委員の了承を得た。
    続いて、事務局より資料3の説明をした後、討議を行った。
    その後、報告書の最終的な取りまとめとその公表の時期について座長一任となった。討議の概要は以下のとおり。



    1. 佐久間委員

        報告書案に、今までの議論を色々な形で取り込んでいただいてありがたい。
      非常に役に立つものができつつあるのではないかと思う。
      その上で、いくつか個別のコメントをさせていただきたい。

       まず、「1.3CGSレポートの意義・対象」のところで、「全ての企業が検討に着手する責務がある」となっているが、全ての企業が着手しなければいけないとは限らない。
      よって、「多くの企業が」、もしくは「必要な企業が」という形にしていただきたい。
      また、責務という表現はきつい印象があるので、検討いただきたい。

       次に、「4.3.指名委員会・報酬委員会の活用」の枠囲いの部分について。
      任意の指名委員会を指名委員会等設置会社が使ってもよいはずである。
      つまり指名委員会等設置会社でも、法定の指名委員会に法定の人間でない者を入れた任意の委員会を別に設置して使うこともあり得る。
      そのことがわかる表記にする必要がある。

       次に、相談役・顧問について。「5.1.2 社内での役割の明確化と情報発信」の枠囲いに、「相談役・顧問に就任している者の人数、役割、処遇等について外部に情報発信することは意義がある」とあり、意義がある場合はあるだろうと思うが、万人に共通する意義は何なのかをお聞きしたい。
      それからこの部分は「意義がある場合がある」ということではないかと思う。
      そういう場合には積極的に行うことが期待されるということになるのではないかと思う。
      次に、5.2 「取締役会長の在り方」について、全ての会社が現社長・CEOへの権限集中をすべきであるかのように読めなくもない。
      しかし、現社長・CEOに権限集中すべきということが決まっているわけではなく、日本の会社法は逆の方向の設計になっているし、現実的にも1人に権限を集中することが良いのか悪いのかという問題もある。
      だから、枠囲いのところは、そのように読めないように工夫をしていただきたい。

       次に、別紙3の社長・CEOの解職基準のところに、非常に役に立つと思われる企業の取組例が載っている。
      もし解職基準がそれに触れたら直ちに解職といったものであれば機能しないのではないかと思うが、ここに書かれている事例は、ある意味で解職手続のトリガーとなるプロセスについてであり、解職の手続なり解職に至るプロセスを平時から設けておくことを検討すべきだというのは意味があると思う。
      しかし、基準を必ず設定しろということになると、「善管注意義務を犯した場合」といった何の意味もないものになる。
      ここでは、あるターゲットがあって、それを達成できなかったときということを言いたいのだろうが、実際は、経営環境が変化していたり、社長がそれとは別に評価されることをしていたりといった事情を含めた総合的判断になると思うので、基準がデジタルなものだと受けとめられないような表現にしていただきたい。

       最後に、別紙3の「3.2 委員会の委員となる社外者②社外監査役」について。
      社外監査役を任意の委員会に入れることに関し、任意なのだから、法定の指名委員会のように取締役に限定する必要はなく、そこに社外監査役が適切ならば入れたほうがいいことになる。
      なぜなら、一般論として、社外監査役の方は、監査役会と取締役会がありその回数が多いので、真面目にやっているならば、社外取締役の方より圧倒的に人をよく知っていて情報を持っているからである。
      さらに、社外取締役は取締役として意思決定者であるから社長の業績を評価するというのはある意味で自己評価になるのに対し、社外監査役の方は決定に参加していないから中立的にみられるというメリットもある。
      だから、私は社外監査役でも適任者があれば入れるべきだと思う。
      逆に社外取締役の方でも適任でなければ入れるべきではない。その点をここで明確になるように修正していただきたい。

      事務局

        相談役の情報開示の意義について、万人にとって意義があるというのは果たしてどういうことなのかというご質問をいただいた。

       この研究会において、相談役には良い面も悪い面もあり一概には言えないのではないかという議論の中で、もちろん悪い面があれば見直しを検討することが適切だが、社会貢献等の立派なことをされていて良い面があるならばそれを堂々と発信すればよいのではないかという意見を踏まえて、こういう書き方にさせていただいたというのがここを書いた趣旨である。

      佐久間委員

        そうすると、役割というより、その方が何をやっているかというようなところも含まれるということか。

      事務局

        その通り。

      小林委員

        3点ほど、簡単にコメントしたい。

       まず、「1.1 問題意識」の最初のところについて。
      日本では20年以上にわたって企業価値が低迷し続けているとか、あるいは事業ポートフォリオの見直しが不十分ということはかなり重要なポイントだと思うので、参考として未来投資会議や構造改革徹底推進会合で使われたデータが引用されていると、インパクトがより出てくるのではないかと思う。
      日本の企業価値は30年たっても1.7倍なのに、アメリカは10倍近くになっているとか、日本はROSが非常に低いというような具体的なデータがあったほうがよい。

       次に佐久間委員からお話があった、「5.2 取締役会長と代表権の在り方」について。会社のカテゴリーは3つあるところ、例えば指名委員会等設置会社では、代表権者を表す言葉として代表執行役というものがあるが、代表取締役とは言わない。
      このあたりは、きちんとカテゴリー分けして表現するほうが明確になるのではないか。
      また、一部の業界団体では、会社で代表権がないと団体の会長になれないというような慣習がある。
      こういった日本の実態も踏まえて、やはり、そもそも代表権とは何かということをクリアにしたほうがよいと思う。

       最後に、「6 本研究会で十分に議論できなかった事項」において、グループガバナンスが取り上げられているが、グループ会社のグリップをどうするかは、ある意味ではどの会社にとっても永遠の課題であり、私自身も大分悩んでいるところだ。
      そう簡単にはいかないテーマだが、このあたりを引き続き議論していただきたいと思っている。

      冨山委員

        個別のところではなくて全体について申し上げたい。
      まず最も基本的なところは、今小林委員が言われたように、この20年から30年、数字において日本経済界は敗北の歴史である。
      雇用を守ったと言われることがあるけれども、10億円以上の資本金の会社の雇用比率は20%から16%に下がっているわけで、社会全体で言うと、逆に雇用を失っているのが実態である。
      今小林委員が言われたように企業価値も高められなかったし、売り上げも伸ばせなかったのである。これは先日の未来投資会議のときに申し上げたが、フォーチュン500のうち3分の2が消えてしまったわけだから、私はこのことは冒頭の問題意識としてしっかり言ったほうがいいように思う。
      先日の未来投資会議において、総理発言で、元経営トップによる不透明な影響力を廃止するということを明確に言っていただいたが、これはある意味で経済界がお叱りを受けているということである。
      昔、土光敏夫氏は総理とか役所の偉い人を叱り飛ばしていたが、逆に現在は悲しいことに経済界が叱り飛ばされてしまうわけである。
      要はそこまで落ちぶれてしまったわけだから、くだらない泣き言を言っていないで、そういうことを言われないように正々堂々と売り上げと雇用を伸ばして企業価値を増やしていけば、別に政府のほうから稼ぐ力をつけるための施策を行う必要はないはずである。
      この場には、ある意味で経済界の人間もかかわっているのだから、このレポート自体が「俺たちは真剣にやるぜ」という宣言になるべきだと思う。
      個別事情や状況が云々と泣き言を言っている場合ではない。

       それから、先ほどのOBのところについて。
      私は率直に言って佐久間委員とは意見が全く逆で、むしろ開示に関しては、もともと義務にしてしまってもいいぐらいだと思っている。
      総理にあそこまで言われているのに、意義がない場合があるのかどうかもわからないが、意義がない場合がどういう場合なのか教えていただきたい。
      私には開示をするデメリットが一体どこにあるのか全くわからない。
      逆にどういう場合に意義がないのか。はっきり言ってこの問題に関しては、浜松町にある某会社の問題もあって社会的にいうと推定有罪である。
      どこまで空気を読めているかというのはあると思うが、私の感覚でいうと世の中的にはもう完全に推定有罪である。
      ということは挙証責任は企業の側にあり、だとすれば正々堂々と、この方にはこういう理由で、こういう活動をしていただいているので秘書も必要だし、車も必要なのだから、こういった形で顧問をやってもらっていますと正々堂々と言えばいいわけで、何ら恥ずかしいことはない。
      私もそういう立場で、正々堂々と開示していただいて結構である。
      逆に意義がない場合があるとすれば、その場合をちゃんとこの場で積極的に挙証していただかないと、この文言を変えるわけにはいかないと私は思う。

      伊藤委員

        まず、細かい点について。

      「1.1 問題意識」の中で、「経営人材の選抜が企業ごとに閉じた仕組みとなっている」というのは私もわかるような気がするが、1.2の検討の方向性において、「企業ごとに閉じた経営人材の育成」というのは少し意味がわからない。
      通常、育成は基本的には企業の中で育成していくのだが育成が企業ごとに閉じているということの意味合いが私には少しわかりづらい。

       次に、事務局から問いかけのあった社外取締役の任期について、私は形式的に任期を定めないほうがいいと思っている。

       アメリカの社外取締役の任期はどうなっているかというと様々である。
      例えばIBMとかGEには15年以上勤めている社外取締役がいる。
      ニューヨークのコンサルタントなどと話をしていると、アメリカは社外取締役のニーズが多いのでそういう言い方ができるのかはわからないが、社外取締役も1つのチームだとのことである。
      社外取締役については、あまり言葉は良くないがある種のポートフォリオがあり、その中で、その会社の事情に精通している社外取締役と、比較的新しく入ってきた社外取締役がある種の混成になっていることが良いのだというような説明をしていると聞く。
      したがって、私個人としては、あまり社外取締役の任期を型どおりに決めてしまうのは少し行き過ぎではないかという気がしている。

       次に、相談役・顧問の定義について。社長・CEOのOBというある種の定義が後から加わっている。

       例えばホールディングスなどを考えると重要子会社の社長・CEOだった方たちが相談役だとか顧問になるわけだが、上場していない重要子会社の社長・CEOで、実は社長・CEOを終えてから隠然たる影響力を発揮している場合があって、それが親会社もしくはホールディングスの経営の遂行にかなり影を落としていることもあるので、果たして社長・CEOという含意が親会社、ホールディングスの社長・CEOだけを対象とするのかということは1つの論点だと思う。
      このこととある意味で関連するが、指名委員会が指名する対象として、ここではおそらく親会社もしくはホールディングスのCEOあるいは社長を含意していると思う。
      子会社が上場していて、その上場子会社に指名委員会がある場合に屋上屋を架す必要はないわけだが、グループの中で非常に重要な、非上場の子会社のトップの指名をどうするかは問題となりうる。
      重要子会社のトップは親会社ないしホールディングスの指名委員会の指名の対象としている場合もあるので、そのあたりも報告書に書き込むかどうかは別として結構重要な論点だろうと思う。

      柳川委員

        細かいところはさておき、大きな問題意識で、何人かの方々からお話があったことと関連する点について申しあげる。
      前から思っていることだが、こういう研究会を役所の中で作って提言していく中身に一体どういう意義があるかということを、そもそも考えなければいけないと思う。

       この研究会がスタートした当時、おそらく目的としては大きく2つあったのだと思う。
      1つは、将来の新たな立法とか法改正だとか、法解釈を深めていくための提言というものと、もう1つは、それぞれの企業に合ったコーポレートガバナンスのあり方をうまく取り入れていくためのベストプラクティスの提示である。
      この2つはわかりやすいが、おそらくこの報告書の中で書かれている内容は、この2つ以外の部分が結構大きくなっていて、考えるべきだとか、検討するべきだとか、何々すべきだという部分が相当多いと思う。
      こういうものが出てきているのは、この研究会で色々議論する中で、稼ぐ力を高めていくことを積極的にやらないと、国全体として回っていかないのではないかという意識が強くなってきたために、研究会としてのある種の戦略的な、あるいは政策的な提言がかなり盛り込まれて、大きなウエートを占めたということだという気がする。
      それはとても重要なことだと私も思うので、ROEが低い中、稼ぐ力がない中で、そういうところが積極的に出てきている報告書なのだということを、「1.3 CGSレポートの意義・対象」のあたりで明確にしたほうがいいのではないかと思う。

       現状では「『稼ぐ力』を強化するために有意義と考えられる具体的な行動をとりまとめたもの」と書かれているが、もう少し強い意味で戦略的な提言が大分含まれている。
      もちろん法的強制力はなく、政策的にどこまで強制力があるかということはまた別問題だと思うが、そういう強制力がなくても、やはり我々が重要だと思う稼ぐ力を高める上でのガバナンスのあり方、あるいは経営のあり方はこういうものではないかということをまとめたことに意義があると思うので、そういう形で書けるのであればしっかりと書いていただきたいと思っている。

      川村委員

        私も最初のほうで、稼ぐ力ということをベースにしていろいろな話がスタートしているという書き方は大変良いと思っており、これが企業統治を考え直すという形になっているので、このことを大いに書いていただく方向で良いと思っている。
      小林委員の資料については、本文の中には書けないとしても項目だけでいいので参考資料ということで入れていただくと、なおさら現実的な数字がよく見えて良いと思う。

       私も随分、どうして日本の利益率がこんなに低いのかというところを色々考えるのだが、やはり働き方の問題がかなりあると思う。
      すなわち、会社の中で余計な人が余計なところにびっしりと張りついている今の日本のやり方が良くないと思っている。
      ちゃんと研究しているわけではないので意見として言うほどではないが、海外では、ある大きな問題が起きたときにプロジェクトチームを立ち上げ、社外から人を沢山連れてきて、そのプロジェクトを仕上げ終わったらその人をまた社外に出すというような形で会社を運営するという形になっている。
      しかし日本ではそうではなく、ずっといろいろな人をびっしりと雇っていなければいけない。
      これが日本の問題点で、労働の流動性が相当悪いのだろうなと思っている。
      それを今言って直していく力はないので、感想だけ申し上げる次第である。

       次に、「5.2 取締役会長と代表権の在り方」のところで取締役会長の代表権の議論をされているが、確かに指名委員会等設置会社と監査役会設置会社ではかなり言い方が違ってくる。
      たとえば、指名委員会等設置会社でいうと取締役会長に代表権はないのだということであり、このことを念頭に置いた書き方にしていただかないといけないと思う。

       それから、社外取締役の任期の上限については、私たちも自分の関係した会社では年齢制限をつけたりもしたが、大体取締役は年をとっている人が多く、いい人を残しておくと80を超えたりすることも多い。
      取締役の適性がある人が日本ではあまりいないということもあるので、やはり考え方としては、あまり任期や年齢に制限をつけないで、ちゃんと理由をつけられる人はずっと残すというほうが良いと思う。

       最後にグループ会社のガバナンスについて。
      我々も売り上げが1兆円に届くような非常に大きいグループ会社を持っているが、やはりその統治というのは大きな問題である。
      基本的には、指名委員会等設置会社である子会社を、親会社の委員会がガバナンスを効かせようと考えているところだが、なかなか難しい。
      親子上場というのは難しい問題だと思っている。
      また、上場していない子会社に関しては親会社の委員会まで含めて、人事その他子会社のあらゆる面でガバナンスを効かせるよう努めているが、やはりグループ会社のガバナンスは相当大きな問題で、かつ会社の業績にダイレクトに影響してくることを感じている。
      報告書の最後のところに、グループ企業のガバナンスの在り方について書いていただいているので、今申し上げた話を踏まえ、親会社と同じスピードで同じ意識で進んでいってもらうにはどうすればいいかというところを、次回につながるように書いていただければいいなと思っている。
      これは私も非常に悩んでいるところである。

      大場委員

        私から2点申し上げる。

       1点目として、小林委員、冨山委員、川村委員からもお話があったように、この議論は企業価値の長期低迷という問題意識をもってスタートしているということを鮮明にすることがやはり大事だと思う。
      問題意識を明らかにするには、小林委員からお話があったように色々なデータを示すということが非常にわかりやすいが、その際に、やはりグローバルな比較を1枚持ち出すべきではないかと私は思う。
      ものすごく単純化してわかりやすい事例で言うと、株価が1万9,000円というのは30年前の水準で横ばいだが、NYダウは今2万ドルで30年前は2,000ドルだったから、10倍であり、両極端である。
      それがマーケットの評価した価値だということなので、各企業は個別ばらばらではあるが、概ね相当な格差が開いていると言える。
      どこに課題があったのかということをわかりやすく示すという意味で非常に重要ではないかと思う。

       川村委員からもご指摘があったように、日本の低収益は何が原因なのかというのはとても奥深い問題で、そう簡単ではないと思うが、私の理解では3つある。
      1つは過剰供給体質で、業界内に供給者がとても多い。
      これがなかなか改善しない。
      2つ目は、撤退のトリガーがグローバルに比較すると最も緩い。つまり赤字にならないと撤退しない。
      一般的には資本コストを下回ったら撤退するということだが、日本ではそうならない。
      3つ目は、最近日経新聞の経済教室に特集として組まれているが労働生産性が極端に低い。
      これはとても奥深い問題で、なぜ労働生産性が低いかというと、日本の労働慣行の仕組みの中に、従業員が生産性を高めるというインセンティブが全くないからだと思う。

       したがって、日本の低収益性を改善するというのは大変深い問題なので、この場で議論するのはどうかと思うが、そういうことにチャレンジしないといけない。
      こういう問題意識は必要ではないかと思う。

       2点目として、「3.3 社外取締役の人材市場の拡充に向けて」について。社外取締役の人材市場の拡充のため、「経営経験者が積極的に他社の社外取締役を引き受けることを検討すべき」というのはその通りだと思う。
      この点、私もこの研究会で少し発言したのはどうなってしまったのかなと今改めて思ったのだが、伊藤レポートでも指摘されているように、対話先進国になることで日本の企業価値を高めるというやり方も重要ではないかという議論がある。
      社外取締役の候補者の中で、企業を外からみていた投資家、具体的にいうと企業を隅から隅まで調べ尽くしているアナリストOBの活躍の余地が、非常に大きいのではないかと思う。
      対話先進国を標榜することからすると、投資家の代表が企業の社外取締役に入っているのは非常に重要ではないかと思う。
      私の知っている限りでは現在、日立に山本氏というアナリストが社外取締役でおられると思うが、まだあまりそういう方が色々な会社で活躍しておられないのは大変もったいないと思う。
      その点を付言していただくと大変良いのではないかと思う。

      事務局

        以前ご指摘いただいたた社外取締役の候補者としての投資家の活用という点については、「6 本研究会で十分に議論できなかった事項」に書かせていただいている。
      この案を委員の方々にご相談させていただいた中で、これはどうなのかというご意見もあった。
      すなわち利益相反のところをどう考えたらいいのかという問題もあり、この程度の記載とさせていただいた。

      大場委員

        確かにインサイダーになってしまうため、現役のアナリストにはできないと思う。

      投資家、アナリストのOB(経験者)は活用の余地があるのではないかということである。

      大宮委員

        非常に良いレポートになったと思う。
      この中でまだ十分に論議できていないため、この場でなくてもいいと思うが継続したほうがいいという点が2点ある。

       1つは、雇用の固定化というか、生産性も低いことも含めてなかなか企業価値の向上ができていないという視点から、特に第4次産業革命でホワイトカラーの職能が変わらなければいけないということも随分言われているので、今よりももう少し大きな問題が起きてくるのではないかという予感がしている。
      したがって、この面について何かもう少し深くディスカッションしていただくのが良いと思っている。

       2点目は、グループ会社のガバナンスの件について。
      実は弊社の事例でいうと十数年前まで事業子会社というのはほとんどなかったのが、最近、企業経営のスピードを上げるという視点から独立的な経営をやってほしいということで、1兆円以上の売上の子会社等もある。
      意思決定を非常に迅速にやってもらいたいがゆえに、本体からの干渉を少なくしなければいけないという意図もあるが、さりとてどこかへ飛んでいってしまって変なことになるのも困る。
      ここのバランスが極めて難しく、何かうまい仕組みとかツールが出てくるのではないかと思っていろいろ試行錯誤しているが、本当に難しい問題だと常々思っている。
      このあたりも子会社が上場してしまうと本当は問題だと思うが、そうではないような場合についても、ガバナンスを高めて全体として問題がないように、さりとて迅速な経営をしてどんどん伸びていくということをバランスよくするためには、どんなやり方があるのかということについても少し検討が要るように思う。

      佐久間委員

        先ほどの相談役・顧問のところについて。
      私は情報発信をすることにデメリットがあるとか、問題だということを言っているわけではない。
      私の所属する会社は嫌でも新聞に誰か出ているような状況であるし、それ自身を否定するわけではなくて、ここで議論しているのは不当な影響力の行使を防ぐために情報発信に意義があるということだとすれば、それはどういうことなのかというのが先ほどの私の問いである。
      情報発信をすれば不当な影響力の行使がなくなるとはとても思えず、悪いことをやる人はやるはずである。
      なおかつ逆に、情報発信をした結果、今まで影で行われていたものが堂々と認められて良いポジションを得ることにもなるので、なぜ情報発信をすると不当な影響力の行使が防げるのかについてお聞きしたかったということである。

      大杉委員

        皆様の意見を伺っていて思うところを多少お話ししたい。
      まず、「5.1.1 相談役・顧問制度に関する課題」について。

       まず、「自社」には、「重要な子会社」とか「グループ企業」なども含まれるとするほうが良いかもしれない。
      次に、「退任した自社の社長・CEO」という部分についてだが、例えば専務・常務あたりの経験者は、相談役とか顧問という名称には普通ならないと思うが、社友というような名称でOBとして時々集まっておられる会社もあるが、このような慣例については、この研究会でメリット、デメリットの分析を全然できていないし、そもそもアンケート調査でも実態分析をしていないところだと思うので、そこを今回の報告書の対象外としているのは大変重要なことだろうと思う。

       次に、先ほど意見が出ていた相談役・顧問についての情報発信というところで、とりわけ海外の機関投資家等から、あまり海外にはない相談役・顧問等の制度に対して厳しい目で見られている点について、今回事務局がまとめてくださった報告書案で、こういうメリットもあるということを言っていただいたのは重要なことだろうと思う。
      同時に、各社において、投資家の疑念は払拭とまで言わないが、それを引き下げ小さなものにしていくことは日本の証券市場全体にとって非常に重要なことだと思う。
      だから、文言について特に提案するものではないが、説明したい会社だけが説明する、したくない会社はしないということではなく、一定の説明を全社がしていくべきだという大まかな考え方は確認しておくことが良いと思った。

       次に、「5.2 取締役会長と代表権の在り方」について。
      「現社長・CEOへの権限集中の観点から」というのは、権限集中するのがいいか悪いかというのも各社のお考えがあるだろうし、なるべく権限を集中させる場合でも会長から代表権を取り上げてしまうのは、例えば業界団体のルール上、難しいかもしれないという他の考慮要素もあるようである。
      そこで、例えば「権限集中の是非の観点も含めて」といった少し柔らかい言い方にしておけば、おそらく大きな反対論はなく、また事務局の趣旨が過不足なく伝わるのではないかと感じた。

       最後に、「6 本研究会で十分に議論できなかった事項」のグループ会社について。これは今回十分に議論できなかったということはその通りだと思うが、なるべく現場に権限移譲していくという方向と、しかし統制をしっかり効かせるという方向の2つをどのように実現していくかというのが、今後非常に重要だろうと推測しており、少しここの文言などを肉づけすることができると良いと思った。

      武井委員

        私からは細かい修文のコメントを2つ申し上げる。

       まず、別紙2のステップ9における社外取締役の就任期間の話については、私も伊藤委員、川村委員のおっしゃった通りだと思っている。
      年数が長い人と短い人が多様性としてポートフォリオでいることには意義があるので、一律何年ということを推奨するように強く書くべきではないと思う。
      8年が良いということについて触れている脚注部分は消していただいたほうが良いと思う。

       2点目として、別紙3の「あるべき社長・CEO像」について。報告書の本文に、前回ご説明があった経営人材育成ガイドラインとダイバーシティガイドラインに言及があるが、別紙2と別紙3に指針という名前がついており、そこだけ見る人も結構いる可能性があるので、経営人材育成ガイドライン、ダイバーシティガイドラインに関する若干の言及も別紙にあったほうがよいと思う。

      澤口委員

        2点申し上げる。

       まず、「5.2 取締役会長と代表権の在り方」のところは、お書きになられている内容はよく理解できる一方で、代表権の問題ということは、要は業務執行がどういう体制を組むのかということなので、会社によって個々の事情が色々あるのではないかと思う。
      だから、あまり決めつけ過ぎないほうがいいのではないかと思う。
      そして、監督と執行の分離という目線からみれば、代表権をなくしたところで会長は前CEOにすぎないので、独立社外取締役に代替するものではない。あまり大きな問題なのだろうかという気がしているところである。

       次に、今まとめていただいた議論を社外取締役自身にどう届けていくかは、少し工夫が必要ではないかと思っている。
      実務をやっていて、社外取締役の方に今の議論を理解していただくのに意外に苦労することが多い。
      社外取締役の方はどちらかというと成功体験をもった偉い方が多く、やや可塑性に欠けるようなところがあるが、一方で社外取締役の方が理解していただければ大きく変わり得るところなので、こういう議論の中身を社外取締役の方にどうやって届けていくのかは、少し工夫が必要だろうと思った。

      寺下委員

        まず、報告書をしっかりまとめていただき、ありがたいと思っている。

       私が申し上げるのは1点だけである。先日御代川委員が指摘され、本日も川村委員が言及された社外取締役の年齢の問題についてである。
      具体的にいうと、実は現在、産業界では70歳以上になるともうそろそろ引退というようになっているが、現実問題として、70から73、74といったあたりに、ご推薦してまだまだ活躍していただきたい大変立派な方が多く、今の状況からすると70歳ということを外してあげるようなレポートの指針が出ると、国家的に有効に人材が使われるのではないかと思っている。
      このことをどこかに入れておいていただくと、実態に即したものとして有益である点をお話ししておきたい。

      御代川委員

        私は、社長の報酬のところで少し考えたほうがいいかなと思っている。
      日本の企業は、基本報酬の割合が非常に高い。
      やはり基本報酬の割合を引き下げていって業績連動の割合を高めていくことが、社長にとっては強いインセンティブになっていくだろうと思う。

       次に、今後考えていかなければいけないのは、外国人の経営陣幹部が日本人の社長より報酬が多くなってしまうケースがあるという問題である。これでは日本人の優秀な社長は育っていかないだろうと思う。
      ややもすると社長の報酬が高いとマスコミ等に取り上げられて叩かれる傾向があるが、前から申し上げているように、相談役・顧問になってから現役時代の報酬の後払いとしてお金を払っているような状況を解決するためにも、高いパフォーマンスを上げれば高い報酬を得るということが、社長にとっても非常に良いことではないかと思う。
      そうなれば、今後トップになりたいと目指す優秀な人材も、頑張ればそれだけ報われていくのだという感じを持っていただけると思う。
      このことを感想として申し上げたい。

      後藤委員

        先ほどから出ている相談役・顧問の話と、会長問題について申し上げる。

       世間的に話題になったのは相談役・顧問のところであり、社長、経営トップの方よりも先輩がいると色々とやりにくい話もあるのではないかというような話をいただいたが、そう考えてみると、会長だってそうではないかという話が何かあるような気がしている。
      日本企業における取締役会長というのは果たして何なのかというのは会社によって非常に様々であり、取締役会の議長をされている場合もあれば、退任されて先代の社長が単に見張りにいる場合もあれば、代表権を持っておられる方もおり、むしろ相談役・顧問よりも不明確なところがあるような気がする。
      そうすると、相談役・顧問よりも、まず会長の役割というものをはっきりさせることが大事なのではないかという気がするところ、この5.2.というのは取締役会長と代表権のあり方に絞られており、それは色々なやり方があるというのは佐久間委員がおっしゃる通りなのかと思うが、取締役会長のあり方について、会長に期待する役割を各社が自覚的に、かつ外部にもわかるようにする必要がまずあり、その一環として代表権を付与するということもあるという気がする。
      そうすると、大体どの会社も会長はいらっしゃると思う一方、相談役・顧問がいるかは会社によるので、5.1.を会長、5.2.を相談役・顧問の話にしたほうが順番としてしっくりくるのではないかなという気がした。

       さらに言うと、社長とCEOも会社によって非常に様々で、これもよくわからない。両者の職務分掌などがガバナンス報告書などで書かれているのかと思うが、その並びで会長もはっきりさせたほうがいいのかなという気がしている。
      この期に及んで場所を移すのは大変かもしれないが、ご検討いただければ幸いである。

      神田座長

        5.2.は5.1.と比べると圧倒的に少ないので、5.2.の内容を増やしていくならばよいかもしれないが、それも時間との戦いにはなるので、検討させていただきたい。

      翁委員

        先ほど小林委員もおっしゃっていたが、代表権とは何かという話はあまり議論がされていなかった。
      業務執行をどう考えて代表権をつけているのかは各社まちまちだろうけれども、わりと形式的になっているきらいもあって、今回というわけではないがもう少し議論をしていく必要があると感じた。

       それから、社外取締役の就任期間の問題について。
      多くの方から任期を一律に定めるのは適切でないというご意見があり、私も、優秀でその企業にとって価値のある方が長くやっていただくことは価値があると思っており、年数が長い人と短い人がいることで色々な目がその企業に届くようにしていくというポートフォリオが重要であるということも理解できる。
      また、特に指名委員会等設置会社に移行して指名委員会という形を作っていくとすると、やはり年数が長い方がいらっしゃるということが意味を持つこともよく理解はできる。
      一方で、同じ会社の社外取締役を非常に長く務めることになると、独立性の観点から懸念があることも確かではあるので、長くなればなるほどしっかり指名委員会で議論をして、貢献度があるのだということをきちんと説明していくことが必要になるのかなと思う。

      冨山委員

        先ほどの佐久間委員のご指摘の点は、論理的にはその通りだと思う。
      ご指摘に感謝申し上げる。

       ただ、その一方で、これは要するに、外からみた蓋然性の議論である。
      蓋然性という観点からすると推定有罪な状況があるわけで、そういった意味合いでいうと、開示していくことが、疑いを解くという意味で大事だと思っているので、今の書き方がいいのかなと思っている。

       次に、少し大きな話を申し上げる。
      先日の未来投資会議で割と好評だったのが、ばかの二つ覚えという話だった。
      機関投資家には立派な方もおられるのだろうが、十中八九は口をあければ配当を増やせ、買取消却しろとしか言わない。
      何が言いたいかというと、現在スチュワードシップ・コードの改訂のようなことが金融庁で行われているが、ガバナンスの議論というのはトータルな議論である。
      資本民主主義なのだからガバナンスの最終的担い手である投資家の問題があるわけで、私はその議論をどこかでインボルブしていったほうがいいような気がする。

       もう1つ、その観点で、グループガバナンスの議論の関係で申し上げる。
      政府が株を持っている会社にそういう会社が多いので少し言いにくいが、やはり親子上場の問題があるということと、それからその脈絡でいうと私は対ハゲタカ防衛戦のような仕事を結構やり、そのときに毎回思うのだが、支配的株主の一般株主に対する忠実義務法理が日本にはないために、実は日本でハゲタカが暴れやすい環境になっていることは事実である。
      日本の場合には幸か不幸か株主総会がとても強く、支配権を獲得すれば大株主はある意味で何でもできるような法体系になっている。
      これについてずっと昔から議論があったということは私も聞いているが、多少時間がかかっても構わないからそろそろこの問題をもう一度議論していかないといけない。ハゲタカからみれば、日本の今の証券市場、ガバナンス構造というのは脇が甘すぎる。
      こんなに狙いやすいところはない。ある程度株を握ってしまって、株主総会を支配できれば何でもできるという状況を結果的に放置している。
      だから、株主権を重視しようというのは正しいのだが、その一方で株主権の濫用で一般株主、少数株主の利益を損なうリスクが高くなっているわけだから、フェアに真に長期的な企業価値の向上に資するような株主権の権利・義務ないし的確な抑制原理について、議論をもう一度やるべきだと思っている。

       くどいようだがグリーンメーラーからみると、現在世界の主要市場の中で日本の市場が一番脇が甘い。
      だから彼らは日本を狙うのである。
      このことについて、色々な理由でこれに反対してきた議論が過去あったかもしれないが、環境が大きく変わっているので、どこかで腹を据えた議論をしたほうがいいような気がしている。

      大杉委員

        「5.2 取締役会長と代表権の在り方」について一度考え直してみたのだが、皆様の意見を聞いていて、これは結構難しい問題だと思った次第である。

       まず、上場会社でも会長を置かない会社が結構あるであろうし、小規模な会社とか、若い企業は置いていないところも一定数あるだろうと思われる。
      そして、会長と社長がいるときどちらに実権があるかというのを外部にわかりやすく表示してほしいと思っている。
      研究者として統計をとるときにどちらの属性で拾っていったらいいのかが簡単に低いコストでわかると非常にありがたいということもあるが、個人的な都合から離れて言うと、代表権を付すということが対内的、対外的な実権に連動している場合と、そこからやや離れてもう少しふわっとした象徴的な意味になっている場合とがあるだろう。
      法的にはこうだというものは我々の世界にはあるが、社会の実態として代表権のつけ方というのは一筋縄ではいかない難しいところがあって、ここで結論とか方向を書くのは厄介だと思っている。

       取締役会評価に関連して一言つけ加えると、各社の取締役会で自己評価、自己点検をしてPDCAを回していくときに、おそらく当面の間は主たる責任者となるのは元社長で、現在はやや一線から引いて取締役会の会長になっている方なのではないかというような気がする。
      社外取締役が取締役会評価の主たる責任者になるというのは、ほとんどの会社においては大分先の話とならざるを得ないだろう。
      そういう意味では代表権の有無ではなくて社長経験者が会長として取締役会にとどまるときに、思い切って実権を手放していくこと自体はものすごく意味のあることではないかと思う。
      ただ、それはこの研究会で議論したわけでもないし、少なくとも短期間では結論が出ない問題だと思う。
      以上のような感想を持った。

      小林委員

        今の大杉先生の話に関連して、代表権の意味合いは業界によっても異なると思うが、例えば、社長に加え、常務や専務が、重大なコンプライアンス問題や保安事故を起こしたときに責任を取って辞めるという前提で、代表権を持っておくというやり方も一般的だと思う。

      コンプライアンス違反や事故を起こしたら直接の責任を持つ役員が辞めるということである。
      このように、代表権の意味合いや機能は、先ほど申し上げたように会社の業態によっても違うし、確かに簡単には言えない部分がある。

      佐久間委員

        相談役・顧問について冨山委員と必ずしも一致しないというのはわかったが、その後の、日本の買収に対しての脆弱性のお話はまさにその通りで、制度的にいえば全部買付義務が生じる基準が日本の場合は異常に高く、先進国でも極めて特異な制度になっている。
      だから、もし検討されるのであれば義務の基準についても併せて検討しなければいけない。
      逆にいえば、非常に稀な制度なので、個別の買収防衛策がやはり今でも必要になっているということではないかと思う。

       それから、先ほどあまり議論を複雑にしてはいけないと思って言わなかったのだが、代表権というのは実務的にいうと、お役所から要求されることが多い。
      不祥事の場合とか、某委員会等々、呼び出すときは代表権がなければいけないことになっている。
      加えて、私も副社長で代表権を持っているが、副社長ではだめということである。
      代表権があるから同じですよねといっても、これが通用せず、なかなか、代表取締役副社長でいいということにならない。
      そうなると、代表権を持っている社長と会長がいる方が実務的には対応しやすいということになる。
      お役所側のそういうこだわりというのも1つの原因になっているということである。以上




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2018年09月19日

第8回 コーポレート・ガバナンス・システム研究会



CGS研究会 第8回 議事要旨

  1. 日時:平成29年1月12日木曜8時00分10時00分

  2. 場所:経済産業省本館17階国際会議室

  3. 出席者:神田座長、青委員、石田委員、伊藤委員9時10分途中退席、江良委員、大杉委員9時30分途中退席、大場委員、翁委員、神作委員、後藤委員、小林委員、佐久間委員、澤口委員、武井委員、寺下委員、松元委員、御代川委員、竹林参事官、田原課長

    (欠席岩井委員、大宮委員、川村委員、冨山委員、藤田委員、柳川委員)

  4. 議題:研究会報告書の取りまとめ①

  5. 議事概要:
    はじめに、本日の資料・議事等の公開について、資料2記載のとおりとすることについて委員の了承を得た。
    次に、産業人材政策室伊藤参事官より資料3、経済社会政策室藤澤室長より資料4の説明を行い、その後、質疑応答を行った。
    続いて、事務局より資料5・6の説明を行い、その後、討議を行った。
    討議の概要は以下のとおり。




資料3・4説明後の質疑応答


佐久間委員

  非常に興味深いお話をお伺いした。
特にダイバーシティの問題は、今までこういうお話を聞いたことがなかったので、大変参考になった。
ダイバーシティを進めるために、非常に有効なのは企業合併である。私が今いる会社は合併を繰り返してきており、その経験からしても合併によって一気にダイバーシティが進む。
つまり取締役会の相当数が全く違う会社の人になる。
全く違う文化、違う行動指針の人たちとある日突然一緒にやっていくということで、ダイバーシティは大きく進む。

 そこで、ダイバーシティを進めるという意味でも、やはり合併なりM&Aを日本として積極的に進めるというような視点も1つ必要ではないかと思う。
せっかく経産省としてこれに取り組んでおられるのであれば、この視点を加えていただけないかと思う。

石田委員

  ダイバーシティについて意見を申し上げる。
本来ダイバーシティが意味すること、求めることは、意見の多様性であり、それを確保すめに、外形的な多様性、特に日本では性別の点での多様性に脚光があたることを認識することが大切だろう。
意見の多様性を目的として、外形的な多様性が求められているということだ。
その逆ではないことを理解することが重要だろう。


資料5・6説明後の討議



伊藤委員

  まず、全般的な感想としては、この研究会で十分にカバーできなかったテーマやポイントを含め、コーポレートガバナンスに関する多様な論点について非常に有益なガイダンスが示され、大変画期的なものだと思っている。
多くの企業がこの報告書、あるいは実務指針を参照することで、コーポレートガバナンスに対する歩が確実に前に進むだろうと思っている。
とりわけ、例えば私もこの研究会で強調してきた指名・報酬委員会について、どう活用したらいいのか悩んでいる会社が多い中で、実務指針を示してくれたというのは大変意義深いことだと思っている。

 1つだけ追加的に、相談役・顧問について私が感じていることを申し上げさせていただく。
方向性は報告書案で示されたとおりで結構だと思う。
ただ、もちろん相談役・顧問で有意義な役割を果たしている方も十分おられるので、相談役・顧問は一掃すべきだとは思っていないが、有意義な役割を相談役・顧問の方が果たしているかを議論する場があまりない。
例えば顧問について、自動更新になっていて、社外の我々が全く知らないところで継続される会社が結構あり、どういう役割を顧問の方がされているのかということを我々もほとんど知らない。
取締役は1年ごとに総会でも承認されるという中で、相談役・顧問の方が自動更新というのは、広い意味でのコーポレートガバナンスということからみると、ややアンバランスである。
もう取締役ではないので厳格に取締役会で議論するというのは重いことになるので、指名・報酬委員会で相談役・顧問の方の役割や継続の是非を議論することが、透明性という観点からすると、一つの方法ではないかと思っている。

小林委員

  3つほど申し上げる。

 まず、5.1「相談役・顧問制度に関する課題」の脚注で、相談役・顧問が籍を置く会社から報酬等を支給されることが社外取締役に就任する会社との関係でより強固な独立性を保つことにつながるという記載があるが、なぜそうなるのか、やや意味が不明瞭である。

 次に、伊藤委員のご指摘のとおり、相談役・顧問のファンクションが明確になっていればよいのだが、あの人がまだ相談役なのかどうかよくわからないというようなレベルでやっている会社は、指名委員会等で当然しっかり握すべきだと思う。

 三点目、「取締役会長の在り方」について、取締役会の役割・機能の4象限の図と関連付けて言うと、CEOの権限が分権化されているのか、集中しているのかというような議論の中で、CEOといってもそのファンクションは会社によって色々だと思うし、指名委員会等設置会社か監査役設置会社かによっても大分違うわけだが、ここのポイントは、社長・CEOが執行する上で、あまり会長が執行に関与すると非常にやりづらかろうという点にあると理解している。
指名委員会等設置会社で、明確に監督と執行を分け、社長・CEOが執行の全責任を持ち、取締役会は監督機能を果たすという会社においては、社長・CEOが執行、会長は監督ときれいに仕分けできるのだが、監査役設置会社と監査等委員会設置会社では、ここが不明確である。
「代表取締役会長」とか「会長・CEO」という役職があったりして、極めて意味がわかりづらい。
それを統一しろという意味ではないけれども、やはり執行が十分な権限を持って自由にできるようにしないと、二重執行のようなことになり、外から非常に見えづらい。
「取締役会長の在り方」という項目は、報告書案では、「本研究会で十分に議論できなかった事項」に入っているが、1つの問題提起としてもう少し前面に出したほうがいいのではないかと考えている。

事務局

  まず、最初の点は、ご指摘を踏まえ記載ぶりを検討したい。

 次に、「取締役会長の在り方」については、小林委員から提起していただいた問題意識を書いたものだが、今ご指摘いただいたように、この表現では、問題意識の出し方がまだ手ぬるいということかと思うので、さらに問題意識がわかりやすいように工夫してまたご相談させていただきたい。

佐久間委員

  「5.1相談役・顧問」のところについていくつか申し上げる。

 まず、「相談役・顧問の役割、処遇は、各社によって様々であり、一律に良い・悪いというものではない」とあるが、処遇が良い・悪いということではなくて、相談役・顧問の存在そのものが良い・悪いと言っているとすれば、一律には悪くないけれども、部分的には悪いということを断言しているのと一緒だから、言い過ぎである。
相談役・顧問となった者が悪いことをしたら、その人が悪いということだと思うので、ここは表現ぶりを改めていただきたい。

 次に、ここでいう相談役・顧問が、社長・CEO経験者に限定されているかどうかでだいぶ違ってくる。
元役人など専門性のある方を顧問として置いていて、従業員と同じようになっている場合もあり、こういう方々はコーポレートガバナンスに関係して議論すべき話とは違ってくる。

 また、役割を設定することやその役割に見合った処遇を設定することは当然だと思うが、外部に情報発信をすることについては、ここで問題になっている不当な影響力、行使の弊害の除去と関係するのかということの説明ができていないから、当然に必要となることではないと思うので、表現は書き分けた方がよいと思う。
制度的に開示ということになれば、悪いことをする人は堂々と悪いことをするだけの話だと思うので、目的と手段が一致しておらず、悪影響の排除には全くつながらないのではないかと思う。

事務局

  ご指摘をいただいた部分は、研究会の議論を踏まえて書いたつもりではあったが、もう少し丁寧な表現を検討したい。

その他の表現も含めて、ご指摘いただいたところは工夫させていただきたい。

大杉委員

  まず、1点感想のようなものを申し上げる。

 相談役・顧問の件だが、議論になっているのは、相談役・顧問になった方に能力がないとか悪いことをするということではなくて、相談役とか顧問という制度が存在すること自体が、たとえその人物が、能力があり高潔な人物であったとしても、昇進レースで悪いインセンティブを生み出したり、実際に社長に就任した人の経営のやり方に関して必ずしも適切でないインセンティブを与えるおそれが一定程度存在するということである。
つまり、人の良し悪しではなく制度の良し悪しが議論になっているのだと思う。
そのような観点で、相談役・顧問の各社における在り方は、取締役会なり指名委員会で定期的に検証することは良いことだと思う。
また、対象を社長経験者に限定するか否かについては、この研究会では、社長経験者以外の取締役や執行役員の経験者が相談役・顧問になることについてこれまで議論していないので、社長経験者以外は報告書の対象から除外してよいと思う。

 次に、2点質問させていただきたい。
第1は顧問に関することについてであるが、最近、優秀な人を他社に出したくないから社長退任後顧問にするのだというような言説に接した。
つまり、そのような方が他社の社外取締役になることは自分の会社にとって良くないことだから、相談役・顧問として遇する、という意味で合理性があるというようなことを、ある方がお書きになっていた。
私にはその考え方が正しいかどうかに十分な知見がないので、ご意見をいただければと思っている。事務局からでもよいが、できれば今この場にいらっしゃる企業経営者の方々からいただけると大変ありがたい。

 第2は、少し本筋から離れて恐縮だが、産業人材政策室の伊藤参事官に、私の考えが正しいかどうか、感触を教えていただきたい。
少し後ろ向きな認識として、日本の大企業の人事評価は課長までのレベルでは、人事部が中心になって非常に客観的、精密にやっているものの、その重点が年功とか残業時間等にかなり置かれてしまっているのではないかというのが1つの印象である。
もう1つの印象は、課長より上のレベルの人事は、暗黙知が支配する領域になっていて、悪くいうと恣意性が高いというものである。
これらの私の印象は時代遅れである可能性もあるので、この点について少し教えていただければと考えている。

伊藤参事官

  なかなかお答えしにくいところもあるが、今まで企業のさまざまな慣行についてヒアリングをした結果、おっしゃるとおり、ある一定の年代までの人事評価のあり方と、それ以上のところでは大分違うということが浮かび上がってきている。

 2点おっしゃったうちの前半、すなわち課長以下、特に30代あるいは40代ぐらいまでの若い方の人事評価がしっかり緻密になされているかどうかというところについては、今ご指摘があったように、やはり年功あるいは労働時間、すなわち会社にいることに伴って報酬をもらっているという面があり、その方の成果や生産性といったものをきちっと評価するための職務内容の明確化と、それに基づく公正な評価が日本の多くの企業において成熟していないのではないかという問題がある。

 次に後半部分だが、上記を経て選抜されてくる一定の経営幹部の候補においても、もともとある種の職務内容の明確化と、それに基づく評価がされていない中での選抜・昇進だから、結果として役員あるいはその一歩手前になった後も、具体的にCEOや取締役会との関係で、何をアサインメントとして規定され、そして、一定の期限までにどういったアチーブメントが求められているのかといったことが必ずしも明らかになっていないケースがかなり多いのではないか。

 そういう意味では、ジュニアの層でも、さらに役員候補の層においても、今まで以上に職務内容の明確化とそれに基づく評価がより一層求められているということであり、そういう意味では、コーポレートガバナンスの文脈でこれまで議論いただいている指名委員会、報酬委員会での審議によって、そういった職務内容を明確化し、これによりある種のインセンティブをつけていくということが非常に重要なのではないかと思っている。

事務局

  前半のご質問は委員の方々からお答えいただいたほうがいいかもしれないので、先に事務局からお答えするのは僣越だが申し上げる。

ご指摘いただいたように、他社に出したくないので残っていただくという要素るという話は、第4回の研究会で武井委員からご指摘をいただいた点である。
そういう視点もある一方で、だから社外取締役の層がいつまでたっても厚くならないのだという意味で、やはり社外取締役の人材プールという観点から、なるべく相談役として残らずに出てきていただいたほうがいいのではないかという議論のほうが多かったということを踏まえて、この報告書の案を作っているところである。
ご指摘のような点はあると思うが、まとめに当たって、それをどうするかというところは、事務局としても、もし委員の方からその見方についてご意見があれば大変ありがたいと思っている。

後藤委員

  まず、全体的な印象として、非常に多岐にわたる議論をとても的確にまとめられていて、大きな違和感もなく、とても良いレポートになるのではないかということを期待している。

 資料5の方向性案と、資料6の報告書案で、少し書き方のニュアンスが違う箇所がある。例えば、方向性案では、優れたCEO・経営陣を選び、適切なインセンティブを与え、その成果をチェックする役割は取締役会にある、と書いてあり、これは適切なことであるのではっきりと示すことが良いと思うが、報告書案だと明確には書かれていないように思う。
また、会社法上のどの機関設計を採用していても監督機能の強化を検討すべきだと方向性案に書いてあるところも、報告書案では明確ではないように思うので、これらは報告書案でも書いておいた方がよいと思う。

 その上で、報告書案の中で監督機能の定義として、業務執行を評価する、ということが書いてあるが、重要なのは誰の評価をしているかという点である。
一番上にいる社長・CEOがその下の人たちのことを評価しているのだろうが、その一番上の人の働きぶりを評価することも必要であるということがモニタリングモデルの考え方だと思うので、そのあたりを定義でもう少ししっかりと書くというリクエストを申し上げたい。

事務局

  大変大事なご指摘に感謝を申し上げたい。

方向性案の内容と整合するように報告書案は修正する。
また、ご指摘いただいた監督のあり方というのはいろいろな側面があり、モニタリングモデルということでいうと、一体何がモニタリングモデルなのかという議論自体が不毛ではないかというご指摘もあったので、実質的にどういうことをするのかという観点で、この資料を作っているところだが、正確性を期すという観点から色々と工夫しなければならないというご指摘かと考えているので、整理をしたいと思う。

後藤委員

  お答えをいただき、感謝したい。
誤解のないように少しだ足させていただくと、必ずしもモニタリングモデルという言葉を使えとか、モニタリングモデルを強化すべきであるという趣旨ではない。

モニタリングモデルは社外取締役が中心となって、取締役会の過半数を社外取締役が占める形にするということだと思うのだが、それに限らず、どういう形であれ、経営トップとその少し下にいる首脳陣の評価というものは必要だろうということである。

松元委員

  1点だけ、必ずしも明確に理解が及ばなかった点があるので、ご質問させていただきたい。

 報告書案において、「経営陣の指名・報酬の在り方」という項目において「社長・CEOの指名」とそれ以外の「取締役の指名」が、一応項目を別にして書き分けられているようであるが、そこは研究会の中では必ずしも意図的に区別して議論されていなかったような印象があり、一括りに指名委員会を関わらせていこうという話であったように思う。
報告書案では、社長・CEOについては指名委員会で個別の人物までしっかりと見るべきであるが、それ以外の取締役については指名委員会では方針を策定するだけということも考えられるというトーンに全体的に読めるが、報告書案はそのような意図で書かれているということでよいか。
それとの関係で、あえて社長・CEOとそれ以外の取締役を書き分けようとしたがゆえに混乱が出てきているのではないかという印象の表現がいくつかあるので、少しご検討いただければと思う。

事務局

  ここで書き分けているのは、アンケートをしたところ、指名・報酬委員会を作っても、そもそも社長・CEOは対象にしていないという企業がかなりある中で、それはいかがなものか、そこに積極的にかかわらせる必要があるのではないか、あるいは逆に社長の選解任とか社長の報酬を議論するときには、社長に外れていただく工夫をするということも考えたらどうかというご提案を書くこととの関係で、書き分けているということである。
また、社長・CEOの候補者について議論することはできても、その下の経営陣の候補者となると、対象者が課長クラスなどで何十人もいて、社外者に個別の人物の良し悪しまで見ていただく機会を設けることも難しいのではないかということを考えて、書き分けている次第である。
このような区別がよいかどうかについても論点だと思うので、具体的な表現ぶりを含めて、いただいたご意見も踏まえて、またご相談させていただければと思っている。

石田委員

  お話を聞いていると、相談役・顧問は、定義が本当にばらで運用もばらばらであり、これはほとんど企業文化だと思うが、そもそも文化というものは明確化できない。
相談役や顧問について明確化しても、例えば名誉ファウンダーという人がいたりして、その人はどうかということにもなる。

 仮に相談役や顧問制度がないとしても、例えば何かあったときにOBの顔を伺うという企業文化があれば、それは広い意味で相談役・顧問制度のようなものがあるわけで、そこまでクリアにできない。
したがって、相談役・顧問制度の役割の明確化はできない。
ならば、やはりそれを少なくとも会社として、もしそれがあるならそれを見直すことが重要ではないかと思う。
見直すというのは、廃止するなら廃止する、しないならしないでいいのだが、要は考えてみるということである。
この前のアンケートだと、相談役が何人いるかわからない、顧問が何人いるかわからない、報酬がどうなっているかわからないという会社すらあるわけだから、さすがにそれは考えてみたほうがいいのではないかと思う。

 これに関連して、文化のような問題ははっきり言って企業の方々が個々に考えるしかない問題で、人々が持っている美しい心に訴えるしかない。
そうなってくるとやはり重要なのは、教育でじっくりと考えていこうというところだと思うので、この報告書の中で別立ての大きな節にする必要まではないと思うが、ディレクターエデュケーションのようなものが重要だといった内容があると、人々の意識が変わっていくという意味でプラスになると思う。

御代川委員

  この研究会で既に申し上げているが、当社は相談役・顧問役制度を廃止している。
廃止からもう7年ぐらい経つが、その感想を申し上げると、私はそういうものを復活させる意味は全く感じない。
むしろ前の経営陣が廃止したことに非常に感謝している。
私は人事部門を担当しているが、ほかの会社からは、相談役とかそういう方がいると、経営層の人事があるときには、事前にそういった方にお伺いをしなければいけないという話を聞いたりもする。

 CEOである社長が最終のジャッジをすることで経営責任というものが果たせると私は思う。
経営陣を退任された方は、社会的な貢献というか、色々なところで社外役員などをされて、ご自分の経営経験等をアドバイスされるということがいいのではないかと思う。

 最近、当社を辞めた経営陣の話を聞くと、多くの方が違う業界に行きたいと言っていた。
違う業界や企業に行くということは、非常に不安ではあるけれども、一方で、非常に謙虚な姿勢で臨むことができる。要は自分に課せられた役割がはっきりしていれば全うできると思う。
素晴らしい能力を持っが1つの会社に長くいることを、これからは変えていく時代ではないかというような感想を私は持っているところである。

佐久間委員

  4.3「指名委員会・報酬委員会の活用」のところで、社長・CEOの選解任及び後継者計画に関して、それを権限とする法定の委員会は存在しないため、法定の指名委員会を活用する、または任意の指名委員会を設置することを検討すべき、という表現が正確だと思う。
他の部分を含めて整理していただきたい。

 それから、相談役・顧問に関しては、今までの議論が念頭に置いていたのは、やはりCEO経験者ということなので、はっきりそこに限定したほうが、報告書としてはすっきりするのではないかと思う。

武井委員

  まず、報告書はとても良くまとまった内容のものができていると思う。
そのうえで、2点コメントがある。

 1つは相談役・顧問について。先ほど佐久間委員からご指摘があり、石田委員からも相談役・顧問という概念が広いという指摘があったが、書くときには色々な形で注意して書かないといけないと思う。
相談役・顧問というのは広い言葉で、何を指しているのかの解釈が人によってばらばらであり、悪い例もあるだろうが、全部悪いというわけではないと思う。
また、これから若年の社長が増えてきて退社していくのであれば、会社の円滑な人材戦略上、顧問・相談役という地位を活用せざるを得ない場合もあると思う。
だから、今でもかなり注意して書いておられるとは思うが、一律に否定しているかのように読まれないよう注意深い書き方が必要だと思う。

 もう一点は、社外取締役になるということと、相談役・顧問として残るということは決して二択とか二項対立ではないと思う。
相談役・顧問に残っても他社の社外取締役にはなれるわけで、むしろCEOだった人がライバル企業とか同業他社の社外取締役になることを果たして当該企業にとって許容しがたいということを認識しておくべき。営業秘密の保全であったり競業避止などの観点がある。
フルスピードで走っていた社長がいきなりライバル企業の社外役員になるというのは難しいところもあると思う。

 次に、より大きな点として、別紙3の指名・報酬のガイドラインについて。
これは、先ほど伊藤委員もおっしゃったとおり、大変重要になると私も思っており、中でも先ほど伊藤参事官と藤澤室長からお話のあった経営人材候補の戦略的育成ガイドライン、ダイバーシティガイドラインは、大変素晴らしい内容なので、ぜひうまく中身を取り込んでいただきたい。

 特に、別紙3の「2.諮問対象者」について、現状は「2.1.社長・CEO「2.2.社外取締役・非業務執行取締役」(社外役員)、「2.3.社長・CEO
以外の経営陣」というポジションで区別して書いてあるが、おそらくその前に経営人材候補の戦略的な育成のあり方についてのガイドラインあるいは指針のような考え方がまずあり、そのうえで各役員の候補に当てはめていくのだと思う。
したがって、経営人材育成のあり方というところを最初に持ってきたほうがいいと思う。

 これは、例えば個別の業務執行を取締役会がどこまで行うかという議論で、社外の方も入れて最初に経営戦略等のマクロの話を議論してから個別の話を議論するから議論が深まるのであり、いきなり個別の話を社外の方に投げても議論が深まらないという話と似ている。
総論の後に各論があるというのが自然だと思うのだが、総論になるのが経営人材育成のガイドラインであり、社長等のポジションへの当てはめは各論である。
こういったガイドラインに書かれているエッセンスのマクロの部分を、まずは社外の方を含んだ指名委員会等で議論するというのが大事かと思う。
このことを書いていただいた上で、社長・CEO等の各論を書いたほうが座りが良いのかなと思った。
よって、両ガイドラインと時期的に合わせてその中身を取り入れたほうがより良いものになると思った。

小林委員

  3つほどある。
まず、社外取締役就任の話について。必ずしもリタイアした人に限らず、現役の経営者にとっても、違った業界の違った文化というのは極めて勉強になるので、現役ながら1つや2つは社外取締役をやるというようなこともむしろ必要ではないかと思う。

 次に代表権について。現場にいると、代表権にやたらこだわる会長がいて、代表権を外そうとすると大変に抵抗するという話を聞くことがある。
そもそも代表権とは何なのかということが議論されたかどうか定かではないが、指名委員会等設置会社では代表執行役という社長・CEOがいて、代表取締役は存在しないが、監査役会設置会社だと代表取締役会長と取締役会長では意味が全く違うと思っている方もいる。
だから、代表権がそもそも日本の中でどういう位置づけになっているのかをクリアにされたらどうか。

 最後に、報告書の書き出しの問題意識について。
現状では、欧米を含め、中長期的投資においては非財務の領域が非常に重要になってきている。
その非財務の領域の中のESG投資、ここではそのうちG(ガバナンス)が重要なので、コーポレートガバナンス強化が重要だというような書き出しのほうが、全体を俯瞰できるのではないかと思う。

澤口委員

  全体的に私の持論にも近い部分が多くて、違和感なく拝見している。
その上で、2、3申し上げる。

 モニタリング機能を重視したガバナンス体制について、冒頭に経営の意思決定の迅速化を図るためという切り口から入っているが、古典的なモニタリングモデルというのは、取締役会が実効性を果たすのはどのような局面かということから考えてきているので、迅速化という点から入るのがよいかについて考える余地があるかと思う。

 相談役・顧問について、書かれていること自体は納得できる部分も多いが、他のことと同列でよいのだろうかという気がしている。
この報告書は全般的には、社外取締役が増えて現場で非常に悩んでいる取締役会のあり方について、モニタリング的な発想も1つの提案として書かれた非常に重要な報告書だと思っているが、それとこの相談役・顧問の話は少し次元が違うように思う。
メディアに受けそうなところを集めたといった変な誤解をされないのかというような印象を持った。

 それから、別紙1の「取締役会の役割・機能に関する検討の視点」の表について。縦軸は非常によく理解できるが、横軸は本当に重要な軸なのか。
部門間の壁を取り払っていろいろやるべきではないかという議論やCEOの権限が分権型といえる会社もあるということ自体は理解できるが、今日ではCEOが部門に遠慮して部門間のコーポレートアクションをしないという選択は許されない時代だと思うので、並列的に縦軸、横軸というほどの重要性が本当にあるのかはよく考えた方がよいかと思う。

翁委員

  私も全体として非常に意味のあるものができつつあると思っている。
別紙3の実務指針案「2.2 社外取締役・非業務執行取締役」中に、社外取締役などを指名委員会の諮問対象に含めることを検討すべきという提案があるが、その下に書いてあることはとても重要なことで、やはり社外取締役は今後企業において重い位置を占めていくことになっていくと思うので、経営陣からの独立性の確保は重要だと思う。
この点はもっと前のほうに書かれている必要があるのではないかと思う。つまり、指名委員会等が設けられていなくても、経営陣からの独立性が確保されていることはやはり重要で、社外役員というのはそういう観点から選任される必要があるということが前のほうに書かれている必要があるのではないか。

 次に、同じ項目中の「社外取締役や非業務執行取締役の選解任が、社長・CEOの一存で左右されるのは望ましくな」いというのはそのとおり。
やはり後任のCEOを選ぶための議論にかかわる人は、社長だけでなく会長も含めそういう人の影響を直接受けるのは望ましくないので、やはり社外役員などの議論を通して選任されるというプロセスがあったほうがいいのではないかというような感じを持っている。

 そして、報告書案本体の「4.3 指名委員会・報酬委員会の活用」という項目に、ガバナンスのあり方、実効性を高める上で、全体として社外者中心に議論する場があることが望ましいと書いてあるが、その通りだと思う。
今出てきている相談役の議論とか、会長と社長の微妙な関係とか、そのようなことは、やはり社外の人たちだけで議論して、CEOに何か言うことができるような仕組みを活用するといいのではないかと思っている。

 先ほど小林委員がおっしゃった代表権のことについては、私も同じ問題意識を持っている。
日本は代表権者がとても多く、CEOだけではなく、会長や取締役などでも代表権を持つ人が多いような企業があり、代表権は一体何なのかという議論は必要かと思う。

 先ほど議論ができていないという話があったが、CEOを退いた会長の役割というのは、代表権をどう考えるかとか、監督に徹するべきではないかとか、そういう議論も今の日本の企業の多くにとってとても大事な課題だと思うので、今回は難しいかもしれないが、今後議論していく必要がある課題ではないかと思う。

大場委員

  この報告書案は、大変有益なものだと思うので、対外的にこのまとめを公表する際には、より多くの人たちになるほどそうかと思っていただくような仕組みも必要だと思う。
報告要旨を1枚冒頭に掲げるということが非常に重要ではないかと思う。

 この研究会は何のためにやっているかというと、相談役の議論をするためにやっているわけではなく、持続的な企業価値向上のためにガバナンスをどう強化するかとか、持続的企業価値の向上に向けて取締役会をどう活性化するかということを議論しているはずである。
そういうことを前提に、メッセージというか要旨をまとめられるのが望ましいのではないかと思う。そのときに、非常に大きな意味をもつと私が思うのは、小林委員からもご指摘のあった、大きな流れとしてのESGという広い観点が非常に大事だというメッセージである。
ESGを除外した持続的企業価値の向上などというのはあり得ないと思うので、そのような観点でこの報告書がまとめられているというメッセージが必要ではないかと思う。

青委員

  事務局の方には、大変分量の多いものをしっかりとまとめていただき、感謝している。
全体のトーンについて、賛成である。

 その上で、4点ほど、意見を申し上げる。

 1点目は、冒頭にある課題例についてである。先ほどご指摘があったように、企業価値をいかに中長期的に高めていくかというところが一番の要であるため、何でも監督するというトーンよりは、企業価値向上というところをできるだけ前向きに出したほうが良いと思う。
そうした意味で、課題例のところは積極的にリスクをとって経営するということを後押しするような観点から例をピックアップするということが考えられると思う。

 2点目として、取締役会のモニタリング機能や経営戦略について議論していくことは、取締役会の機能としてどのような会社でも共通して必須だと思っているので、委員会型の会社だけでなく、取締役会の機能が業務執行中心の会社であっても、このような機能は共通して必須なものであるとして取り上げていただくとことが大切ではないかと思う。

 3点目として、取締役会の構成として、独立社外役員が相当数を占めるようにするということが、非常に大事だと思っている。
すなわち、取締役会を十分に機能させるという観点からも当然大事だろうし、ダイバーシティの観点からも相当数の人数がいるということは大事なところかと思う。
そのため、ぜひこういう点は強調していただきたい。

 4点目は、相談役・顧問の関係である。CEOがしっかりと責任をもって経営を行うということに関して、相談役・顧問が制約となるかどうかという観点からみれば足りると思われるので、主なターゲットは、CEOの経験者の方が残られた場合に限定すればよいかと思う。
また、そうしたことに関して、まず社内とか指名委員会とか、場は色々あると思うが、いずれにしても、相談役・顧問の役割、機能に関して議論していくという慣行をつくっていくことが大事だと思われる。
そうした意味で、伊藤委員が最初におっしゃったところに賛成したい。
それとは別に、役員経験者の方が他の会社の社外取締役として活躍していただくというところについては、できる限り前向きな形で各社の方々が受けとめられるように、それを後押しするような形でとりまとめていただければと思っている。

江良委員

  全体的に大変膨大な量をまとめていただいて感謝している。
報告書の方向性、基本的な部分については、これで素晴らしいのではないかと思っている。
見切れていない部分もあるので、おいおいフィードバックしていきたい。

 先ほどから少し議論されている相談役の話と関係するが、このテーマの本質は、誰が経営のトップを実質的に担っているのかというのがよくわからないという点にあるのだろうと思う。
社長が実権をもっているのか、それと長なのか、まさかとは思うが代表権を持っていない顧問なのか、権限と肩書きのあり方が外部からはわかりづらいということかと思う。
そういった視点を盛り込んで問題提起をいただけると、先ほどからご指摘のあった様々な論点をまとめて議論しやすくなるのではないかと思った。

 さらに関連するが、相談役・顧問制度については、制度に対する評価はケース・バイ・ケースだと思っており、また、全体の中でこの部分だけをさらに切り出して取り上げることはあまり意味がない話だと思っているが、一方で、アンケートの回答の中でもかなりの会社がこの制度自体を今後見直したいと回答されていたように記憶している。
見直したいということは、本当はやめたいという考えもあるのではないかと推測する。
そういう見直しを検討しているような企業が考えを実行しやすくなるよう応援する、背中を少し押してあげるという観点も、とりまとめにおいて少し反映いただくことも大事なのではないかと思う。

 最後に、武井委員も言及されていたが、冒頭にプレゼンいただいた、将来の経営幹部候補生の育成や、ダイバーシティというテーマについての視点や取り組みは重要な視点だと思うので、極力このレポートに盛り込んでいただきたい。
とりわけ経営人材の育成、あるいはその前段階となる雇用というか、採用も含めたあり方というのは、ガバナンスに与える影響が非常に大きい部分だと考えているので、また別の機会で議論を深める場があると良いのではないかと思った。

神作委員

  やや細かい点かもしれないが、1点申し上げる。

「自社の経営陣幹部が他社の社外取締役に就任することを制約する社内規則がある場合でも、柔軟な運用を検討すべきである」という点について。

 この項目は社外取締役を活用するためのステップの中に位置づけられているが、これは社外取締役の活用の側の会社の問題ではなくて、派遣する会社の側の問題であり、かつ、今もご指摘があったと思うが、派遣するほうの会社の側からすると、自分の会社の将来または現在の経営幹部の知見を広げるという点もあると思う。
よって、この部分は、むしろ経営幹部の育成とか人材のほうの話にむしろつながる可能性がある話ではないかと思った。
したがって、ここだけ違う話が入っているように思ったので、指摘させていただきたい。
以上




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2018年09月18日

第7回 コーポレート・ガバナンス・システム研究会




CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)(第7回)-議事要旨

日時:平成28年12月1日(木曜日)8時00分~10時05分 
場所:経済産業省本館17階第1特別会議室

出席者

神田座長、青委員、石田委員(9時00分途中退席)、伊藤委員、江良委員、大杉委員(9時25分途中退席)、大場委員、翁委員、川村委員、後藤委員、武井委員、寺下委員、冨山委員、松元委員、御代川委員、柳川委員(9時50分途中退席)、竹林参事官、 田原課長(代理:染谷補佐)
(欠席:岩井委員、大宮委員、神作委員、小林委員、佐久間委員、澤口委員、藤田委員)

議題

社外取締役の在り方

議事概要

はじめに、本日の資料・議事等の公開について、資料2記載のとおりとすることについて委員の了承を得た。
次に、事務局より資料3の説明を行い、その後、討議を行った。討議の概要は以下のとおり。


伊藤委員

  私の体験も踏まえながら、幾つか申し上げたい。


 その前に、アンケート結果について、1点だけ、感想を含めコメントさせていただきたい。「社外取締役が十分に役割を果たしているか」という設問について、十分に果たしている、または回答概ね果たしているという回答の比率がとても高い。これだけ高ければ、もうこの研究会はほとんど要らないわけであって、私の感じだと、これはあまり額面どおりに受け取らないほうがいいのではないか。

 というのは、結構多くの会社において、取締役会の実効性評価の中に、社外取締役が役割、機能を果たしているかという項目がある。全体の中の1項目だから、それを社外取締役も当然、答えるわけである。そうすると、社外取締役は自分も含めて他の社外取締役をみて、役割を果たしていますかということについて答えざるを得ない。そうすると、他の方をみて役割を果たしていないとはなかなか書きづらい。なので、よくやっている、十分果たしているという回答に傾くので、少しそこは割り引いて考えなくてはならない。

 あとは、この研究会でもそうだが、そもそも社外取締役がどういう役割を果たすべきかという本来の姿について、まだ企業側が十分に認識、理解していない中で、例えば取締役会の議論が活性化したというだけで、機能、役割を果たしているとしてしまうと、それは少し楽観的過ぎるいう感じがするので、少しここは割り引いて捉えたほうがいい。

 私の体験ベースで、私自身が重要と思っていることをかいつまんで申し上げたい。委員会での諮問内容、あるいは決めたことが取締役会で否決されることはまずない。ということは、指名・報酬委員会で議論した結果というのは、相当にコーポレートガバナンスの中身を規定することになる。私が監査役会設置会社の社外取締役を務めている会社でも任意の諮問機関として委員会をつくることが大事だと思う。そのため、指名委員会と報酬委員会を両方作っていただいているわけだが、そのときに、作るだけではだめで、委員会をやはり機能させなくてはならない。

 そのときには、やはり中身が重要である。会社側から相談を受けたときは、少なくとも委員会のメンバー構成で社外が過半か、仮に社内、社外が同数であっても委員長は社外にするかのどちらかを満たすのが良いと申し上げている。どちらかを満たさないと、委員会を機能させるというのは結構難しい局面がある。

 そういう意味では、指名委員会というのは大変重要な役割を果たすわけだが、後継者計画と育成、あるいは後継者候補のプールについて、社外の指名委員会の委員の方がどのぐらい知っているかというと、これが結構難しい。だから、後継者計画のところと、社外の指名委員会の委員の方々の情報アクセシビリティーといったあたりはやはり工夫の必要がある。

 それから、場合によっては、会社側が提案した人事案が指名委員会で社外の人からノーとなったとき、会社側の方はそういったこともあるのだというメンタリティーをもっていただく必要がある。社内から出した案も、議論している中で否決されたり修正を迫られたりするということがあるのだということを、会社側のトップの方が理解をされておいたほうがいい。

 私自身は社外取締役として、社内の経営陣や担当者の仕事や努力はできるだけ深く理解するようにしている。しかし、どうしても知り過ぎてしまうとかなり厳しいことを言えなくなってしまうおそれがあって、二律背反的なところがある。私自身は、当該案件の文脈は読んで空気は読まないというような姿勢でいる。文脈は読まないで空気を読まないという両方をやってしまうと会社側は大変迷惑で、ただ騒いでいるだけということになってしまう。

 それから、平時の社外取締役の役割は、監督が主たる仕事になるわけだが、場合によっては、有事が生ずることがある。何らかの形でCEOが退くということになったとき、何せトップがいなくなってしまうものだから、社内から次のトップを含む人事案というのは出づらくなってしまう。そのときは、やはり指名委員会の社外の委員が何らかの形でイニシアティブをとってあげないと、空白期間がすごく長くなってしまう。そうすると、そこでの社外の指名委員会の委員の役割というのは、場合によっては人事案作りにタッチするので、解釈によってはある部分、執行に入るという局面は有事のときにはあり得るし、そうしなければならないということもある。

 それから、取締役会に出てくるいろいろな案件を、一つ一つ、視野狭窄的に社内と一緒に見ていたらやはりだめだと思う。中長期的な時間軸の中で当該案件を見たり、あるいはそういう視点から質問をしたりするように心がけている。

 多少言葉を足すと、個々の案件は担当部署が違うため、結構別個に出てくる。それについてもちろん審議するわけだが、会社の重要な局面は人事とキャピタルアロケーションである。キャピタルアロケーションという点では、M&Aも、配当も、自社株買いも、設備投資もまさにキャピタルアロケーションなわけである。それをやはり企業価値の持続的向上という視点から関連づけたような、担当者にしてみれば結構迷惑な話だが、全体最適的な視点でキャピタルアロケーションのテーマをこちら側も質問したり、こちらも考えたりして何か申し上げるということはしている。

 あと、我が国では全く未解決の問題として、機関投資家と社外取締役との対話のあり方の問題がある。コーポレートガバナンス・コードもスチュワードシップ・コードも対話の促進をうたっている。もちろん投資家と経営者の対話というのは、ある意味では当たり前だが、社外取締役と機関投資家との対話という場面もある。私の知る限り、あるいは他の社外取締役の方と話していても、機関投資家からの対話のオファーは増えつつある。そうすると、ある機関投資家から社外取締役に対話のオファーが来たときに、そこでどう対応するかについて、幾つかのパターンに分かれる。

 例えば第1パターンとして、機関投資家からの対話要請には応じないという社外取締役の方もおられる。第2のパターンとして、応じないわけではないが、対応の仕方について会社側に打診するというやり方がある。そうすると、また会社側の対応が2つに分かれて、どうぞ、当該社外取締役の自由な意思でおやりくださいというのと、かなり抑制的に、あまりこういうことは言わないでくださいというような形で会社側が多少要請するということがある。第3のパターンは、会社側にも打診せずに社外取締役のまさに自由裁量でどうするかを決めるというものである。この社外取締役と機関投資家との対話のあり方は、空白地帯なので、どれがいいかということは申し上げないが、テーマとしてはこれから重要性が高くなっていくと思われる。

 それから、一見個別のようなテーマであるが、社外取締役の任期をどうするかについて各社結構困っておられると思われる。社外取締役をお願いするときに、任期を言ってお願いする会社と、任期は言わないでお手並みを拝見しながら決めるというパターンもあり、あるいは内規で社外取締役は最高何年と決めているところもあったりして、結構多様だと思われる。

 私にとって印象的だったのは、たしかGEで社外取締役をすごく長くやっている人がいて、聞いてみると15年ぐらいやっているとのことだった。アメリカのこういうガバナンスに長けているコンサルタントと話をしていて、なぜこんなに社外取締役の任期が長いのですか、独立性を欠落させてしまうという批判はないのですかと聞いたら、あまりないそうである。それは、1つの見方として、社外取締役になってもう既に任期が長い方もいれば、比較的新たに社外取締役になられた方もいて、そういった方々数名がミクスチャー(ポートフォリオ)になっているわけである。社外取締役も1つのチームとして見てくださいということである。つまり、長くやっているのでその会社のことをすごくよく知っている方と、社外取締役になってまだ間もないが見方は新鮮だという方がおり、そのような社外取締役チームとして見ていただくことで、長いからだめだとか、そのような批判には当たらないような説明をしているというようなことを、そのコンサルタントは言っていた。

翁委員

  私は幾つかの会社で社外取締役をやっているが、社外役員の役割として重要性が増していると思うのは、やはり指名委員会、報酬委員会のところである。
私が社外取締役をやっている会社の1つが、今年から任意から法定になった。
やはり任意から法定になると、いろいろなことを一から考え直すようになっている感じがしている。


 CEOと社外役員が時々いろいろ対話をしながらやっているが、これらの 委員会は基本的には社外役員中心でやっており、指名委員会については後継者計画や、社外役員についてもポートフォリオ全体としてどこが欠けているのか、というようなことも含めて、議論している。役員の原則の任期も決めている。人事情報なども、後継者計画について議論をするために、共有している。

 報酬委員会も、既に業績連動の報酬体系にはしていたのだが、外国人役員の報酬体系は、中長期インセンティブ中心で水準が高い等日本とも異なるので、グローバル企業を目指していく上で、全体としてどのような体系が望ましいのか議論をしている。また、社外役員の報酬についても、委員会ごとにどのような役割の違いがあるかということも含めて、報酬委員会で議論している。社外中心の委員会に対する事務局のサポート、CEOとコミュニケーションなどは重要な要素だろうと感じている。

 取締役会については、いずれのところもそうなのであるが、やはり執行部で経営戦略上の大きな決断については議論が行われてきているので、社外役員は取締役会で株主の視点に立って、目配りが足りないリスクはないかとか、リスク顕在化への対応は大丈夫かとか、本当に企業価値の向上につながっているのかというようなことについて確認するようにしている。私が入っているところはいずれも、経営を実際にやってこられた方も含めて、いろいろなバックグラウンドの社外役員が入っておられるので、そこで活発な議論が可能になっている。

 社外役員として入っている会社でコンプライアンス上の課題を抱えて、それが顕在化してしまうという例もあった。内部の問題を、社外役員が見つけ出すということは非常に難しいが、そういった問題が出た場合には、企業風土を変える大きな機会と位置づけ、社外役員として必要な対応について明確なメッセージを伝えるようにしようとしている。

 そうした中で、社外役員だけで構成されているガバナンス委員会、コンプライアンス委員会というようなものを置いている会社もある。不祥事が起こったときにはそういった社外役員によるコンプライアンス委員会が機能し、経営陣にこういった改革をしていくべきだというメッセージを伝えるというようなことも重要だと思う。また、社外役員によるガバナンス委員会では、ガバナンス改革を決めていく上でどういう視点が重要なのかということを議論して、制度設計について執行部に提案するというようなことも改善に役立つのではないかと思う。

 そういう意味では、社外役員をどのように使うかは色々なやり方があるのではないかと私は感じている。ただ、常に環境はすごく変化しているし、どういう企業かということによって、その企業に合ったガバナンスの仕組みは違うとは感じているので、画一的にこうであるべきということはなかなか難しい。ただ、どの企業にとっても、グローバル化や技術革新というような環境変化は非常に大きいため、そういった意味で新しい視点を外から提供できるような人がいるということも、企業にとって役に立つのではないかと思われる。その企業に一番合ったガバナンスの仕組みをその企業自身が追求していくことがとても重要なのではないか。最後に、社外役員として活動しやすい会社の仕組みとはどういうものがあるかということで3、4点申し上げたい。

 1つは、もちろん取締役会で活発な議論がなされることに寄与するためのものとして、取締役会と別に役員の情報の共有会のようなものがあり、その中で会社のさまざまな戦略とか個別事業の特性とかいったものをフォワードルッキングな課題設定のもとで議論していただけると、その企業への理解が総合的に深まる良い機会になると感じている。

 中期経営計画についても、取締役会で議論するだけでなく、ほかの場で、かなり前提のところから含めて議論に参加したり情報を共有してもらえると、非常に役に立つと感じている。

 次に、事務局のサポート体制。私が入っているところはいずれも事務局が社外役員のためにサポートする体制をとっているし、執行部との橋渡しもかなりしっかりやってもらっている。

 最後に、情報共有ということで、アナリスト情報なども含めて、社外役員として判断していく上で重要な情報が共有されていると、非常に役に立つと感じている。

冨山委員

  事務局に質問だが、取締役会の評価が難しいという話は、状況的に、その結果として、あまりそれをやっていないケースが多いという認識でいいのか、やっているのだけれども、なかなかうまくいかないということなのか、どっちの感じが強いのか。


事務局

  アンケートで3割の会社がやっていないという回答をしているので、困った結果、やれていないというものがかなりあるのではないかということが想像される。


冨山委員

  実はオムロンでも取締役会の評価が難しいという問題があり、結構悩んでしまって、結果的に、PDCA型でいくことにした。
だから、今年、何が問題だったかというのを社内、社外の取締役、取締役の構成メンバーそれぞれに、わりと本音で話してもらって、これを第三者を使ってヒアリングをしてもらい、それを集めて何が課題かというのを共有して、では来年はこういう方針でいきましょう、こういうところを変えましょうというふうに議論するというスタイルにした。
そうすると、5段階評価で4とか3ではなくて、仮に5だとしても、より良くしようということになるので、機能した感じがしている。


 実際の成果でいうと、今年に向けて出ていた課題として、大きな経営方針の議論の機会が少ないというものがあった。実は私や他の取締役もそう思っていたのだが、あそこは監査役設置会社なので、ふだんずっと普通の法定決議事項をやって終わってしまう場合が多いので、わりそういう議論が出にくかった。しかし、やはりそれはちゃんと設定しようという話になって、本年度はそれをわりと意識的にやるようにしていたら、オムロンにとっては非常に重要な新興国の減速と、一方でAI、IoTブームが来てしまった。これは大戦略に大きな影響を与える。それで、これは経営陣側もどうも内心は思っていたようだが、取締役会の議論で一回、長期戦略の大レビューをかけたほうがいいのではないかというような議論になって、そこから何ヵ月かで大レビューをやっている。だから、このように、結果的に去年のPDCAの話がわりと反映されている。これはもちろん執行側と取締役会側のコラボレーションなのだが、そういう機会があったので、ひょっとすると、5段階評価にこだわらずに、もともと日本の会社はPDCA的なアプローチが得意なので、そういうものがあってもよいのではないかと思っている。

 それから、もう一点、規模別の議論があったが、この規模だからこういう体制がとれる・とれないという、できる・できない論と、もう一方で、社外取締役がいた場合にどっちがシャープに有効かという議論は少々別の議論だと思っている。私は、現在3つの会社の社外取締役をやっているが、一番大きなのはパナソニックで、同社は日立さんなどと同じような10兆円コースのスケールの企業で、オムロンは1兆円コース、7,000~8,000億円である。もう1つがぴあで、1,000億円コースであり、3つとも規模が違う。

 それで、取締役会の議論はどうなるかというと、やはりパナソニッククラスでは40近く事業部があるため、個別事業を取締役会で全部議論するということはまずなくて、ほとんどの場合、いいところでもカンパニー単位になる。オムロンだと、パナソニックでいうカンパニーの単位が企業であり、オムロンでいうカンパニーはパナソニックでいうと事業部である。それで、今度、ぴあになると、パナソニックでいう事業部イコール会社となる。だから、ぴあの取締役会で議論しているのはパナソニックレベルでいうと製品の話である。ということは、当然、議論のレゾリューションが全然違う。

 当たり前だが、ぴあでやっている議論が一番ストレートに業績にリンクする。ということは、裏返して言ってしまうと、もしビジネスに関する議論について、気のきいた人が仮に議論に参加していると、実はわりとビビッドに業績に影響を与えてしまうのは、むしろぴあである。逆に経営者が間違った判断をしたときに、またビビッドに悪くなるのもぴあのケースである。そうすると、できる・できないという議論とは少し別の軸で、社外取締役の貢献という意味でいうと、実はぴあが一番シャープだと思う。

 従って、議論の軸をどちらに設定するかによって意味合いが違ってくる。実際に社外取締役がいたときの議論の活性度、例えば取締役会で議案が没になるという比率でいうと、圧倒的にぴあが高い。パナソニックの取締役会で議案が没になるという蓋然性はおそらく極めて低い。もちろん、私も今年から入ったので、諮問委員会では何度も出し直しは起きているけれども、さすがに取締役会の本会で没ということはなかなか起きにくい感じがしている。でも、ぴあは本当に日常茶飯事である。そこは1つずつ軸を変えてみる視点があったほうがいい。

川村委員

  監査役設置会社でも委員会を作る例が大分増えてきた。
委員会は任意であるにもかかわらず、委員会の答申結果が取締役会でもかなり通るようになってきたというような話もある。


 一方、私も監査役設置会社に1つだけ関係しているが、それを見ていると、日常業務の議題が多過ぎる。法定の審議事項が多過ぎて、きちっとした審議を行う妨げになりかねない。

 従って、大会社であれば、監査役設置会社から指名委員会等設置会社に移るほうが、事務や組織の重複を防ぐ意味でも非常に楽になるという気がするが、大会社であっても、監査役設置会社に固執している会社も相当多い。これがどうしてか、私はあまりよくわからない。指名委員会等設置会社と監査役設置会社の優劣のようなもので、会社のいろいろな業務のややこしさから考えれば、方向的には、指名委員会等設置会社にして、非常にやりやすくしたほうがいいのではないかと思うので、この委員会において、それに対する見解をどこかでまとめておいていただくといい。

 もう1つ、この場ではあまり中小企業の話が出ない。今、日本の活性化が進まない大きな理由は、やはり中小企業である。あるいは、地方の事業で、必ずしも海外のいろいろな動きが及びにくいような会社であろう。少し大きい会社だと、みんな海外と競合してまともに戦えなければいけないので、そういう意味で洗礼を受けて、ガバナンスのほうからの改革もあれば、企業価値の改革もあるわけだが、中小企業の動きが悪いために日本全体が今非常にのらりくらりとしている。「形式的な話が多い」等の批判を言ってきているのも、中小企業のほうが多い。

 従って、中小企業のほうに改革が進むように、ガバナンスのほうからもっていくにはどうすればいいか、そちらに対する方向づけというようなところがこの委員会の最後に要るのではないか。

後藤委員

  社外取締役をどうやって活用していけばいいだろうかということで、事務局資料のように、ステップを分けて検討するというのは非常にすっきりして良いのではないかと感じた。


 一番重要なのは、社外取締役を結局何のために置くのか、どういう役割を期待するのかというところで、各社によってそれは当然異なり得るが、少し違和感を覚えるのが、事務局資料54ページの中のステークホルダーの意見の反映という点である。

 ステークホルダーの意見を反映するのはもちろん必要なことであるが、大きな文脈の中では、日本企業は伝統的には、どちらかというと、ステークホルダー・オリエンテッドな経営をしてきた。特に、従業員のことをよく考えてきた。それ自体は別に悪いわけではないが、ただ、それだけではなくて、やはり投資家の利益だとか、もう少し成長に向けたことを考える必要があるのではないかというのが最近の議論の大きな流れだとすると、その中で言われている社外取締役の話の中に、またステークホルダーの話がいきなり入ってくるというのは、大きな流れの中でこれがどういう位置づけなのかということが少しわかりにくくなるような側面がある。

 また、アンケートで、社外取締役が果たしている役割、というところでも、良かったことの例に、ステークホルダーの意見が反映されているというのがあるが、結局、このステークホルダーというのは誰かというところが問題である。株主も含めて全員ステークホルダーではあるわけだが、良かったことの例に挙げられているもので、利用者目線での意見表明というのは、消費者を意識しているということかと思い、それは結局どういうことをやると製品、サービスを買ってもらえるのかという話で、最近言われる、女性の目線からの経営もというような話も、これに含まれてくるのかもしれないが、それは従前よく言われていた内部の利害調整、従業員の利益を重視し過ぎてきたのではないかというのとは大分違った話のステークホルダーである。地域社会などもあり得るかもしれないが、このステークホルダーの意見を反映しましょうというのを全部ひっくるめて投げ込むと、結局どこに向かっていくのかわからなくなり、何の意見をいっても誰かのステークホルダーの意見を反映しているのだとすると、それで社外取締役の役割を果たしたことになるのかというと、何か違う。それを外すべきだということではもちろんないが、これがメインなのかというと、何かもう少し整理が必要なのではないか。

大杉委員

  アンケートの中で、「機関設計ごとに、社外取締役の役割としてどういう点を重視しているか」という設問に、「株主以外のステークホルダーの意見を取締役会に適切に反映させること」という項目があり、指名委員会等設置会社が他に比べて強く出ているという結果がある。
また、企業の側からも、一般的にこの項目の要素が社外取締役を入れてよかったという話につながっている。
先ほどの後藤委員のご発言は、ひょっとすると、株主利益とかステークホルダーの利益という言葉を使うときに、我々日本人は欧米と別のニュアンスで捉えている可能性もあるという趣旨かもしれない。
つまり、株主プラスその他ステークホルダー全体について、「企業価値」という概念をビジネスモデルと結びつけて理解しているならば、それは、英米だと、「株主価値」といわれているものと同じことを実質としては考えている可能性がある。


 その他ステークホルダーを重視するために社外取締役を入れたのではなくて、株主利益を従来よりは強く意識してもらうためにガバナンス、特に社外取締役を推進してきたというのが、オリジナルな経緯である。しかし、受けとめ方とか言葉のキャッチボールの中で、おそらく日本の企業社会はこの目的に向かって進んでいるものの、言葉遣いとして少々ずれが生じているという可能性がある。そのあたりについて、慎重な議論とかアンケートの読み解きが必要と思われる。

 あと1点だけ。今回アンケートをとってご紹介いただいたことに加えて、この委員会の委員の方々からの質問も踏まえて、それが会議のたびに補足されるというようなキャッチボールを事務局にしていただけたおかげで、より現状がクリアにみえてきたことについて感謝している。

 日本には上場会社が3,700近くあるが、全てがガバナンス・コードの精神に則るというのはおよそ考えがたい。ある機関投資家関係の方と話していると、言葉は悪いが、できる子とできない子がいて、できない子に守らせるということはおよそあり得ないし、我々も考えていないというような率直な意見もあった。経産省のほうで今後何らかの成果物をまとめていくときに、多様性をどのように尊重するかというのと、やはり理想的なものをわかりやすい形で出していくというのとの兼ね合いについて、おそらく苦労される点があると思う。現実的な範囲を踏まえつつ、今頑張っている企業を失望させないようなものができると良い。

柳川委員

  最初に、機関設計のアンケートの話で、機関設計の選択は、学問的にいうと内生変数なので、結局、何かの傾向、例えば社外取締役を重視するという傾向をもっている人がこの機関設計を選ぶという話と、こういう機関設計を選んだからそういう方向にみんなの意識が変わっていく話と、両面ある。
アンケートで機関設計ごとにそれぞれ傾向が出てきたときに、それは、そういう機関設計を選んだから出てきた話なのか、そういう傾向をもった人が機関設計を選んでいるのか、両方ある。
なので、アンケートの結果というのはもう少し補強データがあれば、そういうところを補強していったほうがいい。


 社外取締役が入ってきて大きく変わったポイントというのは、各企業の経営状態、あるいは経営のやり方に関して、横断的にみる目が養われてきたということだと思われる。そこは今、冨山委員からお話のあったように、企業の規模別にみるという視点も、ある意味、横断的に見えたから出てきたところであるし、やはりここは非常に大きな成果だったのではないかと思われる。これを高めていく必要がある。

 しかし、そもそも、本日出てきているような話は、ほとんどは経産省でやるべきことではなくて、ある意味でコンサルがやるべき話だと思われる。しかし、そこに一番のポイントがあって、こういうところのコンサルができるほどにまだ議論が煮詰まっていなし、実態を把握されていないというところがやはり大きな課題である。決してこういう議論をやる必要がないということを言っているつもりはなくて、コンサルがこういうことができるほど知見が高まっていないというところに、大きな課題があるのだと思われる。

 そういう点でみると、ここで考えるべきことは、仕組みの問題と、個々の社外取締役の人たちが持っていただかなければいけない能力の問題と、2つ分けて考える必要がある。

 能力の話は、先ほどの伊藤先生のお話は、ある意味でプロフェッショナルとしての経営能力とは何かという話そのものである。

 社外、社内にかかわらず、プロフェッショナルとしての経営能力として本来何が必要なのかというところがまだまだ欠けていて、そこの進化が必要だということがある。

 ただ、仕組みの問題で考えるときには、そうやって能力を高めてもらったとしても、おそらく本日お話しいただいたお三方のような人たちがぼこぼこ出てくるというのは残念ながら考えられないので、そもそもすごくハイレベルな社外取締役の人たちが、より活躍してもらえるような仕組み作りの話と、そうではない一般的な社外取締役の人たちが、よりうまくやれるような仕組みの話を、分けて話をしないといけない。F1レーサーを育てるような話をされても、ペーパードライバーはやはり使えないという話になってしまうので、そこは仕組みとしては分けて考えなければいけない。

 仕組みの話で何点か申し上げると、1点目は、やはり横断的に、あるいは人ごとに、ある種の、社外取締役関連の悩みだとか、ベストプラクティスなどを共有する、懇談会か研究会のようなものが必要かもしれない。これはアメリカの話を聞いただけでもなかなかできない問題であるし、日本で今作っていく中で必要な課題である。やがてそれが蓄積されてくれば、どこかの企業の方とかコンサルの方にやってもらえるのだろうと思われる。

 2点目は、やはり仕組みの課題として、社外取締役の広い意味でのマーケットをどうやって作っていくかというところが大きな課題なので、情報提供だとか、評価だとか、社外取締役のその手のマーケットをつくる上での仕組みとして何が必要で、何が欠けているかということがもう少し議論できるといい。

 最後に、川村委員のほうからお話があった、中小企業に関してどういう形のガバナンスのやり方を作っていくかというのは、簡略化の方向も含めて、どうしても大企業のガバナンスの話をしてきたので、そこはもう少し議論を詰めておく必要があると思われる。

青委員

  まず、後藤委員からご指摘のあった事務局資料54ページのステークホルダーの意見の反映というところは、資料の右下の(iv)にあるように、ガバナンス・コードでは、少数株主をはじめとするステークホルダーという表現にしている。
少数株主という目線は日本ではわりと忘れられがちであり、そこを特に意識していかなければいけないということで、あえて書いている。
そこのところの誤解がないように、資料を整えられる際には意識していただけるといい。
それから、意見として3点ある。


 まず1点が、コーポレートガバナンスのルールの関係で、アンケートの中で、経営層の意識が低い点が気になる。担当の人に任せきりであるとか、ガバナンス・コードはよく読むと各社できちんと考えてくださいと言っているだけなのに、横並びにせざるを得ないと思い込んで、いろいろな意見を言っておられるという感じがある。

 中小企業がなかなか進んでいないというところも、やはり外部の目がないというところが1つの大きな要因ではないかと感じられるので、そうした意味で、社外取締役が入ることにより、中小企業も含めてガバナンスそのものを真摯に見つめ直すということが進んでいくとよい。

 そういう意味でいうと、事務局資料53ページの左下のところで、個別の業務執行が多いタイプの会社について、社外取締役の人数が少ないほうが整合的という書き方をしており、こういう書き方をすると、少ないほど良いというように誤解が生じてしまう。委員会でも複数の人がいないとなかなかうまくいかないというところもあるので、一定の人数は少なくとも確保することは重要という形でご主張いただけるとよい。

 2点目として、社外取締役適任者がいないという話もあるが、これも中身をよく見ると、社内に精通している人がいないので選べないということが特に言われている。しかし、社外取締役については必ずしもそういうことではなく、事前のレクチャーをするなど、サポート体制をしっかり整えるということが重要であって、必ずしも社内事情に精通しているということが必須ではない。そこのところが言い訳になって、入れないのを正当化するようなことにならないようご配慮をいただきたい。

 3点目、事務局資料65ページのタイプCというところで、ダイバーシティを確保するためだけの社外取締役というのを書かれている部分がある。もちろんこれはあまり想定されないという形で書いてあるけれども、経営プロのAと専門知識のBがある中で、ダイバーシティを確保していくということが本来望ましい姿であると思われるので、この点についてご配慮いただきたい。

 全体としては、社外取締役の機能とか役割について明確な形でまとめていただいており、社外取締役の活用についてステップごとに書いていただいているというのは非常にわかりやすいので、全体のまとめ方については賛成である。

伊藤委員

  冒頭の説明の中で事務局からの問いかけがあった点と、それから、今、皆様の議論の中で出てきた点へのコメントも含めて、申し上げたい。


 今、ステークホルダーということが何人かの方から話題になったが、これまで、投資家目線、あるいは株主主義という言い方と、それからステークホルダー主義という言い方で、日本企業の経営者は伝統的にそういう言い方をすると、ステークホルダーを大事にしますという言い方をする。この株主主義というのとステークホルダー主義というのを対立的に捉えてきてしまったのが我が国の悲しい歴史で、もうそのような議論から脱却しなくてはならない。

 最近、ESG、Environment(環境)、Society(社会)、Governance(企業統治)という視点が、世界的に注目を浴びている。これはまさに開示の面でも世界的なうねりになっていて、このEとSとGというのはどういう関係かというと、Gというのがある意味では要で、ガバナンスという議論だとか視点で考えるときに、EとSにもちゃんと配慮してくださいということである。EとSは、環境だとか社会のさまざまな面だから、Sには従業員という視点も当然ある。ガバナンスという脈絡の中には、当然、EとSが入り、EとSは投資家だけの話ではないので、そういった視点をもった議論を我々もすべきではないか。これが1点目である。

 2点目は、事務局から社外取締役の報酬、業績連動をどう考えるのかという問いかけがあって、何となく半々かなという説明もあったが、私のかかわっている会社も半々に分かれる。どちらがうれしいかというと、正直言って個人的には、いささか業績連動のほうがうれしい感じはする。ただ、社内の方と同じように連動させてしまうと、これは社外取締役ではなくなってしまうので、多少緩い形で業績に連動させている会社はある。それは社外取締役の趣旨からしても逸脱していないと思う。それから、社外取締役としての仕事を果たすために、いろいろな会議に出たり、場合によっては工場を見に行ったりとか、結構時間をとられる。そうすると、当然、時間価値の高い人が社外取締役になっているわけだから、やはり社外取締役の報酬というのももう少し議論の俎上に載せないといけない。ところが、報酬委員会で議論しようとすると、先ほどのように社外の方がリードするわけである。社外の方がリードしていて、自分たちの報酬のことを言うのは難しい。社長の報酬をこうすべきだとか、副社長と社長はもっとこんなに差をつけるべきだというのは結構言えるのだが、社外取締役の報酬をどうするかというのは、自分たちのことになって、ひょっとしたらお手盛りにみられるのも嫌だなということになる。独立性を失いたくないということで、このことが結構盲点になっていて、社外役員からは言えないと思うので、それこそこういう研究会でぜひテーマに上げていただきたい。

 それから、もう1つは、こういう議論をしていると、指名委員会等設置会社が機関設計としてはガバナンスの設計上、何となく、一番優れているといった雰囲気があるが、私が見てきたところからいうと、社内監査役の役割は結構重要である。どういうところで出るかというと、監査役会設置会社において、社外監査役と社外取締役とでは、それぞれ持っているその会社についての情報に結構差が出てしまうことがある。すなわち、社外監査役の方は社内の監査役の方と監査役会を開いて、前後にすごく濃密な情報共有をしていて、社内の監査役の方がかなり情報提供している。ところが、社外取締役のほうは、現在、取締役会事務局を作るところが出てきているのだが、そこまでの情報提供者がなかなかいない。ここの情報ギャップをどうするかという問題がある。

 海外の方からは、監査役会設置会社はあまり受けないという話をよく聞く。でも、よくよく話していくと、今のような社内監査役が果たしている役割、つまり社内の事情に精通して、かつ社外の方への情報提供ということを話すと、結構わかってくれる海外の機関投資家もいる。何となく監査役の話が置いてきぼりになってしまうのではなく、監査役会設置会社がそもそも一番多いわけであるから、そこの視点も入れておいたほうがいい。

松元委員

  質問が1点と感想が1点ある。


 まず、社外取締役に期待する役割というところで、今回の社外取締役関係のアンケートにおいて、そういう点についての質問項目があったのかどうか。つまり、「社外取締役に何を期待しますか」という設問で、例えば社外取締役に次期のCEOの選定のときに主要な役割を果たすことを期待しているかどうかというようなアンケート項目があったのかどうかということと、そのご回答の状況を教えていただきたい。

 感想としては、この研究会に来るたびに、素晴らしい、先進的な会社が日本にこんなにあったのだと思ってとても感動しているのだが、実際、日本の他の会社はそこまで素晴らしいスーパースターのような社外取締役は入っていないのではないかというような気がしている。例えば、この研究会で次期CEO、後継者計画を社外過半数の委員会でやったほうが望ましいといったことが、特に会社の規模とか条件なしで出てきてしまうと、普通の一般的な社外取締役しかいない会社としては、形式的には従うかもしれないけれども、少々困るのではないか。

 ただ、ではそうすべきではないかというと、私もよくわからない。そのようにしなさいというような指針を入れることで、社外取締役には優秀な人に何としても来ていただかなければいけないということで、それをきっかけにすばらしい社外取締役が増えるという可能性もあるので、それはそれでいいような気もする。一応そういう方向性を打ち出すのであれば、今の普通の会社の感触というか、現状をお伺いしたいというのが最初の質問の趣旨である。

事務局

  松元委員のご指摘のように、スーパースターのような会社ばかりではないということは、むしろ今回の自由記載欄などをみていくと読み取れるところもあるが、最初にご指摘いただいたストレートな質問項目はない。


御代川委員

  私からは、社外取締役の方の資格要件について少し触れさせていただきたい。
当社の場合は、社外取締役をお願いするときに、1年任期、最長4年ということでお願いしているが、内規で、当初、70歳を超えないことということを明記した。
これはある意味、年齢差別のようなことになってしまって問題ではあるかもしれないが、新陳代謝を図っていく必要性のため設定していた。


 ところが、やはりプロの経営者の方、要は経済界の現職・OBの方が一番必要と私は感じているが、その方たちがその内規ではどうしてもいつも(年齢制限の)例外事項になってしまう。日本の場合においては、高齢になるまで社長、会長職に就いているケースがあり、また相談役、顧問となられるケースがあるので、そういう方(経営経験豊富な社外取締役候補者)がなかなか見つからないということが課題である。やはり経営者にとっては経営の経験をされている方のアドバイスというのが一番求めている部分であるから、早くそういう方たちが社会貢献のために社外取締役になられるべきである。

 ただ一方で、現職となると、例えば当社の社長の動きをみていると、毎月のように海外出張があり、それから業界の代表の仕事もしており、とてもほかの会社の社外取締役を兼務できる状態ではないと思うので、これからはむしろ会長職になられるような方が積極的に他社の社外取締役になられると、非常にいいことではないかと思う。

大場委員

  私は投資家の立場から申し上げたい。
大きくいって意見は2点、そのあと、現在直面している課題について1点申し上げる。


 まず、社外取締役の候補者について様々な要件が必要だというご意見が委員の皆様方から出ているが、これだけ重要度が高まってくると、社外取締役のマーケットをどう作るかということが大変大きなテーマになってくる。私は、そういう意味では、投資家というのも結構重要な候補になり得るのではないかと思っている。投資家は、常にグローバルに横断比較を行うことが仕事であり、かつ、経営者の方と相当ミーティングを重ねているからである。いろいろな比較検討や具体的なケーススタディを相当積み上げてきているので、有力な候補者の1つではないかと思っている。

 ところが、投資家のままでは社外取締役に就任するのは難しい。当たり前だが、インサイダーの立場になるからである。これをどうやってクリアしたらいいのかということもテーマかと思っている。

 それに関連する意見だが、伊藤委員から社外取締役と機関投資家の対話が1つのテーマになり得て、これは大変重要なことだというご指摘があったが、これが現実には少々難しくなりつつある。それはどういうことかというと、フェアディスクロージャーの観点からすると、どこまで対話ができるのかというようなことを、双方がそれぞれの基準で考え始めている。従って、これは研究会のテーマとは少々外れてしまうのかもしれないが、投資家と社外取締役の対話を促進するという観点が非常に大事だと私は思うが、そのときに、フェアディスクロージャーの範囲についてガイドラインを示し、対話しやすいようにすることも大事ではないか。現実に、これはお話しして良いのかどうか、聞く方も判断が難しい。判断が難しいとコンサバティブになってしまう。せっかく2つのコードを作って、対話を促そうとしているわけなので、そこを少し工夫する余地があるのではないか。

 それから、1つ、これは現実に起こっていることで、当社自身も社外取締役を選任しているため、取締役会を計画するときに、全員出席するようにスケジュールが設定し難いという問題がある。社外取締役の方もいろいろな局面で会議に出たりされるので、ほとんど空き時間がない。そうすると欠席を前提に開催するというわけにもいかないし、今月お休みですというのもできないという問題が、現実に起きている。このような問題は、これから拡大していくと思われるので、少し考えないといけないテーマになっている。

神田座長

  日本人はまじめなので、社外取締役は仕事のし過ぎではないか。
アメリカの何倍も時間をかけて仕事をして、回数もアメリカより多くて、もう少し良い意味でいい加減にしつつ、それでいて必要なことをするというようにしないと、これでは疲れてしまうのではないかという感じがする。


武井委員

  まず、事務局資料53ページの絵について。
先ほど機関設計の話が出ていて、監査役会設置会社と指名委員会等設置会社との比較があったが、多分、より正確には、監査役会設置会社と、それ以外の取締役会に業務執行事項の決定を上げない機関、すなわち指名委員会等設置会社だけでなく監査等委員会設置会社との比較なのだと思う。
細かい業務執行を会社法の規制によって取締役会で決めないといけないという監査役会設置会社と、それ以外の取締役会から下ろせる指名委員会等設置会社・監査等委員会設置会社という比較のほうが正確だと思われる。
たださりとて、私は53ページの絵がいいと考えている。
多種多様な機関設計があり得る中で、優劣というよりは、こういう機関設計の選択肢も踏まえて、企業がいろいろな意思をもって、こうすべき、ああすべきという意思を形成する視点としてのこういう四象限の図というのは、オリジナリティーがあってわかりやすい。
この線の中でいろいろな機関設計の特徴を入れて、この中の分析を深めていただくといいというのが1点目である。


 2点目が、事務局資料59ページである。本日、伊藤委員、翁委員、冨山委員、川村委員からもお話があった点で、共通してものすごく大事な点だと思ったのが、個別の業務執行が取締役会にいろいろと上程されている中で、社外取締役の方から意義のあるコメントを引き出すためには、大きなピクチャー、大きな戦略や、中長期の目線、中長期の企業価値の向上とか、株主の目線とかも出たが、そういった一定のハイレベルなものをまず取締役会で社外取締役の方も含めて議論し、それを踏まえた上で個別の業務執行を議論するというようにしないといけないのではないかと思われる。

 この点は、ガバナンス・コードの4-1でも、経営計画とか会社の大きな方向性について、まず取締役会できちんと議論してくださいと書かれてある。個別の業務執行をどのくらい取締役会に上げるかはいろいろな選択肢があるわけだが、そういう大きな方向性についての議論がちゃんと取締役会でされ、そこに社外取締役も参画し、その上で個別の業務執行をどこまでやるかを考えるといった大きな方向性があって初めて、個別のものがあるという感じのほうが、意味があるのではないか。4人の方のおっしゃったコメントは、そういう点で共通項があると思われるため、59ページのところに活かしていただきたい。何がモニタリングなのか、何が監督なのかという実質に絡む話であり、このあたりの悩みは現場でも多いと思うので、きれいな形で整理していただくとわかりやすい。これが2点目である。

 3点目が、事務局資料72ページで、経営陣幹部の方が少なくとも1社程度は兼任という、この1社という数字を書くのがいいのかどうか、若干迷うところはある。経営陣幹部という言葉にはいろいろな人が含まれて、ここで言いたいことというのは、業務執行で忙しい社長さんなどはどう考えても、できても1社だろうというのはあるが、例えば会長さんのようなそこまで業務執行に時間を割いていない方であれば2社以上できるかもしれない。経営陣幹部という言葉だと少し広いのかなということがあって、その経営陣幹部の方の担当する業務執行との兼ね合いの中で支障のない範囲で社数は決まるような気がする。ここにもし1社と書くのであれば社長のようなイメージで、逆に業務執行がそこまでお忙しくない会長さんであれば2社以上でもできると思う。このように、1社という数字をどう書くのは悩ましいと思ったというのが72ページである。

 4点目が事務局資料73ページについて、例えば何年という年数を決める、決めないという話の議論が時々出るが、年数が長いからといって一律におかしいわけではないと思う。先ほどの伊藤委員からのご指摘のように、GEで、何年やっている人がいるかというのも、まさにダイバーシティの1つの要素である。長くやっている人と短くやっている人の多様性もあるということは貴重なご指摘だと思う。何年で絶対辞めるというように決める会社はあっていいと思うが、例えば8年やったら絶対だめとか、決めることが絶対是だという単純な話でもないのだということも、視点として示したほうがいい。そういう意味で、年数制限が一律にいいかどうかに関しては、いろいろな考え方、視点があるということも73ページの関係では示したほうがいい。またその関係で、ダイバーシティというのが大事であって、何年やっている人がいるという点もダイバーシティの1つの要素だということが大事である。

 5点目が75ページの社外役員の報酬のところで、まず、業績連動という言葉の中の自社株報酬の中にはご存じのとおり3種類あって、ストックオプションとリストリクテッド・ストックとパフォーマンスシェアがある。私の感覚的には、ストックオプションのような株価連動のものと、パフォーマンスシェアのような業績連動のものはあまりそぐわないかもしれないが、リストリクテッド・ストックであれば、社外役員の方が持つことが推奨されて良いと思う。非業務執行役員について、業績連動とか株式報酬が全部一律にだめだというのは行き過ぎで、一定の持てるラインはあるという気がする。

 先ほども議論が出ていたが、実際、日本の社外役員の方はアメリカよりも間違いなく忙しい。取締役会は月1回あり、それに加えていろいろな委員会などもあり、特に法定の委員会、監査役会、監査等委員会等だと75%出席しないと反対する人が出てくるので、社外役員の方は月に2回以上会社に行かないといけない。アメリカの方も、監査などをされている方であれば行っているかもしれないが、間違いなく日本のほうが忙しい気がしていて、それなのにアメリカの社外役員の方々よりも社外役員の方の給料がかなり安いと思う。特に中小企業はそうである。そのため、社外役員の方の給料をもう少し上げたほうがいいと私は思っている。キャッシュで払うのか、株で払うのかという選択肢もあるが、給料を正当に払うべきである。少なくとも社外役員の方は日本のほうがお忙しくされているから、報酬もちゃんと相当に払うべきだというような視点は75ページに上げていただくほうがいい。

 6点目が、事務局資料83ページについて、書かれていることに何ら異論があるわけではないが、1点だけ。筆頭独立社外の「筆頭」という言葉が、英語のリードを訳しているわけだが、筆頭ということに違和感を持つ方もいる。なぜかというと、独立社外取締役として偉い方に来ていただいているのに、その方に序列をつけ、この人が一番偉いかのようになる言葉に違和感があるということである。これは単にリードをどう訳すかの日本語のボキャブラリーの問題だが、筆頭という言葉にこだわる人がいるので、社外役員のグループの中である意味、とりまとめ役というか窓口とか、そのような役割でもいいと思うので、ファンクションを書いておいたほうがいいと思う。

 最後に7点目が事務局資料84ページについて。取締役会評価というところは、先ほどまさに冨山委員がおっしゃったとおりで、通信簿的なアンケート結果よりはPDCA型のほうがよほど回ると思うし、そのほうが意味があるのだと思う。結局、取締役会評価とは何かということの答えは会社の中にあるわけで、そんなに難しく考える必要はないはずのところが、なぜか皆さんやっていないということである。その悩みというのが、やはりどのような取締役会にしたいのかと考える前提の、事務局資料で示されている1から9まであるステップをやっていくと、自然に評価もしやすくなると思うので、今回のこの事務局資料をまとめれば、より取締役会評価もしやすくなるというところも、この全体のまとめの中で示していただくと、世の中のためになると思われる。

寺下委員

  松元委員がおっしゃった点が極めて重要で、当社は今、社外取締役の実効性評価を受託しているが、社外取締役の中にはご自身の役割を整理仕切れていない方が多くいらっしゃる。
松元委員のおっしゃっていることは事実だと思う。


 こうした意味から、さらにはより正確な当該企業ならびに業界情報の理解と言う点で取締役のトレーニングは実際に効果があると考える。当社はガバナンス・コードにあるような社外取締役のトレーニングを、実際に時には悪役を買って行うわけだが、時には厳しい点を指摘することでお怒り頂戴する場面もあるものの、やはり最終的には懐の広い方が多いので、トレーニング後は率直な意見に評価を頂戴することが実態である。トレーニングというのは極めて重要な機能だということをこの委員会でもう少しフォーカスいただくと、松元委員がおっしゃっている点も少しは緩和されるというのが1点目である。

 2点目が、御代川委員が言われていた社外取締役の70歳以上は選定基準から外れるというのは極めて重要で、実は日本には70歳以上で本当に立派な方はかなり多く、これはもう少し活用すべきだと思う。高齢だとどうなのかという声もあるが、私は実際相当ワークすると思う。

 現実問題として、今のアメリカのように、現役の方々が他の会社で取締役をやるというのは、日本の会社法等のいろいろな制度設計の中で、時間的に難しい。一方、高齢化というと言い方は悪いが、70歳以上で知見をもって、まだまだしっかりなさっている方は多い。これを使っていけないということではなくて、むしろ使うべきだということを皆さんでぜひ共有化していただきたい。

 3番目は、社外取締役と機関投資家との対話に関して、会社内での事務局のあり方という点である。アメリカの場合は、社外取締役と機関投資家との対話の窓口というのは必ずカンパニーセクレタリーかコーポレートセクレタリーが所管の窓口になる。社外取締役を投資家とのミーティングに同席させるか否かは所管の窓口が判断する。日本にはこの組織体系がない。翁委員も事務局のサポートが重要とおっしゃっていたけれども、そこのところはすごく重要で、そこにある程度の力をもたせるような組織体系を持たないと、全体がうまくいかないのではないかと思うので、その辺をぜひご検討いただきたい。

江良委員

  私自身もさまざまな社外役員の方とも実際に意見交換させていただいた経験からしても、役員報酬の業績連動という点も含め、もう少し報酬を上げてもいいのではないかと思っている。
ただ、上げるにも相当な理由が必要なのだろうと思うので、社外取締役の働きぶりのようなものがもう少し対外的に分かりやすくなると、報酬を上げるという議論がしやすくなるのではないかと思う。


 なお、報酬の設計について、ストックオプションやリストリクテッドなど様々な方法があると思うが、これについてはなるべく各社に任せるのがいいのではないか。我々も、なるべく多様性を認めるような方針にしている。一方で、社外役員の報酬を適切な水準に設定しやすいような制度設計とはどういうものなのか議論してもいいのかもしれない。

 何人かの委員の方から、中小企業についてのご意見があったが、まさに同感で、特に最近、地方の企業と積極的にお会いするようにしているが、腹落ち感がない企業も多く、そもそも何のためにガバナンスに関する取組を強化しているのか、浸透していない場合も多い。

 従って、どのような企業を主に念頭において議論するかは重要なポイントである。個人的な感覚だと、常に先進的な取り組みをされている企業は10%ぐらいで、次に、取組みを強化する意欲はあるがどこから手をつければ良いのか試行錯誤されている企業が60%ぐらいで、残り30%ぐらいはそもそも意欲がない、という印象である。この意欲がない企業層まで含めてしまうと議論が複雑になるので、先進的な10%の企業を視野に入れつつ、できれば真ん中の60%を中心に、議論するとよいのではないかと思う。


以上





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2018年09月17日

第6回 コーポレート・ガバナンス・システム研究会




CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)(第6回)-議事要旨

日時:平成28年11月18日(金曜日)16時00分~18時00分 
場所:経済産業省別館9階944共用会議室

出席者

神田座長、青委員、岩井委員、江良委員、大杉委員、大場委員、翁委員、川村委員、小林委員、佐久間委員、澤口委員、武井委員、寺下委員、藤田委員、松元委員(17時00分より途中参加)、御代川委員、竹林参事官、田原課長(代理:藤本専門官)
(欠席:石田委員、伊藤委員、大宮委員、神作委員、後藤委員、冨山委員、柳川委員)

議題

指名・報酬の在り方(2)

議事概要

はじめに、本日の資料・議事等の公開について、資料2記載のとおりとすることについて委員の了承を得た。
次に、事務局より資料3の説明を行い、続いて、エゴンゼンダー株式会社の佃様による資料4の説明、ウイリス・タワーズワトソンの櫛笥様による資料5の説明が行われ、その後、討議を行った(討議(1))。
その後、事務局より資料6の説明を行い、再び討議を行った(討議(2))。討議の概要は以下のとおり。




討議(1)(資料3・資料4・資料5の説明後)





佐久間委員

  ただいまの皆様のプレゼンテーションは大変貴重な内容であった。
御礼を申し上げたい。


 次に、事務局の資料3のアンケート結果分析は非常に良くなっていると思うが、1点申し上げる。後半の機関設計に応じた分析と、その前半の売上げといった規模の分析を合わせないと、機関としての差なのか規模の差なのかがわからない。指名委員会の規模というのがデータの中にないので、ここからは私の推測だが、おそらく指名委員会等設置会社は規模がそれなりに大きい。つまり後半部分の分析というのは機関設計の差ではなくて、規模の差によるところが大きいのではないか。この点をぜひ検証していただきたい。

 それから、念のため確認させていただきたい。エゴンゼンターさんのお話の中で、指名委員会について法定・任意という言葉があったが、CEOの選解任についての法定というのは日本に制度として存在しないので、法定というのはあくまでも取締役の指名についての法定であり、CEOに関しては全部任意の委員会という理解でよいのか。

佃氏

  おそらく会社法404条第1項を前提とされていると思うが、ご指摘の通り、指名委員会が決定する選解任議案の対象となるのは取締役のみであり、CEOに関しては指名委員会の法定権限ではない。
あくまで指名委員会等設置会社における委員会を「法定」という形で資料に記載している。


川村委員

  指名委員会に関するお話は今まで色々あったという印象があるが、報酬委員会に関するウイリス・タワーズワトソンのお話は今まであまり聞いたことがなかった話が多かった。
例えば、ペイ・レシオ(CEOの報酬と従業員の報酬の比率)でいろいろ規制をしていくというものがあり、そういう動きで社会を少し直していくといってもペイ・レシオだけではとても簡単には直らないような気もする。
全体の動きとしては、それ以外にもいろいろな動きがあってしかるべきと思うが、その辺に関して知見があれば教えていただきたい。


櫛笥氏

  基本的にこれだけで何か解決するというものではないのは、おっしゃるとおりだと思う。
牽制的に、いわゆる格差が広がり過ぎた状態を規制の観点から少し律していこうという話だとは思うが、アメリカでもイギリスでも同じように入り始めているというのが現状である。


 ただ、例えばアメリカでは、従業員の給与の中央値をどうやってとるのかについて、現在喧々諤々の実務上の議論がある。要はどこまで含めて母数にして平均を出すのかということである。そこをしっかりしないと、出してもメディアが書き立てるだけで終わってしまい、あまり意味のない数値になるというような議論もあって、まだ実は方法論についてはわかっていないというところがある。

川村委員

  もう一つ、日本ではむしろ役員報酬を上げるべきかもしれぬという意見もあると思うが、そういうことに関する具体的な指標なり動きはあるのだろうか。


櫛笥氏

  冒頭にご説明申し上げた日米欧の報酬比較を見たときに、明らかに固定報酬の比率が大き過ぎるということをもって、少しここは改善しないといけないという話になっている。
ただ、水準を引き上げるというよりは、実際は構成をきちんとしようという話なので、結果として水準が上がるケースが多いけれども、まず構成としてリスクテイクをきちんとする形の報酬制度にするというところに関心があり、日本企業において、今報酬委員会の中で、それに向けてどの程度の中長期のウエートを置くのかについて、議論が進んでいる実感はある。


小林委員

  当社(三菱ケミカルホールディングス)も大分似たところがあるが、特に社外取締役に対する報酬として、固定のみがいいのか、やはりインセンティブを入れたほうがいいのかという議論が前回もあったかと思う。
それに関連して、資料5でBPとエクソンモービルの社外取締役の個別の報酬が比較されており、そもそも全員、個別に開示されていることにある意味で驚いたのだが、日本は今どういう状況にあるのかというのを教えていただきたい。
次に、アメリカとイギリスで株式報酬あり・なしという差はあるにせよ、個々の社外取締役の報酬金額が、各人のタイムコミットメントに応じた報酬金額となっていることの意図はどういうところにあるのか、教えていただきたい。


櫛笥氏

  日本は総額報酬の開示という制度があり、社外役員といわゆる取締役、監査役に分けて開示するというルールになっているが、個別開示ではなくて総額開示ということになっている。


 社外取締役の株式報酬については、実はグローバルでプラクティスがかなり分かれている。米国では入れるのが通常だが、ヨーロッパのほうは、入れてはならないというルールが敷かれたりもする。ヨーロッパで株式報酬を堂々と入れているのは、我々の認識ではスイスぐらいのものであり、ほかの国は入れていない。

 一方で、BP社のように株式保有ガイドラインのようなものの中で、社外取締役にも一定数の株式保有を在任中求めるというルールで、もらった報酬の中から買わせる、持株会のような形のやり方もある。

 日本においてどう考えるべきかというと、非常に難しい話になるが2つある。従来ストックオプションがだめというような議決権行使が相当行われていた時代があり、ストックオプションの本質についてきちんと理解されないまま議決権行使基準だけが走ってしまったと思っているが、現在は、例えば社外取締役に信託プランの株式報酬を付与する事例や、譲渡制限付株式を付与する事例も出てきている。基本的にはフルバリュー、つまり株式そのものと同じ価値を持つものであれば、やはり企業価値を毀損しない、あるいは向上させるための助言をするという意味では整合的なので、社外取締役にも持たせてもいいのではないかという議論はある。現状は、少しずつ付与する事例が増えてきているというところである。

 最後に、資料5に「タイムコミットメント」と書かせていただいたのは、基本的にノンエグゼクティブディレクター、つまり業務執行しない役員の報酬水準の合理性は拘束時間でしか見られないというのがグローバルな考え方としてあるということである。もちろん質の問題は色々あるのかもしれないが、委員会にどれだけ入っているかということ等が要素となる。例えばフォルクスワーゲン社は、チェアマンが社外の方であるが、チェアマンをやるということで、ほとんど会社におられるようである。そういう方は非業務執行役員だが、日本円でいうと1億円を超える金額を得ておられるようである。日本でも非業務執行の会長というポジションでされるパターンもあるが、実質はそういうことが普通に正当化されている。常勤か非常勤かで水準が違うのと同じような考え方が、報酬の妥当性の判断に少し使われているということだと思う。

翁委員

  ご説明をいただき、感謝申し上げる。


 報酬のほうでまずお伺いしたいのは、リストリクテッド・ストックを入れる企業がかなり増えていると思うが、日本では、こういったTSRみたいなものをKPIとして入れる企業が多いのか、それとも、例えばROEとかそういったKPIを入れるところが多くなっているのか。特に、そういった中期経営計画と連携づけてこういった目標を定めているところが多いのかどうかという事情、状況を教えていただきたい。

 もう一つは、今、小林委員がご質問されたところと同じところだが、社外役員の報酬が各人のタイムコミットメントに応じて個別に異なるというところに関して、議長・委員長とか、それからおそらく指名・報酬と監査では大分タイムコミットメントが違うというふうに思うが、そこの違いのようなことを海外では反映しているのかどうかということをお伺いしたい。

 それから最後に、指名の関係でエゴンゼンダーの方にお伺いしたい。こういったCEOの選解任について社外の役員の役割が非常に大きくなっているが、その社外役員自体を次どうするかということについて、指名委員会などが議論するような動きというのは海外ではあるのかということをお伺いしたい。次の社外役員をどう決めているかということについて、何か動きなどあれば教えていただきたい。

櫛笥氏

  まず、報酬の質問からご回答させていただきたい。
いわゆるパフォーマンスシェアの業務評価の指標についてどういう傾向があるのかということだが、まだ日本の中で特段の傾向が出るほどサンプル数が多くないと思っているし、どう切るかによって見方も変わってくるので一概には言えない。
ただ、考え方としては、集計の出し方について、日本ではゴールを設定して、それに向かってやるという形の経営戦略が多いけれども、それとの整合性を考えるということであれば、やはり中期経営計画で掲げている財務指標をそのまま使って入れるということのほうが、報酬制度を通じてガバナンスを強化する、いわゆるコメットメントを示すということには適っているということだと思う。


 ただ、経営戦略の設計自体が3年に1回しかなく、今はちょうどその2年目であるとか、あるいは事業環境が少し流動的でゴールを提示できない場合に、どんなKPIを使うかという中では、TSRが無難な指標だということである。したがって、積極策としては財務指標、戦略と一致した指標がいいのだが、そういう状況にない場合、明確にコミットできない場合にTSRが使われがちだということはあると思う。

 2点目の、社外取締役のコミットメントによって報酬が違うはずだという話は、まさにおっしゃるとおりだと思っている。欧米ではどうしているかというと、委員会手当というものを細かく設定をして、いわゆる監査委員に就く場合には1回当たり幾ら、報酬委員の場合は幾ら、ガバナンスコミッティーの場合には幾ら、チェアマンの場合にはさらに追加で幾らというふうに規定されている。資料5の38ページにあるBP社の開示をご覧いただくと、左上に実は手当そのものが開示されている。例えばシニア・インディペンデント・ディレクターの筆頭取締役的な方には12万ユーロを払うとか、その他ボードメンバーたる地位に基づいて9万ポンドを払うとか、手当を決めて、それでコミットメントの違いを報酬に差異づけしているということになる。

佃氏

  3点目の、社外取締役をどのように決めているかに関する欧米の状況についてだが、例えばイギリスでは、社外取締役の任期の話でいうと、たしか10年たつと独立性が失われるといったところで、大抵、皆7~8年目ぐらいになると、後継者をどうするかといったところを指名委員会で議論される。
そうした中で、ある程度オーバーラップができるような形で、その上で、業界知見や特定分野の知見をお持ちの方、あるいはジオグラフィー、例えば欧米の人だけではなくてアジアの人も一人入ってほしいとか、そういうポートフォリオというのを考えながら人選をやっていくということである。


 その人選をやる上で、社外取締役の方々が、この人はいいというふうに名前を出し合うといったこともされているし、我々のような第三者がリストを作り、それを皆さんで議論されるということもある。海外の同僚の話を聞くと、カルチャーフィットとか、このあたりのところもきっちり議論しながら、その上で人選をしていくというプラクティスがあるようである。実は日本企業でも、一部の法定の指名委員会を持っているところというのは、まさにそういう動き方をしている企業も出始めていると認識している。

小林委員

  また質問させていただきたい。
社外取締役の実質任期について最近当社でもいろいろ実例を調査したところ、例えば指名委員会等設置会社だと4~6年ぐらい、監査役設置会社だと4年ぐらいという結果になった。
指名委員会は当然1年ごとに答申をするわけだが、海外では実態としてどのように運用されているのだろうか。


佃氏

  最近、実はイギリスの企業の社外取締役を務めておられるイギリス人女性の方とまさにその議論になったのだが、例えばイギリスの例だと、社外取締役の方が就任されてから、実際に貢献できるまでどれぐらい時間がかかるかというと、やはり1年では足りず、現実的には2年だということであった。
では、どのタイミングで一番社外取締役としてのパフォーマンスを最大化できるかというと、辞める直前だということであった。
そういった意味では、任期としては、その人がパフォーマンスを上げている以上はなるべく長くやっていただくのがいいのではないかというのが基本的には欧米の考え方だということである。


 それに対して、この方は実はある日本の企業の社外取締役に最近就任されたが、日本企業はどちらかというと短めに人を替えていくという話があるので、そこは長期志向の日本企業にしてはやたら短いのではないか、もう少し長く勤めてもらってもいいのではないかというコメントをもらった。



討議(2)(資料6の説明後)




御代川委員

  社長後継者の育成に関しては、当社では、指名委員会で社長の後継者候補について、わりと中長期的に説明するのだが、社外取締役の方に一番言われることは、後継者候補の方たちに触れる機会が非常に少ないから、候補者の方と話す機会とか、候補者の方が何かプレゼンをする機会を作ってほしいということである。
これはもっともなご指摘だと考えて、取締役会をオフサイト、例えば研究所や営業支店で行うとか、いろいろな工夫をして発表の機会を設けた。
それから取締役会の議題外で、候補者の方に、1時間程度担当する事業の紹介をしてもらったりした。
候補者であるということを当人は知らないかもしれないが、社外の取締役の前で話す機会を設けるということは、彼ら自身のインセンティブになってくる。
今後、後継者の選抜、選任にあたって社外取締役の方の声を聞くということになると、もっともっとそういうコミュニケーションを向上させていくことが大事ではないかと思う。


大杉委員

  具体的な話を1つと、一般的な話を1つしたい。


 具体的な話というのは、指名委員会についてのガイドライン的なものをどう作るかという話である。今年の5月に、ある会社で社長人事に指名委員会が関わったという話が報道された。私が読んだ記事の範囲でいうと、サラリーマン社長だった人を退任させて創業家の息子のほうに代替わりさせることを指名委員会で決めたという内容である。記事を読んだ範囲で少し疑問を感じたのが、委員3人のうちの2人が社内であり、かつメンバーが公表されなかったということである。そういう事例に接して、個人的な意見にすぎないが、少なくとも社外を半数以上にすべきだなというのを強く感じたとともに、しかるべきタイミングまでに(この事例の場合は株主総会までに)、株主・投資家に委員の具体的な名前がわかるようにすることも必要、あるいは少なくとも有益だと思った。

 もう一点は一般的な話だが、事務局で色々作っていただいた指名委員会・報酬委員会について、法定のみならずどちらかというと諮問型のほうを念頭に置いたガイドライン的なものは、私はぜひ作ってほしいと思う。多岐にわたって、なかなか参考になるものを本日示していただいたと思うが、どのぐらい詳しく細かく作り込むか。また逆にいうと、各社の個性とか判断からどのぐらいまで多様性を許容するかというのは結構難しいなと思っているが、一般論としては、やはり多様性を殺すような仕組みは良くないだろうと思っている。理由は2つある。1つは、それぞれの会社には特有の事情があるので、一般的に、こういうふうにしたほうがうまくいくというものは会社によって異なると思われる。もう1つは、例えば指名のうちの後継者養成計画などの部分で、後継社長となるための資質というものを各社で定義することは当然やっていただきたいが、定義を日本語としてどう表現するかは、かなり会社による幅があるというか、おそらく社風によって言葉遣いとか、例えば従来の創業者の社訓みたいなものがあると、そこに紐付けるか否かとか、そういう部分は個性があり得るし、どういう資質が経営者にふさわしいかというのは一般論としては誰にもわからない。なので、ある種の項目については、こういうものを定めるべきであるという抽象的なことはルール的に言えても、どういうふうに書けばいいのかという具体的なヒントを実務に提供するというときには、グットプラクティスとかベストプラクティスを狭く示すというよりは、事例集のように、こういうサンプルもあるということをお示しいただくほうがなじむ事項なのではないかと感じる。これまで経済産業省がこういう研究会でやってきたなかで、こういう形のほうが多かったと記憶している。

佐久間委員

  まず、今の大杉委員のお話は、私も全くそのとおりだと思う。
任意で置く委員会の運用というのは、各社の事情に応じて創意工夫で運用していけばいいということなので、コーポレートガバナンス・コードのように実質法令と同じような意味合いをもたす必要はないのではないか。


 それと、この事務局の資料6は全体としてどういう企業を想定しているのか。日本の全ての株式会社を想定しているとはとても思えないし、それは無理な話だと思われるので、これは上場会社なのか大会社なのかという限定も含めてフレキシビリティのある内容にすべきだろうと思う。

 その中で1点だけ申し上げたい。いろいろな委員会の場で、社内のCEOなしで、社外の方だけで行うといったことが触れられているが、そういう形でうまくいく場合ももちろんあるのだろうが、普通はなかなかないのではないか。多分その委員会の場にはいなくても、実際資料をつくるのは事務局、つまり会社の人間である。その会社の人間の上司はCEOだから、CEOが関与していない形で勝手に、例えば総務課長とか秘書課長が作ってそこに上げるなどというのは、少なくとも組織的には考えられない。したがって、社内の人を完全に排するものというのは、形はできても実際は無理である。いずれにしても、この案は取締役会に付議しなければならないので、社外の人だけで付議資料をつくるというのもかなり難しいことだと思う。これらのことからすると、社内の人を排除した形である局面を議論すべきだというのを推奨するというのは、いかがなものかという気がする。

 それと、個別の話で、事務局の資料6の7ページについて。全体的に言えることだが、「主な意見」というところと「意見」というところがあり、冨山委員が本日ご出席されていればよかったのだが、7ページの「主な意見」というのは、主な意見では多分ないと思う。つまり、「顧問・相談役の影響力の源泉は人事権」だというのは、人事権があるのだという前提で書いておられるのだと思うが、たまたま経営法友会が出した顧問・相談役に関するペーパーでも、ほとんどの会社においてそういうことはないと言われており、これは意見としてあったというのは事実だと思われるから、少なくともこれはある委員の意見だということだと思う。

 ただ、重要なのは、影響力の源泉は人事権だということからすれば、指名についてCEOが全く関与しないというのはないというのが、この委員の意見でもあるのだと思う。つまり、内に向かっての権限を強める最大のものというのは人事権だから、ここが主な意見だとすれば、後半で言っていることと矛盾も来すということだと思う。

小林委員

  どちらかというと前半の議事に戻る意見だが、報酬制度にしてもインセンティブ割合の少なさにしても、日本における運用は遅れているのか進んでいるのかは別として極めて特殊である。
CEOの人選についても、非常にホモジニアス(均質)な日本社会の中で、外国人がほとんどいないという状況である。
CEOに限らず常務・専務レベルでも、外国人の割合はおそらく海外と比べると相当低いのではないか。
日本企業がもし外国人を経営層に採用しようとすると、現地のマーケットプライスに合わせる必要があるので、相当給与を上げないと来てくれない。
日本人役員と逆転するどころか、5倍くらい払わないと来てくれないというのが実感だ。
外国人を含め、経営層の多様化をもっと促進すれば、自動的に報酬水準は上がっていくのではないか。
このあたりのデータ、例えば現状欧米ではエグゼクティブのモビリティーがどのくらい高いのかというようなデータもあればよいと思う。


櫛笥氏

  現行は、日本企業ではダブルスタンダードになっている。
外国人役員の方といわゆるプロパーの日本人役員の方の水準が全く違うまま、それぞれ別個に運用しているということだと思う。


 その際に、違う点が1個だけあるとすると、例えば高額報酬をお支払いして採用する外国人役員には、アグリーメント(契約)を結ぶケースが多いと思われる。3年なら3年、5年なら5年の任期を示し、その期間の役割を明確にした上で、それを果たしていなければ契約を更新しないとか、いわゆる日本人の役員の方が役員定年までいるというのとは違う形で、いわゆる指名のほうで厳しくみるということとセットで報酬を付与しているようなところがあると思われる。

 佃社長も先ほどおっしゃっていたが、たとえばジャック・ウェルチさんのようなパフォーマンスを上げていらっしゃる方はずっとやり続けてもいいとは思うが、少なくとも区切るタイミングが契約という形でしっかりしているというところが大きく違ったりもするので、結局、毎年幾らもらうかということと、任期が長いか短いかどうかは評価次第だが、そのあたり相関がある話なのではないかと思っているところではある。

江良委員

  まず、全体の方向感は大変素晴らしいと思う。


 ただ、何人かの委員の方々から既にコメントがあったとおり、多様性、柔軟性、個別性という点については、十分尊重することが非常に重要な視点かと思うので、事例集のような形で提示するというのが、方向としてはいいのではないかなと思う。

 もう一つは、事務局の資料6の24ページ「指名委員会の審議対象の範囲」で、社外取締役の選解任を入れるという点についてだが、社外役員の質が非常に今後重要になってくるというのは全く異論がなく、この点をどう担保するかは大事な点だが、そもそも指名委員会がうまく機能するためには、最初に素晴らしい社外役員が選ばれる必要がある。良い社外役員が選ばれれば好循環になるが、有益でない、追認的な機能を果たすような社外取締役が一度選ばれてしまうと、形式的なプロセスとなってしまうリスクもあると思われるので、そこは悩ましいように思う。

 また、社外役員の選任について、株主総会で最終的に判断するのは投資家なので、我々がどう社外役員のクオリティーを評価していくのかという点も大事なポイントだと思う。社外取締役の質がわかるような、評価する材料をもう少しいただけると、この点については、さらなる充実が図れるのではないかと思う。

大杉委員

  先ほど佐久間委員がおっしゃっていたことに対して、少しだけ私の意見をつけ加えると、今後の日本企業の実務において、諮問の指名委員会とか報酬委員会で実質的な意思決定をするときに社内の人が全く関与しないということはないだろうと思う。
ただ、社内者、特にCEOの影響力は、完全に排除する必要はないが(現実的でない)、強すぎてもいけない。
ややガス抜き的というと語弊があるが、社外の人だけとか委員会の社外委員だけ、つまり内部の人がいない状態で自由に発言をする機会を時折設けるのは、基本的には良いことであると思う。
ガバナンスコードでいうとエグゼクティブセッションというものと共通すると思われるし、そういう場面もあってよい。


澤口委員

  今の議論とも若干絡むので、佃様に教えていただきたい。


 資料の中で後継者計画の取組事例として貴重な事例をご紹介いただいている。この原案というのは、当然執行側からある程度出ているのではないかと思うが、執行側から最終的な後継者について一人に絞るとか、優先順位をつけた議案の提示があったのかなかったのか、差し支えない範囲で教えていただけるとありがたい。

佃氏

  いくつかパターンがあり、この人でいきたいという形で1名のみ提示される会社もある。
それから、3人ほど提示されて、この中で、こういう理由で私としてはAさんが良いと思うという出し方をされるところもある。
大体この2つのパターンではないかと思う。


武井委員

  事務局の資料6の、指針というかガイドラインは作るべきだと私も思う。


 特に、江良委員からお話もあったが、社外役員はいい人を選ばなければならないというのはその通りだと思う。しかしその表裏として、指名・報酬委員会で社外役員の方が何をすべきかの考え方がある程度明確になっていないと、いい人を選んでいるつもりだがいい人になってないかもしれない、期待される役割を果たしてないことが生じうる。今回このようなガイドライン的なものを作ることで、社外役員がどういうふうに指名・報酬に関与するのかということもかなり明確に社会に発信できるいい機会になると思う。まさに現在政府を挙げて進められている「形式から実質に」というか、ガバナンスの実質を高めるという点が一番大事な点だと思うが、指名の点は、大変重要だと思う。かなり大きな論点がこれだけたくさんあって大変だと思うが、ぜひここは頑張って取り組んでいただければと思っている。

 それから、その絡みで、先ほど大杉委員、佐久間委員からもお話があったが、堅く書きすぎると多様性を殺してしまうというところがあるので、「推奨」という言葉が時によって厳しく捉えられてしまうときもある。「推奨」というと、どうしてもこれがある意味での暗黙知というか、皆が大体やるものだと受け取る人もいるので、「推奨」という言葉を使える箇所と、こういうふうにやるのも「有効」など選択肢的な他の言葉にするなど、「推奨」とそれ以外の言葉と使い分けるような感じで作っていくと、柔軟性というか多様性を失わせないガイドラインになるのではないかと思う。そういったテーマごとの切り分けもして、うまく作っていただきたい。

神田座長

  それは重要なご指摘である。
年明け以降、この研究会で何らかの取りまとめなり提言を目指すということだが、そのときの形として、日本語は重要である。
細かい点だが、私も1点だけ申し上げたい。
事例集というのは私も非常に有益な場合があると思うが、事柄によると思う。
つまり、模範的なことをしておられる会社や参考になるような事例が現に存在している場合には、それを事例集としてお示しすると、そういうことをしていない会社にとっては非常に有益である。
しかし、そういう参考例とか模範例が存在していない事柄について何か言おうとすると、事例集を作ることはできない。
そうすると何らかのガイドラインみたいなものになるが、そういう事柄がある場合には、詳しさではなく、まさに多様性を殺してはいけないということがポイントになる。
だから、詳しいかどうかではなくて、基準として役に立つかどうかが問題である。
それで、この会として役に立つようなことができるのかといったときに、今武井委員がおっしゃったことは、推奨なのかという言葉遣いも気をつける必要があるというご指摘だと思うので、その点についても、ぜひまたこの研究会の外も含めて、皆様方からお気づきの点があれば、事務局に言っていただければと思う。


寺下委員

  私も今回の方向性としては、大変よくまとまっていると思うし、もちろん佐久間委員がおっしゃっているように、全部の企業が簡単にそういう方向に行けるという状況でもないと思っているから、そこはぜひ余裕をもってやってもらいたい。


 今回の重要な議題の中で、1つ、リード・インデペンデント・ディレクター(筆頭社外取締役)という概念が抜けていると考えている。要するに、社外取締役という点は、誰がリードなのかという議論が、私の知る限りこの研究会でなされていなかったように思う。

 何を言いたいかというと、昨今、欧米の機関投資家と会って議論をしてきたのだが、現在アメリカ、イギリスでは、社外のチェアマンの方が指名・報酬委員会のトップになり、大体その人たちがリード・インデペンデント・ディレクターの役割を果たしている。そのリード・インデペンデント・ディレクターはメンターの役割をしており、海外では、指名・報酬委員会のキーになる社外の人間が中心となって、次の候補者や様々な人と会いながらサクセッションを決めていくということである。

 今武井委員もおっしゃったような、委員会の機能を検討する中で、欧米では筆頭社外取締役という概念があるという理解のもとに、その機能を誰がどういうふうにやるのかということを、ぜひ皆さんで研究して、いい結論が出れば良いと思っている。


以上






posted by hatena at 05:00| Comment(0) | 経済産業省系の審議会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月16日

取調・平成28年3月25日 大阪地方裁判所第16民事部 損害賠償請求事件







平成28年3月25日 大阪地方裁判所第16民事部 損害賠償請求事件

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail4?id=85887






警察裁判例をネタにすると、やってることが、だんだん

 名探偵コナンごっこ

になってきた。




  • あらゆる手段で言い逃れようとする犯人(警察)、

  • それを追求しようとするも、まんまと犯人のトリックに引っかかる目暮警部(裁判所)、

  • そして、目暮警部の推理をひっくり返す小五郎・コナン( I am. )





こっちの方向でエンタテインメント化できないか思案中。





とにもかくにも。







傷害事件の被疑者として警察官から複数回の取調べを受けるなどした原告が,同事件の捜査を担当した警察官らについて,

  • 恫喝的・脅迫的な取調べや,原告の尊厳を著しく害する取調べを行った上,

  • 承諾なしに所持品検査や写真撮影を行ったこと,

  • 取調べ状況報告書への押印を認めず指印を強要したこと,

  • 供述調書の記載内容の追加申出に応じなかったこと,

  • 逮捕されていないのに,身柄引請書の作成を求めて逮捕をほのめかすこと

などの数多くの違法な捜査を行ったと主張して損害賠償の支払を求めた事案について,

  • 警察官の原告に対する取調べにおいて,社会通念上相当な方法及び限度を超える態様での取調べがあったこと,

  • 取調べ状況報告書への押印を認めずに指印させたこと,

  • 供述調書の記載内容の追加申出に応じなかったこと

が違法であるとして,請求の一部を認容した事例

判示事項の要旨

しかし裁判所は、録音のない日の取り調べについては、男性の請求を退け、警察側の言い分を認めた。

だから冤罪はなくならない!警察の違法な取り調べを助長させる裁判所の「身内びいき」 2016年3月29日 (ビジネスジャーナル/エキサイトニュース)
https://www.excite.co.jp/News/column_g/20160329/Bizjournal_mixi201603_post-5884.html





ニュースを見てないので全然知らんかったけど、あっちこっちで報じられている。





大阪府警捜査/違法な取り調べ認定、100万円支払い命令 2016年3月25日 (毎日新聞)

https://mainichi.jp/articles/20160326/k00/00m/040/177000c


大阪府警の取り調べ「不当な人格攻撃」 違法性認定、100万円賠償命令 大阪地裁 2016.3.25 (産経WEST)

https://www.sankei.com/west/news/160325/wst1603250102-n1.html


自白強要で府に賠償命令 大阪地裁、府警の男性聴取巡り 2016/3/26 (日本経済新聞)

https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG25HAY_W6A320C1CC0000/


大阪府警が「違法な取り調べ」で自白強要?警察に課せられた「黙秘権の告知」とは何か 2015年03月06日 (荒木 樹弁護士/弁護士ドットコム)

https://www.bengo4.com/c_1009/n_2780/





刑事事件の担当弁護士らしい。




でも、この画像は、なんだかな。






弁護士紹介


当時79歳の男性(Aさん)が、知人(Bさん)の顔面を手拳で殴打して傷害を負わせたとして起訴され、無罪判決を得た冤罪事件(無罪確定)。

解決事例

(曽根英雄法律事務所)
https://hero-lawyer.biz









主 文

  1.  被告は,原告に対し,100万円及びこれに対する平成25年11月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。


  2.  原告のその余の請求を棄却する。


  3.  訴訟費用は,これを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。


  4.  この判決は1項に限り仮に執行することができる。






事実及び理由



第1 請求

  1.  被告は,原告に対し,200万円及びこれに対する平成25年11月7日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。


  2.  訴訟費用は被告の負担とする。


  3.  仮執行宣言



第2 事案の概要


  1.  本件は,平成25年8月11日に,訴外Aに暴行を加え,傷害を負わせたとの傷害事件の被疑者として警察官から取調べを受けた原告が,同事件の捜査を担当した警察官らが違法な捜査を行ったと主張して,被告に対し,国家賠償法(以下「国賠法」という。)1条1項に基づき慰謝料200万円及びこれに対する平成25年11月7日(最終行為日)から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。


  2.  前提事実(争いのない事実あるいは後掲各証拠により容易に認定できる事実)

    (1) 当事者等

    1.  原告は,平成25年(以下,平成25年については同年の記載を省略する。)9月当時,79歳であった。
      原告は,定年を迎えるまで,小学校の教員などとして勤務していた。〔甲2〕

    2.  B巡査長(以下「B警察官」という。)及びC巡査部長(以下「C警察官」という。)は,9月当時,いずれもD警察署に所属する警察官であった。


    (2) 捜査の経緯

    1.  Aは,8月11日午後0時43分,D警察署に,


      「原告から殴られた,自宅に来てほしい。」


      旨通報し,同署の警察官がA方に赴いた。


    2.  Aは,駆けつけた警察官に対し,


      「今日の午後零時頃,車に乗って田んぼの近くにある納屋にゴミを置きに行くと,原告が私の方に歩いてきた。
      そしていきなり


      「油流し込んだやろ。」


      と言って,私の車に積んでいたプラスチック製のコンテナを掴み,私に殴りかかろうとしました。
      私がコンテナを押さえると,今度は私の胸ぐらを掴み,右のげんこつで一回殴ってきたのです。
      私は避けきれず,そのまま顎を殴られ出血しました。」


      旨申告した。


    3.  Aは,8月16日,D警察署を訪れ,医師が作成した,診断名「下顎部打撲」と記載された診断書を提出するとともに,被害の届出をしたため,D警察署は,傷害事件(以下「本件傷害事件」という。)として受理して捜査に着手した。



    (3) 原告の取調べ

    原告は,9月9日,同月11日,同月12日,11月5日及び同月7日,D警察署において,本件傷害事件についての取調べを受けた。

    9月9日と同月11日の取調べは,B警察官によって行われ,同月12日以降の取調べは,B警察官とC警察官によって行われた。

    なお,原告は,9月11日の取調べを録音した。〔甲14の1ないし5,15,34〕



    ポイント

    録音は、弁護士の助言だとか。



    相談を受けた弁護士は、取り調べを録音するようアドバイス。Aさんは、ICレコーダーを買い、2回目の取り調べの際、服の中に仕込んで録音した。

    だから冤罪はなくならない!警察の違法な取り調べを助長させる裁判所の「身内びいき」 2016年3月29日 (ビジネスジャーナル/エキサイトニュース)
    https://www.excite.co.jp/News/column_g/20160329/Bizjournal_mixi201603_post-5884.html?_p=2



    なぜ2日目だけか?


    3日目は、警察官が身体検査をしたから(争点7)。

    しかも、警察官が増えてる。




    (4) 原告の処分状況等

    1.  D警察署は,平成26年2月19日,本件傷害事件の関係書類を検察庁に送致した。


    2.  検察庁は,平成26年7月11日,原告を被告人として,本件傷害事件を起訴した。


    3.  裁判所は,平成27年2月6日,原告は無罪である旨の判決を宣告し,同判決は,同年2月20日の経過をもって確定した。〔甲1〕



    (5) 原告とAとの境界紛争

    原告は,平成17年8月31日,Aを相手方として,裁判所に境界確定等請求事件を提起し,平成19年3月14日に判決が言い渡された。〔甲25,30〕


    平成17年
    8月31日
    原告 → A

    境界確定等請求事件を提起
    平成19年
    3月14日
    判決
    平成25年
    8月11日
    12:43
    A → D警察署

    通報
    「12:00頃、原告に殴られる」
    平成25年
    8月16日
    A → D警察署

    診断書提出、被害の届出

    D警察署は傷害事件として受理
    平成25年
    9月9日
    B警察官 → 原告

    D警察署において取調べ
    平成25年
    9月11日
    B警察官 → 原告

    D警察署において取調べ

    録音したのは、この日だけらしい


    原告の代理人 → D警察署

    本件抗議書をファクシミリ送信
    平成25年
    9月12日
    B警察官とC警察官 → 原告

    D警察署において取調べ
    平成25年
    11月5日
    B警察官とC警察官 → 原告

    D警察署において取調べ
    平成25年
    11月7日
    B警察官とC警察官 → 原告

    D警察署において取調べ


    B警察官 → 原告の妻

    身柄引請書への署名・押印を求めた
    平成26年
    2月19日
    D警察署 → 検察庁

    本件傷害事件の関係書類を送致
    平成26年
    7月11日
    検察庁 → 原告

    本件傷害事件を起訴
    平成27年
    2月6日
    裁判所 → 原告

    無罪である旨の判決を宣告
    平成27年
    2月20日
    裁判所 → 原告

    無罪判決確定
    平成28年
    3月25日
    裁判所 → 原告

    国家賠償請求事件判決




  3.  争点及び当事者の主張


    (1) 供述拒否権を告知しなかった違法の有無(争点1)


    【原告の主張】

    B警察官は,9月9日及び同月11日の取調べの際,原告に対し供述拒否権を告知しておらず,違法な取調べである。


    【被告の主張】

    1.  B警察官は,9月9日の取調べの際,原告に対し,


      「言いたくなかったら話さなくてもいいですよ。」

      「でもこちらは聞きますよ。」


      と告げて供述拒否権を告知している。


    2.  B警察官は,9月11日の取調べの際,原告に対して供述拒否権を告知していないが,9月9日の取調べの際に原告に対し供述拒否権を告知しており,その2日後に同じくB警察官が取調べに当たっていることからすれば,供述拒否権の告知を行わなかったことは違法ではない。



    ポイント

    9月9日

    録音していない

    → 証拠がないから認めない


    9月11日

    録音していた

    → 証拠があるから否定しない

      ただし、悪気はなかった




    (2) 9月9日の取調べの違法性(争点2)


    【原告の主張】

    1.  B警察官は,9月9日の取調べの際,原告に対して,


      「あなたは犯罪者,犯罪者には黙秘権はないので,早く答えろ」


      などと発言しており,これは原告の黙秘権を侵害する違法な取調べである。


    2.  B警察官は,9月9日の取調べの際,原告に対し,原告が少し横を向いたところ,


      「なぜ横を向くのか」

      「横を向くのはあんたに非があるからと違うか。」

      「下を向くな。」

      「下を向くのは非があるからだ」

      「犯罪者はよくそんなことをする」


      と言い,原告が両手の指を自然に組んだところ,


      「なぜ,そんなことをするのか,自分に非があるからか」


      と言い,時間を確認するために腕時計を少し見ようとしたところ,


      「なぜ時計を見るのか。
      時計を見るな」


      と言い,一定の動作又は姿勢をとるよう強く要求した。
      このようなB警察官の取調べは,一定の動作又は姿勢をとるよう強く要求することを禁じた警察捜査における取調べ適正化指針(以下「適正化指針」という。)に反する違法な取調べである。



      4 警察捜査と司法制度改革

      (5)取調べの適正化

       このような諸情勢を踏まえ、国家公安委員会は、警察捜査における取調べの一層の適正化を喫緊の課題と認め、19年11月、「警察捜査における取調べの適正化について」を決定した。
      警察庁では、この決定に基づき、対策の検討を進め、警察捜査における取調べの適正化に関する有識者懇談会における有識者の意見も踏まえつつ、20年1月、警察が当面取り組むべき施策の柱を、取調べに対する監督の強化、取調べ時間の管理の厳格化、その他適正な取調べを担保するための措置及び捜査に携わる者の意識向上の4点とする「警察捜査における取調べ適正化指針」(以下「指針」という。)を取りまとめた。

      ・・・

      図-36 警察捜査における取調べ適正化指針の概要



      ・・・


      コラム3 監督対象行為

       取調べ適正化規則に規定されている監督対象行為は、次の7類型である。

      •  やむを得ない場合を除き、身体に接触すること。

      •  直接又は間接に有形力を行使すること。

      •  殊更に不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること。

      •  一定の姿勢又は動作をとるよう不当に要求すること。

      •  便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること。

      •  人の尊厳を著しく害するような言動をすること。

      •  次の場合に、警視総監、道府県警察本部長若しくは方面本部長又は警察署長の承認を受けないこと。

        • 午後十時から翌日の午前五時までの間に被疑者取調べを行うとき。

        • 一日につき八時間を超えて被疑者取調べを行うとき。




      警察白書 平成20年 (警察庁)
      https://www.npa.go.jp/hakusyo/h20/honbun/html/kd240000.html

      警察捜査における取調べ適正化指針 (警察庁)

      https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/sousa/torishirabe/tekiseika_shishin.pdf



    3.  B警察官は,9月9日の取調べの際,原告に対し,頻繁に声を荒げ,原告に対して命令したりするなど,恫喝的・脅迫的な取調べをした。


    【被告の主張】

    1.  B警察官は,9月9日の取調べの際,原告に対し,


      「犯罪者には黙秘権はないので,早く答えろ」


      等の発言はしてない。


    2.  B警察官は,9月9日の取調べの際,原告に対し,取調べ中に下を向いたり壁を向いたりしてよそ見をする原告に対して前を向くように注意したことがあり,その際に


      「答えに困って下を向くのは非があるからではないのか。」


      と申し向けた事実はあるが,一定の動作又は姿勢を取るよう強く要求することに当たるものではない。



    (3) 9月11日の取調べの違法性(争点3)


    【原告の主張】

    1.  B警察官による9月11日の取調べにおける以下の言動は,原告の黙秘権を侵害し,また,被疑者の尊厳を著しく害するような言動をすることや,殊更不安を覚えさせ,又は困惑させるような言動をすることを禁じた適正化指針に反する違法な取調べである。


    2.  供述を強要する言動

      (ア) B警察官は,原告に対し,


      「答えたらどうですか。
      命令じゃないとだめや,答えろと言わんとあかん。
      黙れっていうのん守るんやったら,命令の答えろは守れるよな」

      「答えろ,答えろ,あんたがそうまでしてやってないと言い切る理由は何や。
      答えろ。
      答えろ。」

      「考えろ。
      これ命令やで。」

      「命令しなければ答えれませんか。
      答えろ。
      黙らなくていいから答えろ。」

      「こうしようか,黙るなよにしようか」


      などと,黙秘権侵害であることが明らかな言動を繰り返した。


      (イ) B警察官は,原告に対し,


      Aが嘘をついているのか


      と執拗に問いただし,


      「言い切ろや。」

      「そこ,言い切ろうやって言うてんねん」

      「そこは言い切りよや,言い切ってよ。」

      「言い切れや」


      などと畏怖するような強い口調で供述を命令した。


      (ウ) B警察官は,原告が


      知らないことを知らないと言ってはいけないのか,


      と発言したことに対し,


      「あかんよ」


      と言って黙秘権を侵害し,供述拒否権を否定する言動を行った。


    3.  自白を強要する言動

      B警察官は,9月11日の取調べの際,


      「すいませんやりましたって一言言うたら,すぐ済む話やで。」

      「さっさと認めろ」

      「素直に認めることもまたしかり。
      別にいつでもええんやで。
      いつ認めてくれても。
      すいません,やりましたて,一言言うてくれればそれで済む。
      あんまり言うと自白の強要になるな。
      やったと思ったんやったら,すいません,やりました,そんな記憶がちょっとありますて言うてくれてもいい。」


      などと,自白を強要する発言を繰り返した。


    4.  原告の尊厳を著しく害する言動


      (ア) 名前に関する侮辱的言動等

      B警察官は,原告のことを


      「あんたみたいなじいさん」


      といい,その後,


      「●●さん,■■さんやったっけ。
      どっちでもいいけど。」


      などと,故意に名前を間違え,名前をどうでもいいという趣旨の発言をし,さらには,原告の名前を呼び捨てにした上で,


      「名前呼ぶのもおっくうや。
      不毛や。
      ちゃんちゃらおかしいわ。」


      などと言い,


      「ばかでもわかるやろ,こんなもん。」


      と原告を「ばか」呼ばわりまでするなど,原告の人権を無視した許し難い侮辱的言動を繰り返した。


      (イ) 元教師であることを侮辱した言動

      B警察官は,原告に対し,


      「小学校の先生やってて,はずかしいと思いませんか。」

      「あんた,教師やろ,元。」

      「わからんもんはわからんと言うてるやつにわからんままでええんかと聞いてんねん。
      ええ。
      先生さんよお。
      元。
      ちゃう。
      ええ。
      わからんもんはわからんままでええんかて聞いてんねん。
      どっちや。」

      「あんた,どうやって物事を教えてきたんや,人に。
      ガキやから,適当に言うとったら,あしらっとったんちゃうん。
      ええ,12歳のガキまで,適当にあしらっとったら,先生,先生言うてくるから,適当に答えとったんやろ。
      あんたがそういう回答するんやったら,あんたの人生そういうふうにしか見いへんで。
      ああ」


      などと言い,原告を侮辱する発言を繰り返した。


      (ウ) これまでの人生を全否定するかのような侮辱的言動

      B警察官は,原告に対し,


      「あんた今まで図星付かれたら,あ,そうですかあて言うたやろ。
      あんたそうやって生きてきたやろ。
      ちゃうん。」

      「あんた,そうやって言うてきてんやろて。
      これからも,今までも。」

      「それで真っ当に生きた,誠実に生きたと言えますか。」


      などと,これまでの原告の人生を全否定するかのような侮辱的言動を繰り返した。


      (エ) 高齢者である原告を侮辱する言動

      B警察官は,原告に対し


      「うるさいな,人の揚げ足ばかりとって。
      80まで生きてきてそれか。
      くだらんな,不毛や。
      俺もこんなんなんのかなー,うちの親父見てると。」

      「人間やっぱり年っていうたらプライドだけが残るな」


      などと,高齢者である原告を侮辱する言動を行った。


      (オ) 否認を認めない侮辱的言動

      B警察官は,否認を続ける原告に対し,否認を認めず,「ぐじゅぐじゅ否認」「いっちょまえに否定」などと言い,原告を侮辱した。


      (カ) 被疑者を犯人であるとする言動

      B警察官は,原告に対し,


      「あなたは被疑者です」

      「犯人です。」


      と,被疑者イコール犯人との信じ難い言動をした。


      (キ) 以上のようなB警察官による侮辱的取り調べは,被疑者の尊厳を著しく害するような言動をすることを禁じた適正化指針に違反するとともに,困惑させるような言動をすることを禁じた適正化指針にも違反する取調べである。


    5.  原告を困惑させる言動

      B警察官は,9月11日の取調べの際,原告に対し,Aが嘘をついているかどうか,なぜAが嘘をついているのかを執拗に何度も何度も繰り返し質問してきた。
      これに対し,原告はAでしか答えることができない質問であり,答えることはできないと供述しているにもかかわらず,B警察官は,グリム童話や小学生を例に出すなどして原告を責め続けた。
      このようなB警察官の取調べは,殊更不安を覚えさせ,又は困惑させるような言動をすることを禁じた適正化指針に違反する言動である。


    6.  恫喝的・脅迫的な言動

      上記各取調べに際し,B警察官は,原告に対し,頻繁に声を荒げ,原告に対して命令したりするなど,恫喝的・脅迫的な言動を行った。


    7.  被告は,原告がB警察官に向けて揚げ足取りをするような発言や挑発をするような発言をしたなどと主張するが,原告がそのような発言を行ったことはない。
      B警察官は,原告に対し,取調べの開始から侮辱的な態度を取り続け,執拗にAが嘘をついているのかなどと問い詰めている。
      しかし,Aが嘘をついているか否かなどは,原告が答える立場にある質問ではなく,Aに確認すべき質問であり,原告がB警察官に対して知らないと答え続けるのは当然である。
      それにもかかわらず,B警察官は,原告の対応に逆上し,違法な言動に及んだのである。


    【被告の主張】

    1.  B警察官は,Aが原告と会ったときに殴られて怪我をしたとして,その直後に警察に被害申告しており,原告もAと諍いがあったことを認めていることから,原告が殴っていないというなら,Aが嘘をついていることになるので,


      「Aが嘘をついているのか。」


      という点を繰り返し問いただした。



      コメント


      これも、よくわからん論法であります。


      自分が何をしたかは知っていても、他人が何をしたかということは、基本的に

       「知らない・わからない」

      もの。


      たとえ自分の認識と矛盾していても、だからといって相手が嘘をついている(故意)と、どうして断定できるんだ?


      なにがなんでもシロかクロかの結論に持っていこうとする警察のカルチャーが顕れていると思う。



      これに対し,原告は,「Aが嘘をついている」と言わず,あくまで


      「知らない。」


      とのみ言い通していたことから,B警察官は,気負いや経験不足から冷静さを欠き,また,原告が録音を意識して行った揚げ足取りをするような発言,挑発をするような発言もあったために,誤解を招く発言をしたところはある。
      しかし,B警察官としては,その状況を打開して取調べを継続する努力を重ねていたのであり,取調べ全体の流れからみて,取調べの相当性の範囲を逸脱したものとはいえない。


    2.  供述を強要する言動について


      (ア) B警察官が,原告に対し,


      「考えろ,これ命令やで。」


      等の言動を行ったのは,B警察官が話しているのを,原告が


      「聞かない」

      「私の話を聞いてくれ」


      と言ったことから,B警察官が,原告に対して,


      「黙れよ。」


      と言ったところ,原告がこの発言を執拗に取り上げてくってかかってきたので,B警察官が


      「黙れといったことを守るというのなら,答えろと命令するから答えろよ。」


      と述べ,その延長線上での問答として行ったものである。
      したがって,B警察官が原告の黙秘権を侵害しようとしたものでないことは明らかである。


      (イ)


      「すいませんやりましたって一言いうたら,すぐすむ話やで」


      等のB警察官の発言は,発言の流れからして,原告に自白を促す発言であって,自白を強要する発言には当たらない。
      B警察官が,原告に対し,自白を促すこと自体は違法ではない。


    3.  原告の尊厳を著しく害する言動について


      (ア) 名前に関する侮辱的言動

      B警察官は,原告の名前を故意に間違えたものではない。
      名前の呼び捨てもその前からの不毛な問題に区切りをみつけるための発言であり,人権を無視した侮辱的な発言とまでいえるものではない。


      (イ) 元教師であることを侮辱した言動,これまでの人生を全否定するかのような侮辱的言動,高齢者を侮辱する言動

      原告が指摘するB警察官の発言は,取調べに対して不誠実な態度や不合理な返答を繰り返す原告に対し,その是正を促すためになされたものであり,発言の流れからして,原告を侮辱する意図があったとまではいえない。


      (ウ) 否認を認めない侮辱的言動

      取調べにおいて否認する者に否認が認め難いことを述べることは非難されることではなく,原告が指摘するB警察官の言動が,原告を侮辱したものとまではいえない。


      (エ) 被疑者を犯人であるとする言動

      原告がB警察官の姿勢をとがめ,


      「立場が違うの。」


      と問われたことに対して述べたことであり,原告の尊厳を著しく害する発言ではない。



      コメント


      争点2において、警察側は、


      B警察官は,9月9日の取調べの際,原告に対し,取調べ中に下を向いたり壁を向いたりしてよそ見をする原告に対して前を向くように注意した


      ことを認めている。


      「立場が違う」

      というなら、推定無罪がはたらく原告よりも、勤務時間として取調べをしている警察官のほうが姿勢を正すべきじゃないのか?




    4.  原告を困惑させる言動について

      本件傷害事件では,原告の言い分が正しければ,Aが嘘を言っていることにならざるを得ないのに,原告があくまで


      「知らない。」


      と言い張るので,B警察官において,グリム童話や小学生を例に挙げて,その不合理さを説明しているのであり,原告を困惑させるようなものではない。


    5.  恫喝的・脅迫的な言動について

      B警察官が語気強く追及したり,命令口調で反省を促す言動はあったものの,原告によるB警察官に対する挑発的言動や不合理な弁解に終始する態度に対するものであり,恫喝的・脅迫的な言動とはいえない。



      コメント


      原告が「不合理な弁解に終始」しているなら、刑事裁判で無罪になってないでしょ。


      99%以上の有罪率である日本の刑事裁判で無罪になったということは、

       警察の主張が不合理だった

      ということでは?





    (4) 先入観に基づく違法な捜査の有無(争点4)


    【原告の主張】

    B警察官は,Aの申告内容とAの怪我の状態が医学的に整合しないことを容易に判断できたにもかかわらず,何ら証拠を精査しようとせず,Aの供述を過信し,9月11日の取調べにおいて,原告に対し,


    「何でいきなりあんたにどつかれなあかんねん,何であんな怪我しなあかんねん,言うてみいや。」


    などと先入観に基づく違法な取調べを行っているが,これは,先入観に基づく捜査を禁止する犯罪捜査規範4条2項に違反する違法な捜査である。


    【被告の主張】

    D警察署では,本件当日,110番通報によりA宅に赴いた警察官が,Aから暴行を受けた状況を聴取していることや,その際,同人の顔面に暴行によるものと思われる負傷を認めていること,さらには同人が提出した医師の診断書や自治会をはじめとする関係者の供述等から,合理的疑いがあると認めて所要の捜査を行ったのであり,先入観に基づく捜査を行ったわけではない。



    (5) 違法な取調状況報告書への指印の強要の有無(争点5)

    【原告の主張】

    1.  原告が9月11日の取調べ状況報告書に押印しようとしたところ,B警察官は,原告に対し,


      「印鑑あかんで。」

      「印鑑あかんねん。
      印鑑あかんねん,これ。」

      「指印押して。」


      と言い,原告が,


      「昨日いけたのに。」


      と尋ねると,


      「今日は印鑑あかん。
      ちょっとやり方変えるわ。」


      と言い,原告に指印を押すことを強要した。

    2.  B警察官は,刑事訴訟法等では指印が要求されていないにもかかわらず,原告が自らの思うような供述をしないため,嫌がらせとして,取調状況報告書への指印を強要したものであって,これは被疑者の尊厳を著しく害するような言動をすることを定める適正化指針に違反する違法な取調べである。


    【被告の主張】

    原告は,取調べ状況報告書に指印を押すことを拒否する態度を示しておらず,B警察官の申し出に素直に従って指印を押印していることからすれば,B警察官が原告に指印を強要したとはいえない。



    (6) D警察署による組織ぐるみの違法な証拠隠滅行為の有無(争点6)


    【原告の主張】

    原告代理人は,9月11日,D警察署のB警察官宛に抗議文をファクシミリで送信した上,同月12日,D警察署の警察官に対し,抗議文の内容を確認したかを尋ねたところ,白紙のものしか届いていないなどという信じ難い回答をしてきた。
    このように,D警察署は,組織ぐるみで違法捜査の証拠を隠滅しようとしており,このような行為は違法である。


    【被告の主張】

    D警察署が,原告代理人から抗議文をファクシミリで受け取ったという事実はない。
    原告代理人がファクシミリで送信したと主張する9月11日の午後8時頃,白紙の紙が数枚ファクシミリ送信されてきたが,送信前の事前連絡や送信後の確認の連絡もなく,宛先や差出人等もわからなかったために廃棄したことがあったのみである。



    (7) 原告の承諾を得ずに行った違法な所持品検査の有無(争点7)


    【原告の主張】

    1. C警察官は,9月12日の取調べを開始するに当たり,原告が了承していないにもかかわらず,着衣の上から原告の体を触って所持品検査を開始し,最終的には原告の靴の中にまで指を入れて確認するという行為に及んだ。


    2.  原告の承諾を得ずに行われた上記所持品検査は,被疑者の身体に接触することを禁じた適正化指針に違反するものであって,違法である。


    【被告の主張】

    1.  B警察官は,9月12日の取調べに先立ち,所持品検査を実施した事実はあるが,危険物等の所持の有無を確認するためのものであって,その方法も原告の承諾を得た上で,原告自身に着衣のポケット内の所持品を取り出させた後,着衣の上からポケット等を確認するという程度のものであり,靴の中に指を入れてまでの検査を行った事実はない。



      ポイント

      原告が所持品検査を承諾をするインセンティブがない。


      • 録音している

        → ICレコーダーが発見されるリスク

      • 録音していない

        → 録音していないことが分かれば、警察官の暴言がエスカレートする




    2.  危険物等発見のために所持品検査を行うことは正当な行為であって,適正化指針に定めるやむを得ない場合における行為に当たるものであるから,違法ではない。



    (8) 原告の承諾を得ずに行った違法な写真撮影の有無(争点8)


    【原告の主張】

    B警察官は,11月5日の取調べの際,原告の承諾を得ていないにもかかわらず,令状発付も受けずに,取調室に在室している原告の写真を撮影した。

    これは,原告の肖像権を侵害するものであって,憲法13条に反する違法捜査である。


    【被告の主張】

    B警察官は,11月5日の取調べの際,原告が供述調書を閲覧している状況を写真撮影したが,取調べに対する紛議を防止するとともに,供述調書を適正に読み聞かせていることを担保する目的で,原告の承諾を得た上で撮影を行っており,違法捜査とはいえない。



    コメント

    録音された9月11日の取調べの様子からは、B警察官が遵法精神に溢れているとは思えんけど。





    (9) 刑事訴訟法198条4項に反する違法な増減申立て拒否の有無(争点9)


    【原告の主張】

    1.  原告は,11月7日の取調べの際,B警察官に対し,Eに確認した事実を供述調書に追記するよう求めたが,B警察官はこれを拒否した。
      これは,刑事訴訟法198条4項に反する違法な行為である。


      第198条

      1.  検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

      2.  前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。

      3.  被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。

      4.  前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。

      5.  被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

      刑事訴訟法
      http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000131&openerCode=1


    2.  原告は,事件当日である8月11日,Aから,以前(平成21年)の油は菜種の油であるとEから聞いていると言われたため,同月14日にEに会って直接確認したところ,Eは,そのようなことを言ったことはなく,そもそも原告の田んぼにも行ったことがないとのことであった。
      そこで,原告は,事件当日にAが虚偽の説明をしていることの事情として供述調書への追記を求めたのであり,原告が追記を求めた事項は,前記Aの発言の信用性及び事件当日に関する一連のA供述の信用性に関連することが明らかな事項であり,当日の取調べ内容と関連性がないものではない。



    【被告の主張】

    1.  刑事訴訟法198条4項の申立ては,取り調べた事項と関連する事項に限られ,関連のない事項についての増減等の申立てを記載する必要はない。


    2.  B警察官は,本件事件当日である8月11日の出来事に関して作成した供述調書について,原告が,同月14日の出来事を追記するように申し出てきたが,当日の取調べ内容とは関連性がないため,これに応じなかったものであり,刑事訴訟法198条4項に違反するものではない。



    (10) 身柄引請書を利用した違法な捜査の有無(争点10)


    【原告の主張】

    1.  B警察官は,11月7日の取調べ終了後,原告に対して,原告の妻から身柄引請書を貰うために原告方に訪れることを伝えた。
      原告は,その理由を確認したが,B警察官は説明しようとしなかった。

    2.  B警察官は,同日午後3時半頃,原告方を訪れ,原告の妻に対し,


      「これ,書いてもらわないかんのです。」

      「逮捕されたときに必要なんです。
      だから持ってきたんです。」


      などと,書類の内容及び必要性を説明することなく,逮捕をほのめかして身柄引請書への署名・押印を求めた。

      原告の妻が署名しなかったところ,B警察官は,原告が犯人であると決めつけたような強圧的な口調で,


      「書けたら持ってきて下さい」

      「嫌だったら,書かんでもいいですよ」


      などと,身柄引請書がいかにも必要であるかのような言動をして,原告らを不安に陥れる発言を残したまま立ち去った。


    3.  B警察官が原告の妻に渡した身柄引請書には,




      「ただ今貴署で取調中の下記の者の身柄の引請をしましたが,今後は責任をもって監督しますとともに,将来貴署又は関係官署から本人に呼び出しのあるときには,必ず出頭させるようにします。」



      と記載されており,本件における処理とは整合しない内容となっている。


    4.  上記のとおり,B警察官は,原告や原告の妻に対し,本件に整合しない身柄引請書を渡し,内容について十分な説明をしないまま同書類の提出を求め,逮捕をほのめかして心理的不安を与えるという捜査手法を取っているが,これは殊更不安を覚えさせ,又は困惑させるような言動をすることを禁止する適正化指針に違反する違法な取調べである。



    【被告の主張】

    1. B警察官は,11月5日の取調べの際,原告に対し,


      取調べ等の捜査が終われば,事件を検察庁に送致することになり,後日検察庁からの呼び出しがあるかもしれないので,その際に出頭を確約するという意味で,身柄引請書という書類を作成してほしい


      旨を説明した。

    2.  原告は,上記説明に対して


      弁護士に依頼する


      旨述べていたが,11月7日の取調べの際には,


      弁護士には伝えていない


      と述べた。
      そこで,B警察官は,原告から原告の妻の足が悪いと聞いていたため,原告方に赴いて身柄引請書の作成を依頼することとし,その旨を原告に伝えた。
    3.  B警察官が,11月7日午後,原告方に赴いたところ,原告及びその妻が在宅していたので,身柄引請書を手渡して事情を説明し,


      • 検察庁から呼び出しがあるかもしれないので,連絡が取れなかったときなど,代わりに連絡の取れる人に記載して貰う書類であること,

      • 原告の妻が嫌だというのなら,他に誰か検討すること,

      • 逮捕しないで任意の呼び出しで捜査しているため身柄引請書が必要となること,

      • 逮捕されているのであれば必要ない場合が多いこと


      を説明した。

    4.  B警察官は,原告の妻から,弁護士が書いても良いといえば書く,できあがれば持って行けばよいかと尋ねられたので,


      書いて持ってきれくれるのであれば,書いて持ってきて下さい,
      弁護士から書かなくてもいいと言われれば結構ですよ,
      そのときはその書類を回収に来ます


      と述べて原告宅を後にした。

    5.  身柄引請書は,不拘束又は身柄を釈放する場合に作成する書類であるし,その記載内容からしても逮捕に必要な書面ではないことは明らかであることからすれば,捜査員であるB警察官が逮捕されたときに必要などと説明することはない。



    (11) 損害(争点11)

    【原告の主張】
    B警察官は,黙秘権を侵害して自白及び供述を強要し,原告の人格を全否定するような侮辱的,屈辱的な違法な取調べを繰り返し,否認していたことの嫌がらせとして,取調べ状況報告書に指印までさせるという屈辱的な取調べまで行ったのである。
    このような一連の違法な捜査によって原告が被った精神的苦痛はあまりにも大きいものであり,原告が被告による不法行為によって被った精神的苦痛を慰謝するための慰謝料額は200万円を下らない。


    【被告の主張】
    原告が主張する違法事由は,いずれも違法とまでは認められるものではなく,そのことによって原告に精神的損害が生じたとする慰謝料請求は失当である。





第3 当裁判所の判断


  1.  供述拒否権を告知しなかった違法の有無(争点1)について


    (1) 原告は,9月9日の取調べの際,B警察官が供述拒否権を告知しなかったと主張し,これに沿う供述をする(原告本人)。

    しかし,B警察官は,同日の取り調べに当たって,原告に対し,


    「言いたくないことは言わなくていいですよ」,

    「ただし,こちらも聞きますんでね」


    と言って供述拒否権についての説明をしたと証言していること,供述拒否権の説明は,被疑者取調べの冒頭に定型的に行われる性質のものであり(刑事訴訟法198条2,犯罪捜査規範169条1項,甲33),取調官がその告知を失念するとは直ちには考え難いこと,その他,B警察官が,原告に対し,故意に供述拒否権を告知せずに,原告の供述を獲得しようとしたことを窺わせる事情までは見受けられないことからすれば,原告がB警察官から前記説明を受けたことを亡失してしまった可能性を否定できず,原告の供述のみをもって,9月9日の取調べの際に,B警察官が原告に対して供述拒否権を告知しなかったと認めることはできない。


    (2) また,B警察官は,9月11日の取調べの際,原告に対し供述拒否権を告知していないが(争いのない事実),被疑者が供述を拒み得ることを既に十分知っている場合には,改めて供述拒否権を告知しなくとも刑事訴訟法198条2項に反するものとはいえないと解される(最高裁昭和28年4月14日第三小法廷判決・刑集7巻4号841頁)。

    本件について見るに,同月9日と同月11日の取調べは,いずれもB警察官による本件傷害事件についての取調べであり(前記前提事実(3)),同月9日に供述拒否権を告知していたと推認できること,同月11日の取り調べにおいて,原告は


    「黙らしてもらいます」


    とか


    「私は言わない」


    などと述べて供述を拒否する場面が見受けられること(甲15,16,34)からすれば,原告は,同日の取調べにおいても供述を拒み得ることを十分知っていたと認められる。

    したがって,同月11日にB警察官が供述拒否権を告知しなかったことが刑事訴訟法198条2項に反し,国賠法1条1項の適用上違法であるともいえない。


    (3) したがって,原告に対する取調べにおいて,供述拒否権を告知しなかった違法がある旨の原告の主張は採用できない。



  2.  9月9日の取調べの違法性(争点2)について


    (1) 「あなたは犯罪者,犯罪者には黙秘権はないので,早く答えろ」との発言について

    原告は,9月9日の取調べの際,B警察官が原告に対し,「あなたは犯罪者,犯罪者には黙秘権はないので,早く答えろ」と発言した旨主張し,これに沿う供述をする(原告本人)。
    また,

    • 原告が9月10日に作成したメモ(甲31:以下「本件メモ」という。),

    • 原告代理人が9月11日に原告から聞き取った内容を記載した同日作成の抗議書(甲17:以下「本件抗議書」という。)及び

    • 同月12日作成の抗議文(甲18:以下本件抗議書と併せて「本件抗議書等」という。)

    には,B警察官が,9月9日の取調べの際,原告に対し,


    「あなたは犯罪者,犯罪者には黙秘権はないので,早く答えろ」


    と述べた旨の記載がある。
    これらの証拠からすると,原告は,9月9日の取調べの直後である9月10日の時点において,B警察官から


    「あなたは犯罪者,犯罪者には黙秘権はないので,早く答えろ」


    という趣旨の発言をされたと認識していたものと推認される。

    しかし,B警察官は,9月11日の取調べにおいて,原告に対し,原告が犯罪者であるから原告には黙秘権が認められないとまでは述べていない(甲15,34)。
    このようなB警察官の取調べの態様からすると,B警察官が,9月9日の取調べの際,原告に対し,


    「あなたは犯罪者,犯罪者には黙秘権はないので,早く答えろ」


    などと発言するとは直ちには考え難い。
    そうすると,B警察官が,原告の発言を促すために行った何らかの発言を,原告が「犯罪者には黙秘権はない」旨誤解して受け止め,これを本件メモに記載し,さらには原告代理人に説明した可能性は否定できず,原告の供述並びに本件メモ及び本件抗議書等の記載をもって,B警察官が原告に対し,


    「あなたは犯罪者,犯罪者には黙秘権はないので,早く答えろ」


    と発言したとまでは認められない。

    したがって,B警察官の原告に対する


    「あなたは犯罪者,犯罪者には黙秘権はないので,早く答えろ」


    との発言が違法である旨の原告の主張は,その前提を欠き採用できない。


    (2) 一定の動作及び姿勢をとるよう強く要求するなどした行為について

    1.  証拠(甲15,31,34,B証人,原告本人。
      ただし後記認定に反する部分を除く)及び弁論の全趣旨によれば,B警察官は,9月9日の取調べの際,原告に対し,


      「下を向くな。」

      「下を向くのは非があるからではないか。」

      「横を向くな。」

      「指を組むな。」

      「時計を見ないように。」


      という趣旨の発言を行ったと認められる。
      また,本件メモ及び本件抗議書等には,B警察官が,原告に対し,


      「犯罪者はよくそんなことをする」


      旨述べた旨の記載があること(甲17,18,31),及び,B警察官は,上記のとおり,


      「下を向くのは非があるからではないか。」


      との発言を行っていることからすると,B警察官は,原告に対し,原告の横を向くといった態度を捉えて,


      「犯罪者はよくそんなことをする」


      という趣旨の発言をしたと認められる。


    2.  被疑者に対する取調べは,被疑者に対する一定の身体的,心理的負担を伴うことに鑑みれば,事案の性質,被疑者に対する容疑の程度,被疑者の態度等諸般の事情を勘案して,社会通念上相当と認められる方法ないし限度において任意捜査として適法に行い得るものであり,社会通念上相当と認められる方法ないし限度を超える態様で行われた場合には,国賠法1条1項の適用上違法となると解すべきである。

      前記前提事実(2)のとおり,Aが原告から殴られた旨を警察に申告し,現に下顎部打撲の傷害を負っていたことからすると,かかるAの申告について,その信用性を直ちに否定することはできず,本件傷害事件について,原告には一定の嫌疑が存したといえる。
      また,B警察官は,前記アのとおり,原告に対し一定の姿勢をとるよう要求したと認められるが,B警察官が,自らの発問に対する原告の態度や,原告の供述態度を観察するために,原告に対し,下や横,時計を見ずに,自らの方を見て,また,指を組むなどせず姿勢を正して発問を聞き,これに答えるように求めることは,取調べの方法として合理性を欠くとまではいえず,また,これによって原告に対し,大きな身体的負担を課すとも言い難い。
      そうすると,B警察官が,前記アのとおり,原告に対し一定の姿勢を取るように要求したことは,社会通念上相当と認められる方法を超える態様であるとまではいえない。

      また,B警察官が,下又は横を向いて,視線を逸らすといった原告の態度を捉え,原告に対し,


      「下を向くのは非があるからではないか。」

      「犯罪者はよくそんなことをする」


      との趣旨を述べて,原告に犯行を行ったのではないかと追及することも,前記のとおり,原告には一定の嫌疑が認められることに加え,真実発見のための取調べの方法として全く合理性を欠くとまではいえず,また,原告対し,大きな精神的苦痛をもたらすものであるとまでは言い難いことからすると,当該発言のみをもって直ちに社会通念上相当と認められる方法ないし限度を超える態様であるとはいえない。


    (3) 恫喝的・脅迫的な取調べの有無について

    原告は,9月9日の取調べの際,B警察官が恫喝的・脅迫的な取調べを行った旨主張し,これに沿う供述をするが(原告本人),その具体的な態様等は原告の供述によっても明らかではなく,本件抗議書等においても,威圧的・高圧的な取調べを行っていると指摘しているにとどまることからすれば,恫喝的・脅迫的な取調べがあったとは認められない。


    (4) 以上より,B警察官の9月9日の取調べが国賠法1条1項の適用上違法である旨の原告の主張はいずれも理由がなく採用できない。



  3.  9月11日の取調べの違法性(争点3)について


    (1) 証拠(甲15,34,証人B,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,原告に対する9月11日の取調べは,概要以下のとおりであったと認められる。


    1.  B警察官は,同日の取調べにおいて,原告に対し,過去に原告の田んぼに油が浮いているという出来事があった際に,この田んぼに浮いている油について原告がAの母親と話をした件について説明を求め,その後,主として8月11日の原告の行動について説明を求めた。


    2.  B警察官が,原告に対し,8月11日の行動について説明を求めたところ,原告は,9月9日の取調べにおいてB警察官から注意を受けた姿勢をB警察官自身がとっていたことから,その旨を指摘し,


      「あなたは何してもかめへんの。」


      と抗議した。
      これに対し,B警察官は,


      「あなたは被疑者です。」


      と応じ,原告が


      「被疑者?」


      と聞き返したのに対し,


      「犯人です。」


      と答えた。
      これを受けて,原告が,


      「だから,あなたは何してもいいんですね。」


      と確認したことに対し,B警察官は


      「この取調べの刑事です。」


      と答え,さらに原告が


      「だからこんなんしてもいいんですね。
      私にはするなと言うたことを,あなたはしてもいいんですね」


      と確認したところ,B警察官は,


      「はい」


      と答えた。


    3.  その後,B警察官は,原告に対し,再び8月11日の行動について説明を求めるなどし,さらに,原告の話を前提とするとAが怪我をする理由がないにもかかわらず,Aが怪我をしている理由について考えるように求めた。
      原告は,これに対し,考えてもわからない旨答えたが,B警察官は,推測でも構わないから答えるように繰り返し求めた。

      続いて,B警察官は,原告に対し,Aは原告から殴られたと言っているが,原告は殴っていないと言っているのであるから,どちらかが嘘をついていることになると述べ,


      「そうでしょうね」


      と答えた原告に対し,Aが嘘をついて原告を陥れる理由について考えるよう求めた。
      これに対し,原告は分からないと答えたが,B警察官は,繰り返しその理由を考えるよう求めた。


    4.  その後,B警察官は,原告に対し,Aの怪我の状況や,原告がAの当時の服装を正確に記憶していないことを指摘しながら,


      「何ぼ,頑固に通すのもかまわんけどさあ,すみませんやりましたって一言言うたら,すぐ済む話やで。
      俺に対して言いたくないんやったら別にかまわんけど。」


      と申し向けた。

      これに対し,原告が,言いたくないのではなく,犯行を行っていないのである旨答えたところ,B警察官は,原告がAを殴っていないのであれば,Aが嘘をついているのかと発問した。
      原告が,Aが嘘をついているか否かについては分からない旨答えたところ,B警察官は,


      「言い切ろや。」

      「そこ,言い切ろうやって言うてんねん。」

      「そこは言い切りよや,言い切ってよ。」



      などと述べた。
      これに対し,原告は,


      「言い切ってて,私は知らない。
      Aさん何したか,何考えたか,そんなん,私分からない。」


      などと答えたが,B警察官は,その後も繰り返し,


      Aが嘘をついているのか,Aが嘘をついているのであればその理由は何であるのか


      について,原告に答えるよう求めた。


    5.  原告は,前記のようなB警察官の質問に対し,知らないなどと答えていたところ,B警察官は,


      「冤罪事件かなあ,これは」


      などと述べながら,


      「やることやったからなあ,後は●●さん,あなたがやりましたと一言言や済む話やねんけどね。
      やりました,すいません,余りにもAさんの態度に腹が立ったんです。
      右手で一発,どつきました。
      違う?」


      などと申し向けた。


    6.  その後も,B警察官は,原告に対し,本件傷害事件について原告が犯行を行った旨の自らの見立てを説明するなどしながら,原告がAを殴ったのではないかと追及し続けた。
      これに対し,原告は,Aを殴っていない旨述べたところ,B警察官は,原告に対し,再び,


      それではAが嘘をついているのか


      と質問した。
      B警察官の質問に対し,原告は


      知らない


      と答えたところ,B警察官は,


      「知らない,知らないじゃないんや。」


      と述べ,原告が


      「知らんから知らん言うたら,それ言うたらあかんのですか。」


      と述べたのに対し,


      「あかんよ。」


      と答えた。


    7.  原告がB警察官の上記発言に対し,


      「今あかんて言うたね」


      などと指摘したところ,B警察官は


      「聞き飽きた」

      「不毛」


      などと答え,さらに原告がB警察官に対し,ごまかしていると指摘したのに対し,冷静さを失い,


      「ごまかしてんのはあんたや,さっさと認めろ。
      殴ったやろ。」


      と強い口調で申し向けた。


    8.  その後,B警察官は,原告に対し,再び8月11日の行動について説明を求めるなどしながら,


      「あの状況でAさん殴りつけれるのは,あんたしかおらへんの,他に誰かおったかい」


      などと述べ,原告が


      「私は説明したとおり。」


      と答えたことに対し,


      「説明したとおりちゃうで。
      なあ。
      考えることやめたらあかんで。
      素直に認めることも,人の,な。
      思い出すことも,またしかり。
      素直に認めることもまたしかり。
      別にいつでもええんやで。

      いつ認めてくれても。
      すいません,やりましたて,一言言うてくれればそれで済む。
      あんまり言うと自白の強要になるな。
      やったと思ったんやったら,すいません,やりました,そんな記憶がちょっとあります言うてくれてもいい。
      聞いてる?上の空?」


      などと申し向けた。


    9.  B警察官の上記発言に対し,原告が「聞いてるよ」と答えたところ,B警察官は,原告に対し,


      「やろ?この声のトーンやったら,あんた聞こえんねん,分かりません,聞こえませんじゃないねん,都合の悪いことは,あんた,聞こえませんて言うねん。」

      「あんたは都合の悪いこと耳に入れたくないんや。」


      などと述べ,原告が


      「そうですか」


      と答えたことに対し,


      「あんたが,ふん,そうですかと言えるのは,あんた,これ肯定やで,多分,な。
      認めん,図星やけど認めたくない」

      「図星やけど,認めたくないんや。
      違うけ。」


      などと述べた。
      B警察官のこのような発言に対し,さらに原告が


      「そうですか。」


      と答えたところ,B警察官は,


      「ほら,きた。
      あんた今まで図星突かれたら,あ,そうですかあて言うたやろ。
      あんたそうやって生きてきたやろ。
      ちゃうん。」

      「あんた,そうやって言うてきたんやろて。
      これからも,今までも。」


      などと述べた。


    10.  その後,B警察官は,原告に対し,後日身上関係について説明を求めるため,記憶を喚起しておくよう求めた後,再び,原告に対し,犯行を認めるよう追及し,また,Aが嘘をついているのか,なぜAが嘘をつくのかについて説明を求め続けた。
      その中で,B警察官は,原告に対し,


      「グリム童話の話してよ,じゃあ。
      作家●●にやられてる。
      どっちの作者が嘘ついてんかなあ。」


      と述べたり,


      「ある小学生が,先生,この問題わかりませんと言いました。
      何でや。
      考えたくないです。
      分からないです。
      どうしようか。

      その問題はこういう問題です。
      aさんが殴られたと言いました。
      bさんは,私は嘘ついていないと言っています。
      aさんは嘘をついているのかいないのか。
      さあ,この問題,分からないと答えた生徒がおりました。
      考えたくないとも言っています。
      先生どうする。」


      などと質問するなどした。
      原告は,このような質問に対して


      知らない,分からない


      などと答えていたところ,B警察官は,原告に対し,


      「なあ,小学校の先生やってきて,よう挙句これですか。」

      「恥ずかしいと思いませんか。」

      「それで真っ当に生きた,誠実に生きたと言えますか」


      などと述べた。


    11.  原告は,このようなB警察官の質問に対しても,


      知らない,分からない


      などと答えていたところ,B警察官は,原告に対し,


      「あんた,どうやって物事を教えてきたんや,人に。
      ガキやから,適当に言うとったら,あしらっとったんちゃうん。
      ええ,12歳のガキまで,適当にあしらっとったら,先生,先生言うてくるから,適当に答えとったんやろ。
      あんたがそういう回答するんやったら,あんたの人生そういうふうにしか見いへんで。
      ああ?」


      などと述べた。


    12.  その後,B警察官は,さらに,Aがなぜ原告に殴られなければいけないのか,なぜ怪我をしなければいけないのか,その理由を知らないのであれば考えて答えるよう求めた。

      B警察官は,原告に対する追及を続けるなかで,


      「いいですか,あなたは物事を推測でしか考えられんのです。
      それを他人に押し付けてるから今の状況で押し切ってるんですよ,違う」


      と述べた。
      これに対し,原告は


      「違う」


      と答え,さらに説明をしようとしたが,B警察官はこれを遮り,原告が


      「聞きなさいよ。」


      と述べたことに対しても,


      聞かない


      と答えた。
      原告は,B警察官の言動を受けて,B警察官が原告の話を聞かないのであれば,話さないと述べた。
      B警察官は,続けて


      「あんたは自分の推測を他人に押し付けてんねんて。
      あんたは自分の推測を他人に押し付けるから他人は理解できへんねん。
      そらそうやろ,あんたの推測なんやから。
      そら怒るわ。
      それをあんたは自分の言葉が理解されてないと思て解釈するわけやろ。
      だから腹立つねん。
      だから油の件にしても,こんなにだらだら,だらだら不毛の争いが続くねん。
      あんたは何やったら納得できるんや。
      誰かが出頭してきたら納得するんか。
      私が油撒きましたって。
      ええ?言うてみいや,どうやったら納得すんねん,あんたは。
      油の件しかり。
      どうよ。
      私は誰かにこうこう,こうこうこう言われたら納得できますて一言言うたらどうですか。」


      などと述べた。
      これに対して原告は,B警察官が原告の話を聞かないと言ったことを理由に,供述しない旨伝えたところ,B警察官は,


      「うるさいな。
      人の揚げ足ばっかりとって。
      80まで生きてそれか。
      くだらんな,不毛や。
      俺もこんなんなんのかな。」

      「人間やっぱり年っていうたらプライドだけが残るな。」


      などと申し向けた。


    13.  その後,B警察官は,原告に対し,


      「もうちょっと中身のある話したらどうですか。
      くだらんわ」

      「Aさんという被害者のためにやった税金で働いとる仕事がこれですか。
      ええ?
      皆さんが汗水流して,そこからむしりとった税金で仕事してる僕のこの仕事がこれですか。」

      「あんたみたいなじいさん見てきたけど,大概あんたみたいなこと言うなあ」

      「あんたがここまでぐじゅぐじゅ,ぐじゅぐじゅ否認たれるんやったら,否認ていうのは認めんてことね。
      ぐじゅぐじゅ,ぐじゅぐじゅ認めへんねんやったら,裁判まで行くで。
      ええ」
      「裁判ちゅうのはいろんな人が見に来るねん。
      何言うてん,あのじいさんてなるねん。
      ああ,認めたくないだけなんやろな,この人はて。
      悔しいけ。
      悔しいか。
      自分の意見が通らんのが。
      ●●さん,■■さんやったっけ。
      どっちでもいいけど。
      何か反論してよ。
      必要のない不必要なことを,俺,今言うてるはずやで,あんたに。
      黙りこくるちゅうことはどういうことや。」


      などと申し向けた。


    14.  これに対し,原告は,B警察官が黙れといったことを理由に供述を拒否したところ,B警察官は,


      「答えたらどうですか。
      命令じゃないと駄目や,答えろと言わんとあかん。
      黙れっていうのん守るんやったら,命令の答えろは守れるよな。」


      と述べ,さらに原告を威圧するような口調,声量で


      「答えろ,答えろ。
      あんたがそうまでしてやってないと言い切る理由は何や。

      答えろ。
      答えろ。
      やってないという理由を答えろ」


      と申し向けた。


    15.  これに対し原告がやっていない旨答えたことから,B警察官は,


      「じゃあ,誰が嘘ついてんや。」

      「知らんは通さん。」

      「考えろ。
      これ命令やで」


      などと申し向けた。
      原告は,これに対しても,B警察官が黙れといったことを理由に供述を拒否する旨伝えたところ,B警察官は,


      「●●」

      「名前呼ぶのもおっくうや。
      不毛や。
      ちゃんちゃらおかしいいわ」


      などと述べた後,原告に対し,原告とAのどちらが嘘をついているのか答えるよう求めた。


    16.  原告は,引き続きB警察官が黙れと言ったことから供述しない旨答えていたところ,B警察官は,威圧的な口調で


      「答えろ。
      黙らなくていいから答えろ」


      と述べ,さらに,


      「あんたはそうやねんて。
      黙れて言われて,自分の都合のええことしかそうやって理解して,そうやって生きてきたんや,そうやって主義主張通すつもりやねんて,大いに結構や。
      別に,あんたの生き様なんやから好きにしろや。
      別にあんたが憎くてやってんちゃうねん。

      半分腹立ってるけどな。」

      「どっちが嘘ついてんやと聞いてんねん。
      私は嘘ついてないと主張するんはええけど,じゃあ相手が嘘ついてるんかと聞いたら,いや,それは知らん,馬鹿でもわかるやろ,こんなもん」


      などと述べるなどし,その後,取調べを終了した。



    (2)

    1.  前記のとおり,B警察官による原告の取調べが違法であるか否かについては,社会通念上相当と認められる方法ないし限度を超える態様であるか否かによって判断すべきである。


    2.  供述を強要する言動について

      前記(1)で認定したとおり,B警察官は,原告に対し,原告が犯行を否認する理由や,Aが虚偽の被害申告をする理由を説明することを何度も求めており,また,その態様も,威圧的な口調,声量であることからすれば,このような態様での追及は,原告を混乱させ,相当の恐怖感を与えるものであったといえる。

      また,前記2(2)イのとおり,原告には本件傷害事件について一定の嫌疑は認められたものの,Aの供述の外に原告の犯行を裏付ける客観的な証拠はないこと,原告とAとの間には,過去に土地の境界に関する紛争が生じており,虚偽申告の動機も否定し難いことからすると(前記前提事実(5)),その供述の信用性は慎重に検討されるべきであり,原告に対する嫌疑の程度が当初から高いものであったとはいえない。
      それに加えて,原告には供述拒否権が認められ,原告が供述を拒否すること自体,特段非難される態度ではないことからすると,B警察官が原告に対し,威圧的な口調,声量で原告に対して


      「答えろ,答えろ。
      あんたがそうまでしてやってないと言い切る理由は何や」


      などと申し向けた行為は,もはや社会通念上の相当性を逸脱したものというべきである。


    3.  自白を強要する言動について前記2(2)イのとおり,原告には一定の嫌疑が認められたことからすると,原告に対する取調べにおいて,自白に向けて説得を行うこと自体は許されるものと解される。

      B警察官は,原告に対する取調べにおいて,


      「すみませんやりましたって一言言うたら,すぐ済む話やで。」(前記(1)エ)


      とか,


      「素直に認めることもまたしかり。
      別にいつでもええんやで。
      いつ認めてくれても。
      すいません,やりましたて,一言言うてくれればそれで済む。」(前記(1)ク)


      と発言しているが,これらは自白を強要するものとまではいえず,また,Aの怪我の状況や,原告の8月11日の行動について説明を求める中で発言したものであることからしても(前記(1)エ及びク),原告に対し自白に向けての説得を試みるものであって,社会通念上相当な方法及び限度を逸脱する態様での取調べであるとは認められない。



      コメント

      問題は、「自白の強要」かどうかではなく、

      捜査を担当する警察官が、真実の探求をせずに、被疑者の自白を取ることを最優先している姿勢ではないのかな?




      しかしながら,B警察官の


      「さっさと認めろ。
      殴ったやろ。」(前記(1)キ)


      と強い口調で発言していることについては,何らの合理的な根拠・理由を示すこともなく,単に自白するよう命ずるものであって,説得の域を超えるものというべきである。
      また,B警察官は,原告に対し,上記発言の直前に,


      知らないことを知らないと言うことは「あかんよ。」


      などとも発言しており(前記(1)カ),客観的な証拠との不整合を指摘したり,理詰めで事実関係を追及・確認するような発言ともいえない。
      これらの事情からすると,B警察官の


      「さっさと認めろ。」


      との上記発言は,供述の任意性に疑義を生じさせかねない発言であって,前記イのとおり,原告の嫌疑がそれほど高いものではないことに照らしても,取調べとして社会通念上相当な方法を超えた態様による取調べであったというべきである。


    4.  原告の尊厳を著しく害する言動について

      (ア) 名前に関する侮辱的言動 B警察官は,原告のことを


      「あんたみたいなじいさん」


      と呼んだり,


      「■■さんやったっけ。」


      と名前を間違えるなどしているが(前記(1)ス),このような発言自体が原告を侮辱するものであるとまでは即断できない。

      しかし,B警察官が,自らが黙れと言ったことを理由に原告が供述を拒否していることに対して,


      「●●」


      と呼び捨てにした上で


      「名前呼ぶのもおっくうや。
      不毛や。
      ちゃんちゃらおかしいいわ」


      などと発言している点については(前記(1)ソ),原告の人格を不当に貶める発言といわざるを得ない。

      さらに,B警察官は,同じくB警察官が黙れと言ったことを理由に原告が供述を拒否していることに対し,


      「どっちが嘘ついてんやと聞いてんねん。
      私は嘘ついてないと主張するんはええけど,じゃあ相手が嘘ついてるんかと聞いたら,いや,それは知らん,馬鹿でもわかるやろ,こんなもん」


      と発言しており(前記(1)タ),これについても不当な人格攻撃といわざるを得ない。

      なお,被告は,前記


      「●●」


      と呼び捨てにしたことについて,その前からの不毛な問題に区切りをみつけるための発言であると主張する。
      しかし,当該発言の経緯からして,B警察官が黙れと言ったことを理由に原告が供述を拒否していることに対して述べられたものであることは明らかであるし(前記(1)ソ),問題に区切りをつけるために,


      「名前呼ぶのもおっくうや。
      不毛や。
      ちゃんちゃらおかしいいわ」


      などと発言する必要もなく,これらの発言の前後を通じて,原告とAのどちらが嘘をついているかを問い糺し,押し問答を繰り返しているのであるから,このような取調べの経緯に照らして被告の主張は採用できない。

      (イ) 元教師であることを侮辱した言動等

      B警察官は,原告が嘘をついていないのであれば,Aが嘘をついていることにならないかという質問に対し,原告が知らない,分からないなどと答えたことに対し,


      「あんた,どうやって物事を教えてきたんや,人に。
      ガキやから,適当に言うとったら,あしらっとったんちゃうん。
      ええ,12歳のガキまで,適当にあしらっとったら,先生,先生言うてくるから,適当に答えとったんやろ。
      あんたがそういう回答するんやったら,あんたの人生そういうふうにしか見いへんで。
      ああ?」


      などと発言している(前記(1)コ及びサ)。
      このような発言の経緯からすると,かかる発言は,Aが嘘をついていると認めない原告の態度を非難するために,原告の教員としての人生を否定する趣旨でなされたものであり,原告の人格を不当に非難する発言であるといえる。

      なお,被告は,B警察官の発言が,原告の不誠実な態度を是正するためになされたと主張するが,前記のとおり,Aが嘘をついていると認めない原告の態度が不誠実とまではいえないし,仮に原告の態度を是正するためであったとしても,教員であった原告の人生を侮辱することを正当化する理由とはならず,被告の主張は採用できない。

      (ウ) 原告の人生を全否定するかのような侮辱

      B警察官は,前記(1)ケのとおり,


      「ほら,きた。
      あんた今まで図星突かれたら,あ,そうですかあて言うたやろ。
      あんたそうやって生きてきたやろ。
      ちゃうん。」


      とか,前記(1)コのとおり,


      「それで真っ当に生きた,誠実に生きたと言えますか」


      などと発言しているところ,取調べの経緯からすると,Aが嘘をついていると認めるよう,原告の良心に訴えようとする意図から出た発言であると解する余地はあるが(前記(1)コ),この発言を受けた者にとっては,自らの人生を否定されたとも受け取れることからすれば,その発言の相当性については疑問があるといわざるを得ない。

      (エ) 高齢者である原告を侮辱する言動

      B警察官は,前記(1)シのとおり,


      「うるさいな。
      人の揚げ足ばっかりとって。
      80まで生きてそれか。
      くだらんな,不毛や。
      俺もこんなんなんのかな。」

      「人間やっぱり年っていうたらプライドだけが残るな。」


      などと発言しているところ,発言の経緯からすると,B警察官が話を聞いてくれないから供述しないと述べた原告の態度を非難するために,原告が高齢者であるからプライドだけが残っているなどと侮辱したものというべきである(前記(1)シ)。
      原告は,B警察官の見立てに対して反論しようとしたところ,B警察官から反論を聞かない旨言われたのであって(前記(1)シ),かかる経緯からすれば,原告が自らへの嫌疑を否定するために,B警察官が言い分を聞いてくれるまで供述を拒否することは,不当なものとはいえず,B警察官の発言の揚げ足をとるものであるともいえない。
      そして,B警察官の上記発言が,前記(ウ)のような原告の人生を全否定するような発言に引き続いてなされていることも考え併せると,殊更に原告の人格を攻撃する態様でなされた不当な取調べであったというべきである。

      (オ) 否認を認めない侮辱的言動

      B警察官は,前記(1)スのとおり,


      「ぐじゅぐじゅ,ぐじゅぐじゅ否認たれる」

      などと発言しているところ,その文言や,その前後の発言からして,犯行を否認する原告の態度を蔑み,その人格を非難するものというべきである。

      被告は,否認が認め難いことを述べることは非難されることではない旨主張するが,B警察官は,被害者の供述内容と食い違いがあることを指摘するものの,それ以外に客観的証拠を示したり,理詰めで追及するなどして,原告が被疑事実を否認することに合理性がないことを具体的に指摘しているわけではなく,前記(ア)ないし(エ)にみられるとおり,単に人格攻撃に終始しているのであり,このような取調べ方法は,真実発見のための手段として何ら合理性があるとは認められない。


      (カ) 被疑者を犯人であるとする言動

      前記(1)イのとおり,B警察官は,原告に対し


      「犯人です。」


      と発言している。
      そして,前記(1)イの取調べの経緯からすると,B警察官の発言は,原告に対し,原告が犯罪者であるから,警察官であるB警察官より下の立場にあると申し向け,原告の尊厳を害するものであって,このような発言をする必要性も何ら認められない。

      B警察官は,


      原告が被疑者という言葉を理解していなかったため,分かりやすいように犯人と言う言葉を使った


      旨供述するが(証人B),被疑者と犯人とは明確に異なる概念であり,原告においても,犯人を被疑者の意味で理解するとは到底考えられないのであって,被疑者を犯人と説明することに何ら合理性は認められない。


    5.  原告を困惑させる言動 B警察官は,前記(1)コのとおり,原告に対し,グリム童話の話を求めたり,小学生の例を出すなどして,Aが嘘をついているか否かなどについて追及しているが,発言の趣旨が不明であり,原告を困惑させる発言であって,その相当性には疑問があるといわざるを得ない。


    (3) 以上判示したところからすれば,B警察官による9月11日の取調べは,社会通念上相当性を逸脱した態様で原告に供述や自白を強いるものであり,また,原告に対して不当な人格攻撃に及ぶ発言を繰り返すものであって,全体として社会通念上相当性を逸脱した違法な取り調べであったというべきであり,国賠法1条1項の適用上違法と認められる。

    なお,被告は,原告が録音するためにあえて揚げ足を取ったり,挑発するような発言をしたなどと主張する。
    証拠(甲15,16,34)によれば,B警察官による威圧的・侮辱的な言動に対して,原告から同警察官の不遜な態度を咎めたり,強く言い返すこともあったと認められるものの,原告が録音を意識して,あえてB警察官の違法な言動を誘発したとまで認めるに足りる証拠はなく,B警察官の違法な取調べが原告の態度によっても正当化されないことは前記のとおりであるから,被告の主張は上記結論を左右しない。



  4.  先入観に基づく違法な捜査の有無(争点4)について


    前記前提事実(2),証拠(証人B)及び弁論の全趣旨からすると,B警察官は,9月9日に原告の取調べを開始するまでに,本件傷害事件について,Aが原告から殴られたと被害申告していること及びAの下顎部に打撲傷が生じていることなどを確認した上で,原告を被疑者として取調べを行ったと認められる。

    そうすると,B警察官は,このような事情を踏まえ,原告に一定の嫌疑が認められると考え,原告の取調べを行っているのであるから,Aの申告内容とAの怪我の状態との医学的な整合性を確認していないからといって,原告の取調べを行うことが社会通念上相当と認められる方法及び限度を超えるものとはいえず,先入観に基づく違法な捜査であるとはいえない。

    したがって,原告の上記主張は採用できない。



  5.  違法な取調べ状況報告書への指印の強要の有無(争点5)について


    (1) 証拠(甲14の1ないし5,15,34)によれば,原告が9月11日の取調べ後に,取調べ状況報告書に押印しようとしたところ,B警察官は,原告に対し,


    「印鑑あかんで。」

    「指印押して」

    「あなたに後で無理やり勝手に印鑑押さされたってたまらんからな」


    と申し向け,原告が


    「昨日いけたのに。」


    と述べたところさらに,


    「今日は印鑑あかん。」


    などと申し向け,原告が取調べ状況報告書に指印するに至ったこと,及び同日の取調べ以外の取調べ状況報告書には押印がなされていることが認められる。


    (2) 原告は,B警察官が原告に指印を要求した行為について,9月12日以降の取調べにおいては押印がなされていることから,原告に対して屈辱感を与える目的で強要したものである旨主張する。
    しかし,B警察官は,9月11日に原告に指印を要求するに際し,


    「あなたに後で無理やり勝手に印鑑押さされたってたまらんかなら」


    と後日取調べ状況報告書に警察官が勝手に押印したと原告が主張することを防止する目的であると説明しており,その他原告に対して指印を押すことについて屈辱感を与えるような言動を取ったとも認められないことからすると,原告に対する屈辱感を与える目的で指印を強要したとまでは認められない。


    (3) しかし,指印の要求は,指紋の押なつを求めることに他ならず,何人もみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有すると解されるところ,犯罪捜査規範では,取調べ状況報告書への指印について,取調べ状況報告書を作成した場合において被疑者がその内容を確認したときは,それを証するため当該取調べ状況報告書の確認欄に署名押印を求めるものとされ(犯罪捜査規範182条の2),被疑者が取調べ状況報告書に押印することができないときは指印させなければならず,被疑者が取調べ状況報告書に署名又は押印を拒否したときは,警察官がその旨及びその理由を記載して署名押印すること(犯罪捜査規範182条の2,同181条)とされているにすぎないのであるから,被疑者の承諾なしに指印をさせることは社会通念上の相当性を欠くものと解すべきである。

    そして,本件では,B警察官は,原告に対し


    「印鑑あかん。」

    「指印押して」


    と申し向け,


    「昨日いけたのに。」


    と述べる原告に対し,更に


    「今日は印鑑あかん」


    と申し向けており,押印しようとしている原告に対して,押印は許されず,指印以外の方法は許されない旨を言い渡していると認められる。
    そうすると,原告は,B警察官の上記発言により,押印が許されないものであると誤信し,指印したものと認められるから,原告が指印することを拒否していないとしても,原告の承諾なしに指印をさせたものと同視すべきであり,よって,国賠法1条1項の適用上違法というべきである。



  6.  D警察署による組織ぐるみの違法な証拠隠滅行為の有無(争点6)について


    原告は,原告の代理人が9月11日に本件抗議書をD警察署にファクシミリ送信したところ,D警察署の警察官がこれを隠滅した旨主張する。

    しかし,D警察署の警察官において,原告代理人からファクシミリで送信された抗議書をあえて廃棄する動機があることを窺わせる事情は見受けられない。
    また,D警察署の警察官が,9月12日,原告の代理人からファクシミリ送信された本件抗議書を確認したかと尋ねられた際,白紙のものしか届いていない旨説明していること(争いのない事実)からすると,原告の代理人が,誤って本件抗議書の裏面をファクシミリで送信した,あるいは宛先を誤った可能性を否定できない。



    コメント

    送信内容を確認できる機種もあるらしい。

    法律事務所には必須?



    質問

    送信したファクスの原稿を、後から確認する方法が知りたい。


    回答

    ファクスを送信する時にデータ保存の機能を選択することで、送信したファクス原稿を後からでも確認できます。
    [一時保存]または[ファイリング]ボタンを選択して、複合機のハードディスクに保存してください。



    よくあるご質問 (シャープ)
    http://www.sharp.co.jp/business/print/support/faq/answer/faq01239.html


    確かに,原告の代理人事務所からファクシミリを送信した場合,受信した用紙には,原告代理人事務所名及びファクシミリ番号が印字されると認められるが(甲35),

    • ファクシミリ送信の有無を確認したD警察署の警察官において当該記載を見落として白紙であると誤認した,あるいは

    • 印字が鮮明になされずに,記載が読み取れなかった

    などの可能性も考え得るのであるから,かかる事実をもって,D警察署の警察官が,原告の代理人から抗議書を受領しておきながらこれを破棄するなどして隠滅したと認めることはできない。



    コメント

    FAX受信の翌日の取調べで身体検査をし、取調べの警察官も増員する理由が分からん。



    したがって,原告の主張は採用できない。



  7.  原告の承諾を得ずに行った違法な所持品検査の有無(争点7)について


    (1) 原告は,


    C警察官が,9月12日の取調べを開始する前に原告が了承していないにもかかわらず,着衣の上から原告の体を触って所持品検査を開始し,最終的には原告の靴の中にまで指を入れて確認するという行為に及んだ


    旨主張し,これに沿う供述をする(甲42,原告本人)。
    しかし,C警察官及びB警察官は,


    着衣の上から触る所持品検査を行い,靴については原告に靴を脱いでもらい靴の中を確認したにすぎない


    旨供述していること(証人C,証人B),靴の中に危険物等を隠匿していないか確認する場合,履いたままの靴に指を入れて確認するよりも,靴を脱がせて,その中を確認する方が合理的であることからすると,前記原告の供述のみをもって,C警察官が,原告の承諾を得ないで靴の中に指を入れて所持品検査をしたと認めることはできない。



    コメント

    危険物ではなく、ICレコーダーを探していたとしたら・・・?

    靴の先に隠しても音を拾えないから、開口部を触るだけで充分じゃないですか。


    そもそも、原告が自発的に靴を脱がなければ、警察官の証言は成り立たない。

    靴を脱いだかどうか、原告に確認したのかな?




    (2) そして,被疑者の取調べに際して,危険物の持ち込みの有無等を確認するために,被疑者の承諾を得た上で着衣の上から触る程度の所持品検査を行うことは,任意捜査として相当な限度にとどまるといえるから,C警察官による所持品検査が国賠法1条1項の適用上違法であるとはいえない。



  8.  原告の承諾を得ずに行った違法な写真撮影の有無(争点8)について


    原告は,


    B警察官が撮影した取調室における原告の写真(甲43:以下「本件写真」という。)について,B警察官が,11月6日の取調べの際に,原告の承諾を得ずに,取調室の外から透視鏡越しに撮影したものである


    と主張し,これに沿う供述をする(甲42,原告本人)。

    しかし,B警察官は,


    原告に対して承諾を得て本件写真を撮影した


    旨供述しており(証人B),B警察官において,原告に対し原告の写真を撮ることについて承諾を求めることができなかったことを窺わせる事情は見受けられない。

    また,本件写真と原告代理人が取調室の中から直接原告を撮影した写真(甲36の写真①・②)及び取調室の外から透視鏡越しに撮影した写真(甲36の写真③・④)を子細に比較しても,本件写真が透視鏡越しに撮影されたと的確に認めることはできず,B警察官が,原告の承諾を得ずに,透視鏡越しに本件写真を撮影したと認めることはできない。



    コメント


    これまた、すごい論法だな。


    問題は、

     どこから写真撮影をしたかではなく、

     原告が写真撮影を承諾したか

    どうかのはず。


    本人が承諾していなければ、どこから撮影しようと違法じゃないのか?



    したがって,本件写真の撮影について,国賠法1条1項の適用上違法な行為があったとはいえない。



  9.  刑事訴訟法198条4項に反する違法な増減申立て拒否の有無(争点9)について



    第198条

    1.  検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者の出頭を求め、これを取り調べることができる。但し、被疑者は、逮捕又は勾留されている場合を除いては、出頭を拒み、又は出頭後、何時でも退去することができる。

    2.  前項の取調に際しては、被疑者に対し、あらかじめ、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げなければならない。

    3.  被疑者の供述は、これを調書に録取することができる。

    4.  前項の調書は、これを被疑者に閲覧させ、又は読み聞かせて、誤がないかどうかを問い、被疑者が増減変更の申立をしたときは、その供述を調書に記載しなければならない。

    5.  被疑者が、調書に誤のないことを申し立てたときは、これに署名押印することを求めることができる。但し、これを拒絶した場合は、この限りでない。

    刑事訴訟法
    http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=323AC0000000131&openerCode=1




    (1) 証拠(甲33,42,証人B,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,以下の事実が認められる。


    1.  B警察官は,11月7日の取調べの際,原告に対し,8月11日のAとの出来事について説明するよう求めた。


    2.  原告は,前記B警察官の取調べに対し,概要以下のような説明を行い,B警察官はこれを調書に記載した。


      (ア) 原告は,田んぼで米を作ったりしており,8月11日の朝,田んぼの様子を見に行ったところ,田んぼに油が浮いていた。

      (イ) 原告の田んぼには,それまでに3回,油が浮いていたことがあり,その件については警察にも相談していたが,油が特定できなければ受付できないと言われていた。
      原告は,この油は誰かが撒いたものであると思っている。

      (ウ) 原告は,同日昼頃,もう一度田んぼの様子を見に行ったところ,Aが田んぼにいた。
      以前,Aの田んぼに油が浮いていたことがあったので,原告は,Aが油のことについて何か知っていると思い,油のことを聞くこととした。

      (エ) 原告が,Aに対し,詳しくは覚えていないが,


      「あんたの田んぼのところから,油が流れてうちの田んぼに入ったけど誰が撒いたか知らんかな」

      「私に恨みがあるんやったら,直接,言うてくれたらええのにな」

      「陰で,わからんところで,あんなことすんのは,本当に卑怯だ」

      「許せんわ」


      などと聞くと,Aは,原告に対し,


      「なんでそんなこと言うんや,俺が撒いたって言うんか」


      などと怒鳴り返してきた。

      (オ) そして,Aは,いきなり原告の両肩の辺りを両手で交互に突いてきた。

      Aから2回ほど突かれ,1回目は両手で振り払い,2回目はよろけてトラックの荷台にもたれた。
      その後,Aは,原告に対し


      「どこにあるんや」


      と言い,原告の田んぼを見に行った。

      (カ) Aは,戻ってくると,原告に対し,


      「あれは草が腐って出るもんや」

      「前の油は,菜種の油や」

      「Eさんが言うてたんや」

      「あんたも聞いてるやろ」


      などと言った。

      (キ) 原告は,菜種から油が出てくることは信じられず,そもそも,原告の田んぼには菜種が生えていないので,Aが油の件について嘘をついていると思った。

      (ク) 原告は,Aに対し,


      「お互い誠実になって,仲良くしていこうや」


      などと言うと,Aは原告に「そやな」と言ったので,原告は自宅に帰ることにした。


    3.  原告は,B警察官に対し,概要前記イの旨が記載された調書について,原告が,8月14日,Eに対し,Aが話していた内容について真実か否かを確認したところ,Eはそのようなことは話していない旨述べた旨を追記するよう申し立てた。


    4.  B警察官は,前記原告からの申立てに対し,取調べは8月11日の出来事について確認したものであり,8月14日の出来事は関係ない旨を述べ,追記を拒否した。


    (2) 被告は,11月7日の取調べでは,8月11日のことについて取り調べたのであり,原告が追記を求めたのは8月14日の出来事であるから,取調べた事項と関連性が無く,これを拒否することは違法でない旨主張する。

    しかし,原告が加筆を申立てた事項は,8月14日の出来事ではあるが,Aが8月11日にEから聞いたと説明していた内容について,後日,原告がEに対して確認したというものであり(前記(1)イ(カ),(1)ウ),B警察官が原告の供述調書に録取した8月11日におけるAの発言内容の信用性に関するものであるから,事実的な関連性がないとはいえない。
    また,Aは,8月11日,警察に対し,同日午後零時頃,原告がいきなり


    「油流しこんだやろ」


    と言って,殴りかかってきた旨申告していること(前記前提事実(2)イ)からすると,原告が追記を求めた事項は,原告から殴られたというAの申告内容の信用性の判断にも影響を与え得る事情である。
    加えて,被疑者の供述録取書は,刑事訴訟法322条の要件の下に,公判において証拠とすることができることをも併せ考慮すると,供述調書に録取して然るべき事項であったといえる。

    そして,刑事訴訟法198条4項が,


    被疑者の供述を録取した調書について,被疑者が増減変更の申立をしたときは,その供述を調書に記載しなければならない


    と定められていることからすると,取調官は,被疑者が増減変更を申し立てた事項が,取り調べた内容と関係がない事項であるなどの事情がない限り,被疑者が申し立てた増減変更内容を調書に記載する義務を負っていると解すべきであるから,B警察官が,原告からの追記の申立てを拒否したことは,同条項に反するものであり,国賠法1条1項の適用上も違法というべきである。



  10.  身柄引請書を利用した違法な捜査の有無(争点10)について


    (1) 原告は,B警察官が,11月7日,原告方を訪れ,原告の妻に対し,身柄引請書への署名・押印を求めた際,


    「逮捕されたときに必要なのです」


    などと逮捕をほのめかし,原告に心理的不安を与えたと主張し,これに沿う供述をするとともに,原告の妻も,原告の主張に沿う証言をする。

    しかし,B警察官が,原告の妻に署名を求めた身柄引請書(甲23:以下「本件身柄引請書」という。)には,




    「ただ今貴署で取調中の下記の者の身柄の引請をしましたが,今後は責任をもって監督しますとともに,将来貴署又は関係官署から本人に呼出しのあるときには,必ず出頭させるようにします。

    また,本人の住居の変更または旅行等の場合は,直ちに貴署にお知らせします。」



    と記載されており,かかる記載内容からすると,本件身柄引請書は任意捜査において出頭確保のために作成されるものであり,逮捕された場合に必要となるものでないことは明らかであって,B警察官が,逮捕されたときに必要であるなどと誤った説明をしたとはにわかに考え難い。
    そもそも,原告の妻は,


    「逮捕されたときに必要だからこれ書いてもらわないけない」


    と言われたと証言する一方,


    「『逮捕されたら』というような言葉を聞きましたので」

    「『逮捕できるんだ』というように私は聞き取りました」


    などとも証言していることからすると,原告及び原告の妻は,B警察官が,本件身柄引請書への署名の必要性について,逮捕した場合には必要ない旨を説明したこところ,逮捕されたときに必要であると誤って理解した可能性は否定できない。
    したがって,原告及び原告の妻の供述をもって,B警察官が,原告及び原告の妻に対し,身柄引請書について「逮捕されたときに必要なのです」と説明したと認めることはできない。


    (2) また,原告は,B警察官が,11月7日の取調べ終了後,突然原告に対し,原告の妻から身柄引請書を貰うために原告方を訪れることを伝え,原告が理由を確認してもB警察官は説明しようとしなかった旨主張し,これに沿う供述をする。

    しかし,B警察官は,11月5日の取調べの際,検察庁から呼出しがあるかもしれないので,親族や近しい方に署名を貰う書類になっている旨説明したと証言しているところ,大阪府警察の内部規定において不拘束の場合には引請者に身柄引請書を提出させることとされていることからすると(乙2),B警察官が,身柄引請書の提出について,原告に対し何らの説明も行わなかったと直ちには考え難く,原告の供述のみをもって,B警察官が,原告に一切理由を説明することなく,突然原告の妻から身柄引請書を貰うために原告方を訪れると伝え,その理由も説明しなかったと認めることはできない。

    原告は,



    原告が原告の妻は足が悪いので警察署に来ることができないと述べていたので原告宅を訪れることにした


    旨のB警察官の証言について,原告の妻は外出することができるので,原告がそのような説明を行うことはあり得ず,B警察官の供述は虚偽である


    旨主張する。
    しかし,現に原告の妻は歩行の際に杖を利用していることからすると(原告本人),B警察官の上記証言が客観的事実と整合していないものとはいえず,虚偽であると認めることはできない。


    (3) 原告は,本件身柄引請書は原告宅で交付されたにもかかわらず,「ただ今貴署で取調中の下記の者の身柄の引請をしましたが」と交付された状況と異なる記載がされている旨主張するが,同文言は不動文字で身柄引請書に予め記入されているものであること(甲23)も踏まえると,かかる不整合のみをもって原告に殊更不安を覚えさせるとも認められない。


    (4) 以上より,B警察官が本件身柄引請書を利用して,逮捕をほのめかすなどして原告に殊更心理的負担を与えたと認めることはできず,国賠法1条1項の適用上違法な行為があったと認めることはできない。



  11.  損害(争点11)について


    上記のとおり,原告は,

    • 9月11日の取調べにおいて,B警察官から供述や自白を強いられるような言動を受け,自らの人生を否定するかのような侮辱的で不当な人格攻撃にわたる発言を受けたこと,また,

    • 同日の取調べ後に,自らの意思に反して指印を強いられ,11月7日の取調べにおいて,供述調書への追記も不当に拒絶されたこと

    など,国賠法条1条1項の適用上違法というべき行き過ぎた犯罪捜査により,その人格権を侵害されたものと認められる。
    ただし,証拠(甲15,16)によれば,9月11日の取調べにおいて,原告は,その持ち前の精神的な強さをもって若いB警察官と対峙し,丁々発止のやり取りを展開する場面もあり,自白するまでに精神的に追い込まれたとはいえないこと等をも併せ考慮すれば,原告が人格権を侵害されたことにより受けた精神的苦痛に対する慰謝料としては,100万円を認めるのが相当である。



第4 結論

以上によれば,原告の請求は100万円及びこれに対する最終の不法行為の日である平成25年11月7日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから認容し,その余は理由がないから棄却することとし,訴訟費用の負担につき民事訴訟法64条本文,同法61条を,仮執行宣言につき同法259条1項を,それぞれ適用して主文のとおり判決する。




大阪地方裁判所 第16民事部

裁判長裁判官 森 木 田 邦 裕

裁判官 北 岡 裕 章

裁判官 塚 上 公 裕











平成20年1月



警察庁


警察捜査における取調べ適正化指針


我が国の刑事手続において、被疑者の取調べは、事案の真相解明に極めて重要な役割を果たしていることは、論を俟(ま) たないところである。
しかしながら、昨今、その在り方が問われる深刻な無罪判決等が相次ぎ、取調べを始めとする警察捜査における問題点が厳しく指摘された。
警察としては、これらの点について深く反省し、今後の捜査にいかすべき事項を抽出し、再発防止に向けた緊急の対策を講じてきたところであるが、国民からの批判は依然として厳しく、警察捜査に対する信頼が大きく揺らいでいる。


また、平成21年5月までに導入される裁判員裁判制度の下では、一般国民から選ばれる裁判員が刑事事件の審理に加わり、警察捜査の結果が直接国民の視点から検証されることとなる。
したがって、裁判員の心証形成に資するという観点からも、警察における捜査手続、とりわけ被疑者の取調べの在り方についても、一層の適正性の確保が求められている。


このような諸情勢を踏まえ、国家公安委員会は、警察捜査における取調べの一層の適正化を喫緊の課題と認め、全国警察を挙げた取組みが必要であるとして、平成19年11月1日「警察捜査における取調べの適正化について」を決定した。


警察庁は、都道府県警察における捜査の実態を十分に勘案し、来るべき裁判員裁判への適合性をも念頭に置きつつ、捜査における取調べの一層の適正化について対策を講ずることとなった。


警察庁は、この決定に基づき、鋭意、対策の検討を進め、このたび、警察が当面取り組むべき施策を「警察捜査における取調べ適正化指針」として取りまとめた。
この指針にのっとり、取調べの適正化に向けた施策を迅速かつ着実に実施し、警察捜査に対する国民の信頼を確かなものとするよう全力を尽くしていく。






  1. 取調べに対する監督の強化


    (1)捜査部門以外の部門による取調べに関する監督

    1. 警視庁及び道府県警察本部の総務又は警務部門に取調べに関する監督を担当する所属(以下「本部監督担当課」という)を置くとともに、本部監督担当課及び警察署の総務又は警務部門に取調べに関する監督を担当する監督担当者を置く。


    2. 取調べに関する監督を的確に行うことができるよう、次に掲げる取調べに係る不適正行為につながるおそれがある行為を監督の対象となる行為(以下「監督対象行為」という)として国家公安委員会規則に類型的に規定する。


      (ア)被疑者の身体に接触すること(やむを得ない場合を除く。)。

      (イ)直接又は間接に有形力を行使すること。

      (ウ)殊更不安を覚えさせ、又は困惑させるような言動をすること。


      警察側主張

      • B警察官において,グリム童話や小学生を例に挙げて,その不合理さを説明しているのであり,原告を困惑させるようなものではない。



      (エ)一定の動作又は姿勢をとるよう強く要求すること。


      警察側主張

      • 「答えに困って下を向くのは非があるからではないのか。」

        と申し向けた事実はあるが,一定の動作又は姿勢を取るよう強く要求することに当たるものではない。



      (オ)便宜を供与し、又は供与することを申し出、若しくは約束すること。

      (カ)被疑者の尊厳を著しく害するような言動をすること。


      警察側主張

      • 名前の呼び捨てもその前からの不毛な問題に区切りをみつけるための発言であり,人権を無視した侮辱的な発言とまでいえるものではない。

      • 発言の流れからして,原告を侮辱する意図があったとまではいえない。

      • 原告が指摘するB警察官の言動が,原告を侮辱したものとまではいえない。

      • B警察官の申し出に素直に従って指印を押印していることからすれば,B警察官が原告に指印を強要したとはいえない。



      (キ)一定の時間帯等に取調べを行おうとするときに、あらかじめ、警視総監若しくは道府県警察本部長(以下「警察本部長」という)又は警察署長の承認を受けないこと。


    3. 罪種や任意・強制の別を問わず、取調べ室等において行われる被疑者の取調べについて、監督対象行為の有無を確認すること等により、取調べに関する監督を行う。


    4. 取調べに関する監督は、大要次のような方法により行うこととする。


      (ア)取調べ状況の把握

      1. 被疑者を取調べ室又はこれに準ずる場所において取り調べたときは、捜査主任官は、本部監督担当課に対し、速やかに、取調べ状況報告書(犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)第182条の2第1項に規定する取調べ状況報告書をいう。以下同じ)等の記載内容を報告する。

      2. 警察署に置かれる監督担当者は、被疑者等からの苦情の申出を受けるとともに、当該警察署において行われる被疑者の取調べの状況を随時確認し、又は必要により所要の調査を行い、その結果を本部監督担当課に報告する。

      3. 本部監督担当課は、警察署等に対し定時又は随時の巡察を行い、監督対象行為の有無を中心とする被疑者の取調べの外形的状況を確認する。

      4. 取調べについて苦情の申出があったときは、申出者の氏名、連絡先、苦情の内容等を書面に記録するとともに、苦情処理に係る所定の手続に従い、速やかに都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)又は警察本部長に報告する(報告の内容は、すべて本部監督担当課においても把握する。)。



        コメント

        この事件では被疑者から「苦情申出」があったはずなんだけど、ちゃんと府警本部長に報告したよね?




      (イ)調査

      本部監督担当課は、上記(ア)により、監督対象行為がなされた可能性があると認めたときは、関係書類の閲覧、捜査主任官等からの報告聴取、取調べの外形的状況の確認、取調べ官等からの報告聴取、被疑者との面接等を実施し、監督対象行為の有無を確認する。



      コメント

      国家賠償訴訟においてさえ適正化指針違反を認めていないところからすると、本部監督担当課が調査しても問題がなかったということなのかな?




      (ウ)監督対象行為を認めた場合の措置

      1. 監督担当者は、調査過程において監督対象行為を現に認めたときはこれを中止させることができることとする。

      2. 調査結果は書面に記録するとともに、本部各部指導担当部署又は監察部門に通報し、業務上の指導や懲戒処分に活用する。

      3. 取調べに関する監督の実施状況については、定期的又は随時に公安委員会に報告する。



    (2)被疑者の取調べ過程・状況に関する書面による記録制度の充実

    取調べ状況報告書は、身柄を拘束されている被疑者又は被告人を取調べ室又はこれに準ずる場所において取り調べたときに作成することが義務付けられているところ、原則として、罪種や事案の軽重を問わず、身柄を拘束されていない被疑者又は被告人を取調べ室又はこれに準ずる場所において取り調べたときにも作成することを義務付ける。


  2. 取調べ時間の管理の厳格化


    (1)取調べは、やむを得ない理由がある場合のほか、深夜に又は長時間にわたり行うことを避けなければならない旨を犯罪捜査規範に規定する。


    (2)次に掲げる場合には警察本部長又は警察署長の事前の承認を受けなければならないこととするなど、取調べ時間の管理に関する所要の事項を国家公安委員会規則に規定する。

    1. 午後10時から翌日の午前5時までの間に取調べを行おうとする場合

    2. 休憩時間等を除き、1日当たり8時間を超えて取調べを行おうとする場合



  3. その他適正な取調べを担保するための措置


    (1)取調べ室の設置基準の明確化

    取調べ環境を国民に対して明確にするため、取調べ室の設置基準を犯罪捜査規範に規定する。


    (2)取調べ状況の把握を容易にするための施設整備の一層の充実

    取調べ状況を外形的に把握することができるようにするため、すべての取調べ室に透視鏡等の設置を図るとともに、取調べ室への入退室時間を電子的に管理するシステムや取調べ状況報告書等の記載内容を電子的に把握するシステム等の整備を推進する。


  4. 捜査に携わる者の意識向上


    (1)適正捜査に関する教養の充実

    新たに捜査に従事することとなる警察官に対しては、原則として、各都道府県警察の警察学校において部門別任用科課程を実施し、捜査員として必要な専門的知識・技能の修得を図っているところであるが、司法制度改革等に的確に対応し適正な捜査を推進するため、同課程におけるカリキュラムを見直し、適正捜査に関する教養の充実を図る。
    また、適正な取調べを推進する観点から、取調べに係る指導的立場にある警察官に対する教養の充実を図る。


    (2)具体的事例に基づいた実践的な教養の実施

    警察大学校特別捜査幹部研修所において、取調べを始めとする各種捜査手法の実践的な教養の在り方について研究し、その成果を都道府県警察に還元し、活用を図る。


    (3)技能伝承官の活用

    次代を担う捜査員に対し、取調べを始めとする各種捜査の手法や適正捜査の在り方を的確に伝承するため、取調べ等に関し卓越した技能を有する捜査員については、退職後においても非常勤職員として採用し、又は再任用することにより、技能伝承官として活用を図る。


    (4)弁護士を始めとする法曹関係部外講師の積極的な招聘(へい)

    都道府県警察における教養では、従前から、教養内容に応じ、部外講師の招聘が行われてきたところであるが、取調べに関する教養に当たっては、これまで以上に弁護士等の法曹関係部外講師を積極的に招聘し、弁護士等からみた警察捜査、とりわけ取調べについての問題意識を醸成し、適正捜査に係る意識の向上を図る。


    (5)人事上の措置


    1. 勤務成績の処遇への的確な反映

      能力、実績に応じた人事管理を推進するため、取調べ官等職員の勤務成績の昇任、給与等の処遇への一層的確な反映に努める。

    2. 積極的な表彰の実施

      取調べ官等職員が旺(おう) 盛な士気を維持しつつ職務に精励するよう、取調べ官等職員の功労を適切に評価し、表彰を一層積極的に実施する。

    3. 懲戒処分に係る行為類型の明確化

      監督対象行為に関し、懲戒処分の対象となり得る行為の類型を明確化する。

    4. 監督対象行為を認めた場合の厳正な対処等

      監督対象行為を認めた場合は、諸要素を総合的に考慮して、懲戒処分を始めとする厳正な措置を講ずるほか、取調べの一層の適正化を図る観点から、所要の業務上の指導を実施する。

    5. 能力及び実績に応じた適材適所の人事配置の推進

      取調べ等の捜査活動を適正かつ能率的に実施するため、職員の能力及び実績を的確に把握し、より一層客観的かつ公正な勤務評定を行うよう努めるとともに、その結果に応じ、適材適所の人事配置を推進する。


警察捜査における取調べ適正化指針 (警察庁)
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/sousa/torishirabe/tekiseika_shishin.pdf





現場の警察官がたまたま指針を逸脱してしまうっていうなら、まだ分かる。




巨大組織なんだから、末端まで統制できない部分もあるだろう。




しかし、捜査の結果を刑事裁判手続で否定され、その上、国家賠償訴訟になった段階でさえ、自分たちの非を認めないというのは、

 自浄作用が機能していないこと

を自白しているようなものじゃないですか?




現場の警察官とか警察署長とかを通り越して、大阪府警として裁判やってるわけですよ。




この指針にしたって、警察本部レベルで監督することになっているのに、府警本部までもが現場の警察官の擁護に回ったら、

 いったい誰が指針を守るんだ?

ってことになるんじゃないかな。




まさしく、

 絵に描いた餅

ですな。









posted by hatena at 05:00| カイロ | Comment(0) | 警察裁判例 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年09月15日

宮本常一『日本人を考える』





宮本常一/日本人を考える 歴史・民俗・文化/河出書房新社/2006





目次

  • 私はこんな旅をしてきた(向井潤吉)

  • “夜這い”こそ最高の結婚教育(大宅壮一)

  • 地方人意識の変貌(浦山桐郎)

  • 日本人(草柳大蔵;臼井吉見)

  • 庶民の生活と文化―歴史のなかの江戸時代(速水融)

  • 逃げ場のない差別のひだ(野間宏;安岡章太郎)

  • 日本の子育ての知恵を訪ねて(青木一)

紀伊國屋書店
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784309224497

旅する巨人・民俗学者で座談の名手だった宮本常一がさまざまな日本の歴史・民俗・文化を考える。テーマは、差別、庶民生活、子育て、旅など。対談相手は安岡章太郎、野間宏、大宅壮一、速水融など。

出版社のページ
http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309224497/





宮本常一くん第2弾であります。





前回は、こんなネタでした。






『話といっても理窟をいうのではない。
一つの事柄について自分の知っているかぎりの関係ある事例をあげていくのである。』p17



寄り合いの参加者は延々と世間話をしているのだが、当人たちにとっては「公私の公」、立派な役目である。


別の村では、寄り合い参加者が、夏であるのに、羽織を着て集まっている。


だらだらおしゃべりしていることが仕事という感覚。


この文章の最後に、宮本くんは、次のように結論づけている。


郷士・百姓といった身分関係や、百姓・小作といった経済関係が入り組んだ小さな村の中では、最終的な結論が村の関係にしこりを残さないよう、寄り合い参加者が当たり障りのない体験談を話していき、性急に結論を求めず、最後の最後に最高責任者に決を採らせる、というスタイルが定着したのではないか、と。


宮本常一『忘れられた日本人』 2017年04月22日 (このブログの記事)
http://syotogen.seesaa.net/article/449069622.html





今回は昭和40年代に行われた対談集。





前回とのつながりで言えば、「日本人」というタイトルの対談(鼎談)。





長野や新潟と違って、大阪や瀬戸内地方のような開墾しつくされた地域では、土地の所有がゼロサムゲームになる。




すなわち、地主が新たに生まれる結果として、それまで自作していた百姓の誰かが土地を失うことになる。




これは、村の共同体を維持していく見地からは好ましくない。




だから、そんな結果を招くくらいなら、みんな平等に貧乏したほうがいいじゃないか、と。




 「隣の家に蔵が建つと腹が立つ」

という言葉は、妬みを表現したものではなく、隣の家が豊かになったその裏側で、貧しくなった人が生まれたことを意識したものだ、と。




だから、村社会の構成員はガツガツ金儲けしない反面、ヨソから移り住んできた人たちは、旧来のシガラミにとらわれずに金儲けをするから地主になっていく云々(pp70-71)。




前回紹介した村の寄り合いについてもそうだけど、村という社会がその同一性を保っていく裏側には、明示的・黙示的なルールがある。




そうしたルールで縛られることによって社会は、安定というか停滞というか、定常的になる。




それは行事への参加や、冠婚葬祭での振る舞い方や日常での挨拶の仕方などの「箸の上げ下ろし」まで規律するようになる。




現在でも、過疎化が進む地域は、自分たちで過疎化のスパイラルを加速させている部分があると思う。




過疎化が進んだ地域は、転居者が少なく、地域に根づいた慣習が大きく残っている。


そして、これが障壁となって転入を阻む、悪循環になる。


では、このスパイラルのなかで行政にできることがあるかと言えば、たぶんない。


中立的な価値を前提としている限り、住民文化を変えられる可能性はゼロである。


せいぜい住民の下僕として、アゴで使われて障壁の一部に取り込まれるだけだろう。

橋本英樹『あなたの町からお寺が消える理由』 2017年07月01日 (このブログの記事)
http://syotogen.seesaa.net/article/450051460.html

その土地ありきで話が進むから、住民自身は全肯定されてしまう。


その端的な例が、地域おこし協力隊。


著者は、多くの失敗があっても一部が成功すればいい(p221)みたいなことを言っているが、それは過疎地の側の論理であって、ほとんどの失敗事例の、当事者である応募者と、その費用を負担する他の国民にとっては、アホな政策でしかない。



地域おこし協力隊「失敗の本質」 竹やりによる突撃を繰り返さないために 村楽

一般社団法人村楽
http://www.sonraku.org/
https://www.facebook.com/sonraku/photos/a.585849434838881.1073741828.110391135718049/585849464838878/?type=3



フェイスブックで読めないので、引用しているページから部分的に読んでね。



地域おこし協力隊の「失敗の本質」に共感しすぎてやばい!協力隊応募者必読! (takahirosuzuki.com)

https://takahirosuzuki.com/2015/0124112803


地方創生・若手官僚派遣(シティマネージャー)が学んでほしい、地域おこし協力隊「失敗の本質」(長坂尚登)(ビッグイシュー・オンライン)

http://bigissue-online.jp/archives/1018095172.html


地域おこし協力隊「失敗の本質」をしないための釜援隊の仕組み〜導入編〜 (三陸くらしとエネルギー工房)

http://kuraene.net/20150205/523


山下祐介「地方消滅の罠」 2017年09月23日 (このブログの記事)
http://syotogen.seesaa.net/article/450745089.html





しかし、社会が動いていれば、外部からヨソ者が入ってくる。




現代のように、過疎地域から一方的に人が流出するのは、田舎での生活が成り立たなくなったから(p46)。




人口が増加し、経済が成長・循環していれば、田舎であっても、土地を離れた人たちが舞い込んでくるものらしい。




というか、人は土地に根付いてるものだというのも、一つの幻想だろう。




その結果、従来の関係を維持する装置は、部分的に突破される。




宮本くんの調査では、200戸くらいの村で250年間続いた家は50戸くらい(千葉県)とか、対談当時60戸程度の集落で江戸時代以来続いているのは11戸(岡山県)とか、そんなものだとか。(p39)




つまり、村の構成員の意図にかかわらず、ある程度の社会移動が起こっている。




地元民にとっては不本意であっても、これがその社会を活性化する源なんだろうね。




こうして村社会に新規参入した人に対しては、その次に村の中の身分のランク付けがされるらしい(p129)。





『そのよそ者を自分らの村の中でどう位置づけるかということは、村落社会に住んでおる人たちにとっては、非常に大きな意味があった。それをどう取り扱うかによって、自分らがその人たちに支配せられるか、その人たちを支配するかが決まるわけですから。』





宮本くんの文章のおもしろいのは、こういう社会学的な見方を含んでいるところだと思う。




上から目線の評論家じゃなくて、自分がそこに住んでいたらどういうルールが適用されるのかっていう視点を忘れない。




だから、民話や民具みたいな「いかにもな民俗学」に興味のない門外漢でも、結構楽しく読めてしまうのである。




それなのに、本書の副題である

 「歴史・民俗・文化」

ってアホすぎるだろ。




宮本くんの本なんだから「民俗学」がテーマであることはわかりきっているし、その「民俗学」が「歴史」や「文化」から切り離されて成立することもない。




対談集だから、主題を広めにとって「日本人を考える」というのは、まだわかる。




しかしそれなら、抽象的な「主題」を「副題」で具体化しなきゃいけない。




「日本人」の「何について」「考える」のかを。




 「歴史・民俗・文化」

では何も語っていないに等しく、こんな副題を付けた編集者は猛省すべきだと思う。




本書をある程度のまとまりで示すなら、「人の移動と定着」って感じかな。




被差別部落を「定着」と言ってしまうのは適切ではないかも知れないけど。




固定的と思われている社会が案外流動的だったり、社会が固定的だと思われていることを裏付ける事実として流動的な人々がその土地に根付いたり。




アチックミューゼアムつながりの網野善彦くんが中世史の分野で人の移動に注目したみたいに。




宮本が所属したアチックミューゼアムは、後に日本常民文化研究所となり、神奈川大学に吸収されて網野善彦の活動の場となった。

宮本常一 (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%AE%E6%9C%AC%E5%B8%B8%E4%B8%80

中世の職人や芸能民など、農民以外の非定住の人々である漂泊民の世界を明らかにし、天皇を頂点とする農耕民の均質な国家とされてきたそれまでの日本像に疑問を投げかけ、日本中世史研究に影響を与えた。
また、中世から近世にかけての歴史的な百姓身分に属した者たちが、決して農民だけではなく商業や手工業などの多様な生業の従事者であったと主張した。

網野善彦 (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B6%B2%E9%87%8E%E5%96%84%E5%BD%A6





土地にへばり付いた農民が代々住んでいるなんてのは、都会に住んでいる現代人の幻想である。




そのあたりは、本書の対談者の一人である、歴史人口学の速水融くんが書いているところ。





速水 融
(はやみ あきら、1929年10月22日 - )
は、日本の経済学者。
国際日本文化研究センター名誉教授、慶應義塾大学名誉教授、麗澤大学名誉教授。
経済学博士。
歴史人口学、日本経済史専攻。
文化勲章受章者。
日本に歴史人口学を導入したことで知られる。
また「勤勉革命」を唱え、世界における勤勉革命論のきっかけを作った。
英文著作も刊行している。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%9F%E6%B0%B4%E8%9E%8D#%E6%AD%B4%E5%8F%B2%E4%BA%BA%E5%8F%A3%E5%AD%A6





そうした社会学的な視点を同時代に当てはめると、こんな感じになる。





『東日本というのは、農村が固定しましょう?昔でいえば小作ははじめから小作だし、その子供も小作です。小作意識をはじめからもっている。旦那、親方には頭を下げる。都会へ出ても、自分は煙突掃除なら煙突掃除でそれ以上のことはあまり考えない。そういうものとして自分を固定化してしまうんです。』 pp34-35





日本中を旅してきた宮本くんがいうのだから、そういう傾向はあるんだろう。




しかし、こういう決めつけは好きじゃないな。




そのへんのオッサンのたわ言と変わらないじゃないですか。




宮本くんしか持っていない知識・経験があるんだから、

 「関東地方の村に泊まったときに、そこの出身者たちが東京でこういう仕事をしていると聞いた」

とか

 「大阪の家庭ではこういう教育が行われている」

とか、裏付けのストックを出すべきじゃないか、と。




似たような記述として、こんなのも。





『 大和、河内、和泉、あのあたりはなにをしてもメシが食えるところだから、親も子も勉強しないんです。学歴がみんな低いんですね。』 p8





いくら宮本くんでも、印象だけで語るってのはなぁ・・・。





osaka.gif


都道府県別中途退学者数及び中途退学率(国公私立高等学校) 平成26年度 (e-Stat 政府統計の総合窓口/児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査)
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000031316573&fileKind=0

sygkbnp.gif

chgkbnp.gif


全国学力・学習状況調査において比較的良好な結果を示した教育委員会・学校等における教育施策・教育指導等の特徴に関する調査研究 (研究代表者 田中 博之(早稲田大学大学院教職研究科)/平成22年度文部科学省委託研究報告書)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/micro_detail/__icsFiles/afieldfile/2014/02/17/1344297_012.pdf




ホンマや。




って、下2つの表は、大都市では同じような分布になってるんだけど。




このあたりは、司馬遼太郎くんがよく書いている

 「学問は田舎の仕事」

みたいなものでしょうか?





『 江戸には都会センス、都会の美意識が育ちました。やはり三百年近くも実質的な首都だったわけですから、人間の言動、服装、たたずまいといったものに非常にうるさい所になった。野暮とか粋とか、そういうことばかりを言って、江戸っ子は暮らしてきました。
 学問は三百諸侯が、つまり田舎が受け持ちました。お侍が勉強すると、町人百姓がまねをして学問をする。いい藩になると、精密時計のような学問文化を残しています。』 p164

司馬遼太郎/司馬遼太郎全講演 [2] 1975-1984/朝日文庫/2003 (松山の子規、東京の漱石)

河井継之助が率いた北越戦争(戊辰戦争の一つ)で敗れた長岡藩は、7万4000石から2万4000石に減知され、実収にして6割を失って財政が窮乏し、藩士たちはその日の食にも苦慮する状態であった。
このため窮状を見かねた長岡藩の支藩三根山藩から百俵の米が贈られることとなった。
藩士たちは、これで生活が少しでも楽になると喜んだが、藩の大参事小林虎三郎は、贈られた米を藩士に分け与えず、売却の上で学校設立の費用(学校設備の費用とも)とすることを決定する。
藩士たちはこの通達に驚き反発して虎三郎のもとへと押しかけ抗議するが、それに対し虎三郎は、

「百俵の米も、食えばたちまちなくなるが、教育にあてれば明日の一万、百万俵となる」

と諭し、自らの政策を押しきった。

この米百俵の売却金によって開校したのが「国漢学校」であり、洋学局と医学局が設置された。
この学校は士族によって建てられた学校であるが、一定の学力に達した庶民の入学も許可された。
国漢学校は、現在の長岡市立阪之上小学校、新潟県立長岡高等学校の前身となった。
なお長岡藩江戸上屋敷にも国漢学校があり、長崎に医術の修行のため内地留学も出していた。

米百俵 (Wikipedia)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%B3%E7%99%BE%E4%BF%B5





全国的な位置付けは知らんけど、福沢諭吉くんが地元(生まれは大阪)の中津藩(大分)について書いている。





又当時世間一般の事であるが、学問と云えば漢学ばかり、私の兄も勿論漢学一方の人で、只他の学者と違うのは、豊後の帆足万里先生の流を汲んで、数学を学んで居ました。
帆足先生と云えば中々大儒でありながら数学を悦び、先生の説に、鉄砲と算盤は士流の重んずべきものである、その算盤を小役人に任せ、鉄砲を足軽に任せて置くと云うのは大間違いと云うその説が中津に流行して、士族中の有志者は数学に心を寄せる人が多い。

福翁自伝 (青空文庫)
https://www.aozora.gr.jp/cards/000296/files/1864_61590.html






江戸時代はこんな感じだったらしいけど、明治に入ると、その役割が逆転する。




新政府が学校を都市(化したい官軍の地元)に設立したからである。





 一方、賊軍とされた幕府側は憂き目を見ます。その代表が会津藩です。会津藩には日新館という、全国有数の藩校があり、その中には医学校もありました。しかしながら、日新館は戊辰戦争で焼失し、その後、再建されることはありませんでした。藩主松平容保は鳥取藩預かりの禁固刑となり、跡を継いだ嫡男容大は陸奥国斗南(青森県むつ市)に移封されます。福島県に医学校ができるのは、1944年の福島女子医専(現福島県立医大)の設立まで待たねばなりません。人口204万の福島県に、医学部は1校しかなく、人口当たりの医師数は全国平均を大きく下回ります(全国38位)。そして、2006年には医師不足の象徴的事件である福島県立大野病院事件が起こりました。

『絶望の中の希望~現場からの医療改革レポート』(JMM 記事)より (今後の医学部入学定員の在り方等に関する検討会(第5回) 配付資料/資料3―2 上昌広氏ヒアリング資料/文部科学省)
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/043/siryo/__icsFiles/afieldfile/2011/06/02/1306251_4_1.pdf





江戸時代は地方分権的な幕藩体制だったのが、明治になって中央政府ができると、カネが吸い上げられる反面、政策と政治家は中央から降りてくるようになる。




こうなると、それまでの「学問文化」も廃れていくだろう。





つまり、上の分布図が示しているのは、こういう歴史の結果、ある程度の平準化につながったってことかな。




宮本くんの言い分を検証するには、「学力と学校カースト」とか「学歴と収入分布」とかの社会学的な資料が必要だろうね。




とにもかくにも。





で、本書を「人の移動と定着」というキーワードでまとめるなら、田舎から都会へ移り住んだ人々の定着も、その一部と言える。




田舎から都会へ出ていくと、そこで土地を買って家を建てる。




当たり前のように思えるけれども、宮本くんは、

 『あの住み方というのは農村の延長以外のなにものでもない。』(p55)

という。




地域の一部を所有することによって、住民には地域共同体を維持管理していく責任が生じ、それによってコミュニティが保たれるのだ、と。





『そして今、次第に土地も家も持たない人が増大することによって、考え方というのは幅ができてき、同時に土から離れた一箇の社会人としての考え方が生まれてきはじめている。そういう変化が、さきほど申しましたように、昭和三十五年ごろから起こりはじめたのではなかったろうか。』p56





いつものように調べてみたんだけど、さすがに昭和35年までは遡れませんでした。




それから、宮本くんは「土地を買って家を建てる」ってことを象徴として語っているけれども、これをどう捉えるかで、資料の探し方が違ってくる。





東京の場合、持ち家比率は増加傾向にあるんだけど(上のグラフ)、一戸建て比率は減少傾向にある(下のグラフ)。





tkymi.gif

tkyik.png


東京の住宅事情について (東京都都市整備局)
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/juutaku_kcs/gaiyou-kikaku-h21-03.pdf





すなわち、一戸建ての持ち家は減少しているけれども、共同住宅の持ち家が増加しているだろう、と推測できる。



一戸建て共同住宅
所有典型増加?
賃貸減少?増加?




で、宮本くんがどれについて言っているかだけれど、社会党の今村等くんの発言を紹介して


『そういうように地につけておけば、地域社会というものを頭において、みんなが行動するけれど、アパートに入れてしまうと、みんな土から離れてしまって、そして今までのようなことで、みんなを統制し、あるいは統率していくということは不可能になるのじゃなかろうか』 (p57)

と言っていることから、「一戸建て」と「共同住宅」という区切りで考えているらしい。




今村 等
(いまむら ひとし、1892年3月23日 - 1979年11月1日)
は、日本の政治家。
衆議院議員(4期)。
労働運動家。

Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BB%8A%E6%9D%91%E7%AD%89





そして、全国的にも、「一戸建て」から「共同住宅」へって流れは、あるんだろうね。




「持ち家率」(「一戸建て」「共同住宅」含む)はそんなに変わってないのに、「共同住宅」はどんどん増えているんだから。







平成20年住宅・土地統計調査の解説 > 2-3 住宅の所有の関係 (総務省統計局)
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2008/nihon/2_3.html

ttktsii.gif


平成25年住宅・土地統計調査 速報集計 結果の概要 平成26年7月29日 (総務省統計局)
http://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2013/pdf/giy00.pdf





そうすると、現在の日本っていうのは、宮本くんのが危惧するような、「土から離れた一箇の社会人としての考え方」になってきているってことかな。




でも、これってそんなに悪いことじゃないと思うんだけどね。




最近でもいろいろと明らかになっている「組織的な不祥事」なんてのは、終身雇用という「土地」に根付いた生き方が擬似的な村落共同体を成り立たせていたんじゃないかな。





 決裁後の文書を変更すれば、虚偽公文書作成など刑法上の罪に問われる可能性がある。そんな危険を冒すことは、よほどの圧力でもない限り、あり得ないことです。

文書改ざん「忖度はるかに超えた行為」 法大・小黒教授 2018年3月16日 (聞き手・編集委員 駒野剛/朝日新聞)
https://www.asahi.com/articles/ASL3G4PSRL3GULZU007.html

海上自衛隊幹部は「陸自幹部のだれかが問題をこれ以上大きくしたくないと思い、報告を上げなかったと考えるのが自然だ」と推察。「行政文書が国民のためのものだという意識がないのだろう。根本から意識を変えないと同じことが繰り返される」と指摘した。

【陸自イラク日報問題】防衛省幹部「またか」 小野寺氏、表情険しく 2018.4.5 (産経ニュース)
https://www.sankei.com/affairs/news/180405/afr1804050002-n1.html




本書がテーマにしている「定着」って意味では、「農村の解体」の裏側で起こった「雇用関係の増加」って事実によって、日本人の意識は、実際には何も変わらなかったのかも知れない。




それは、日本中の農山漁村を歩き続けた宮本くんだからこそ、逆に、組織に縛り付けられた人々の意識に疎かったんだと思う。




宮本くんを礼賛する人が多いけれども、

  • 「宮本くんが見たもの」と

  • 「宮本くんが見なかったもの」と

をつなげる視点が必要なんじゃないかな。






なんとなく、まとめてしまった・・・。





しかし、書きたかったのは、こういうことじゃない。





「さつまいも」について書きたかったのだよ。




別の本で仕切り直そう。





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2018年09月14日

第5回 コーポレート・ガバナンス・システム研究会




CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)(第5回)‐議事要旨

日時:平成28年10月20日(木曜日)8時00分~9時45分
場所:経済産業省本館17階第1特別会議室

出席者

神田座長、青委員、石田委員、岩井委員、江良委員、大杉委員(9時30分途中退席)、大場委員、川村委員、後藤委員、佐久間委員、小林委員、澤口委員、武井委員、寺下委員、松元委員、御代川委員、柳川委員(9時00分途中退席)、竹林参事官、田原課長
(欠席:伊藤委員、大宮委員、翁委員、神作委員、冨山委員、藤田委員)

議題

取締役会の役割・機能(2)、指名・報酬の在り方(1)

議事概要

はじめに、本日の資料・議事等の公開について、資料2記載のとおりとすることについて委員の了承を得た。
次に、事務局より資料3の前半部分(39頁まで)の説明を行い、続いて、寺下委員より、資料4の説明が行われ、その後、討議を行った(討議(1))。
その後、事務局より資料3の後半部分(40頁以降)の説明を行い、再び討議を行った(討議(2))。討議の概要は以下のとおり。

討議(1)(資料3前半部分・資料4の説明後)




佐久間委員

  事務局と寺下委員からの大変貴重なご説明に感謝申し上げる。
このアンケートは非常に素晴らしい。
今まで、ここまで徹底したものはあまりなかったと思われるので、大変貴重なデータだと思う。
その上で、やはりこれからの整理をしていく上で、お願いしたい点がいくつかある。


 まず、取締役会の構成や、取締役会の議事進行等々を考える際には、当然、監査役の存在が非常に大きい。特に監査役会設置会社においては、監査役は取締役会の重要な出席者であり、場合によっては取締役の数より多いこともあるし、実際、日本の場合は監査役の中に占める社外監査役の数は非常に多い。したがって、社外監査役を意識した上で整理をしていただきたい。

 次に、委員会設置会社と監査役会設置会社では、取締役と執行との関係が違うので、ぜひそこも整理した上で分析をお願いしたい。

 加えて、若干個別の問題だが、資料3の35ページについて。取締役会の実効性評価は、あくまでも取締役会が行うというコーポレートガバナンスの原則になっている。実効性評価を社内事務局が行っている企業が最も多いというのは、実効性評価の事務をどこがやっているのかという次元の問題で、さすがに取締役が自分で資料を作って取締役会に報告するというのはあり得ないから事務局が行っているということのはずである。しかし、実効性評価を社内事務局が行っているという言葉だけをとらえると、日本のほとんどの会社で取締役会が何もしておらず事務方が勝手にやっているととられかねないので、そこは気をつけていただきたい。

江良委員

  事務局がまとめていただいたアンケートは本当にすばらしいと思う。
それを踏まえて質問したい。
母集団についてだが、私の印象だと、事業特性や企業規模によって取り組みや対応に違いがあるように思うが、このデータはどういった企業を中心に調査されているものなのか、ご紹介いただけるとありがたい。


事務局

  このアンケートは、1部、2部上場企業約2,500社に満遍なくお願いした結果、大体35%の回答率となっており、業種のばらつきは多少あるがあまり偏ってはいない。
その上で、今ご指摘いただいたような、どういう属性の会社だとどういう回答になっているというクロス分析は、事務局でこれから工夫してみたいと考えている。


後藤委員

  今後さらなる分析を進められるということで、要望を申し上げる。
業界の特性ごとに何か見えてくればそれはそれで非常に面白いと思うが、コーポレートガバナンスは企業ごとにどのようになっているかというのが結局重要だとすると、業界ごとにみるだけでなく、本当は企業ごとにみなければいけないはずである。
例えば、この1年で社外取締役を増やした企業は取締役会評価についてどのようにしているのかだとか、付議事項をどのように書いているのかといった項目ごとの関連性が重要であって、さらにそれが業界ごとで違いがあったりしたら、それはそれでまた面白いと思う。
800社以上の回答があれば、しかるべき能力を持たれている方であればそういう分析もできるのではないかと思うので、クロスデータ分析をされるときに、各企業について項目間にどのような関係があるのかというところもわかるようにやっていただけると、非常に良いのではないかと感じている。


柳川委員

  取締役会の実効性評価のところについて。
こういうアンケートをしていくのはとても重要だけれども、先ほどご指摘があったように、実効性の評価をしていますかと聞かれると、何をやっていることを評価しているというのか、アンケートに答える側も若干難しかったのではないかと思う。
評価システムを外部に別につくっているかどうかと聞かれているのだとすると、やはり何もしていないという答えが大きくなってしまう気がする。
しかし、実際には取締役会で何を議論すべきかとか、どこまで議論すべきかということは当然議論していると思うので、何もしていないという回答についてもし追加で聞けるのであれば、実態としてどうかということを聞いておいたほうが、外へ情報を出したときに誤解を与えないのではないか。
もう1つは、取締役会評価をするために外部の第三者委員会を作っているというのは、やり方としてはありうると思うが、これを繰り返していってしまうと、第三者委員会の評価をするために第三者委員会を作っていくという、会議体、評価体がどんどん増えていくということが若干気になる。
もちろんこうやっておられる会社がどうということはない。


 その派生で少し感じたのは、多少自戒を込めて言うと、ガバナンスの話をしていると、ガバナンスをしっかり作ろうというところにフォーカスが当たるが、ガバナンスのためのガバナンスのようなことになってしまい、本来目指していたこととずれていく可能性がある。もともとコーポレートガバナンスの議論をしている目的は、経済成長だとか、企業の業績を拡大させるためであり、極端に言うと、そこが完璧にできるのであれば、ある意味で非常に軽いガバナンスの仕組みでもいいのだと思うし、形式的な部分をきっちりそろえても、業績が上がらなければ、ある意味でマーケットからも評価されないことになるので、どこかで、これが果たして企業の成長とか、経済成長とか、マーケットの評価にちゃんとつながるのかどうかというところを絶えずチェックしながら議論していかなければいけないというのを改めて感じた。

川村委員

  事務局説明資料39ページの取締役会に関連する論点だが、ここに取締役会の形態という項目を入れる必要がないかどうかという質問である。
形態というのは、指名委員会等設置会社がいいのか、監査役設置会社で任意の委員会を設けたような形がいいのかということである。
今までいろいろ例題をお聞きしていると、実際の会社の例では指名委員会等設置会社であっても業績の良くないところはたくさんある。
それから、従来の監査役設置会社の方式であっても非常によくガバナンスを構築しているところもある。
したがって、実例をみると、どんな形であっても執行側がしっかりしていれば、ガバナンスがきちっとでき、かつ企業価値の向上に重点がある運営ができるようにも思う。
しかしながら、欧米があれだけ指名委員会等設置会社に偏っているところをみると、やはり組織的に何がしか指名委員会等設置会社方式のほうがクリアカットなところがあるのではなかろうかという気もしていて、だからこの後、日本がグローバル化し、各企業が海外へ出ていって自分の説明を欧米の人にしなければいけない場合に、監査役設置会社という方式で良い実例もあるからということでいつまでも押し通せるかという問題もあると思う。
どこかで取締役会の形態に関する比較で、比較表的なもの、優劣を書いたようなものでもいいと思うのだが、そういうものでそういう形態に関する議論が今後続いていくように工夫される必要があるのではないかと思う。


武井委員

  3点ある。
1点目として、まずはアンケートについて、先ほど佐久間委員から大変有益だというコメントがあったが、約870社も回答し、大変有益なアンケートだと思う。
ここまで多く回答があったのは、事務局の方の質問の設定が良かった面があり、かなりガバナンスの実質化に資する回答が集まっていると思う。


 このアンケート結果を見ていると、多くの会社がガバナンスコード対応を1年にわたって行い、第1回取締役会実効性評価が終わり、2年目である現在は、実効性評価で見つかったいろいろな課題について中身を詰める段階に入っている企業が多いことがわかる。ガバナンス改革が形式から実質にというのが現在の大きなテーマだが、実質に向けた動きが着実に前に進んでいるということがまさに示されたアンケートだと思うので、そういったメッセージをまず総論で示していただいたほうが良いと思う。

 実際、事務局の方の質問の書き方がよかったので、一個一個の項目がガバナンスの実質化につながる問いと回答が1,000社近い上場会社からなされている。そういう意味でかなり貴重な実態把握でもあるので、政策的にもガバナンスの実質化が進んでいるという前向きなメッセージを発した上で、各論を検討したほうが良いと思う。

 2点目は、集中的にコメントが出ている35ページの実効性評価のところであるが、私も柳川委員・佐久間委員と同じ印象を持っている。実施していないという回答は多分回答者の意識の問題であり、本当に実施していないとは思えない。何らかの評価はやっているものの、実効性評価とまで硬いことを言われるとどうかな、と思った企業もあったのだと思う。35%といっても、エクスプレイン中で今検討している段階かもしれないし、その他いろいろな事情が混じっていると思うので、3割が評価自体をしていないという結論ではないように思う。取締役会評価は、取締役会が機能しているかどうかは会社自身が考える必要がある。第三者評価のパーセンテージが低いことは何らネガティブな話ではなく、第三者に手伝ってもらうことはありえても、最終的な評価自身は会社自身が行うことであり、外部の第三者が行っていると回答した企業が4%であることを悪くみるのは良くないという柳川先生の意見に賛成する。

 3点目だが、寺下委員のカンパニーセクレタリーの話も大変重要な指摘だと思う。ガバナンスコードができたときに、ガバナンスコードの対応を実際にどこの部署がやるのかは、企業によって異なり、実際どこがやるのかわからなかった企業も多かった。

 企業の中にガバナンス担当部署というものが置かれていないということに企業も気づきつつある。担当部署が置かれていないということは、人とお金がついていないということでもある。ガバナンスコードの対応を、どこかの部署で行う例もあれば、横串を刺していろいろな部署が協力して行う例もある。名前をカンパニーセクレタリーにするかどうかは企業によると思うが、こういったガバナンス担当部署という意識を持つことの問題指摘は確かに重要だと思う。ガバナンスコード第5章のところでIR、株主との接点については横串を刺した社内の体制を作りましょうとあるが、その発展型として、ガバナンス担当部署についても横串を刺しましょうという問題提起として重要だと思う。

小林委員

  2つ簡単に意見と質問を述べたい。
1つ目は意見だが、事務局説明資料9ページの統合報告書とか、8ページのコンプライアンス報告書などに関連して、財務情報は定量的に評価して数字で報告できるが、統合報告書の非財務情報となってくると極めて定性的であり、これをどういう方向で比較可能に一部定量化していくかが問題となる。
フェアに評価するという意味では、IIRC(国際統合報告評議会)のフレームワーク的なまとめ方がいいのか、あるいは日本独自の体系にまとめるのかは別として、やはり徐々に定量化の議論が必要になってくると考える。


 2つ目は質問で、川村委員のご質問・ご意見とも絡むが、非常に良いアンケート結果がこれだけそろっているので、3つの会社の類型と、色々な評価結果を分類、分析して、会社のパフォーマンスはやはり3類型のいずれかによって相当差が出ているのか、あるいは類型による差はさほどないのか、この辺を知りたい。

大杉委員

  寺下委員からカンパニーセクレタリーのご紹介があった。
これは日本でいう取締役会事務局、秘書室とか、財務、法務、IRなどをまとめたようなものだが、日本ではなかなかそうなっていないという点をご説明いただいたのを聞いて、前々回のこの会議での三菱重工さんのお話を思い出した。
私の記憶で言うと、取締役と執行役員の役割を分離することと、取締役会にCFOやCTOを入れ、事業部長は外すとした上で、取締役会の下の経営会議には事業部門の長を入れるとともに、さらに法務部長も入れるというようにやっていくという話があったけれども、企業からいらしている委員の方々に、それぞれの会社でカンパニーセクレタリー的な、つまり事務局のみならず、財務、法務、IRなどを統合していくような工夫をどのようになさっているかを教えていただきたい。
もちろん、今日説明していただくのはなかなか難しいかもしれないので、今日あるいは次回以降で、ご無理のない範囲で委員の方に教えていただきたい。


佐久間委員

  コメントの前に、今の大杉先生のご質問について、私がいる新日鐵住金のお話をしたい。
コーポレートセクレタリーに対応する部として総務部があり、そこでこの全てをやっていた。
ただ、グローバル化とともに法務的な仕事のボリュームが非常に増えたので、組織としては法務部がつい最近分かれたのだが、つい最近まで法務部も総務部の中にあったので、一元的に総務部が全てやっていたということである。
ただし、今回のコーポレートガバナンス報告書にあるように、株式の相互保有などについては、どうしてもフィナンシャルコミュニティーとの付き合いがあるので、財務も一緒にやっているということにはなるが、窓口という点では総務部に完全に一本化されている。
その中に、先ほど寺下委員が整理されていた全ての機能が入っているということである。


 次に、コメントであるが、先ほど私が申し上げた、監査役会設置会社がやはり多いという現実を考慮していただきたい。具体例を言うと、事務局説明資料の21ページの取締役会の構成の中に社外取締役の数が書いてあるが、これが横文字になると、単純に社外役員は3名以上が4割ということになるが、これだけの会社であれば、普通、社外監査役の方が3名から4名おられるので、実際は社外役員が7名いる会社が4割だということだと思う。そこが誤解のないように整理していただきたい。特に、モニタリングをどちらかというと重視する今の議論からすれば、まさに監査役はモニタリングを専門にしている機関だから、社外監査役の方をここに入れないというのは非常に実態を表していないということである。それから、実態的にも社外監査役の方の多くは、社外取締役の方と同じ目線で取締役会でご発言されていることが多いのではないかと思うので、そのことを一言加えさせていただきたい。

御代川委員

  私も一企業の紹介になってしまうと思うけれども、取締役会の構成について、たまたま当社は社外取締役が半数以上と回答した約1割の中に入っていて、社内取締役が2名で社外取締役が4名となっている。
社内がマイノリティー、社外がマジョリティになるので、取締役会の雰囲気は社外取締役が非常に発言しやすいものになっているだろうと思っている。
そういう意味では、社内の人間からすると緊張感をもって説明しているということを感じる。
これは想像だが、おそらく多くの日本の企業は経営会議のある程度延長のような感じで物事が決まっていくのではないかという気がする。
一方で感じることは、社外取締役が多くなると、ビジネスに対する理解はやはり必要となるので、業界用語の解説に始まり、各企業にそれぞれ存在するであろう社内用語の解説に手間が非常にかかり、さらにビジネスについて社外取締役に十分理解いただくように説明に時間をとらなければいけないということで、取締役会事務局はやはり複数の部署からの構成でなっている。
海外は確かに寺下委員がおっしゃっていたように、コーポレートセクレタリーという役職があり、当社の米国子会社では、ジェネラルカウンセルという法務出身の人間が担っている。
多分いろいろな意味での外部に対する契約の問題とか発信とか、いろいろなことに対して経験を積んだ人がなると思うけれども、そこまでは一気に行くのは少し難しいかなということがある。
やはり社外取締役への説明は増えれば増えるほど、企業は心していかないと、なかなか議論が活発にならないという印象を持っている。


石田委員

  寺下委員ご指摘のコーポレートセクレタリーについてだが、私たちが議案を分析する際に内容がわからないときに会社に電話する。
特に去年などはそうだったが、新しいタイプの報酬議案が出てきたときに、複雑なので会社に電話するのだが、会社に電話してもわからないことが結構ある。
社長の報酬は秘書課や、人事部や法務のようないろいろな部局が関連していて、なかなか回答を得ることができないことがある。
外部から質問があったときに、すぐに答えられる部局があるというのは、これから重要になると思う。


小林委員

  当社(三菱ケミカルホールディングス)の実情は、新日鐵住金さんとほぼ似ており、寺下委員提出資料の4ページでいう財務部のファンクションを除くと大体みんな総務が絡んでいて、総務の中に法務という相当スペシフィックな専門家集団を置いている。
よって、コーポレートガバナンスに関する対外窓口はやはり総務で、資本政策とかそういった個々の各論については、当然窓口の総務で受けて、財務などの部署に回す形になる。
また、取締役会等の事務局的機能は完全に総務が担っている。
監査委員会等への連絡や、議論のための情報共有も完全に総務がやっている。
一方、指名委員会と報酬委員会は人事が担当しているが、当社も来年の4月に向けて、人事と総務を一緒にしようかとか、法務は独立した部署として総務の外に出そうかとか、いろいろ議論している中で、今回の議論を参考にさせてもらおうと思っている。


武井委員

  御代川委員の話を聞いて1点思った。
事務局説明資料15ページに、3Dの4象限になった表があるが、それとの関係で1つ大事なのが、31ページ以降にある付議事項の見直しである。
特に、経営会議の繰り返しの取締役会では意味がないという問題意識、経営会議の議論とどう違って、社外取締役がいる会議体で何を議論する意味があるのかという問題意識がかなり浸透しつつある。
経営会議とは違う議論あるいは議論の深み、アジェンダなどの違いをどうするかということにかなり実務の関心が寄せられつつある。


 経営会議の繰り返しではない取締役会のあり方は昔から監査役会設置会社の大きな課題だったわけだが、そこを見直す動きが最近実質化しつつある。中長期の経営戦略などは1つの大きなアジェンダであるし、ガバナンスコードでも、基本原則4-1で、経営計画について、あえて主語が取締役会になっていたと思うが、取締役会できちんと議論してくれとなっている。そういった問題意識が浸透しつつあるというのが事務局説明資料の31ページなどに出ており、こうした点もガバナンスの実質化が進みつつある重要な証左だと思うので、そこも追加で指摘しておきたい。

柳川委員

  寺下委員からお話が出ていたカンパニーセクレタリーの話だが、ご議論があったように、ポイントは2つあるのだと思う。


 1つは、要するに窓口の一本化で、ここで全部話は済まなくてもいいのだけれども、ある種のワンストップの話と一緒で、まずそこへ声をかけるといろいろなところへつないでくれて、全部外側からわかる。こういうものがないと、外から情報にアクセスしたときになかなか難しいというのがポイントの1つだと思う。

 ポイントは多分そこだけではなくて、形式的に誰か窓口に1人いればいいという話ではなく、株主との対話のところの統合戦略が必要だという話なのだと思う。窓口だけの話ではなく、先ほど石田委員からお話があったように、取締役全体あるいは経営陣全体として、どういう形でどういうメッセージを株主なり対外的に発信していくかという統合的な戦略をもっと練っていかないと、そういうことを期待している海外の株主に対応できなくなる。これは今までのコーポレートガバナンスの話でもある程度はできたのだと思うが、そういう形で少し整理してみたときに、やはり見えてくる重要なポイントがあるのだろうと本日のお話を伺って感じた。

寺下委員

  取締役会評価について。
我が社は取締役会評価の真最中だが、誰かが誰かを審査するということではなくて、先ほど柳川委員と武井委員が言ってくださったような、評価のポイントのプロセス、方法論を、どういうものを入れながら客観的に分析していくかがポイントである。
取締役会評価を第三者がチェックするという考え方もあるとは思うが、今の日本の実態としてみれば、評価する項目やプロセスに少なくとも最先端なものを導入していく必要がある。
要するに、身内だけで固まった中でどういう方法論でチェックしているかというところが問題であって、第三者が何点と評価することが重要ではなくて、評価の中身が極めて重要だということが今見えてきている。
実際やってみると、プロセスによって、いろいろなリスクの洗い出しなどの実効性はかなり上がっているという事実が出てきているから、評価のポイントが重要ではなくて、そのプロセスが極めて重要だという点をちょっと強調させていただきたい。


大場委員

  多岐にわたる議論が出ているが、コーポレートセクレタリーのところに焦点を当ててご意見を申し上げたい。
私が前回でも申し上げたように、この観点でも、やはりキーワードはディスクロージャーではないかと思う。


 2つのコードができて、株主と企業の対話が進んできている。そのときに何が起きているかというと、窓口がお互いに複線化していることが明らかになってきた。例えば、決算のときには決算ご担当の方がお見えになる。株主総会が近づくと総務部の方がお見えになる。それから、別の何かの大きな案件が出てくると、今度はIRの方がお見えになる。投資家も、企業を分析するのがアナリスト。それから、責任投資原則など、国連のPRIに署名したり、ESG関連の評価をするアナリストがまた別にいる。それから、株主総会のときに議案を審査する担当者がいる。このように、お互い窓口が複線化している。先ほどの石田委員の話ではないけれども、問い合わせても、どこに問い合わせていいのかという問題が現実に起こっている。

 そこで私どもは、対話をしたときに、ある企業の誰からどういう質問があってどのような回答をしたかということを関係者が見られるイントラネットのようなものを作ってみた。どういう方がどういう会話をしたかということを見える化する、そういう意味でのディスクロージャーが非常に大事ではないかということを感じている。全てこれで解決するとはとても思わないが、少なくとも相当効率的になって、同じ質問を繰り返さないとか、せっかく答えたのに、それが共有されていないということが相当防げるのではないかと思うので、参考事例としてご意見申し上げたい。



討議(2)(資料3後半部分の説明後)





佐久間委員

  アンケートのまとめにあたっての意見だが、取締役の任期が1年のところと2年のところが多分ある。
それ以外があるのかどうか定かではないが、やはり1年の場合は、ほぼ毎年開かれる総会で必ず選任されるか否かが決まる。
2年の場合はそうではないというところであり、実質的にそこは違いが出るということなので、そこにも少し留意していただければと思う。


江良委員

  事務局説明資料の43ページのあたりの、社長・CEOの指名、後継者の計画について、これは我々もよく企業にお聞きするものの、意外とまとまった整理された回答が来ないというイメージがある。
どうやったら回答を引き出せるかを工夫している。
実際にお聞きすると、社長あるいはCEO、CFOなどのトップ中のトップの選任、指名については、明確なルールを持っていない会社もあるが、むしろ明確なルールはあるもののそれを明文化していないというケースが多い。
そういったケースでは、明文化されていないのでわからないとか、特に決まっていないとアンケートで回答された企業も少しあるのかなという印象を受けた。


 2つ目は、質問の工夫に係る部分だが、社長・CEOではなくて、取締役レベル、あるいは経営幹部候補生や経営幹部をどのように育成されているかという質問をすることで実態を把握するようにしている。要は、日本企業は一般的に内部昇格が多いので、課長、部長レベルのときから教育投資をされたうえで、経営陣にそのまま上がるということが多いわけで、そういった部分のプロセスをお伺いすると、明確なお考えをご回答いただける会社も非常に多い。そのため、社長・CEOの選任のみならず、前述のとおりもう少し広い範囲で後継者の計画をどのように考えているかという聞き方をすると、また違った答えが見えてくるのではないかという印象を受けた。

後藤委員

  今の江良委員の1点目と少し関連するかと思うけれども、後継のCEOをどう選定するかというときに、わからないという回答は多分決まっているわけではないという意味なのかなと考えた。
また、社長がこの人ですというのを1人決めてきた場合には、それを覆すことはあまり多くないだろうと思われるのに対して、複数の候補者が出されると、そのうちの誰にしましょうかという話になる。
これは以前もこの場でどなたかからいろいろな例を紹介していただいたかと思う。
そうすると、複数の候補者を選定してきて誰にしましょうかというのは、それなりに皆でちゃんと審議しているように思うが、1人を連れてくると、あとはどこでオーソライズするかはさておき、事実上、社長が連れてきたというところに変わりはないような気がしている。
したがって、注目すべきであるのは、事務局説明資料44ページの選択肢の上4つと下4つの違いであり、結局、1人連れてくるというほうが多いというところなのかなという気がする。


 次に、その関連でいくと、指名委員会の答申内容が取締役会を拘束するのかどうかというところで、取締役候補者は法律上、指名委員会の決定で決まるので、拘束しないというのは、法定の指名委員会でついでに社長候補者を誰にするかを答申したときに拘束しないという意味だと思われるが、この拘束しないというのが、実際に答申をひっくり返したことがあるという意味なのか、それともその余地はあるが事実上尊重されているということなのか、何とも理解が難しいという気がしており、このアンケート結果を外部に出したときに誤解を招かないようにする必要があると思う。どういう構成の諮問委員会なのかというところとも関連するかもしれないが、そのあたりをもう少し調べられればいいのではないかという気がしている。追加調査をされる余力があるのかわからないが。

 また、報酬のところで1つ興味深いと思ったのは、事務局説明資料58ページで経営陣幹部の報酬を議論する際に何を考慮していますかという設問について、日本の企業は、業績を考慮するというのは、それはそうだという気がするし、逆に考慮していない会社が18%もあるのかというほうが驚くが、それよりも一番興味深かったのは、従業員の給与水準と比較している会社は実は4分の1ぐらいしか存在しないというところである。従来、従業員と取締役との連続性というのが日本企業の特徴の1つであるとされてきたが、ひょっとしたら日本の企業はその意識が薄くなってきているのかもしれない。どういう意味で比較しているのかということ次第なのかもしれないが。

 また、同業他社と比べていないというのも興味深い話で、他社に引き抜かれる心配はないからやっていないというだけなのか。この点も報酬の決め方や水準に影響するような気がしている。

岩井委員

  私がいる資生堂は監査役設置会社なので、役員指名諮問委員会を設けている。
当然社長の選解任については取締役会が決定すべきものだが、それに先立って、社長の選任に関して言うと、当然、役員指名諮問委員会で議論する。
役員指名諮問委員会での審議や取締役会での決議という手続きで公正性・透明性等を担保するという前提であれば、CEOが自らの後継者を指名するということは、基本的にはありだと思う。
だが、それだけに頼ることではなく、役員指名諮問委員会はCEOが有すべき資質等についてガイドラインを作っていくという使命を持っていると私は思っている。
具体的にどういうことをしているかというと、いわゆるCEO候補者が有すべき資質を明確化する等の議論を通じ、サクセッションプランニングに関与するということを役員指名諮問委員会のミッションに定めることで、CEOが指名するだけでなく、候補者についてロングリスト、ショートリストを用意していくということをやろうとしている。
それと同時に、CEOだけではなくて、社外取締役の選任についても同様のことについて議論していかなければいけないということを今ようやく始めているという段階である。


川村委員

  私も自分の会社の例でお話すると、今の社長を決めるときは、3人の候補者をCEOが示して、その3人を取締役会の場に案件の説明で出てくるようにして、取締役会の中でもいろいろな議論をして、彼はここはマルだ、ここはバツだ、ここは三角だという比較を取締役がその中でできるように、ある程度の工夫をしながら、1年間かけてやった。
1年というのは短すぎるけれども、それはたまたまそのときの事情でそのようにした。


 それで1人が選ばれて社長になったわけだが、今後はまだ非常に流動的だと思う。日本の中で比較的オープンに社長、CEOを決めていくというのは、今はまだ本当に始まったばかりだから、今後が非常に大事だと思うが、今後は育成の方法とかガイダンスを取締役会で決めて、45歳から50歳ぐらいの間にある種の候補者を10人弱選出して、それを社内外で育成するということで、取り組んでいる最中である。その育成の中には、タフアサインメントというのがあり、自分の専門の部門の中で静かに上がってきたということにしないようにということである。だから、キャリアパスローテーションをやるということだが、そういうことをある期間やって、それをある種の条件として選んでいく。

 それでも適任者が現れない場合は、社外から選ばなければいけない。社外から選ぶというときには、やはり社外取締役の役割が非常に大事になってくる。それらが全てまだ進行形だから、あまりこういうところできれいにお話しできないようなところがたくさんある。

 報酬に関しても全く同じで、日本のCEOその他の固定報酬は少し多過ぎると思っている。だが、諸般の事情で、今はまだ一挙には変えていない。けれども、日本の中でいえば、例えば証券とか、金融機関などは固定報酬が少ないようである。だから、会社ごとに比率などは大いに変わってくるが、変動部分がだんだん増えていくという格好に移っていくと思う。

 だから、アンケートの結果が非常にばらついているのは、どの会社もまだ悪戦苦闘している最中だと思う。よって、どれがいいとあまり言えないと思うけれども、従来よりはかなりオープンにやるようになってきつつあるというのは、私は自分の会社からしても、それから、ほかの会社の社外取締役をしている経験でも、実感している。いろいろな会社で取締役会に次の社長の候補者の中の1人だという人が時々登場するようになってきたから、聞くほうも、あれは候補者の1人だとわかりながら聞くというようになってきているので、質問も、本人が説明に来たプロジェクトの話に限らず、その人間の人格、識見を問うような質問まで混じってくるようになってきている。だから、今はそういう状況だということをご参考までに申し上げておきたい。

武井委員

  事務局説明資料の70ページのところに、諮問事項について、方針の策定まで委員会に担わせるかという問いがあるが、実際、社外過半数の指名委員会で選定基準を一から作るのは難しい。
というか、もともとは社内のほうで何らかの選定基準があって、それを指名委員会のほうでいろいろな形で揉むということになると思う。
原案から全部社外過半数の方が作るというより、何らかの社内の選定基準がまず先にあるのだと思う。


 さっき江良委員もおっしゃったが、そういった選定基準が明文化されていない企業が多いのだと思う。今、川村委員からもお話があったけれども、まさにどのようにしたものかということを考えていらっしゃる状態だと思う。そこで、先ほどガイドラインという話も出たが、そういった社内の選定基準をつくるのに、企業の現場にとって何らかのヒントになるような成果物を作っていくのが良いと思う。

 ガイドラインに組込む要素はいろいろあると思うが、まず実質の部分については、会社の事業によっていろいろ違うが、大体いろいろな方がおっしゃるのは、社内調整力を伴った決断力とか、変化への対応力とか、必要条件としてインテグリティー・高潔性であるとか、そういう要素が実質面で並ぶと思う。

 その上で実質面と同等に重要なのは、今、川村委員からのお話もあったけれども、その資質をどういう手続で見抜くのか、どのように審査するのかという見抜き方のプロセスだと思う。単に指名委員会に最後かければ何でもかんでもプロセスが回るという話ではなくて、どういった形で資質を見抜くような社内プロセスを経るかというところが重要な実務的視点だと思う。先ほどお話いただいた、取締役会で説明させるとか、子会社の社長をやらせるとか、そういったいろいろな工夫が各企業でなされているので、そういった実務的なことを含めたものをガイドラインに含めたほうが、抽象的にどういう人が社長にふさわしいかなどという中身だけを書くものよりも、より実務的な指名に伴う助けになる視点を提供できるように思う。そういった点をぜひいろいろな会社さんからヒアリングしていただいて、知恵の結集を作っていただければと思う。

小林委員

  事務局説明資料50ページの指名委員会の開催頻度の数値をみて、当社や、私が社外取締役を務めている会社と比較して、とても回数が少ないので、これで本当に指名委員会が機能するのだろうかという印象をまず受けた。


 いろいろと選定基準を整備すると同時に、執行役以上あたりのクラスから意見を聴いたりアンケートを取ったりすることも一つのやり方だと思う。また、私の経験だと、5人程度の指名委員が、大体5人、10人、20人といった規模で候補者の面接をして適性をチェックすると、指名委員の意見は不思議なほど一致する。やはりそういう意味で、直接会って話を聴くことが重要だ。まさに川村委員が言われたように、役員会でのプレゼンテーションで人間性の部分もチェックするというのはかなり有効ではないか。

 それと、事務局説明資料69ページにある、社外取締役に対する株式報酬とか業績連動報酬をどう考えるかという点について。これは私の個人的意見だが、やはり監督がメインである社外取締役である以上、常任の監査役や監査委員の方は別として、株式報酬や業績連動報酬は明確に外しておいたほうが、社外からの監督という固有のファンクションが明確になるのではないか。

佐久間委員

  2点ある。
まず1点は、事務局説明資料70ページの指名・報酬委員会の論点のところである。
やはり最終的には監査役会設置会社とそれ以外では、取締役候補者についての指名委員会の権限は全く違うから、そこは分けて整理していただく必要があろうかと思う。
CEOについては同じでいいと思う。


 それと、報酬のところで、常々思っているのは、日本の場合は業績部分が少ないという議論がある。ちなみに当社の場合は、役員は100%業績連動で、固定部分はないのだが、一般的にはそう言われている。ただ、これは絶対額で、単純に比較して、CEOでいうと米国は日本の一定の上場会社の20倍あるから、業績連動で大きく動いても生活に困ることはないわけだが、同じことを日本でやった場合、額は20分の1だから、生活に困るかどうかわからないが、生活は変えなければいけない。当社は業績連動なので、業績が非常に悪かったときに、役員によっては影響を受ける者もいる。

後藤委員

  先ほど小林委員がご指摘された事務局説明資料69ページの社外取締役の報酬をどうすべきかというところだが、確かに社外取締役は基本的にはモニタリング、監督のためにいるわけで、本人が業績を上げるため直接的に何かするというわけではなく、また、監督をするときに例えば利益操作のようなことを見逃すインセンティブを与えては良くないということで、社外取締役に業績連動報酬を与えるべきではないという議論もあるというのは理解している。


 他方で、昨今の社外取締役、独立取締役に期待する議論は、株主の利益の代弁者としての役割を期待しているというわけであり、そうすると、株主の利益に一番センシティブでなければいけない人は社外取締役、独立取締役であるとも言える。そうすると、例えばCEOの業績をモニタリングするに際して、社外取締役、独立取締役に株主の利益のためにモニタリングをするインセンティブをどうやって与えるかという問題もあるように思われ、その人が本当に固定額の報酬だけでいいのかというと、引っかかりを覚える。結局良いバランスはどの辺なのかという問題ではあるが、一概に排除するというのはどうなのかなという気もしている。

 ストックオプションを与えるというのは何か違うような気もしているが、社外取締役、独立取締役が長期で株式を保有するということは、長期の株主利益のことを考えてモニタリングしてくれるということで決しておかしなことではないようにも思われる。業績連動の中身次第ということではあるのかもしれない。また、これは社外取締役、独立取締役の監督機能といっているが、どういう中身の監督を期待しているのかということによる問題であり、違法行為の防止を期待するのであれば、業績連動はもってのほかということになるのかもしれないが、いわゆる攻めのガバナンスに向けた監督を期待するのだとすれば、当然に排除しなくてもいいのかなと思う。その国の経済状況によってどういう機能を期待するのかということは違ってくるのかもしれないが、社外取締役には業績連動報酬を渡してはいけないという限定的なメッセージを出すのは慎重であったほうがいいのかなという気がしている。

神田座長

  90年代の前半だったと思うが、ヨーロッパではイギリスを含めて社外取締役に業績連動報酬を払うのは良くないという議論が非常に強く、それに対してアメリカでは、社外取締役といえども業績連動報酬はありだというので、全く違う意見に分かれた。
その後、そこそこのところに収束しつつあるということではないかと思う。


小林委員

  それに関してはまさにいろいろ議論してもらったほうがいいと思う。
そういう意味で、報酬をほとんど株でもらうといった、オプションの自由度を付与するというのは1つのやり方かなと思う。
その辺はまさに会社の状況にもよると思うので、例えばコンプライアンス問題で苦しんでいる会社と、非常に業績がよくて積極的に勝負している会社とでは大分変わってくるのではないか。


 それと、業績連動報酬の基準となる業績は、今はほとんどが財務的業績か もしれないが、今後、財務と非財務を一体化した、統合報告的な戦略策定が強まっていくことを考えると、例えば財務的業績90%、非財務的業績10%といったようなやり方は考えられないか。例えば、単純に原油価格が下がったから会社が儲かってそれだけで給料を上げるというより、もう少し中長期的な観点からの非財務的業績も取り入れるべきではないか。具体的にどういうアイテムを業績と見なすかは、かなり個々の会社の状況に依存すると思うが、統合報告的な方向性をプロモートするという意味でも、非財務ファクターを例えば10%ぐらい取り入れるようなことはありうるのではないか。定量性がないので大々的に入れるのは難しいとしても。

 また、当社は5段階で業績評価をして報酬を決めているが、当社のような製造業の場合には、大きな事故やコンプライアンス問題を起こしたら、たとえどんなに財務のパフォーマンスが良くても最低評価として、ボーナスもストックオプションもゼロにするというようなクライテリアを明確にしておくのがいいのではないかと思っている。

石田委員

  2点ある。
まず報酬のところで、業績連動報酬と株式報酬が結構ブームのような雰囲気があり、世の中の動きとしてこれが広まっていく。
もちろん一般論として業績連動報酬はすばらしいことだと思う。
しかし、業績連動報酬が意味を持つかは、会社の状況によって違うだろう。
例えばリストラしている会社だと、普通の意味のアップサイドの業績ではリストラの進捗度を測ることはできない。
リストラを成し遂げることが課題なら、それに集中できるように、あえて業績連動をやめて固定報酬を増やす。
そしてリストが完了して次のステージになったときに、業績連動を入れるというような柔軟性は必要ではないかと思う。
つまり、経営計画が主であり、報酬政策はそれを反映するに過ぎない。
その逆ではない。
これを忘れると、個社の文脈を無視した一般論化した報酬制度が量産される恐れがある。


 もう1つは、事務局説明資料の中で、任意の指名委員会、任意の報酬委員会を作っていないという会社がまだ半分以上あるという話があった。法定の委員会かどうかは置いておいて、平時に何もないときから報酬とか指名を議論する場所があることで、いざ有事、例えば次に誰が社長になるかというお家騒動的なものが起きたときなどでも、それに備えた訓練というか、準備ができるのではないかと思う。よって、報告書の方向性として、指名や報酬について任意でもあるほうが望ましいというトーンが重要ではないかと思う。

 今年6月に監査等委員会設置会社が投資家の間でも話題になり、そのときにそれに反対する海外の投資家の話を聞いてみると、任意の委員会か、法定の委員会かは置いておいて、やはり委員会すらないと先に進まないのではないかということもあったので、あって悪いことではない。あれば、その間にどうやっていこうかというのはどんどん議論がまとまってくると思うので、それが重要だ。

御代川委員

  これもまた感想なのだが、業績連動賞与とか評価については、その比率をやはり経営陣は高くしていかなければいけない。
当社も固定報酬の比率を低くして業績連動の比率を高めていっている。


 一方で、例えば業績で評価されると、今当社は海外の売り上げのほうが大きいものだから、為替の影響で必ず良くなったり悪くなったりする。だから、海外子会社も現地の通貨ベースでいけば増収増益であっても、為替によって減収になったり、増収になったりということがある。為替による影響は、経営陣に対してはそのまま受け入れなければいけないと思っているが、海外子会社のトップに対しては調整している。

 それから、社長の解職については、今後変わっていくのかもしれないが、日本の場合においてはやはりコンプライアンスの問題で社会的な責任をとったときは、トップも自ら責任をとらなければいけないということで退任すると思うが、周りから社長を解職するという基準は非常に作りにくいと感じる。業績だけでいうと、先ほど申し上げたような、為替など不可抗力のような状況で変わってしまうという問題もあり、これは検討しなければいけないと思っている。

佐久間委員

  私が先ほど取締役の任期1年、2年ということについて触れた理由の1つは、1年であれば、いずれにしても1年ごとの評価、最終的には株主が決めるということになるわけで、1年の途中で業績が悪くなったのでCEOを首にするということはなかなかない。
ところが、2年であれば、2年の総会を待たずに1年というのはあるのだろうなと思う。
つまり決算がはっきり出るわけだから、結果が出た上でも2年任期を全うするかどうかという議論はあると思うが、1年の場合は現実的にはなかなか難しいのではないかということがあるので、やはり1年と2年はかなり違う。
海外に比べても、日本の場合は1年というのは非常に厳しい。
つまり、CEOで取締役でない方がほとんどおられないとすれば、CEOの方は1年ごとに全て選任を受けているということなので、1年と2年、それ以上では実態としては大分変わってくるということで先ほど申し上げた。


神田座長

  確かにご指摘のように、諸外国ではCEOの任期そのものが1年ではないし、取締役である必要もない。
取締役であっても任期が1年を超える場合が通常である。


以上






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2018年09月13日

第4回 コーポレート・ガバナンス・システム研究会


CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)(第4回)‐議事要旨

日時:平成28年9月30日(金曜日)8時00分~9時50分
場所:経済産業省本館17階国際会議室

出席者

神田座長、青委員、石田委員、江良委員、大杉委員、大場委員、大宮委員、翁委員(9時45分途中退席)、神作委員、小林委員、澤口委員、武井委員、寺下委員、冨山委員、松元委員、御代川委員、柳川委員(9時00分途中退席)、竹林参事官、田原課長
(欠席:伊藤委員、岩井委員、川村委員、後藤委員、佐久間委員、藤田委員)

議題

取締役会の役割・機能について

議事概要

はじめに、本日の資料・議事等の公開について、資料2記載のとおりとすることについて委員の了承を得た。
次に、事務局より資料3・4の説明を行い、続いて、石田委員より、資料5の説明が行われた。その後、討議を行った。討議の概要は以下のとおり。


小林委員

  2点述べたい。


 1点目は、事務局のご説明で、取締役会でどんな討議をするのかということについて言及があった。私が今所属している会社、社外取締役を拝命している会社、以前に社外取締役をやった会社は指名委員会等設置会社なのだが、必ずしも取締役会だけで全てを決めているわけではない。

 中期経営計画など、取締役がコミットし、非常に強い関心をもつべき戦略的な将来計画、あるいは、必ずしも取締役会での決定事項ではないものの、足元の危機的兆候とか非常に微妙なリスク要因など、取締役が把握しておくべき重要なアイテムはたくさんある。執行は良いことは言うが悪いことは隠したがるものだから、社外取締役の立場から見た場合、ひょっとしたらかなり悪い方向に行くかもしれない案件などを聞く場として、非公式な取締役評議会、連絡会などを最低月1回ぐらいは開いてくれないと、取締役会の本来の機能であるデシジョンメーキング自体がスムーズにいかない。公式の取締役会ばかりで議論していたら時間も足りなくなってしまう。そこで、私はこれら非公式な会議体も重要視すべきだと思っている。コンプライアンス問題や保安安全は、メーカーの場合は特に、取締役が監督すべき重要なポイントだと思う。

 2点目として、私の感覚では、「取締役相談役」などもってのほかである。取締役だから株主へのアカウンタビリティーはあるけれども、そもそも相談役になってまで取締役でいるほうがかえって問題だという気がする。相談役、名誉顧問、特別顧問等いろいろな名前で存在しているのかもしれないが、CEOたる者、「先輩は戦犯なのだ」というぐらいの強い思いを持っていなければならない。いつまでも「自分を選んでくれた人だから」などと言って遠慮している時代ではない。ただ、何らかの制度的な抑えが必要だとしたら、この相談役はこういうテーマを担当していると情報開示させることに絞ったほうがわかりやすいかと思う。あとはかなり個別の人間的な事情もあるので、規制のしようがないかもしれない。

 先輩が戦犯というのは少々言い過ぎたが、CEOというのはそのくらい自分が確立していないと、どうせ大した会社にはできないだろうと思っている。

大杉委員

  顧問・相談役の件について、簡単に意見を申し上げる。


 まず、ISSが相談役について定款で定めることに反対推奨するというのは非常に納得感があり、多くの機関投資家も普通反対するだろうと思ったのだが、そのことではなく、背景にある現在の日本企業の相談役とか顧問という慣行についてどう思うかという点について、先ほどの石田委員の意見に7、8割賛成だが、現時点ではちょっと留保をつけておきたい。

 企業によって相談役とか顧問の実態はかなり異なり、専用車があるとか専用の個室があるというような会社ばかりではない。そして、相談役を置くことにそれなりのメリットがあるという話は、一般論として先ほど石田委員はおっしゃっていたが、そこにビジネス上の合理性があったり、何よりも気持ちよく辞めてもらうために次の席を用意しておくというような話も聞くので、一般論として相談役という慣行をとにかく廃止すべきだというと、少々強過ぎるかなというような感触を持った。

 私としては、各企業において真剣に制度の存置とか内容について検討していただくことと、要点については投資家に開示とか説明をしていくということで、何か日本のガバナンス改革を妨げないような程度に透明化していくということがよいと思っているので、趣旨としては石田委員がおっしゃったことにほとんど賛成だが、少しだけ留保をつけさせていただきたい。

冨山委員

  相談役の話をすると、私が過去、いろいろ企業再生にかかわった案件で、相談役が役に立っていることは1回もなかった。
はっきり言って全部害悪。
残念ながら、それが現実である。
現経営者が本当に相談をしたいのであれば、別に相談役でなくてもよい。
OBに本当に尊敬できる先輩がいれば個人的に相談に行く。
結論からいうと、会社の相談役である必要は全くない。


 ただ、先ほど大杉委員が少し言われたように、諸般の事情でいきなりなくすのが大変なのであれば、少なくとも相談役にいくら給料を払っているのか、秘書がついているかどうか、個室があるかどうか、車がついているかどうか、経費をどれぐらい使えるかを株主に対して全部開示すればよい。それでもなりたい人がなればよい。私はそう思うが、それは相当恥ずかしいから、そうすればそういう制度はかなり減ると思う。これは別に顧問でも何でもいい。全部開示してしまえばいい。

 基本的には元CEO、元社長、元代表取締役の人が会社に顧問・相談役で残るときには、ある意味ではもともとの役職からの派生でなっているわけだから、ちゃんと開示すればいい。自分がそれだけの役割を果たしているなら開示されても別に恥ずかしくないはずだ。私も開示してもらって結構である。だから私はそれでいいような気がする。

 次に、資料4の10ページで監督か、モニタリングかの話があったが、どこからこの議論が始まったのかよくわからない。やや講学的というか、学者っぽい議論のような気がする。カネボウの再建をするときに、やや実験的な思いもあって、カネボウ化粧品は委員会等設置会社にして、本体は監査役会設置会社のままにした。そうすると、さっきの小林委員の話に少し重なるが、指名委員会等設置会社は取締役の数が少ないのと、付議事項が少な過ぎて、細かいことの報告を受けないとよくわからない場合がある。そこで取締役評議会のようなものを実は結局作った。要は取締役会の執行マター的なことを自分が知っていたり、その議論にかかわっていることによって監督が充実する部分というのは、現実経営として存在する。

 極めて大きな方向性の議論、何を決定するかということと、何をモニタリングするかは少し違う次元の問題。

 取締役が関わって意思決定することは確かに大きな方向性の議論かもしれないけれども、その判断材料をどこで手に入れているか。現実経営の世界では、些細なことであっても、やばい兆候、端緒というものがあるわけで、現実経営に関わっている人は、そういう端緒をつかむ努力をしている。例えば月1回で監査役会設置会社側の取締役会の中にいたほうが、そういう端緒が多いので、この2つの概念は、私はあまり対立概念ということにはならないと思っている。

 むしろ仮に監督機能ということに純化して特化する議論をするのであれば、ここの鍵は圧倒的に人事権に尽きる。日本国の三権分立にしても、三権分立の基本は、人事権でお互い牽制し合っている。それと同じことであって、監督機能を充実させるのであれば、会社のフォーマットの問題よりは、実質的に誰が人事権を持っているかのほうがはるかに効くと思う。仮に監査役会設置会社であっても、例えば、指名諮問委員会がちゃんと機能しているオムロンがそうである。オムロンは社長指名諮問委員会をわざわざ別に作っているが、その指名諮問委員会というのは、今の社長を決めるときに、創業株主家である立石家から2人と社外2人で構成されており、この4人で100%決まる。それが存在していると、圧倒的な監督力を持つ。もっと言ってしまうと、実際、私自身、取締役会に出て何をチェックするかというと、取締役会の場では社長だけでなくカンパニー長も出てきて説明するから、社長及びカンパニー長が大丈夫かということを毎回いろいろな議論をしながらチェックしているわけで、指名委員会があれば、そこのレビューをする。そうすると、例えばさすがにあれはだめなのではないかという話が指名委員会のときに出る。そこが最大の監督であるし、それがあるから説明者は緊張する。人事権がなかったら何を言ったって監督権は機能しない。

 だから、私は上の部分の議論は会社のフォーマットにかかわらず、実効的な問題として指名委員会なり指名諮問委員会がどれだけの力を持っているかということに全て収れんすると思っているので、あまりフォーマットの議論にこだわってしまうと、本質からずれていってしまうような気がする。

松元委員

  資料4の10ページの方向性の整理について、矢印の(3)が若干気になっている。
(3)の方向性はCEO権限集権型に向かうということである。
資料の細かいところを読んでいくと、CEO権限集権型に向かうというだけではなくて、それをやるときには取締役会の監督機能もあわせて強化することが重要ではないかというようなことが書いてあるのだが、資料の図だけみると(3)が望ましい方向性の1つに位置づけられているように思う。
これまでのほかの委員からのご指摘を聞いていると、望ましい方向性として、CEOの権限を強め、かつそれに伴ってCEOを監督するための取締役会の監督機能を強化する方向があるという形で、パッケージで出ていたと思うので、CEO権限集権だけという意味での(3)だと必ずしも望ましいとはいえないのではないかという疑問がある。


 もしかするとここを点線にすればいいのかもしれないが、誤解のないように整理していただけるといいのではないかという感触を持った。

大宮委員

  資料4の10ページだが、弊社の歴史等を考えてみると、BとAの間くらいで、よりBに近いところにいたかと思う。
よく言われているのだが、昔は工場が各地にあり、そこの工場長を所長と呼んでいたが、それが一番偉かった。
2番目が事業本部長、3番目が神輿に乗った社長というような形態であった。


 例えば、単一の事業をやっているところはもう少し違うと思うが、非常に多い事業体を抱えているコングロマリットと称されるような会社は、大概、キャリアパスの問題もあって社長が全部をつかみ切れないということがあり得るので、実際に事業をやっている人たちの意見を一番尊重して、そこが決めてきたものに対してほとんど反対ができない、反対するツールもないというようなことがあるのではないか。そのツールが何かというのが、この間ご紹介した戦略的事業評価制度である。外の目で見る制度を入れたのは、社長の権限を強くするためのツールが要ると考えたためである。

 実は、今の社長に代わったとき、呼称をCEOに変えた。これは権限を集中するという意図である。監査等委員設置会社に移ったのも、経営の形を少し変えて、中身が変わってきているものを内外に示そうという意図でもある。弊社は今、どちらかというとCに近い格好になっていると思う。

 監督とモニタリングという視点からすると、社外取締役が取締役会で論議している内容を精査している最中だが、取締役会の議題をかなり戦略的なものに絞ってきている中で社外取締役に期待している機能は、重要な戦略的決定に主体的に関わっていただくことが1番目の機能である。それから、執行側に任せていいものは任せた上で、それを後押しするというか、しっかりやりなさいと賛同してくれるようなスタイルでの関与が2番目の機能であり、3番目は、ほとんど報告も要らない、やってちょうだいと執行側に完全に任せて関与もしないというような形でお願いしている。

 次に、冨山委員が言われた、監督は人事権だというのはその通りだと思う。CEOに権限が非常に集中すると暴走する可能性もあるから、それを抑えるために指名等の委員会を任意で設置していろいろトライしているのだが、権限を非常に強くしていくということで、Cのエリアに入ってきた結果、これからはCEOの暴走にストップをかけるような機能が会社には要るのではないかと思う。

神作委員

  先ほど小林委員、冨山委員から、取締役の決議事項が少なくなると、監督するための情報が足りないので、取締役会の外の会議体ができるというご趣旨のことを教えていただいたが、その会議は取締役会で行うことはできないのかという単純なご質問をさせていただきたい。


 取締役会は、意思決定だけではなく監督機能を果たすのも重要な任務だが、取締役会ではない協議会とか別の名前がついた会議体が設けられるということは、取締役会とはメンバーが違うなど、取締役会ではできない事情があるのか、教えていただきたい。

小林委員

  非常に単純に言えば、取締役会で決定はしないけれども、取締役が早目に知っておかなければいけない執行レベルのアイテムは数多くある。
極端なことを言えば、それを抽出して正式な議事録を作るか作らないかの問題である。
取締役会は確実に正確で正式な議事録を作成するが、もっとざっくばらんに、リラックスして内情を議論する、あるいは執行の担当者にもっと出てきてもらって、社長ではない立場から生の話をしてもらう機会も必要だ。
しかし、やはり正式な取締役会だといろいろな縛りがあり、そう簡単にいかない。
そういう意味で、非公式な会議体と正式な取締役会というツーステップを設けている会社は、結構有効に機能しているのではないかと思う。


大宮委員

  私は取締役会でできるようにすべきではないかと思う。
先ほど申し上げた、事業所長が一番偉いというBの形態から今変わりつつあると思っているが、重要案件だけを取締役会で扱うということになってきていて、その中で特にリスクという視点が経営の中の非常に重要な部分を占めるということもある。


 弊社は客船で大変な損失を出した件もあって、リスクというものを取締役会にどうやって早目につなげていくかという論議がかなり行われているので、社外取締役の人に下部機関に入ってもらうということも、やり方としては非常にいいやり方だと思うが、なかなか忙しい人もいて十二分に入り切れないということになると、取締役会を月に1回くらいの頻度でやるのであれば、事前の予兆も含めて、なるべく早くに出して自由闊達に論議ができるような形に取締役会を変えていくというのが非常に大事ではないかと思う。取締役会の頻度が2ヶ月に1回だと難しい気がするが。

小林委員

  それに関して、取締役会議長は会社のことを相当詳しくわかっているはずだが、社外取締役が取締役会議長を務めている場合は常勤ではないので、最終決定をかなりしっかりしたフォーマリティーのあるところでやればよい。


 一方、常勤の監査委員や社外取締役を議長とした取締役評議会や取締役連絡会のような会議体を、取締役会とは別の議長の下でやればよいのではないか。社内取締役でさえもそのような会議体である程度勉強しておかないと、重要な決定といってもなかなか簡単にはできないと思う。最終的な理想形としては、1日全部使うくらいじっくりやるのがいいのかもしれない。

大宮委員

  今おっしゃった、取締役会の議長が社内出身者か外かということで大分違うというのは、感じとしてはよくわかる。


小林委員

  それから、本当に実務的なことを言うと、社外取締役は皆多忙であり、取締役会は出席義務があるから絶対に出席するが、非公式な評議会のようなものであれば時として出席できないことがあっても後で資料は読める。
加えて、常勤の監査役がしっかり執行をウォッチしていて、これはやばいぞというような端緒を見つけだす。
要するに、取締役会でどんなアイテムを議論するか決めるほうが現実的にはよっぽど重要である。
そういう意味で、評議会のような会議体が私は必要かなと思っている。


寺下委員

  資料4の22ページのところで重要な点がある。
1個、日本で抜けているところがあって、そこを強調したい。
コーポレートガバナンスを所管する部署というか、取締役会事務局をどこに置くかというのはすごく重要な問題で、欧米の概念でカンパニーセクレタリーという位置づけがあり協会もできている一方、日本だとセクレタリーというのは秘書というイメージになってしまう。
取締役会事務局の機能とか位置づけは、色々な組織体を作るにしても極めて重要なので、この議論はどうしても一緒に並行して行っていただきたい。
なぜかというと、今、法務に置くのか、経営企画に置くのか、色々な部署に置くのかというのは率直に言ってばらばらになっていて、会社の中での主軸がばらばらであるがゆえに、しっかりと物事が進んでいかないという場合もあるから、欧米におけるセクレタリーという法の番人のようなところを皆さんで議論していただいて、研究会の中でいい事例をケーススタディーとして出していただきたいというのが1つのお願いである。


 もう1点が、先ほどの相談役の件である。全体的にCEOとか社長の時代にもらっている報酬が少ないので、相談役になって引き続きもらおうというのが率直なところだと思う。これは大体間違いないところだと思う。そこでせっかく経産省がこの委員会でRSを作ってくれたわけだから、そういうものの導入の仕方のようなことも色々な例として出すことによって、相談役制度の見直しが具体的に進む方策を示すことが肝要である。以上2点お願いする。

御代川委員

  まず、前回、当社は相談役・顧問制度がないという説明をしたので、少し説明させていただく。
(制度を廃止した)当時のトップが言っていて、私もそうだと思うのだが、やはりこれからの時代は社会に貢献するために再就職しやすい道を作るべきだということである。
社外役員の方を探したときに、日本の場合はどうしても高齢の方が多くなってしまう。
70代を過ぎた方よりは、できれば60代の方で企業経営をされていた方に社外役員としてアドバイスをいただくほうが非常にいいと思う。


 現実に私どもの会社でトップだった方は、いろいろな業界で社外役員に就任しており、それはある意味、経験を活かして社会に貢献できているということ。私はそういう方向に行くことが非常に大事だろうと思う。

 もう1つ考えると、日本では報酬の後払いとしての相談役・顧問への就任がみられ、本来であれば時価で払うべき報酬を後で払っていくということで、逆に企業トップの方を拘束してしまうというようなこともあると思う。その点もつけ加えさせていただきたい。

柳川委員

  いくつか重要な論点が出ていると思うけれども、ある種の形式と実態の違いであるとか、法的なものと文化的なものとの違いとか、このあたりのところが1つの鍵のような気がしていて、議論の中でもその2つがちょっとオーバーラップしている部分があると思う。


 今の相談役の話にしても、相談役はある種の制度として認めていいかどうか。例えば、今の定款で入れるかどうかという話と、実質的に相談役が存在するかどうかという話とは多分ちょっと違う話で、ご指摘のところはそういうところがきれいに出ていたと思うけれども、もう少し根本的な話をしたい。目上の人が何らかの形の自主的な権力をもってしまうことの源泉は、相談役という肩書きがあるかないかではないのだろうとすると、そこを本質的に変えるには別の仕組みが必要かもしれない。もしお金を払っていることや、部屋がついていることを変えればそういう文化的な背景が変わるのだとすると、そういうところに大きな影響があるということなのだろうと思う。先ほどのように、実質的には給料が後払いだという話も、かなり法的なものと実質的なものとの乖離なのだと思う。

 もう1つ、監督と執行の分離の話であるとか、取締役会の法的な役割の話とかというのもかなり大きなポイントだと思っていて、事務局資料4の10ページの図は一応実質的なものを書いたものだとお話しになっていた。そこは、私は大事なポイントだと思う。

 先ほど冨山委員がおっしゃったように、執行と監督の分離というのは現実的になかなか難しいというのは、おそらく実態としてはご指摘のとおりなのだと思う。では、そのことと法的な部分、あるいは仕組みとしての設計をするときに、そういうところをどのような形でつくっていくかということはまた別の問題で、ある意味で実質的に混在しているからこそ、制度としてはかなり分けたような制度にしておくという作り方もあるだろうし、実態として合わせるというところもあるのだと思う。

 先ほど大宮委員から、神輿に乗った社長は3番目ぐらいの権力だというお話があったけれども、これもまさに実態をあらわしている話で、法的にはCEOが決められるはずなのに、決められない。そういうものを、神輿に乗っているという意味でいいのだと思ってCEOの権利を法的に考えるか、そうでないかというのはすごく大きい話だと思う。

 その点に関して一言だけ申し上げると、先ほどの取締役会で何を決めるかという話で、社外取締役が議長をやっているようなところだと、もう少し別の会議体を作って議論しないと実質的なところが進まないというのはとても重要なご指摘だと思う。それを問題だと考えるか、そういうものだと考えるかであるが、ある意味で法的なところで権利を作ってきた人からすると、実質的に取締役で色々なことを決めると決めたはずなのに、それが別のところに移ってしまうとすると、それはある種の問題だと考えられる。

 そういうものだと考えるのも1つの割り切りかもしれない。実質的には別のところで動いていていいということである。ただし、フォーマリティーを持った議事録が残るところでは、きちっと社外の人がトップになり、社外の人がかなりいるところで最後に議論をするところに意味があると考えるかどうかというところも1つの大きな論点のような気がする。

 ある意味で、そのような形の割り切りの取締役会を制度的に考えるのか、もう少し別のものを考えるのか。その裏側には事務局資料4の10ページのところの、実質的にどんなものを目指すのかという話と、それにあわせてどんな形の制度的な仕組みを用意するのかということを分けて議論したほうがいいかと思う。

江良委員

  2点申し上げる。
1点目は、先ほどから話題になっている顧問と相談役についてである。
これについては我々もさまざまな場で、基本的には望ましくないという考えを申し上げていて、自社に残るのではなく、他の会社に行かれて、社外役員としてご活躍いただくということが望ましいという点に賛同する。


 ただ、既にさまざまな意見があったが、顧問・相談役という制度は名称も多様だが、その実態も各社によってかなり異なり、我々としても個別の企業と話し合いながら対応を検討している。例えば、ある会社の制度については問題視して廃止を求めたケースもあるし、一方で、対外的な活動を重視し、そういった活動が実態として認められる場合については問題視しないということもあった。この点については、きめ細やかな考慮が必要ではないかと思っている。

 どのようにしたら社外役員としての採用がさらに進むのかと考えると、一番決定的に欠けているものは、その方々が取締役としてどういった活躍をなさってきたのか、どういった観点から発言されてきたのかという働きぶりについての情報が限定されていることである。招集通知をみても経歴、取締役会出席回数のほか、数行程度の発言内容の要旨くらいしかない。一緒に働かない限りわからない部分もあるとは思うが、こういった働きぶりに関する情報がもう一段充実すると投資家にとっても有益だし、他の会社にとっても社外役員を選ぶ際の1つの手がかりになるのではないかと思っている。

 2点目は、まさに柳川委員がおっしゃった点で、取締役会で何を決めるのか、役割をどう考えるかということだが、多くの会社と議論すると、実質的な経営判断や議論については、取締役会外のさまざまな委員会、例えば経営会議等の会議で実質的に質疑が行われているケースも多く、法的権限と実態がかなり乖離しているという印象がある。そういった前提に立つと、取締役会の役割だけお聞きしても、その会社のガバナンスの実効性がわからない場合があり、本当にきちんと議論がされているのか不安になるケースもある。そのため、実態と法的権限を分けて考えて整理したほうが議論に資するのではないかと思っている。

大杉委員

  まず、先ほどの、相談役・顧問に関する発言の補足である。
私が基本的にはそういう制度に対して好意的でないにもかかわらず、全面的に廃止しようという議論に乗れないと考えている1つの理由は、前々回の会議で私がプレゼンテーションをしたときにご紹介したが、2000年代初頭に上場会社で取締役数の削減が進んだときに、それは業績の改善につながっていなくて、むしろ業績を改善させないように機能したということに関して、内田交謹先生の実証研究がある。
そういうことに照らすと、社会的に非常に強い批判の風潮とかを作りすぎてしまうと、改革が進みすぎて本末転倒になるというシナリオがあり得るというようなことが念頭にあった。
そして、不透明な形での相談役は良くないという点は、少なくともこの会議ではコンセンサスがあると思う。


 次に、先ほどから、事務局資料4の10ページの4象限の図の話をめぐって議論がされているが、今後、この研究会で議論していくときには、法律上のフォーマルな取締役会を議論するよりは、取締役会に付随する様々な非公式の会議体も含めた上で、全体としてどのようなことを目指すべきか、どのような機能を果たすべきかというような議論が出発点になるのではないかという印象を持った。

 大切なのは取締役会というフォーマルな場で何をやっているかというところではなく、実質的にみて、リスク情報が早い段階で社外の取締役に伝わっているかどうかという仕組みである。また、取締役会で意思決定をするというのは、ビジネスの流れの一部分を切り取っているだけの部分であって、会社によってはやはり取締役会は意思決定機関だという文化が強い会社もあれば、あまりそれにこだわらない会社もあって、どちらのあり方も尊重されるべきだと思うけれども、経営とか監督という観点からみると、大もとの戦略をつくって、それを計画に落とし込んで、しかしそれがうまくいっているかどうかのフィードバックもしつつという広い意味でのPDCAが大事で、それは広い意味での取締役会とか付属の会議体で社外取締役を交えてやっていく必要があるというのがガバナンス改革の本質部分であろうと思う。

 付言すると、会社法362条4項が、いわゆる監査役会設置会社という伝統的な機関設計においては、重要な業務執行の決定は取締役会でなさなければならず、これを下位の機関に委任することはできないということを定めているが、現時点から振り返ると、このルールが日本企業のガバナンス改革の足を引っ張って、取締役会改革をやりづらくしたのではないかという問題関心を持っている。
今回、CGS研究会でやっている議論については、あまり法律がこうというような議論はしないほうがいいのかなという気がしている。

大場委員

  色々な委員の方から様々な論点が示されているが、私からは、投資家の立場からみたときに何が課題なのかというようなことでご意見を申し上げたいと思う。
キーワードは2つである。


 1つは、総括検証である。本日の会議では取締役会における議論が行われていて、相談役制度とか色々なご指摘はあるが、結局のところ何が足りていないかというと、日銀の政策の検証みたいなものだが、経営の評価の検証が行われているかどうかということが非常に不透明だということである。最初に申し上げたが、投資家からみたときに、多くの企業において持続的な企業価値の向上が図られていない。それについて、何が課題なのかということをどのような形で取締役会が評価するのかということがものすごく重要である。コーポレートガバナンスを強化することを目的としてこの研究会で議論が行われていると思うが、それは何のためにやっているかというと、持続的な企業価値の向上のためにやっているはずである。それがなぜ果たされないのかというと、相談役制度が課題なのかもわからないが、そういう会社ばかりでもないと思う。従って、そこについて取締役会が評価をしなくてはいけないと思う。

 もう1つはディスクロージャーである。今の話の続きで、経営の評価がディスクローズされると投資家と経営者の対話が非常に進むのではないかと思う。また、どのような形でディスクローズされているかということについて、ベストプラクティスとなる企業があれば、それを共有化するという作業が行われると、持続的な企業価値の向上に向けた具体的な伸展が図られるのではないかと思うので、そういう観点で議論が進むことを期待したい。

神作委員

  先ほどの大杉委員のご発言と関係するが、形式と実態の問題について一言申し上げたい。
社外取締役は定義上形式により決まっており、近時のコーポレートガバナンス改革の中心は社外取締役の活用にあると理解している。
社外取締役が働く場所は取締役会である。
そうすると、形式に寄り過ぎだと言われるかもしれないが、社外取締役にガバナンスで一定の役割を果たしてもらおうという方向で議論がなされてきた中で、形式とか形態の問題も決しておろそかにせずに議論する必要があるのではないかと思う。


青委員

  今のご発言と関連があるのだが、資料4事務局説明資料の10ページ「各社の取組の方向性の整理」の模式図について。
Bの象限のところで、取締役会の監督機能よりも個別の業務執行の決定を優先するように見える記載があるが、取締役会は監督機能を果たしたり、経営の中心として機能するのが基本的な位置づけと思う。
Bの形態であったとしても、取締役会によるガバナンスがきちんと効いている必要がある。
今後、表現されるにあたり、取締役会の監督機能が不要という受けとめ方をされないようにご留意いただければありがたい。


 次に、相談役についてであるが、各委員からもご意見が出ているが、社外取締役の人材のプールという点は、今後の取締役会のガバナンスシステムを考えるにあたって非常に重要なポイントかと思うので、各委員のご意見に賛同したい。それから、相談役の存在が、CEOが思い切った判断をする際の制約になるということがあるのであれば、その点については十分に見直しをする必要があるという観点から考えていくべきではないかと思う。

冨山委員

  元法律家だったので、あえて制度論を少し語りたい。


 資料4の10ページのチャートについてだが、私は機能の固有性をちゃんと考えるべきであると思う。

 業務執行をするのは取締役会でなくてもよく、例えば経営会議でよい。取締役会が持たなければいけない固有の機能は明らかに監督機能である。なぜなら、ほかに監督機能をやるところはないからである。

 経営会議のトップはCEOあるいは社長で、それに対して監督機能をきかせようとすると、もし取締役会でなければ、それは相談役等の人がやるしかなくなってしまうからああなってしまうわけで、つまり機能の固有性を考えたときに、表の上か下かというと上に決まっている。下は、監督機能にどこまで執行機能を兼ねさせるかどうかということでしかない。

 これは、会社法上、代表取締役の任命権を取締役に与えているから。議院内閣制でいえば、取締役会は国会の位置づけになっている。国会が総理大臣を選ぶことによって内閣を牽制して監督をしているわけで、これと同じである。

 だから、ここは制度論でちゃんと整理したほうがいいのだが、この講学構造をごちゃごちゃに議論して分類をしているから、時々、監督機能は取締役にないなどというとんちんかんなことをいう経営者が出てくる。くどいようだが、監督機能を持った上で、執行機能を兼ねているような取締役会はあるかどうか、どこまで執行機能をとりこむかというのが正しい定義である。

 次に、実質の議論として、先ほどの相談役の議論に戻りたい。相談役の持つ影響力というか、実質的な心の呪縛の源泉は人事権である。なぜ相談役が現社長に力を持ち得るかといえば、相談役がその人を社長にしたからである。その連鎖が延々とあるから、お前は誰のおかげで社長になったと思っているのだという心理作用が暗黙かつ強烈に働くし、その中で30年、40年働いているから親子関係のようなものになり、そこから自由になれというのは人情として私は無理だと思う。

 ということは裏返して言うと、社長と会長と相談役が相談して社長人事を決めているケースが現実には多いが、それをやめ、本当にガチで、例えば現社長と指名委員会なりがちゃんと一緒になって議論するということになっていけば、自然に呪縛は解かれていく。

 実際の事例を申し上げるが、今、オムロンの社長は山田氏で、49歳のときに、ごく若くして社長になられた。前任の作田氏はすごく立派な社長で、すごく力を持っていた社長である。大方の予想は作田氏の院政になるというものだったが、作田氏自身がそうならないように考え、実際は先ほど申し上げた本当にガチの指名委員会でやっているので、ものすごい勢いで求心力が山田さんに移っていった。そうすると何が起きるかというと、作田氏はオムロンの会長であったが、そこに力を注ぐよりも、ルネサスの再建に向かった。ルネサスの一番苦しいときに行って、あそこまで立て直したのは作田氏であるが、まさに社会貢献であり、そういうところに自分のエネルギーを使うようになる。

 だから、人事、特にトップ人事の連鎖を実質論としてどうしていくのかというのは、制度論で全部は規制できないけれども、少なくとも指名委員会等々、あるいは指名諮問委員会の役割によって、相当状況を変えられると自分の経験で思っているので、そこはぜひ議論の中に入れてもらえるとうれしい。

石田委員

  資料4の10ページの4象限の話について。
特に小さな会社の人たちと話して感じるのは、コーポレートガバナンス・コードが導入されて初めてガバナンスについて取締役会で議論するようになった会社が多いことだ。
そのような場合、取締役会による監督とは何を意味するのかについてあまり考えたことがなく、現実問題として取締役会の機能にどのように落とし込むか、何をどう変えればよいのかが見えず、困っている会社が多いと思う。
そのようなときに、考え方のフレームワークを提示できるので、このような図は意味がある。
いきなり監督型というと警戒する人が多いと思うが、まずは考え方を理解して、あとは個社が手探りで自分たちにあう形を見つければよい。
そのような道筋を与えるという意味では、10ページの絵はいいのではないか。
例えば、いきなりBからCに飛ぶのは抵抗を感じる会社は多いと思うが、Bの中でも(2)という小さなものもある。
これならできるか、という感じで、企業の方が安心できるのではないかと思う。


澤口委員

  2点申し上げる。
先ほどの取締役会評議会の議論を聞いていて思ったのだが、多分、アメリカの取締役会だとエグゼグティブコミッティーが比較的近いのかなと思う。
私の理解する限りでは、チェアマンと委員会の委員長やCEOが集まって取締役会の準備をするというコミッティーである。
いずれにしろ、取締役会の議論をするためにはコミッティーのところも視野に入れて議論したほうがいいかと思った。


 2点目は、難しいと思うのだが、取締役会の議論は外に情報がなかなか出てこない。それから、ここで議論していても、皆さんの経験での議論に限られてしまうので、なかなか客観的な議論がしづらいかと思っている。可能であれば、米国の取締役会はモニタリング・モデルといわれるが、取締役会自体でどういう議題で審議が行われているのかとか、そういう情報がなかなか外に出てこないので、そういうのも議論の素材にさせていただければいいのではないかと思う。

翁委員

  3点申し上げる。
まず、資料4の10ページの表だが、やはり先ほど石田委員がおっしゃったように、置かれている企業のポジションとか、製造業か非製造業か、グローバル企業かドメスティックな企業かということによって、選んでいく体制も相当違ってくると思う。
特に製造業などでみると、売り上げの圧倒的なシェアが海外になっていて、海外投資家の比率もすごく増えているので、日本の投資家ももちろんそういう方向になってきているけれども、やはり監督機能の充実ということが非常に求められてきているのと思っている。
その意味で、やはり社外役員のダイバーシティーということが非常に重要になってきている。
もちろんバックグラウンドとか、海外の人がどのぐらい入ってくるかとか、年代もどうなのか、恐らくそういったダイバーシティーなども意識して企業価値の向上を目指していくということがこれから求められると思うし、同時に監督機能の充実を図っていくためには、しっかりした執行体制がどのように図られているかということがみえてくるということも、とても大事だと考えている。


 次に、今のご意見とも少し関係するが、先ほど資料3で指名委員会等設置会社のご説明があったが、実際にどんな議論が行われているのかをちょっと知りたい。指名委員会等設置会社でなくても任意で指名委員会や報酬委員会が作られているが、単に作っているだけではないか、実質的にどういう議論が行われ、または行われようとしているのかといったことも少しサーベイしてみる必要があるように思う。

 最後に、先ほどから情報共有がとても有益だというような議論が出ていて、私も社外役員を務めている会社が幾つかあるが、やはり取締役会以外のところでの事前の説明とか情報共有は極めて有益だと思っている。ただ、一方で、先ほど大宮委員がご指摘になったように、本当にそれで取締役会で実質的な議論ができるということが担保されるような形でそういう会議を運営していただくことが極めて重要だと感じている。

小林委員

  先ほどから相談役についての議論が大分多かったが、明確に監督と執行を分けて、CEOが執行の全責任を持ち取締役会が監督機能を果たすという会社において、以前CEOとして執行をやっていた取締役会長がいたら、今のCEO、社長は極めてやりづらいと思う。
だから、相談役以前の問題で、会長が早く監督に専念して、社外活動にエネルギーをぶつけるようにしないとうまくいかない気がする。
そうすれば、社長は非常にやりやすいはずだ。
会長というある意味で中途半端なあり方も議論の俎上に上げるべきではないかと、議論を聞いていてかなり感じた。


 それから、指名委員会の運営の実態は会社によって相当に違うのではないかと思う。本気で独立した社外委員だけでやっている会社もあれば、社内委員のほうが多い中で、かなり詳しくデータを共有しながら1年間かけてしっかり議論していく会社もあるだろう。この辺を調査したら面白いと思う。

武井委員

  まず、事務局が作られた資料4の10ページの絵について。
私はこういうまとめ方をしていくことは良いことだと思う。


 なぜなら、どうしてもガバナンスの話は制度論から入りがちとなるが、さっき大場委員のおっしゃった「どうやれば持続的な成長に適うのか」という観点とは違う関心から制度論は作られるときがあって、どれかの機関設計にすれば持続的成長に適うという単純な話ではない。ガバナンス改革となると、制度論に合わせる形式的な対応が起きやすいが、実際、先ほどの取締役会の決議というテーマにしても、取締役会の場で何を決議すべきであるかとか、社外取締役の方がいる場でどういったことを議論すべきかといった問いは、大場委員がおっしゃった持続的成長に必要な経営評価機能や監督機能ができるかという問題と対応して考える必要がある。そこで資料4の10ページの図は、法制度の用語から離れて、違う形で持続的な成長のことを考えようという取り組みだと私は理解したので、これはとても有益な試みだと思う。X軸、Y軸をどう作るか色々な議論があるかもしれないが、ぜひこの試みの延長をしていただいて、ガバナンスの実質化のために色々なことをやっていただきたい。

 また取締役会というのは法的な境界線であって、取締役会で何を議論するのかという法的な問題よりは、取締役が全員集まっている場でどういった議論をしたら良いのかが大事である。仮に社外取締役の方を含めて全員が集まっていても、「ここまでは取締役会、ここまでは取締役会でなく事実上の会合」という形で時間帯を分けている例は、日本に限らず欧米にも結構ある。どうすれば議論が実質化するのかという観点から考えているほうが意味があってかつ現実だと思う。取締役会についての法的な議論から離れた議論をすることには意義があると思う。

 第三に、先ほど大宮委員からのお話にもあったが、特にリスク管理であったり、不祥事の芽などというものは、現場で利益相反が生じがちなので、ある程度上の層のかたがきちんと関与して監督機能を発揮すべきである。「取締役会をモニタリングモデルにして、取締役会で議論すべき事項を減らす」というステレオタイプなリアクションが、こうした監督機能に必要な情報まで取締役会に入らないことに至ることがあって良いのか、日本的には考えないといけない。

 第三に絡むが、第四に、これまで日本の企業は、監査役会設置会社を採用していれば、会社法が取締役会で何を議論しろということを決めてくれていたので、企業は自分で考えなくても、ある意味、業務執行事項は何でもかんでも取締役会でやるという法律から与えられた形でやっていた。そこで今回、いざ取締役会の議論すべき事項を分けましょうとなったときに、何を残すべきかといったところを思考中という段階であると理解している。

 そこで監督といったときに、先ほど冨山委員も言われたが、人事権を適正に行使するために取締役会に入れておかなければいけない情報はいろいろとある。監督権の前提となる情報を入れるためには、付議であれ、議論であれ、どういったことを取締役会で審議すべきなのかということをもう少し考えるべきであって、会社法上はこれだけの部分しか取締役会で決めなくていいといっているからこうするといった自律的意思のない話でなく、人事権の行使のために必要な情報は何なのか、それをさらに意思決定という形で取締役会で決めるのか、それとも付議や審議の形で扱うのかというような色々な考え方があるのだという視点を提供していくことが、この研究会としてガバナンスの実質化という観点からよいかと思う。

 例えば中期経営計画をつくるにしても、経営会議とかマネジメントが決めたことを再度取締役会に意図もなく繰り返し付議しても、あまり実質的効果がない。監督する側には情報がないものだから、ああそうですかと追認している現象があれば、そこを今回のガバナンス改革の中で一番に直していったほうが良い、一例である。経営評価の前提となる中期経営計画などをきちんとどういう形で社外者の方が関与するのかというのも大きな論点である。この手の個別の代表例を踏まえて、企業が今まさに取締役会のあり方を変えようとしているタイミングで、どういう視点で変えたらいいのかということを実質的に考える助けになるような整理を提示できたら良いと思う。

 第五に、図について1点だけ細かいコメントを申し上げる。資料4の10ページのX軸、Y軸について、冨山委員からのコメントを聞いて私も思ったのだが、Y軸の監督機能という言い方が少々誤解を生むのかなという気もしている。冨山委員のコメントを踏まえて、もし変えるとしたら、この部分は、取締役会で意思決定している事項が多いか少ないかという象限とするのはどうか。どの象限でも上場企業に必要な経営評価機能、監督機能は変わらないはずだと思うので、監督機能が多い少ないという言い方をするよりは、取締役会で意思決定していることが多い少ないというのがX軸で、そのときに必要な監督機能はどうなるのかなというようなY軸にしたほうが、冨山委員のコメントに対応できるのかなと思った。

 最後にいろんな方から意見が出されている顧問・相談役についてだが、いろいろな弊害を惹起している例があるのかもしれないが、悪い例のほうが外に報じられやすいという特徴もあるわけで、ブラック・オア・ホワイトでいいか悪いかを議論をするのは良くないと思う。たとえば今後、先ほどの監督権・人事権を行使していくとなったら、社長にどんどん辞めてもらわなければいけない時が増えてくるかもしれない、そのときに競業避止という観点から会社に残ってもらうというメリットもある。そういう現場の知恵までおかしいと断じてしまうのもおかしい。また、そのかたがいることで会社がいろいろな不協和音を起こさないで一つにまとまっているとか、ガバナンスが効いているといった事例も少なからずあると思う。良いか悪いかの単純論は難しいと思う。今回もし何らかの整理をするのであっても、どういう場合は弊害を起こす、どういう場合は良いなどといった視点の提供のほうが良いと思う。

大宮委員

  大場委員、石田委員のご意見等を聞いて考えると、会社の内部のガバナンスをどのように向上させるかという視点で、取締役会をどうすべきかとか、社外取締役にどういう形で機能してもらうかというようなことが非常に大事だと思うけれども、投資家の目からみたときの先ほどの総括検証とディスクロージャーという視点からは、この辺もすごく大事だと思っている。
例えばどういう形のIR活動をやるかとか、統合レポートみたいなものが最近色々な会社で随分充実してきていて、あの中にはCSRも含めて、社外取締役がこういう形で会社の経営にかかわっているというようなことも載っているのも色々あるようだ。
ディスクローズという観点からは、内部で一生懸命やっていることを外部にどう伝えるかということも非常に重要だという感じがする。


 そこで、統合レポートか何かを一度リサーチして、どういうことになっているかということも少し調査してみたらいいのかなというような感じがする。大変大事な外部への発信のツールだろうと思う。それによって、ガバナンスという視点からは、内部だけではないような形でのフィードバックがどこか得られるはずだから、その辺も非常に重要かと思う。

冨山委員

  資料4の10ページは確かに大事なスライドで、Bは仮に国で例えると、事実上王様がいない。
総理大臣はいるけれども、ほとんど権限がない。
それで、監督機能がないということになると無政府で、成り行きでやっているという状態である。
各部門の部門長がみんなそれぞれにやっている成り行き経営である。
Dは先ほど松元委員が言われたように、要するにとんでもない独裁国家である。


 もし仮に沿革的に下から上に日本の会社が来ているとすると、これでうまくいったということは、よっぽどいろいろな条件に恵まれていて、要は無政府であろうが、独裁国家であろうが、うまくいってきてしまった日本の経済ということになってしまう。ひょっとしたら経産省が立派なのかもしれないけれども、とにかくそういうことである。

 制度論的に言ってしまうと、取締役会の固有の権能は、監督と呼ぼうが、モニタリングと呼ぼうが取り締まることにあるのだとすれば、むしろ議論の発想は制度論的には逆転したほうがいいと思っていて、要は監督、モニタリングの実を上げるために、取締役会において個別の業務執行の決定にどこまで関わるべきかと命題を置きかえると、実はいろいろな議論が見えてくるような気がする。

 私も、そして多分小林委員も思っていたのは、武井委員の議論ともかぶるが、指名委員会等設置会社で形式論的に取締役会の決議事項を減らすことにこだわり過ぎると、監督の実が上がらなくなることがある。かといって、取締役界が細かいところにどんどん分け入ってしまうと、監督の域を超えて執行の側に回ってしまう。執行の側に回り過ぎてしまうと、自分で自分を監督するという構造上の矛盾に社外取締役の人も陥ってしまう。

神田座長

  私も感想を2点ほど手短に述べさせていただきたい。


 まず、今冨山委員がおっしゃったことを私が学生時代にどう習ったかというと、BとかDで誰が監督しているのかというと、同僚の目、従業員の目というように習った。それはともかくとして、澤口委員からもご発言があったと思うが、私は米国では、取締役会は監督はしているが業務の決定はしていないと思う。そこを我々はもう一度確認して、日本はそういうスタイルがいいのか、よくないのかというのは、冨山委員が先ほどから繰り返しおっしゃっている点を含めて、重要な点かなと思った。

 あまり図を議論し始めるときりがないが、取締役会の監督機能と意思決定機能というのは相反するわけではない。それぞれ強弱があるとすると、4つの組み合わせがあると思う。行くべき道として弱・弱は良くないが、強・強というのはありうると思う。それは、今は(2)であらわされていると思うが、矢印はもっと上まで行って、しかし意思決定もするというものである。矢印はこの図だと書きにくいと思うが。

 次に、別の点だが、私は大場委員がおっしゃったことは非常に重要だと思っていて、大宮委員がおっしゃったこととかぶるが、先ほどから相談役がいるとどうだとか、人間関係はどうだとかの指摘があったが、私は実態の話としてそのとおりだし、それは何も会社の組織だけではなくて、どの組織でも似たような面はあると思う。

 最近、テレビのニュースをみていると、誰のための都政なのかという名言があるが、議論にあたっては、一体誰のための経営なのかという視点が大事だと思う。日本では、投資家とか株主のためという視点があまりになさ過ぎた。そういうあたりをどうしていくのかという中で、組織論、実態論と制度論を議論していく必要があるし、そういうことを大宮委員も先ほどおっしゃったと思うが、ウチ・ソト意識が非常に強い社会なので、株主、投資家はソトだというのは改める必要がある。

大杉委員

  冨山委員と神作委員のご発言に関連して一言ずつコメントしたい。


 制度論としては、取締役会固有の権能は監督だという点に共感するが、会社法は取締役会固有の機能は意思決定というようにしてしまっており、その点は先ほど神田座長がおっしゃった通りだが、とにかく会社の業務執行の決定は取締役会が行うというのを機関設計に関係なく入れた上で、それをどこまで委任できるかというので、機関設計によって差を設けているという条文のつくりになっていて、意思決定をやったからといって監督ができなくなるわけではないけれども、実務家の意識は、やはり法律によってある程度決まっている部分があるのかなというものである。

 もう1つは、先ほど神作委員からいただいた話は、社外取締役が法律概念として形式的に決まっていて、彼らが参加できるのは、法律上は取締役会というフォーマルな会議に限られるので、そこで何をやるかということをある程度明らかにしないと、取締役会改革というか、ガバナンスの実効性を確保することにならない。つまり実質が大事だとしても、形式もある程度大事というお話だったかと思うけれども、そのご指摘に対しては異論はない。

 この点に関連して少し抽象的な話をさせていただくと、会社法の役割は何かというときに、最低限の土台の上に各会社の工夫が乗っかるというときの土台を提供し、箸の上げ下ろしには文句を言わないという考え方と、少なくとも上場企業や大企業に関しては、会社法によってある程度規律することが重要なのだという考え方とがあり得て、日本は伝統的に後者だった。その前提としては、株式の持ち合いが強固で、投資家による上場会社経営者に対する規律を求めることが非常に困難だという認識があったと思うけれども、スチュワードシップ・コードなどができて、今、急速に市場との対話が普及しつつある。そのときに今の会社法、例えば重要事項は取締役会で決定しなさいというような条文を読み返してみると、過剰規制ではないか。もう少し投資家による規律に任せて、会社法は従来型の規律から徐々に撤退して、インフラ型、土台型の考え方に向かうべきではないかと私は個人的に思っている。


以上





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2018年09月12日

第3回 コーポレート・ガバナンス・システム研究会




CGS研究会(コーポレート・ガバナンス・システム研究会)(第3回)‐議事要旨

日時:平成28年8月31日(水曜日)15時30分~17時30分
場所:経済産業省本館17階国際会議室

出席者

神田座長、青委員、伊藤委員、岩井委員、江良委員、大杉委員、大場委員、大宮委員、翁委員、川村委員、後藤委員、小林委員、澤口委員、武井委員、寺下委員、藤田委員、松元委員、竹林参事官、田原課長
(欠席:石田委員、神作委員、佐久間委員、冨山委員、御代川委員、柳川委員)

議題

企業ヒアリング(2)

議事概要

はじめに、本日の資料・議事等の公開について、資料2記載のとおりとすることについて委員の了承を得た。
次に、事務局より資料3から資料5の説明を行った。
続いて、大宮委員(資料6)、三菱電機大隈様(資料7)及び岩井委員(資料8)によるプレゼンが行われた後、討議を行った。討議の概要は以下のとおり。


大杉委員

  3名のプレゼンターの方に、それぞれお伺いしたい。


 まず、大宮委員に対して。御社の社内取締役になるのは、事業部のトップの方ではなく、例えばCFOの方であるとのことだが、そのやり方だと、おそらく伝統的な日本企業において存在した、下から出世して上がってくる社員のモチベーションが維持できないのではないか。言い方を変えれば、社外取締役にポストを奪われ、社員のインセンティブが低下するのではないかと思ったのであるが、そのあたりについてどのような工夫あるいは考え方をされているのか教えていただきたい。

 関連して、次に資生堂の岩井委員にお尋ねしたい。御社は監査役会設置会社であっても役員のほとんどが社外出身者であり、社内出身の方のポジションが少ない。そのことそのものよりも、御社はガバナンスについて非常に先進的な取り組みをされる中で、社長への権力集中というようなことも一方で行っておられ、かなり日本の伝統的な企業のあり方、それも経営者と社員の間の関係というものと違う姿になっておられる。そういう姿を目指しておられるというような印象を受けた。

 簡単にいうと、いわゆる会社共同体とか、社員が下から上がっていくことによって人的共同体として会社が機能するという、ややウエットな日本的企業とは随分違う。しかし、会社というのは、いうまでもなく社員の人に納得して高い意識をもって働いてもらわないと利益を稼げないので、当然、経営者と現場の社員の間ではいいコミュニケーションができていないといけないし、きっと御社はできていることで非常に有名な会社だと思っている。そのような、伝統的・典型的な日本企業とは違う経営者・社員間のコミュニケーションは、何か脱皮して違うものになったのか、従